こちら冒険者支援ギルド ダンジョン課

瀧音静

文字の大きさ
58 / 75

陽が沈む前に

しおりを挟む
仙狐様仙狐様、人間がこの山を登って来てます。

はぁ? んなもん追い返しぃや。

でもでも、皆さんすっごい怖い顔です。正直近寄りたくないのですが。

はぁ、んならええわ。うちが行ってくる。

仙狐と呼ばれたその存在は、頭を抱えて山を降りていく。

いずれ人間に、神として崇められるその存在は、今の所、そのような空気は一切無かった。



 ツヅラオを背負って跳んで跳ねて、ダンジョンを巡って、陽はすでに傾き始め、午後に回ったダンジョンも二桁を超えて、少し木陰にて休憩中。

 降り注ぐ太陽の下で動き回っているため、汗びっしょり……というわけでもなく。
標高高い山にもダンジョンはあるので、そこで涼み……もとい凍えたり、洞窟の中はひんやりしていたりと意外と汗はかかないもので。

 問題があるとすればそろそろツヅラオの体力が限界というくらいだろうか。
昼寝をしていたとはいえ、普段の何倍も動き回っているのだから当然といえば当然か。

「ツヅラオ、辛いなら先に戻っても構いませんよ?」
「い、いえ、その、だ、大丈、夫、なのです」

 あまり大丈夫に見えないんですけどね。
と、一つ思いついたことが。

「ツヅラオ、念話は使えますか?」

立ち止まってツヅラオの方を向き、尋ねる。

「ね、念話なのです? やった事無いのです」
「私の魔力は感知できますね? その魔力に向けて、何か強く思ってください」
(こ、こうなのです?)

目の前でギュッと目を瞑ったその可愛らしい存在から頭の中に直接声が届く。

「しっかりと出来ていますね。ではツヅラオ、一つ頼まれて頂けますか?」
「は、はひ! 何をすればいいのです?」
「一度ギルドに戻り、どの程度回収されているのか教えて欲しいのです。今の所ダンジョンに配られた装備の中に該当するものがありませんでしたし、下手をするとダンジョンに運ばれた数が0の可能性があります」
「む、無駄足の可能性がある、ということなのです?」
「はい。なのでその場合は私も戻る事が出来るので。それに、全部回収し終えて数が足りない、となってもすぐに動けるように、というのも兼ねてですね」
「わ、分かったのです。……ちなみに、ここからだとギルドはどっちなのです?」

 私は無言でツヅラオの両肩に手を置いて、

「状況が分かりましたら、こまめに報告お願いします」

と伝えるだけ伝えて、彼をギルドへと転移させた。
結構魔力食うんですよね、これ。

*

 全身の毛穴が開き、景色がぐるぐると回って、全ての毛が逆立って、僅かに吐き気を覚えながら、僕はギルドへ戻って来たのです。
いや、あの、本当に気持ち悪いのです。
ギルドの入り口にはすでに戻って来ていた職員の皆さんと、その付近に置いてある今回回収するべきアイアンメイルがいくつも。

「お疲れ様なのです。現在幾つ位回収出来たのです?」
「おかえり、ってツヅラオ君だけかー。マデラさんはまだダンジョンを駆け巡ってるってところか」
「はいなのです。それで現状がどの程度集まったのか見てきてくれと言われたのです」
「戻って来た職員は大体半分で、数は35個だな。これから徐々に遠出組みも戻ってくるだろうし、意外と町にばっかりあるって印象だな」
「分かったのです。ありがとうなのです」

(ということらしいのです。マデ姉)

 頭を撫でられながら、僕は言われた通りにマデ姉に念話を飛ばしたのです。

*

 ツヅラオからの念話を受け取り、残りの個数を把握。そして町にばかりある印象というのは私も巡ってて思いましたよ。思いのほかというか、ダンジョンに無さ過ぎてですね。

 空振りを繰り返すうちに少し心が折れかけててですね。
どうせこのダンジョンも空振りだろう、とほとんど期待せずに入ったスライムちゃんのダンジョンでしたが……

「これでいいんだよねー?」

と持って来てくれたアイアンメイルは50個を超えていて、
お目当ての印の掘られた物は20個もあってですね。
一人で持ち帰れませんので、応援を呼ぶ為にツヅラオに念話をしながら、私はゆっくりと壁にもたれ掛かった。

*

「えぇっ!? 分かったのです。皆さんに伝えるのです」

 マデ姉からの念話を受け取り、びっくりするくらいの数がある事を職員の皆さんに伝えるのです。

「マデ姉からの報告で、『ゴブリンの巣 奥』に20個も装備があるらしいのです。一人では持ち帰れないからと応援をお願いされたのです」
「わぁお、そんなに固まってんのか。……てことはそこので全部回収だな」

 皆さんが回収してきた装備の数を数えて、ミヤジさんが言うのです。

「応援つってもあれだな。まず『ゴブリンの巣』を突破しないと奥には進めないし、応援に行けるのはある程度腕の立つやつじゃないとダメだな」
「? 冒険者じゃないのに戦わないとダメなのです? マデ姉はほとんど素通りだったのですよ?」
「あのな、マデラと俺らを一緒にするな。あいつ、ダンジョン入る時は威圧を飛ばしまくってるんだよ。マスターには効かないけど、その辺の通常モンスターをビビらせるくらいのを、さ」
「つまり、……マデ姉だから全く襲われ無いのです?」
「全くってわけじゃないが、まぁ、ほとんどだな。対して俺たちはそんなスキル持ってないから、しっかり突破しないとダメ。マデラだけがダンジョン担当なのの理由が分かっただろ?」

 最近結構マデ姉の強さの認識を改めてはいたのですが、まだまだ足りなかった様なのです。

「んじゃ、行くぞお前ら! 女性ばかりに肉体労働させてらんねぇ! マデラには手ぶらで帰らせるくらいの意気込みで行くぞ!」

 ミヤジさんの号令と共に、彼に続いて装備を整えた職員さん達が『ゴブリンの巣』を目指して出発したのです。

追伸
マデ姉は装備を10個ほど抱えて、ミヤジさんは両手にやられた職員を抱えて、ギルドに戻って来たのです。回収は完了したのですが、なんだか締まらないミヤジさん達だったのです。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

処理中です...