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異世界 シャーシード国

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ゴリマッチョなシスターが、僕の刺繍を見ている。

「わぁ~、ステキ♪」
「シスター…かわいい布巾。ぼくコレ使いたい。」
「ボクだってぇ!」

するとシスターは、
「悔しいが、とても美しい花だ。これは何という手技なのだ?」
「刺繍のことですか?」
「ししゅ…? なるほど。実はお願いがあるのだが…
我々の孤児院は国からの援助もなく資金難なので、明日、貴族や王族からの下賜をバザーで売るのだ。
その…しかし状態の悪い物も多くてな。
修繕してバザーに出すものの、追いつかずに君が居たあの部屋のようなザマだ。
だから、君さえ良ければ、手伝ってくれないだろうか。」

ゴリマッチョシスターは頭を下げた。

「はい、わかりました。僕でお役に立てるなら。」
「ありがとう!!」
「…痛てて」

僕は、ゴリマッチョのパワー全開で骨が砕けるかと思うほどに両手を握られた。

「ありがとう。宜しく頼む。あ、そろそろ昼食の時間だな。君も一緒に食べると良い。」
「はい。」

僕もゴリマッチョシスターや子どもたちと一緒に手を洗ったりした。



「みんな、お待たせ。パンを持ってきたよ。」

突如、食堂に男性にしては少し高めの声が響き、小さい子から順番にそちらへ歩いて行くのが見えた。

「ホラ、一緒に貰いに行こう。」
「はい。」

僕はゴリマッチョシスターに促されて最後尾に並んだ。



ゴリマッチョシスターがパンを戴いてお礼のお辞儀をした時だった。

パンを配る側の人物から、思いもよらない声が掛かった。

「……シノダ…」

聞き覚えのあり過ぎる声に顔を上げれば、そこには、出会った頃の、でもちょっと色素薄めのリンジ先生がいた。

「…………リン?」

すると、リンはこちらへ駆け寄ってきた。

そして、
「シノダ! 本物のシノダだ!!」
と、僕をギュッと抱きしめてくれた。

「どうしてここに? 私が巻き込んでしまったのか?」
抱き締めながら問われる。

「あー…それは……」

答えようとしたものの、推測でしかないので言い淀むと、リンの体が気になってしまった。

日本で…その…抱かれた時の、力の強さがない。
だいたい、体は本当に細くて、腕も指も折れそうだ。

僕の心配そうな表情に、リンの方もちょっと苦笑いを返すと…

「母様。信じられませんが、夢の中でずっと一緒に過ごしてきた私の恋人に再会しました。
つきましては、ちょっと話したいのですが……」

振り返り、パンを手渡してくれていた、男にしてはゆったりとした服を纏っている方へ話しに行き、許可を貰ったのか、

「こっち。母様が家の馬車を使って良いって。」

僕はリンに腰を抱かれて、孤児院の外に駐車中の馬車の方へ向かうのだった。


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