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はぁ、はぁ、ねぇ、目的の町まで、後、どれ、くらい。
2日位だな。今のペースだと。
何で、こんな、険しい、道、行くのよ。
二人とも疲れすぎですよ?この程度の山道で息を切らすなんて。
つーかこの道はまだ歩きやすいだろ。人が通ってる後が残ってるくらいだ。
今までの舗装された道って、ありがたかったんだね。
そうね。普段気にもしてなかったわね。
▽
「悪いねぇ。一番手っ取り早いのが君に頼むことで」
「構いません。早く治療できるに越したことは無いので」
ゆっくりと目を閉じた不死鳥へ渾身の力を込めてかかと落としをお見舞いする。
鈍い衝撃と耳を覆いたくなる音。がっくりと不死鳥の力が抜け前のめりに倒れ込めば、髪を燃やしていた炎が彼自身を呑み込み一瞬で大量の灰へ。
灰に手を翳し、魔力を与えれば、その灰から手がおもむろに伸びてきて、先ほどとは打って変わって若々しい姿の不死鳥が出てくる。
少し心臓に悪い復活の仕方で……、少し驚いてしまいました。
「ありがとねぇ。最近魔力が付きかけてたんだけど自分じゃどうにも出来なくてねぇ」
そう言って指で頬をかいて、にへらぁと笑う。
不死鳥、その名の通り死なぬ鳥。ただし、魔力の自動回復が無く日に日に弱っていく存在で。
けれども死ねない存在で。復活の発動条件は魔力の枯渇か絶命である。
先程までの個体は弱り切り、自分で命は断てないが、復活に至るほど魔力を完全に消費していないというどっちつかずの微妙な存在になっていた。
故にこの手で……足で介錯よろしく絶命させたという事である。
絶命後に魔力を与えたのは復活を早めるため。そうでもしなければ平気で1日位かけてゆっくり復活するんですよこの鳥は。
「さて、では私は何をすればよろしいのでしょうか?」
「とりあえず熱中症のみんなにブレスを吐いて貰えるかな。僕の体を通して」
「わかりました」
一応言っておこう。何も分かってはいない。
ただ、神の使いたる神獣が理解できる存在とは思っていない。だからどんな不思議な事を言っても言う通りにすると決めているだけである。
「さぁて、さっきはわざわざ髪を媒体にしなきゃ出来なかったけど、今回はブレスを媒体にすればいいから楽だぞぉ」
身体を大の字に広げ、私と患者であるモンスターの間に立つ不死鳥。
「遠慮なくやってねぇ。どうせなら」
と言われたのでこちらも全力で。
全てを焼き尽くす地獄の業火、までは言いませんが死の世界を感じるくらいには威力がありますよ。私のブレスは。
思い切り息を吸い、いつぶりでしょうか、何かに向けて全力でブレスを吐くのは。転醒オーク相手の時はダンジョンを壊さぬよう気にして全力ではありませんでしたし。
全力で放った一切容赦の無いブレスは、不死鳥の体全部を覆い、後ろにいる患者をも呑み込む。
本当に大丈夫なんですかね……これ。
{不死鳥の尾の炎}
何やら小さく不死鳥が呟く声が聞こえましたが、状況を知らないモンスターは軽くパニックになり散り散りに逃げてますよ?
片足が千切れていたオークや、ようやっとここまで歩いてきた熱中症だったオーガなども、全力で元気に。
その辺りでモンスターも気が付いたようだ。ブレスに当たっていると超速で回復すると。
肺の中の空気を吐き切って、一度呼吸の為にブレスをやめる。
「いやぁ、いいブレスだねぇ。僕の助手にならない?」
そんな事を言いながら満面の笑みで出てくる不死鳥。すでに顔にはうっすら皺が。
「お断りします。私が仕えるのは魔王様だけですので」
「だろうねぇ。惜しいよ。凄く惜しい」
残念だね。なんて漏らして患者であったモンスター達の方を向き、
「今の炎に当たったもの達はもう大丈夫。自分の持ち場に戻りなー。まだ当たってないもの達は前に詰めてー」
なんて、ゆったりと言う。
言われた通りに、ぞろぞろと自分の居たダンジョンを目指し移動を始めるモンスター。
あ、戻ったらまた熱中症で……
「大丈夫だよぉ。何の為の陸のの処置で、何の為の水のの薬湯で、何の為の僕の治療だと思ってるんだい?」
少し背筋がゾクリとするような言い方で、低く、先ほどまでの炎とは真逆の冷えたような声色で、
「もう熱中症なんかで倒れないようにしっかり耐性付けてあげてるよぉ。……借りにも神獣だよ? 舐めないで欲しいねぇ」
と。
見くびるな。と。私たちと同じと思うな。と。圧さえかけているように聞こえてくる。
思わず警戒してしまう程に。
「ほらほら、まだまだ患者は居るんだから、続き続き」
たった今の空気をにへらと笑った事でかき消し、首を切れとジェスチャーしてくる不死鳥。
あれだけ大規模の私のブレスを回復魔法に変換するのは大変なのはわかりますが……、私にまた絶命させろと。
割と嫌な感触なんですけどね……あれ。
しかしやらねば、と私は、また大きく力を込めて、脚を振り上げるのだった。
*
唐突にばかげた範囲のブレスが地水空を貫く。
「うわぉ!びっくりしたー。この炎って言いなり龍のだよねー?」
「ちゅうか普通に建物吹っ飛ばしてんけど、大丈夫なん?」
「どうせ空のを介してるだろ。あいつの再生の炎は生き物以外にも作用する規格外だぞ」
麒麟の言葉が言い終わらぬうちに、ブレスに貫かれた建物がみるみる元通りに。
「まー、後で怒鳴るけどな。周り考えろってさ」
と麒麟が言ったそばから、2回目のブレスが地水空を貫いた。
2日位だな。今のペースだと。
何で、こんな、険しい、道、行くのよ。
二人とも疲れすぎですよ?この程度の山道で息を切らすなんて。
つーかこの道はまだ歩きやすいだろ。人が通ってる後が残ってるくらいだ。
今までの舗装された道って、ありがたかったんだね。
そうね。普段気にもしてなかったわね。
▽
「悪いねぇ。一番手っ取り早いのが君に頼むことで」
「構いません。早く治療できるに越したことは無いので」
ゆっくりと目を閉じた不死鳥へ渾身の力を込めてかかと落としをお見舞いする。
鈍い衝撃と耳を覆いたくなる音。がっくりと不死鳥の力が抜け前のめりに倒れ込めば、髪を燃やしていた炎が彼自身を呑み込み一瞬で大量の灰へ。
灰に手を翳し、魔力を与えれば、その灰から手がおもむろに伸びてきて、先ほどとは打って変わって若々しい姿の不死鳥が出てくる。
少し心臓に悪い復活の仕方で……、少し驚いてしまいました。
「ありがとねぇ。最近魔力が付きかけてたんだけど自分じゃどうにも出来なくてねぇ」
そう言って指で頬をかいて、にへらぁと笑う。
不死鳥、その名の通り死なぬ鳥。ただし、魔力の自動回復が無く日に日に弱っていく存在で。
けれども死ねない存在で。復活の発動条件は魔力の枯渇か絶命である。
先程までの個体は弱り切り、自分で命は断てないが、復活に至るほど魔力を完全に消費していないというどっちつかずの微妙な存在になっていた。
故にこの手で……足で介錯よろしく絶命させたという事である。
絶命後に魔力を与えたのは復活を早めるため。そうでもしなければ平気で1日位かけてゆっくり復活するんですよこの鳥は。
「さて、では私は何をすればよろしいのでしょうか?」
「とりあえず熱中症のみんなにブレスを吐いて貰えるかな。僕の体を通して」
「わかりました」
一応言っておこう。何も分かってはいない。
ただ、神の使いたる神獣が理解できる存在とは思っていない。だからどんな不思議な事を言っても言う通りにすると決めているだけである。
「さぁて、さっきはわざわざ髪を媒体にしなきゃ出来なかったけど、今回はブレスを媒体にすればいいから楽だぞぉ」
身体を大の字に広げ、私と患者であるモンスターの間に立つ不死鳥。
「遠慮なくやってねぇ。どうせなら」
と言われたのでこちらも全力で。
全てを焼き尽くす地獄の業火、までは言いませんが死の世界を感じるくらいには威力がありますよ。私のブレスは。
思い切り息を吸い、いつぶりでしょうか、何かに向けて全力でブレスを吐くのは。転醒オーク相手の時はダンジョンを壊さぬよう気にして全力ではありませんでしたし。
全力で放った一切容赦の無いブレスは、不死鳥の体全部を覆い、後ろにいる患者をも呑み込む。
本当に大丈夫なんですかね……これ。
{不死鳥の尾の炎}
何やら小さく不死鳥が呟く声が聞こえましたが、状況を知らないモンスターは軽くパニックになり散り散りに逃げてますよ?
片足が千切れていたオークや、ようやっとここまで歩いてきた熱中症だったオーガなども、全力で元気に。
その辺りでモンスターも気が付いたようだ。ブレスに当たっていると超速で回復すると。
肺の中の空気を吐き切って、一度呼吸の為にブレスをやめる。
「いやぁ、いいブレスだねぇ。僕の助手にならない?」
そんな事を言いながら満面の笑みで出てくる不死鳥。すでに顔にはうっすら皺が。
「お断りします。私が仕えるのは魔王様だけですので」
「だろうねぇ。惜しいよ。凄く惜しい」
残念だね。なんて漏らして患者であったモンスター達の方を向き、
「今の炎に当たったもの達はもう大丈夫。自分の持ち場に戻りなー。まだ当たってないもの達は前に詰めてー」
なんて、ゆったりと言う。
言われた通りに、ぞろぞろと自分の居たダンジョンを目指し移動を始めるモンスター。
あ、戻ったらまた熱中症で……
「大丈夫だよぉ。何の為の陸のの処置で、何の為の水のの薬湯で、何の為の僕の治療だと思ってるんだい?」
少し背筋がゾクリとするような言い方で、低く、先ほどまでの炎とは真逆の冷えたような声色で、
「もう熱中症なんかで倒れないようにしっかり耐性付けてあげてるよぉ。……借りにも神獣だよ? 舐めないで欲しいねぇ」
と。
見くびるな。と。私たちと同じと思うな。と。圧さえかけているように聞こえてくる。
思わず警戒してしまう程に。
「ほらほら、まだまだ患者は居るんだから、続き続き」
たった今の空気をにへらと笑った事でかき消し、首を切れとジェスチャーしてくる不死鳥。
あれだけ大規模の私のブレスを回復魔法に変換するのは大変なのはわかりますが……、私にまた絶命させろと。
割と嫌な感触なんですけどね……あれ。
しかしやらねば、と私は、また大きく力を込めて、脚を振り上げるのだった。
*
唐突にばかげた範囲のブレスが地水空を貫く。
「うわぉ!びっくりしたー。この炎って言いなり龍のだよねー?」
「ちゅうか普通に建物吹っ飛ばしてんけど、大丈夫なん?」
「どうせ空のを介してるだろ。あいつの再生の炎は生き物以外にも作用する規格外だぞ」
麒麟の言葉が言い終わらぬうちに、ブレスに貫かれた建物がみるみる元通りに。
「まー、後で怒鳴るけどな。周り考えろってさ」
と麒麟が言ったそばから、2回目のブレスが地水空を貫いた。
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