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食べる
しおりを挟む「ケイは私の膝で良いですよね?」
「はぁ? ダメだ、ダメダメ!」
とても丁寧な口調ながら、僕の手は離さないソーマとは別の席へ座り、夕食が始まる。
今日のメニューは、ロースト…何の肉かな? それと、野菜のポタージュスープと、他には…とにかく、洋食の上手いモノがたくさんテーブルに並んでいた。
それもきちんと2人分。
日本での自分の夕食を振り返れば殆どが居酒屋メニューだったので、洋食のメニュー名には疎い。
仕事が終わって自宅の最寄駅に着くと、スーパーや他の店は閉まっていることが殆どだったのだ。
ちなみに恵斗の昼は社食で、AかBかCを選ぶだけなので、そこにメニュー名は出てこない。
Aは定食、Bは丼もの、Cは麺類なので、恵斗としては形態で選ぶだけなのだった。
「ソーマ、この夕食2人分だよね? 僕のこと説明したのか?」
「単に、《最愛》に会って一緒に住むことになったと伝えただけです。」
「最愛?」
「はい。」
答えたソーマの瞳が、一瞬キラリと光る。
「それから解呪されたことも伝えました。」
「全部報告を? いつの間に?」
「ん……ケイに解呪してもらって、夜が明けてすぐ。報告して、戻ってきてまたケイを抱きしめて寝たので……」
ソーマの手が恵斗に延びる。
恵斗はその手を躱しながら食事を進める。
「コレ何の肉? うまっ!」
「それは、闇トカゲのローストですね。闇堕ち肉はスパイシーで美味しいですよね。」
「病み持ち肉…病気は食べても大丈夫なものなのか?」
途端に食欲が失せるのは何故だろうか。
「病気? まぁある意味そうですね。闇堕ちすれば昼夜逆転して、人間も闇堕ちの呪持ちは隈が酷いですし…」
「ん? ヤミオチ?」
「はい。闇堕ちの呪は、暗闇を彷徨うのですよ。月の女神は肉をスパイシーに仕上げるので。」
「食べたら自分も闇堕ちしたりは?」
「大丈夫ですよ。ちょっと閨で元気に過ごせるくらいで。使用人が気を利かせたのでしょうね。」
僕は二階の寝室の仕上がりを思い出して赤くなると、その記憶を何処かへやりたくて一心不乱に目の前の料理を口に運んだ。
それから音を立てないように、皿に直に口を付けてスープを飲み干すと、
「シャワー浴びてくる。ソーマはごゆっくり。」
言って席を立った。
ソーマに背を向けて部屋を後にしようとすれば、ソーマが慌てて立ち上がった。
「あ! 明日、私の両親が田舎の領地からこちらへ到着するのです。ケイを紹介したいので、是非とも会ってやってください。」
展開の速さについて行けなくなりながらもとりあえず頷くと、僕は浴室へ向かった。
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