三人の自衛官とゾンビの世界

パンデニモ

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目標、海!

ゾンビ・オブ・シリアス

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「どうよ西澤~?久々の娑婆でのドライブは~。自分はジープとかの方が乗りたかったけどねー。」

風に吹かれながら、深夜0200を回ろうという時間をパトカーに乗って移動する事に苦笑いしながら尋ねるのは佐野だった。

「最高だぜぇ~?あとサングラスがあれば文句無しだねぇ。それと余計な事を言うと口を縫い合わすぞ…」

西澤は満足気に死屍累々とした民家の側を、深夜徘徊しているゾンビを避けながら走り抜けていく。

「おい西澤!とりあえず俺達の行き先は覚えてるよな?」

大瀧は絶対に寝ていたであろう、虚ろな表情で後部座席から西澤に声を若干荒げながら聞いた。

「あぁー、勿論。最初は海に行って…それから…えぇっと。」

佐野に目で救いを求めるが、前を見て運転しろという合図を出されて渋々と前を見て運転しながら悩み唸っていた。

「西澤っ、俺達はこれから海に行く前に、その近くの山奥の一軒家に行く予定だぞー。したっけ、山の中で車を止めたら一旦寝るんだよ…俺はもう寝そうだよ。」

西澤は「あぁ~」と納得した様な返事をして、少しスピードを上げながら民家の側を抜けていった。

そして、小一時間後に山の途中に一時停車した。

「まぁ、とりあえず偽装はしておくよ。二人は念のために偽装している間は車の外で見張っていてほしい。」

佐野は迷彩の皮手袋を装着すると、辺りに落ちている木葉と木の枝を集めて満遍なくバイパー等に引っ掻けたりしていく。

「おう、西澤は見張っててくれ。俺も手伝うわ。」

大瀧は、ずっと被っている鉄帽でかゆくなった頭を少しかいてから皮手袋を装着して一緒になって偽装し始めた。

ガサッ…

茂みの方から、何かが動いた音が三人の耳に届いた。

「俺が…見てくる…」

真っ先に名乗り出たのは西澤だった。深夜の月明かりしか無い山の中ではより一層恐怖を際立たせる。

少しずつ近付いていき、手を伸ばし、茂みの先を見た瞬間…

ガサガサッ…バッ!

それは西澤を飛び越えると、パトカーと佐野の間を走り抜けて去っていった。

「あっ、鹿だ。」

佐野は取って付けた様な驚きの表情を浮かべた。

「犯人は、鹿でした。そろそろ偽装の出来もどうでしょう?」

佐野のジョークは見事にかわされ、偽装を終えた彼等は午前0330に就寝した。

次の日、午前0600前に全員目が覚めたのは自衛官としては当たり前の出来事であったが、すぐに二度目の眠りについた。

午前1000、全員目が覚めると皆で偽装を取り外して山奥の一軒家を目指して車を走らせた。

しかし途中…

「あっ…止まって!」

佐野の突然の声掛けに、西澤は急ブレーキを掛けて大瀧は少し前に飛ばされた。

「いてぇ、どうしたよ佐野ぉ?!」

大瀧からの質問に答える間もなく、車を降りた佐野は木陰に座り込んでいる老人に声を掛けた。

「大丈夫…ですか…?その、い、生きてる方は貴方以外にはいないのですかね?」

人見知りの佐野が若干おどおどしく聞くと、老人は目を見開いて佐野を見ると道の先を指差して答えた。

「おぉ…自衛隊さんかい、はぁ…憎たらしいが今回ばかりはあんたら自衛隊さんの力を借りたいんだが…1つ頼んでも良いか?」

佐野は、車に乗ってる二人にまだ待ってる様に合図を送ってから老人の話に耳を傾けた。

「俺の家がこの先にあるんだが、婆さんがまだ家の中におってなぁ…今の俺ではもう我が家に行く事すら出来んくてな。ほれ、見てみろ~?婆さんの可愛い甘噛みの後がこんなにくっきりと俺の腕についてるだろ…ごほっ」

佐野はハッとした表情で老人の傷跡から顔に視線を戻した。

「俺の妻を、どうか楽にしてやってくれ…その後、家の前にある桜の木の前に俺と同じ場所に埋めてくれっ!その後の俺の家なら好きに使ってくれて良い…だから、頼む…この通りだ!」

老人は最後の力を振り絞って、頭を地面にこすり付けながら頼み込んだ。

「っ、分かりました…。引き受けます…その前に、1つ気になったのですが、貴方の子供に当たる方は一体どこへ…?」

老人はバッと顔を上げると、すべての憎悪を向ける様な表情で佐野を睨むが、すぐに力が抜けた表情で口を開いた。

「俺の息子は自衛官だった…でもなぁ、本当バカみたいに良い奴でよ…ゾンビとかいう意味の分からんもんは、まだ生きてる人間だなんて言ってたお偉いさん方の命令で、例え噛まれたりしようが救助を優先したんだよ…結果な、俺のこの…猟銃で頭を…この俺が、息子を俺自身がっ…殺しっ、ゾンビは…死んでんだよなっ!俺の妻だって…助けられなっ…うっ、あああぁぅああああぁぁぁ!!!」

泣き崩れた老人は急に泣き止むと、まるで弱っていたのが嘘の様に素早く猟銃を両手に取った。

「俺の生き様、そしてお前達自衛隊に幸福があらん事を願って俺の人生を、今!ここで止める!」

佐野は自らの前で起きている現状に脳が付いていかない事に悔しさを覚えながらも、震える足に力を込めて必死に老人の最期を見届ける覚悟をした。

発砲音は佐野には聞こえていなかった、この短時間でのあまりの衝撃に意識を保つ事自体難しかったからだ。

車から二人も思わず降りてくると、大瀧は老人が自らの頭を撃ち抜いた猟銃をすぐに取り老人の死体を警戒している。

「大丈夫か佐野…?」

西澤の言葉で我に帰ると、老人の死という現状に脳が追い付き大瀧の持っている猟銃を横目で見て言った。

「これから行く家の前に、ちょっとだけ仕事があるわ。」

パトカーのトランクを開けると、中には防弾チョッキや警察が生前使っていたであろう道具がいくつも入っていた。

「話は分かった…けどトランクに爺さんの死体を入れるのかよ?」

大瀧はちょっと嫌そうに言ったが、佐野の何とも言えない表情に「まぁいいや」と納得してなさそうに言いながらも老人の死体をトランクに詰めて、トランクに入ってて唯一使えそうだった防弾チョッキは西澤が装着する事になった。

「ははっ、これでゾンビに人気な西澤も、特に脂の乗りが良い腹だけなら守れそうだな!」

「俺の、腹肉は上質だからっ!」

と大瀧の言葉に対して負けじと言葉を返す西澤は、運転席に乗って二人が助手席と後部座席に乗ったのを確認すると一本道を進んでいった。

行き着いた先にあったのは、和風の手入れもそれなりに行き届いた中々に良い庭付の家だった。

「よし、とりあえず…お、あったあった。これが爺さんの言ってた桜の木ぽいね。」

佐野がポンポンと叩くその木は、春であればとても綺麗に咲き誇りそうな桜の木だった。

「お、これか。エンピ持ってきたから掘るか~」

秋の青空の下で三人は楽しく雑談しながら掘っていき、二人くらいは埋まりそうな大きさの穴を掘ると死体をそっと置いた。

「さて…と、後はこの家にいる婆さんの方だな。」

大瀧の言葉にすぐに察した二人は安全装置を解除し、先に窓の外から中を伺った。

すると、それは案外すぐに見付ける事ができた。

「あぁ、こいつか…見た感じ洋間っぽい作りの部屋にいる。窓を開けて音を立ててこっちに誘き寄せる感じでいこう。」

佐野はそう言うと、半開きになっていた窓をガチャガチャと立て付け悪そうに開けると、既にその物音で老婆のゾンビは呻きながらヨタヨタと近付いてきた。

「この婆さん、這い出してこれるかぁ?」

西澤は不安そうに呟いた。

「大丈夫じゃね?人の三大欲求は、睡眠欲、性欲、食欲だから本能に勝るものなんて他にな…ほら、来たよ来た来た!」

佐野の言葉に合わせる様に、ずるりと窓の外へ落ちたまでは良かったが、落下して当たり所が悪かったのかそのまま動かなくなってしまった。

「かなり衰弱してたんだろうな、ゾンビになってもこのくらいしか動けないんじゃ…あの爺さんも噛み付いてくるなんて思いもしないよな。」

大瀧はそう言うと、念の為にと工具で頭を殴った途端。急に足をばたつかせて呻き声を上げ始めた。

「言った側からっ…そんなに生きてたいなら、最期は爺さんの形見で終わらせてやるよ!」

そう言うと、佐野は猟銃をパトカーの中から持ってくると頭に焦点を合わせて撃つ瞬間。

老婆のゾンビはピタッと動きを止め、弾が当たると同時にまるでそれを待っていたかの様にして老婆のゾンビは息絶えた。

老婆と老人の死体は桜の木の元へしっかりと埋められ、三人はしばらくこの家を拠点として住む事に決めた。
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