森の泉

松葉 楓

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第一章

第2話 浮遊感

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ふと落下している間の風が無くなった
しかし浮遊感は続いたままだ
私は状況が理解出来ずそっと目を開けた

その瞬間心臓が一瞬止まったかのように吃驚した
私は泉の上で宙に浮いていたのだ

見ると黒髪の男の人も吃驚していた
そのまま私は静かに泉に着地した

「一体何が…」

「君が使った力なのか?」

「わからないです…でもきっと自分の力だと思います」

必死すぎて覚えていなかったが無意識のうちに心で止まれと叫んでいたことは確かだった
本当に一体何が起こったと言うのだろうか

「まあ、とりあえず足を滑らせた時の怪我は大丈夫か?」

「はい、大丈夫です」

「なら良かった…ほら、つかまれ」

その人は私を泉から手を引いて助けてくれた
心臓の鼓動がまだ治らない変な浮遊感と冷や汗が心にとどまった

「初めてみる顔だが、どこから来たんだ?」

「…分かりません」

「そうか…えっと、名前は…?」

「自分の名前……分かりません」

私は分かりませんと答えるしか他に方法がなかった。

「ここがどこなのかも分かりません」

一呼吸置いて黒髪の男の人はこう言った。

「…ここは、オルテン王国のはずれにある囁きの森だ」

「囁きの森…」
どこか懐かしい響きだ。
自分に関係のある場所なのかもしれない。

「見たところ、どうやら君は記憶喪失になったみたいだな」

「記憶喪失…」
そう聞いた瞬間まさに喪失感に囚われた。
目の前に大きな雲が覆い被さってくるみたいに。
だんだん意識が遠のいて行くのが分かった。



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