幕末☆妖狐戦争 ~九尾の能力がはた迷惑な件について~

カホ

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元治2年/慶応元年

明かされる現実(壱)

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私が二人の姿を再び視界に捉えたのは、境内のかなり裏で奥の方までやってきた時だった。

二人は何やら真剣な話をしている様子。私は音をたてないように二人に近づき、手近にあった柱に身を隠した。

ここからであれば、順風耳を使わなくとも二人の会話が聞こえる。

「単刀直入に告げよう。お前さんは労咳だ」

…!!

沖田さんが、労咳。

『なるほど………道理で最近顔色は悪いわ、変な咳はするはずだのう』
(…………)

知っていた。

全部、最初から知っていた。

沖田 総司が肺結核を患っていたことも、幕末で肺結核は死病であることも。

全て知っていても、改めて知らされると頭を殴られたような衝撃を受けた。

そして何もできない自分が無性に嫌になった。

「やっぱり、そうなんですね」
「驚かないのだな」
「そりゃあ、自分の体ですから」
「ならわかっていると思うが、この病はこれ以上悪化すると周りに迷惑をかける。どこか空気の綺麗なところで療養した方がいい」

松本先生が言った。確かにこの時代、労咳の進行を遅くする方法はそれ以外にない。

でも、沖田さんはきっと……。

「それはできません」

言うと思った。

「命が短いのであれば、僕はなおさらここを離れるわけには行きません。ここで新選組の、近藤さんの剣として戦うことが、僕の全てですから」

3年間新選組と過ごして、沖田さんを含めた多くの隊士たちを見てきた。

もうわかっていたのだ。沖田さんは、新選組が……近藤さんが大好きなのだと。

きっと沖田さんにとって、近藤さんのそばで近藤さんを助けることは、自分の命よりも大事なことなのだろう。

「………決意は固いようだな」

松本先生もこの答えを予想していたのか、それ以上は何も言わなかった。

本心では、きっと沖田さんを説得したかったのだろう。

「だったら、なおさらこれからは私の指示に従ってもらわないといけない」
「わかっていますよ、先生」
「言うことを聞かなかったら、すぐに近藤さんに言うからね」
「うわ。それは嫌だな」

そう言って、沖田はくつくつと笑った。

どうして?

どうしてあなたは笑っていられるの?

自分のこれからが、もう見えてしまっているだろうに。

私は視線を落とした。

今まで、平成の世に帰りたいと思うことはなかったのに、ここへ来て、私は初めて帰りたいと思った。

沖田さんが平成の世に行くことができれば、肺結核を治すことができる。

私は九尾の力を得たことで人外になった。その力に救われたことだって何度もあった。だけど、それでもこうして自分が願う時にはなんの力にもなれない。

どれほど大きな力を持っていても、人の身ではやれることに限界があるのだろうか。

人というのは、なんて無力な存在なんだと思った。
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感想 28

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みんなの感想(28件)

白兎
2020.02.06 白兎

更新楽しみにしています。
頑張って下さい。

解除
白兎
2020.02.06 白兎

多分だけど、山??さんは山崎だと思います。
違ったらごめんなさい

解除
2017.09.08 ユーザー名の登録がありません

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