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まずは見た目を変えるか。
このような見た目は拙者の趣味に合わぬ。
彼が持っていた杖で地面を叩けば、彼の配属された屋敷は一瞬ぐにゃりと空間ごと歪んで。
立派な石垣のお城へと姿が変わる。
これでよし。
満足そうにうなずく屍霊王だったが後日、マデラとサキュバス達に抗議され、泣く泣く見た目を元に戻すのだった。
▽
「そう言えば僕、かか……神楽様のダンジョン以外に入るのは初めてなのです」
「おや、そうでしたか。ではこれも一つの勉強ですね。普段自分たちが紹介しているダンジョンが実際は、どんな中身なのか。書類上だけでは判断できない事も多いですよ」
「洞窟内だと天井の尖った突起が危なくて、背の高い方は大変そうなのです」
私の後ろを付いてくるツヅラオと会話しながら、ダンジョンの奥へと進む。
万が一冒険者に間違われて襲われないても、いつでも戦えるようにするためだ。
「冒険者の方々は基本的に頭防具を付けていますので、そこまで気にしないそうですよ。今度背の高い冒険者のヘルムを見てみるといいです。傷だらけですので」
「そうなのです? 全然気にしてなったのです」
そうこうしているうちに最奥のダンジョンマスターの元へ。
「久方ぶりかのう? 何用かね?」
「こちらにアイアンメイルが宝箱の中身として運び込まれませんでしたか?昨日の朝から今日までにかけて」
「うん? ……2つ届いていたような」
こちらはいつぞやのクレーマーがボコられて帰って来たダンジョンのマスターのヴォジャノーイ
見た目通りの老人のような口調でゆったりと答えた彼は、一度さらにダンジョンの奥の部屋に引っ込み、まさしくアイアンメイルを二つ抱えてくる。
「これでいいんじゃろ?」
「はい。ありがとうございます。少し確認しますね」
さっそく持って来て貰った装備を確認する。
肩の部分の裏側にしっかりと製造者の印が掘られてはいたが、お目当ての印ではなく肩を落とす。
「どうかしたのかい?」
「いえ、問題ありませんでした。また何かあればお願いします。失礼します」
頭を下げ、次のダンジョンへ。
まだ一つ目のダンジョンがようやく終わっただけなので、急がなければいつまでたっても帰れません。
ツヅラオの手を引いて、私はまた駆け出した。
*
「そろそろお昼にしますか」
「け、結構、は、は、ハード、なの、です」
午前中だけで2桁に届くダンジョンを回り、村に差し掛かった所でお昼を提案すると、
フラフラで尻餅をつくように石に座るツヅラオ。息が上がっていますね。
何がいいですか? と聞けば、取り合えず飲み物を、と言われたので買いに。
中央街からは離れたのどかな雰囲気の村で、綺麗な野菜や果物が売られていた。
「ありゃ。見ない顔だねぇ。何が欲しいんだい?」
そんな野菜や果物を眺めて見ていると、お店の人から声を掛けられて、
「飲み物は何かございませんか?」
「うち自慢の果物を使ったミックスジュースなんてどうだい?」
「ではそれを二つお願いします」
なんてやり取りをして、代金を払って飲み物を手に入れた。
さて、ツヅラオは大丈夫ですかね。
ちょこんと石の上に座るツヅラオの首筋に飲み物を当てれば、
「ひゃうっ!? もう! マデ姉! びっくりしたのです!」
少し飛び上がってこちらに向けて頬を膨らませ、抗議してくる。
あぁ、癒されますねぇ。
「ん、コク、コク、コク、ぷはっ。なにこれ滅茶苦茶美味しいのです!」
勢いですでに半分以上飲み干したツヅラオはその味に驚き目を丸くする。
「私のも飲みますか?」
「い、いいのです?」
あんなに美味しそうに飲まれてはもっと飲ませてあげたくなるというもので。
「構いませんよ。午後からもダンジョン巡りは続きますし、今くらいはゆっくり好きな物を楽しんでください」
「ありがとうなのです。マデ姉」
飲み物は確保したからいいとして、ご飯はどうしますかね。
なんて考えていると、先ほど飲み物を買ったお店の人がこちらへ来ているのを確認した。
おや?何事ですかね。
「あんたたち、ギルドの人達なんだって?うちらの息子たちもお世話になっとるからね。こんなものしかないけど良かったら持って行っておくんな!」
とまくし立てられ、手に押し付けられたのは、先ほどお店に売られていたずっしりとした実の果物の数々。
「ありがとうございます」
思わず頭を下げるも
「いいのいいの。うちらの方が遥かにお世話になってるからね。これからもよろしく頼むよ」
と言うだけ言ってお店の方に戻ってしまった。
結構な量ですし、これをお昼にしましょうか。たまには果物だけのお昼というのもいいではありませんか。
ツヅラオに大きなオレンジを渡し、オレンジにかぶりつく。
甘酸っぱい汁が口の中を満たし、肉厚の果実は心地良い触感で。
酸味と甘みの後に続く僅かな苦みが、動いて疲労の溜まった体に嬉しい。
手と口周りを果汁でベタベタにしながらも大満足で1つを食べ終えると、同じくツヅラオもベタベタになりながら完食し、次のを、とせがむ様な眼で見てくる。
まだまだある果物をツヅラオと共に楽しみながら、つかの間の休息を私達は堪能した。
午後、ダンジョンへ向かう前に川で手と顔をしっかりと洗って、私は再度ダンジョンへ向けて走り出した。
疲れと満腹感から、お昼寝を始めたツヅラオを負ぶって!
このような見た目は拙者の趣味に合わぬ。
彼が持っていた杖で地面を叩けば、彼の配属された屋敷は一瞬ぐにゃりと空間ごと歪んで。
立派な石垣のお城へと姿が変わる。
これでよし。
満足そうにうなずく屍霊王だったが後日、マデラとサキュバス達に抗議され、泣く泣く見た目を元に戻すのだった。
▽
「そう言えば僕、かか……神楽様のダンジョン以外に入るのは初めてなのです」
「おや、そうでしたか。ではこれも一つの勉強ですね。普段自分たちが紹介しているダンジョンが実際は、どんな中身なのか。書類上だけでは判断できない事も多いですよ」
「洞窟内だと天井の尖った突起が危なくて、背の高い方は大変そうなのです」
私の後ろを付いてくるツヅラオと会話しながら、ダンジョンの奥へと進む。
万が一冒険者に間違われて襲われないても、いつでも戦えるようにするためだ。
「冒険者の方々は基本的に頭防具を付けていますので、そこまで気にしないそうですよ。今度背の高い冒険者のヘルムを見てみるといいです。傷だらけですので」
「そうなのです? 全然気にしてなったのです」
そうこうしているうちに最奥のダンジョンマスターの元へ。
「久方ぶりかのう? 何用かね?」
「こちらにアイアンメイルが宝箱の中身として運び込まれませんでしたか?昨日の朝から今日までにかけて」
「うん? ……2つ届いていたような」
こちらはいつぞやのクレーマーがボコられて帰って来たダンジョンのマスターのヴォジャノーイ
見た目通りの老人のような口調でゆったりと答えた彼は、一度さらにダンジョンの奥の部屋に引っ込み、まさしくアイアンメイルを二つ抱えてくる。
「これでいいんじゃろ?」
「はい。ありがとうございます。少し確認しますね」
さっそく持って来て貰った装備を確認する。
肩の部分の裏側にしっかりと製造者の印が掘られてはいたが、お目当ての印ではなく肩を落とす。
「どうかしたのかい?」
「いえ、問題ありませんでした。また何かあればお願いします。失礼します」
頭を下げ、次のダンジョンへ。
まだ一つ目のダンジョンがようやく終わっただけなので、急がなければいつまでたっても帰れません。
ツヅラオの手を引いて、私はまた駆け出した。
*
「そろそろお昼にしますか」
「け、結構、は、は、ハード、なの、です」
午前中だけで2桁に届くダンジョンを回り、村に差し掛かった所でお昼を提案すると、
フラフラで尻餅をつくように石に座るツヅラオ。息が上がっていますね。
何がいいですか? と聞けば、取り合えず飲み物を、と言われたので買いに。
中央街からは離れたのどかな雰囲気の村で、綺麗な野菜や果物が売られていた。
「ありゃ。見ない顔だねぇ。何が欲しいんだい?」
そんな野菜や果物を眺めて見ていると、お店の人から声を掛けられて、
「飲み物は何かございませんか?」
「うち自慢の果物を使ったミックスジュースなんてどうだい?」
「ではそれを二つお願いします」
なんてやり取りをして、代金を払って飲み物を手に入れた。
さて、ツヅラオは大丈夫ですかね。
ちょこんと石の上に座るツヅラオの首筋に飲み物を当てれば、
「ひゃうっ!? もう! マデ姉! びっくりしたのです!」
少し飛び上がってこちらに向けて頬を膨らませ、抗議してくる。
あぁ、癒されますねぇ。
「ん、コク、コク、コク、ぷはっ。なにこれ滅茶苦茶美味しいのです!」
勢いですでに半分以上飲み干したツヅラオはその味に驚き目を丸くする。
「私のも飲みますか?」
「い、いいのです?」
あんなに美味しそうに飲まれてはもっと飲ませてあげたくなるというもので。
「構いませんよ。午後からもダンジョン巡りは続きますし、今くらいはゆっくり好きな物を楽しんでください」
「ありがとうなのです。マデ姉」
飲み物は確保したからいいとして、ご飯はどうしますかね。
なんて考えていると、先ほど飲み物を買ったお店の人がこちらへ来ているのを確認した。
おや?何事ですかね。
「あんたたち、ギルドの人達なんだって?うちらの息子たちもお世話になっとるからね。こんなものしかないけど良かったら持って行っておくんな!」
とまくし立てられ、手に押し付けられたのは、先ほどお店に売られていたずっしりとした実の果物の数々。
「ありがとうございます」
思わず頭を下げるも
「いいのいいの。うちらの方が遥かにお世話になってるからね。これからもよろしく頼むよ」
と言うだけ言ってお店の方に戻ってしまった。
結構な量ですし、これをお昼にしましょうか。たまには果物だけのお昼というのもいいではありませんか。
ツヅラオに大きなオレンジを渡し、オレンジにかぶりつく。
甘酸っぱい汁が口の中を満たし、肉厚の果実は心地良い触感で。
酸味と甘みの後に続く僅かな苦みが、動いて疲労の溜まった体に嬉しい。
手と口周りを果汁でベタベタにしながらも大満足で1つを食べ終えると、同じくツヅラオもベタベタになりながら完食し、次のを、とせがむ様な眼で見てくる。
まだまだある果物をツヅラオと共に楽しみながら、つかの間の休息を私達は堪能した。
午後、ダンジョンへ向かう前に川で手と顔をしっかりと洗って、私は再度ダンジョンへ向けて走り出した。
疲れと満腹感から、お昼寝を始めたツヅラオを負ぶって!
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