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元治2年/慶応元年
突撃西本願寺
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元治2年3月。
新選組は西本願寺側の反対を押し切り、屯所を八木邸から西本願寺へと無理矢理うつした。
新選組が西本願寺に屯所を移転したことで、長州浪士は身を隠す場所を一つ失うこととなったらしい。
こんなに馬鹿でかい西本願寺の境内でも、毎日歩いていれば慣れるものだ。
(この道をこう行くんだよね)
西本願寺を歩き回るようになって3日ほどで、私は西本願寺のだいたいの平面図を把握した。これも一概に"天才頭脳"の能力のおかげだろう。
(山南さんって、今元気にやってるのかな?)
『七尾から定期的に聞いておる。なんでも医学の知識が豊富だから、里人にたいそう必要とされているようじゃ』
(そっか。山南さん、ちゃんと自分を受け入れてくれる場所を見つけたのね)
『うむ。将来的には仙台にある五尾を祀る雪華の里に行くことになっておるようじゃ』
(うん?なんで?)
『山南は医学の研究に打ち込みたいようでな、それならば学業の里である雪華の里に行った方が都合良いのであろう』
(ああ、なるほど)
『それに、山南は仙台の生まれじゃ。故郷に近い方が心安らぐのではないか?』
(それはわかるわ)
表世界では死んだことになっている山南さんだが、ご本人は白川の里で自分の居場所を見つけ、楽しく生きているようだ。
「ありがとう、御影君。君のおかげで、私はもう一度生きることができそうです」
屯所を去ったあの日、別れ際に言われた言葉だ。
私のあの時の判断が、間違っていなかったのだと、そう信じられた。
(ところでほむろ)
『なんじゃ?』
(気付いてる?)
『うむ、気付いておる』
(どこまでついてくるんだろう?)
『さあ?』
(ていうかまず、坊主ってそんなに暇なの?)
『さぁ………?どうなんじゃろ………』
さっきからずっと、私のあとを寺の坊主たちが追いかけてきてるんだけど、暇なの?
平成の世で坊主と言ったら、のっぺりしながらぼろ儲けのイメージしかないんだが。だってあいつら、税金ほっとんど払わないんだもん。
そもそも、僧侶って色恋はダメじゃなかったか?いつ解禁になったの?
『叩き返すか?』
(いいよ、ほっといて。どうせ人畜無害だし。放置しとけばそのうち寺の方が代わりに叱ってくれるよ)
『お主も大概、こういう輩の対応に慣れてきたのう………』
当然です。慣れなきゃその辺なんて歩けないわい。八木邸にいた時も、ストーカーもどきがいたし、さすがに対応にはもう慣れました。
(ほんと、解せないんだから)
どうしてこの顔が美人に振り分けられるのさ。島原の芸妓さんのが絶対綺麗でしょ。
いや、実際見たことはないけどさ。
『しかし一気に広くなったよな。八木邸の何倍あるんだ?』
(わかんないけど、かなり大きいよね)
『掃除とか大変なのではないか?』
(この人たちが屯所を掃除してるとこなんて見たことないけど?)
『確かに』
八木邸にいた頃も掃除なんてろくにやってなかったのに、西本願寺に来て屯所がさらに広くなって、掃除の先行きはむしろ不安しかない。
(屯所は清潔にしてもらわないと医療組の仕事が増えるんだって)
『ここの男どもは何においても適当すぎるのじゃ。些細な怪我や病気は放っておくし、野菜の切り方とか雑だし、調理は適当だし』
(それが男所帯の歩む末路だよ)
『末路とは言い過ぎじゃないか?』
(否定はしないんだね)
今、私が向かってるのは山??さんの部屋だ。
山南さんが死んだことになってから、隊士たちの怪我病気は私と山??さんで対応している。でも山??さんだって監察方の任務があって、いつも屯所にいるわけではない。
となると必然的に私の仕事の方が多くなる。
しかし私はまだまだ経験不足。その経験不足を補うため、山??さんが屯所にいる間に、こうやってできるだけ教えを請うようにしている。
()
『』
(え、それほんと?)
『本当じゃぞ?』
(うっそだー)
西本願寺に屯所が移転になって、私は実は少しホッとしている。
西本願寺は広い。当然空き部屋なんかがゴロゴロある。新選組が使っているのも、ほんの一部の部屋だ。
逆に言い換えれば、入山の追っ手や四尾たちが襲撃してきても、身を隠せるし、見つかる可能性も低くなるということだ。
それは私としてはとても助かることだった。
新選組は西本願寺側の反対を押し切り、屯所を八木邸から西本願寺へと無理矢理うつした。
新選組が西本願寺に屯所を移転したことで、長州浪士は身を隠す場所を一つ失うこととなったらしい。
こんなに馬鹿でかい西本願寺の境内でも、毎日歩いていれば慣れるものだ。
(この道をこう行くんだよね)
西本願寺を歩き回るようになって3日ほどで、私は西本願寺のだいたいの平面図を把握した。これも一概に"天才頭脳"の能力のおかげだろう。
(山南さんって、今元気にやってるのかな?)
『七尾から定期的に聞いておる。なんでも医学の知識が豊富だから、里人にたいそう必要とされているようじゃ』
(そっか。山南さん、ちゃんと自分を受け入れてくれる場所を見つけたのね)
『うむ。将来的には仙台にある五尾を祀る雪華の里に行くことになっておるようじゃ』
(うん?なんで?)
『山南は医学の研究に打ち込みたいようでな、それならば学業の里である雪華の里に行った方が都合良いのであろう』
(ああ、なるほど)
『それに、山南は仙台の生まれじゃ。故郷に近い方が心安らぐのではないか?』
(それはわかるわ)
表世界では死んだことになっている山南さんだが、ご本人は白川の里で自分の居場所を見つけ、楽しく生きているようだ。
「ありがとう、御影君。君のおかげで、私はもう一度生きることができそうです」
屯所を去ったあの日、別れ際に言われた言葉だ。
私のあの時の判断が、間違っていなかったのだと、そう信じられた。
(ところでほむろ)
『なんじゃ?』
(気付いてる?)
『うむ、気付いておる』
(どこまでついてくるんだろう?)
『さあ?』
(ていうかまず、坊主ってそんなに暇なの?)
『さぁ………?どうなんじゃろ………』
さっきからずっと、私のあとを寺の坊主たちが追いかけてきてるんだけど、暇なの?
平成の世で坊主と言ったら、のっぺりしながらぼろ儲けのイメージしかないんだが。だってあいつら、税金ほっとんど払わないんだもん。
そもそも、僧侶って色恋はダメじゃなかったか?いつ解禁になったの?
『叩き返すか?』
(いいよ、ほっといて。どうせ人畜無害だし。放置しとけばそのうち寺の方が代わりに叱ってくれるよ)
『お主も大概、こういう輩の対応に慣れてきたのう………』
当然です。慣れなきゃその辺なんて歩けないわい。八木邸にいた時も、ストーカーもどきがいたし、さすがに対応にはもう慣れました。
(ほんと、解せないんだから)
どうしてこの顔が美人に振り分けられるのさ。島原の芸妓さんのが絶対綺麗でしょ。
いや、実際見たことはないけどさ。
『しかし一気に広くなったよな。八木邸の何倍あるんだ?』
(わかんないけど、かなり大きいよね)
『掃除とか大変なのではないか?』
(この人たちが屯所を掃除してるとこなんて見たことないけど?)
『確かに』
八木邸にいた頃も掃除なんてろくにやってなかったのに、西本願寺に来て屯所がさらに広くなって、掃除の先行きはむしろ不安しかない。
(屯所は清潔にしてもらわないと医療組の仕事が増えるんだって)
『ここの男どもは何においても適当すぎるのじゃ。些細な怪我や病気は放っておくし、野菜の切り方とか雑だし、調理は適当だし』
(それが男所帯の歩む末路だよ)
『末路とは言い過ぎじゃないか?』
(否定はしないんだね)
今、私が向かってるのは山??さんの部屋だ。
山南さんが死んだことになってから、隊士たちの怪我病気は私と山??さんで対応している。でも山??さんだって監察方の任務があって、いつも屯所にいるわけではない。
となると必然的に私の仕事の方が多くなる。
しかし私はまだまだ経験不足。その経験不足を補うため、山??さんが屯所にいる間に、こうやってできるだけ教えを請うようにしている。
()
『』
(え、それほんと?)
『本当じゃぞ?』
(うっそだー)
西本願寺に屯所が移転になって、私は実は少しホッとしている。
西本願寺は広い。当然空き部屋なんかがゴロゴロある。新選組が使っているのも、ほんの一部の部屋だ。
逆に言い換えれば、入山の追っ手や四尾たちが襲撃してきても、身を隠せるし、見つかる可能性も低くなるということだ。
それは私としてはとても助かることだった。
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