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一章
十七話 さようなら
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メイとビジアの決闘はメイの勝利に終わった。
――その翌日、初心者の街の広場に四人は集まっていた。
「色々と迷惑をかけて申し訳なかった」
会話はケイルの謝罪から始まった。
人格はビジアからケイルに戻っていて、自身の魔法で切断された右腕を元通りに治療していた。同様にウルセーナ、メイの怪我も治したようだ。
ナビはメイの背後で半身を隠している。
ウルセーナはどこか不満な顔つきでケイルを見ようとしない。
「ケイル、アンタうちのパーティーに入ってもらうって約束だからね。ビジアから話しは聞いてるの?」
メイの問いかけにケイルは表情を曇らす。
「……その話だが、少し期間をくれないか。出来れば僕の仲間に話を通してからにしたい。パーティーを抜けるとしても、信頼して僕についてきてくれた仲間だから、路頭に迷わせるわけにはいかないんだ」
「約束を破ったらどうなるか分かってるの? 膨大な違約金を払わなきゃいけないのよ」
「ああ、それも含めて、パーティーでどうするかを決めたい。僕の勝手な一存で決められる事じゃないんだ、頼む」
ケイルが俯きそう言うと、メイは腕を組み、ため息をついた。
「はぁ……ま、しょうがないわね、いいわ。で、アンタどこに拠点置いてるの? 連絡取れずに逃げられちゃったら困るから教えておいてくれる?」
「中級と上級エリアの丁度中間にある、王都トンロフだ。ここからだと一度中級者の街を経由する必要がある」
ケイルは金色の方位磁石と裁縫針のような物を取り出した。
そして自分の指に針を刺すと、方位磁石の中に針を取り付けメイに渡した。
「太い針は通常の方位を示す。そして今取り付けたこの細い針は、魔力を感知して僕の居場所を指し示す。これを君に渡しておくよ。いつでも僕の居場所が分かるはずだ」
「分かったわ。じゃあ次に会う時までには答えを出しておいてね」
「ああ、すまない」
ケイルはそう言うとナビに視線を移した。
ナビは気まずそうに視線を落とす。
「ナビ、酷い事をして本当にすまなかった。謝って済む問題じゃない事は分かっているし、言い訳をするつもりもない。事実、あれが僕の素直な気持ちだったんだ。でも、いつかあの事がただの思い出に変わるように、君を振り向かせて見せるよ。……それじゃあナビ、また会う日まで、さようなら」
ケイルは寂しそうな目つきで笑顔を見せた。
「はい。……さようなら、ケイルさん」
ナビは最後までケイルの顔を見ることはなかった。
ケイルは三人の元から離れ、歩き始める。そして去り際に街の入り口で足を止め、振り返った。
「おい! ウルセーナ! 僕はお前を認めないぞ! ナビを幸せに出来るのは僕の方だ! 分かったか! 僕は諦めたわけじゃないからな! 絶対に諦めないぞ! くそっ、覚えてろよ!」
ケイルは顔を真っ赤にして、怒鳴り散らすと、そのまま去っていった。
ウルセーナはそんなケイルの幼い一面を見て思わず笑みを漏らすと、ナビを見つめた。
ナビもウルセーナを見つめ返し、照れくさそうに微笑んだ。
メイはそんな二人を見て喉を鳴らす。
「コラ! お前ら昼間っからいちゃつくな! 飯行くわよ、飯!」
メイは見つめ合う二人の肩に腕を回すと、宿付き酒場に向けて力強く足を踏み出した。
一章 完
――その翌日、初心者の街の広場に四人は集まっていた。
「色々と迷惑をかけて申し訳なかった」
会話はケイルの謝罪から始まった。
人格はビジアからケイルに戻っていて、自身の魔法で切断された右腕を元通りに治療していた。同様にウルセーナ、メイの怪我も治したようだ。
ナビはメイの背後で半身を隠している。
ウルセーナはどこか不満な顔つきでケイルを見ようとしない。
「ケイル、アンタうちのパーティーに入ってもらうって約束だからね。ビジアから話しは聞いてるの?」
メイの問いかけにケイルは表情を曇らす。
「……その話だが、少し期間をくれないか。出来れば僕の仲間に話を通してからにしたい。パーティーを抜けるとしても、信頼して僕についてきてくれた仲間だから、路頭に迷わせるわけにはいかないんだ」
「約束を破ったらどうなるか分かってるの? 膨大な違約金を払わなきゃいけないのよ」
「ああ、それも含めて、パーティーでどうするかを決めたい。僕の勝手な一存で決められる事じゃないんだ、頼む」
ケイルが俯きそう言うと、メイは腕を組み、ため息をついた。
「はぁ……ま、しょうがないわね、いいわ。で、アンタどこに拠点置いてるの? 連絡取れずに逃げられちゃったら困るから教えておいてくれる?」
「中級と上級エリアの丁度中間にある、王都トンロフだ。ここからだと一度中級者の街を経由する必要がある」
ケイルは金色の方位磁石と裁縫針のような物を取り出した。
そして自分の指に針を刺すと、方位磁石の中に針を取り付けメイに渡した。
「太い針は通常の方位を示す。そして今取り付けたこの細い針は、魔力を感知して僕の居場所を指し示す。これを君に渡しておくよ。いつでも僕の居場所が分かるはずだ」
「分かったわ。じゃあ次に会う時までには答えを出しておいてね」
「ああ、すまない」
ケイルはそう言うとナビに視線を移した。
ナビは気まずそうに視線を落とす。
「ナビ、酷い事をして本当にすまなかった。謝って済む問題じゃない事は分かっているし、言い訳をするつもりもない。事実、あれが僕の素直な気持ちだったんだ。でも、いつかあの事がただの思い出に変わるように、君を振り向かせて見せるよ。……それじゃあナビ、また会う日まで、さようなら」
ケイルは寂しそうな目つきで笑顔を見せた。
「はい。……さようなら、ケイルさん」
ナビは最後までケイルの顔を見ることはなかった。
ケイルは三人の元から離れ、歩き始める。そして去り際に街の入り口で足を止め、振り返った。
「おい! ウルセーナ! 僕はお前を認めないぞ! ナビを幸せに出来るのは僕の方だ! 分かったか! 僕は諦めたわけじゃないからな! 絶対に諦めないぞ! くそっ、覚えてろよ!」
ケイルは顔を真っ赤にして、怒鳴り散らすと、そのまま去っていった。
ウルセーナはそんなケイルの幼い一面を見て思わず笑みを漏らすと、ナビを見つめた。
ナビもウルセーナを見つめ返し、照れくさそうに微笑んだ。
メイはそんな二人を見て喉を鳴らす。
「コラ! お前ら昼間っからいちゃつくな! 飯行くわよ、飯!」
メイは見つめ合う二人の肩に腕を回すと、宿付き酒場に向けて力強く足を踏み出した。
一章 完
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