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第一章
第3話 私の名
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「…っ………おいっ………おいっ大丈夫か!」
「あ、すみません……大丈夫です…」
気づくと両手で身体を揺さぶられ目の前には不安そうな顔で黒髪の男の人が顔を覗き込んでいた。
「本当に大丈夫か?」
「はい…」
きっと私の顔は今青ざめているのだろう
けれど今は、はいと答えるしかない。
男の人はしばらく思案を巡らした顔をした後、淡々と言い出した。
「このまま放っておくのは危ないな、恐らく自分の住居も分からないのだろう?」
「そのようです、自分の名も思い出せない程ですから…」
「では一先ず我が住み処に来るといい」
「よろしいのですか?」
「ああ、構わない。幸い、部屋はいくつか残っているからな」
「それは本当ですか。ありがとうございます、心より感謝します」
「いや、礼に及ぶ程ではないよ。我が住み処は充分な広さがあるから遠慮することはない」
そういえば、と彼は付け足す。
「私はカミェールと申す。オルテン王国の宮中で王子に仕える騎士でごさいます」
「カミェール…王子に仕える身なのですね、誠に感謝致します」
「いや、礼には及ばん。君は、名前が分からないのであったね…」
「ええ…」
途端にまた心が不安になった。
「ああ、すまない。そのような悲しい顔はしないでくれ」
どうにか顔に出さない様、気をつけていたが、どうやら顔に出ていたらしい。
「よし、ではこうしよう。とりあえず仮の名前を付けるというのはどうだ」
「そうですね、名を呼べないと言うのは何かと不便でありましょう…」
カミェールはしばらく考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。
「そうだな、では…メイアだ。君は今日からメイアと呼ぼう」
「メイア…ですね。分かりました。よろしくお願い致します。カミェール様」
「おいおい、様は無くて大丈夫だ。普通にカミェールと呼んでくれ」
「すみません。では、今日からよろしくお願い致します。カミェール」
「ああ、こちらこそよろしく。メイア」
そう言って、顔を見合わせお互い微笑んだ。
その時、カミェールの瞳を見てまた懐かしいという気持ちが込み上げた。
そう感じているのは、私だけなのだろうかと、密かに思いながらメイアは歩き出したカミェールの後をついて行った。
「あ、すみません……大丈夫です…」
気づくと両手で身体を揺さぶられ目の前には不安そうな顔で黒髪の男の人が顔を覗き込んでいた。
「本当に大丈夫か?」
「はい…」
きっと私の顔は今青ざめているのだろう
けれど今は、はいと答えるしかない。
男の人はしばらく思案を巡らした顔をした後、淡々と言い出した。
「このまま放っておくのは危ないな、恐らく自分の住居も分からないのだろう?」
「そのようです、自分の名も思い出せない程ですから…」
「では一先ず我が住み処に来るといい」
「よろしいのですか?」
「ああ、構わない。幸い、部屋はいくつか残っているからな」
「それは本当ですか。ありがとうございます、心より感謝します」
「いや、礼に及ぶ程ではないよ。我が住み処は充分な広さがあるから遠慮することはない」
そういえば、と彼は付け足す。
「私はカミェールと申す。オルテン王国の宮中で王子に仕える騎士でごさいます」
「カミェール…王子に仕える身なのですね、誠に感謝致します」
「いや、礼には及ばん。君は、名前が分からないのであったね…」
「ええ…」
途端にまた心が不安になった。
「ああ、すまない。そのような悲しい顔はしないでくれ」
どうにか顔に出さない様、気をつけていたが、どうやら顔に出ていたらしい。
「よし、ではこうしよう。とりあえず仮の名前を付けるというのはどうだ」
「そうですね、名を呼べないと言うのは何かと不便でありましょう…」
カミェールはしばらく考え込んだ後、ゆっくりと口を開いた。
「そうだな、では…メイアだ。君は今日からメイアと呼ぼう」
「メイア…ですね。分かりました。よろしくお願い致します。カミェール様」
「おいおい、様は無くて大丈夫だ。普通にカミェールと呼んでくれ」
「すみません。では、今日からよろしくお願い致します。カミェール」
「ああ、こちらこそよろしく。メイア」
そう言って、顔を見合わせお互い微笑んだ。
その時、カミェールの瞳を見てまた懐かしいという気持ちが込み上げた。
そう感じているのは、私だけなのだろうかと、密かに思いながらメイアは歩き出したカミェールの後をついて行った。
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