幕末☆妖狐戦争 ~九尾の能力がはた迷惑な件について~

カホ

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元治元年

白雪の記憶(弐)

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 あの日のことは、今でもよく覚えている。私が中学2年生の時の、1月の中旬だった。




 その日は土曜日で、家族で日帰り旅行に出かけていた。

 朝に家族で家を出て、目的地に到着したあとは両親といっぱい遊んで、車に乗って家路についたのは、日が暮れたあとだった。

 旅行に行った場所が山の方にあったから、帰りは山道だった。蛇行する山道を走っていると、雪が降ってきた。後部座席で母と雪について話したのを覚えている。

 その時、反対車線から、一台の夜行バスが白線を超えて突っ込んできた。居眠り運転だった。

 夜行バスに弾かれた車は、そのままガードレールを突き破り、生い茂った木々に引っかかって止まった。

 父は即死だった。

 私は動かなくなった父を何度も揺すった。そしてふと、自分だけがかすり傷一つ負っていないことに気づいた。

 母は、私をかばって木の枝に貫かれていた。

「雫………あなたは……生きるのよ………?生きて……幸せになって…………」




 それが、母の最後の言葉だった。

 雪が好きかと聞かれたら、素直に首を縦には振れない。だけど雪は、私に大事な記憶をくれた。

 あのあと、警察の救助が来るまでの4時間の間、私は車の中から、ただひたすら雪が舞い落ちる空を見上げ続けていた。だからなのか、雪を見るとこの時の記憶が蘇ってくる。

 雪は清らかだ。見ていると、不思議と気持ちが穏やかになる。東京で雪が降るたびに、私は玄関先で雪の中に身を置いていた。

 あの夜、雪を見続けていたから、私は両親の死を目撃したあとも正気でいられたのかもしれない。後を追わなかったのかもしれない。

 悲しくないといったら嘘になる。だけど、あの雪の記憶は両親の死を伝えるのと同時に、両親が最後まで私を愛していてくれたことを教えてくれている。

 忘れたい記憶と、忘れたくないし忘れてはいけない記憶を同時に私にくれた。

 全て嫌うことなんて、できなかった。

 草履を履いて、そっと雪に足をつける。まっさらな雪の絨毯に、私の足跡が残った。

「雫ちゃん?そんな辛気臭い顔してどうしたの?」

 雪の中を数歩歩いたところで、背後から声をかけられた。
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