別にこれはいつも通りで

松葉 楓

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本編

1年生 秋 第16話

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「だあああぁ…!」

「えっ、どうしたの…?」

「分からない…」

「愛川が解けない問題ってよっぽどだね」

談話スペースとはいえ、図書室なんだからもう少し静かにしないと…とも言われたけど、そんなことは図書委員の自分が良く分かっている。
いったい誰のせいだと…と言いそうなったけどなんとか抑える。

「実春が解けないならよっぽどね」

「確かに」

「そうね、自分でもそう思う…」

なにより横にいる彼の顔が他意のない顔なのが府に落ちない。
とりあえず考えるのは止めよう。
今は勉強に集中しないと。
私は軽く息を吐いた。

見た範囲で1番難しいであろう問題を解いて気を紛らすことにした。

「うわ…実春ちゃんが解いてるの難しそう」

「確かに、これなら実春が叫ぶのも無理ないかも」

いや、ちょっと違うけど。まあ、いいか。
とりあえず、そういうことにしておこう。…って言うかここも一応試験範囲だと思うんだけどな…

「そうなの、この問題…いくら考えても答えが解らなくて」

「なるほど…」

細かいところは置いといて、この世界史の問題が難しいのは確かだ。
まあ、国語のように回答が複数あるわけでは無いので調べればすぐ出てくるだろうけど。

後で調べようとか思っていると、私の横で彼が言い出した。

「僕、その問題ちょっと調べてみよう」

「えっ、いや…」

「遠慮しないで、僕も世界史勉強してるし」

そう言う彼は、何一つ屈託のない笑顔を私に向けていた。

なんとなく。そう、なんとなく隣で世界史を開いて真面目に勉強していたから、私も世界史を勉強することにしたのだが、無意識にこう言うことを望んでいた自分がいたのかもしれない。

「ちょ…ちょっと水飲みに下行ってくる」

「えっ…?」

「なぜ急に水?」

「さぁ?」

疑問符が浮かんでいる3人の前を慌てながらも平常を装って席を離れた。
危ない。
またもや顔が赤くなるのを見られるところだった。しかも3人に。

今日は勉強に集中するのは無理かもしれない…

「どうしたものか」

水飲み場のある下の階へと向かいながら、1人頭を抱える。

「はぁ…」

「どうしたんだ?ため息なんかついて」

「あ、浅見先生」

「試験も近いもんな。たまには息抜きも大切だぞ」

「まあ、そうですね。少し息抜きに水を飲みに行こうかと」

そもそも、向こうは私のことどう思ってるんだろう。と、そんなことを話しながら素朴な疑問が浮かんだ。
よくからかわれたりはするけど、なんだかんだ優しい。

「後で少し見周りに行くが、このところ真堂や立花達にずっと図書室で勉強を教えているだろう」

「ええ」

彼が優しいのは知っている。けど…

昼休みも放課後もいつも一緒だ。
でも、逆に言えば昼休みと放課後以外はあまり顔を合わせない。
それに普段の教室での様子とか、図書委員の人達は例外として私意外の人と話したりしている彼をほとんど知らない。
朝も家の方向が反対なのもあるが、別に待ち合わせて一緒に登校している訳ではない。
まあ、登校中に姿を見かけた時は教室まで一緒にいくけど。

いろいろ考えてしまって浅見先生との会話があまり耳に入らなかった。

「まあ、たまには息抜きしないと効率が悪くなるからな。…他の奴らにも伝えておいてくれ」

「ありがとうございます、頑張りますね。皆んなにも伝えておきますね」

では、と軽く会釈をして、ついさっき降りてきた階段を登る。

彼のこと、意外と知らない…かも。
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