お嬢様の身代わり役

325号室の住人

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カーテンコール(番外編) BL要素薄め

  エンド 1

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僕の名前はエンド。
月光の髪に碧の瞳という人々の暮らすこの国で、唯一の黒髪黒目。
僕らは周辺国と違って卵から生まれているのだけど、卵をお腹で育てた人が黒髪黒目だったからなんだって。

この珍しい色のせいか、僕には婚約者がいる。
明日の成人の儀が終わったら、僕はその方と婚姻を果たすんだ。

そんなことを考えていると、今日も落ちてきた。
月光色の鱗が腹の碧まで続くグラデーションの、凛々しい龍…

「エイド様、おかえりなさい。今日もまたダメだったのですね? お疲れ様です。」
「あぁ。」

龍の体から人の体に戻すと、エイド様は半ば不貞腐れながらも返事をする。
これは僕が物心ついてから続く、ある意味日課である。

エイド様の初恋の方が、遠い空のその上の、天空城にお住まいで…
今日も告白しに行って、そして落ちて帰ってきたのだ。

「でも聞いてくれ、エンド。ボクは今日、なんとかあ様を抱きしめることに成功したのだ。」
「え…」
「でも、とう様に母様は連れて行かれてしまった。惜しかった…」

目の前で子どものようにしょんぼりするエイド様。

母様と言えど、養子なだけで血縁関係はないと言うけれど…
素敵な大人の男性なエイド様が子どものようにするのはかわいいと思いながらも、僕の胸は何故かガサガサした。

「そういえば、ずっと伺いたかったのですが…」
「なんだ?」
「エイド様は、なぜ毎日空へ通っているのですか?」
「それは……」

何やらモゴモゴとして聞き取りにくい。

「何です?」

僕が首を傾げると、エイド様は…

──かわいすぎるだろ…
──あ、今のはもしかして、聞いてはいけなかったのでは?

エイド様は、一瞬頬を染めると僕に背中を向けてしまう。

「エイド様?」

回り込んで顔を覗き込むと、観念したような表情をして1つ溜め息を吐いた。

「笑わないで聞いてくれるかい?」

普段と違う雰囲気のエイド様に頷けば、エイド様は僕の腰を抱いてエイド様の邸宅へと誘った。






「場合によっては、少し話が長くなるかもしれない。」

エイド様が言うので、僕らは執務室のソファに並んで掛けた。

「実は…私は昔、大好きな母様に悩み事があることに気付いて、それで…その……母様を孕ませようと考えたことがあるのだ。」

エイド様は、後半かなり早口に捲し立てるように言い放った。

考えただけ? 妄想なら僕も何度もしたことがある。後ろが疼く夜更けは、エイド様をオカズに何度イッたことか…

「考えた…だけですか?」
訊ねれば、
「いや。生まれたままの姿で横たわる母様を前に、何もできず……『母様を孕ませようかと思ったのですが、記憶はあれど体はただの少年でした。』と言って、誤魔化した。」
「それって……」
「8つの頃だ。初めての孕みの儀を母様に施した時だった。天空城に入ってみて気付いた。私には龍として生きた記憶があったのだ。」

──記憶…

「けれど、エイド様は龍体になることができますよね?
…ということは、《記憶》だけではない、ということです!」
「そう思いたいが…」
「そうですよ!」

普段はとても立派な方なのに、何だか不思議だった。

「お話しは、それだけでしょうか?」
「いや…実はまだある。明日の、エンドの成人の儀の前に、話しておきたいことがある。」

エイド様は少しモジモジとしながら、僕の方をチラチラと見てくる。

──なんだろう…ちょっとっぽくない?

「なにか?」

僕が顔を覗き込めば、エイド様は1つ頷き、
「手を…! 手を握らせてくれないカッ…?」
「どうぞ。」
僕は、エイド様側の左手を差し出す。

──先程から、僕の中のエイド様のイメージがガタガタなのだけど?

差し出した手は、エイド様の手に上から下から挟まれた。

「柔らかいなフガッ…」
──言い方!

目の前の美男子が、だんだんダサい男子と同等に思えてくる。

その後、静かだなと思っていると、なんとエイド様はポロポロと涙を零していた。

──え… もう、この人何なの!!


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