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たとえば、こんな出会い 6 ルイ視点
しおりを挟む会社の終業時間、田上と込角さんに声を掛けると、小会議室の申請を自分で受理して自分の考えを話した。
吉川さんと最近よく一緒にいることには気付いている2人だ。
吉川さんのことを《好きな人》だと表現して、何とか会う方法はないかと、目の前の2人に相談した。
まぁ、相談と言うには声が高かったけれど…
「よく決断しましたね、ルイさん。私個人的には、行ってあげていいと思います。」
先に口を開いたのは、この部署唯一の女性社員である込角さんだった。
「確かに、最近仲良いなって思ってましたけど、《好きな人》ってことは自分がゲイだとカミングアウトしたんですから。
そんな大告白聞いてしまえば、応援しない訳にいきませんもの。」
「え…」
込角さんの勢いに、私の方が言葉を失いそうになって、ついつい田上の方を見てしまった。
「俺が気になってるのはさ、その犯人の方だ。そんな事件を起こしておいて、なぜ捕まらないんだ?」
「アイツは、顔を見せないんですよ。行為に及ぶ時、必ず見せるのは背中なんです。」
「でも、周りは? 見ている人は居るハズですよね?」
「私の時は」
つい口から出てしまって、慌てて口を閉ざす。
今の一言で、私があの男の被害者であると、2人にはバレてしまったから。
ふぅ…
──仕方ない…
溜め息と共に決意すると、口を開いた。
「私も被害に遭ったのです。学生の頃…
その時は各駅停車です。終点までの1駅って、急に空くんですよね。
シートに顔を押し付けられて、伸し掛かられて、後ろを…突かれました。
驚いて放心状態になっている間に逃げられました。」
話しながら、自分が意外と平気だということに気付いた。
「ならば、車掌や駅員が顔を見ているのでは?」
「それが、『そんな不審者は見ていない』と。」
「でも、防犯カメラには映ってるはずですよね。」
込角さんは、バッグからノートPCを取り出すと操作を始める。
「何をしてるんだ?」
「あぁ、鉄道会社の防犯カメラデータにハッキングしてるんです。ルイさんの秘密は聞いてしまいましたからね。こちらもナイショですよ。」
タンッ!
「出ました。」
「よく出たな。」
「意外とね、最近のデータじゃなければアクセスがラクだったりするモンなんですよ。」
「言うね…」
込角さんは、私と田上に1つの動画を見せる。
それは、在りし日の、学生の僕。
震える手は、田上が握ってくれている。
下げられたデニムが膝の辺りに溜まった男が、腰を掴まれて後ろから何度も突き上げられている。
最後は体はだらりと脱力して、シートに放り投げられている。
犯人の男は、こちら(カメラ)を見る角度で振り返り、扉が開くと同時に去って行った。
「当時の技術とも言えますが、画像が粗いですね…となると…」
再びキーボードを叩き始める込角さん。
「出ました。痴漢が集う裏サイトに出てました。」
先程よりも少しアップになった動画だった。
「コレ、モザイク掛けてますけどすぐ外せますから。」
けれど、モザイクを外した顔は、大きな白い布マスクに色の入った丸メガネをしていて、人の顔の判別はできなかった。
「はぁ…それじゃ、弟を投入します。それから、これ以降、この件は私と田上さんでしますので、ルイさんは吉川さんの自宅へ向かってはいかがでしょうか。」
込角さんは、鞄の中からポーチを取り出し、中から1つのカギを出して渡してきた。
それから、走り書きのメモも一緒に。
「コレ、吉川さんの自宅のスペアと住所です。良きように。
田上さんは、一旦ここを出ましょう。私の家でも良いですけど、もう彼氏さんここに辿り着きますから、田上さんちにお邪魔させてください。
弟を召喚するのに、田上さんの住所を教えても良いですか?」
「あぁ。」
込角さんはPCを閉じて帰り支度をすると立ち上がる。
「では、出ましょう。」
そこで解散となる。
私は…会社から出るとあの路線に乗って、住所の場所を目指した。
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