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いかほど?
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今すぐ立ち去りや! ここは人間なんぞの来る場所やあらへん。
そう声を山に響かせた仙狐は、それでもなお登ってくる人間に苛立ちを覚える。
何や急に、人んちの領域にどかどか踏み入りよって……
今度は声を響かせる事無く、彼女は直接人間に姿をさらして、こう叫ぶ。
あんたら何が目的や! 言うてみぃや!!
と。
▽
「屍霊王様、冒険者一行がこのダンジョンへ向かっているとの事です」
「ほう、実に楽しみである。どれほどの実力か」
「あまり期待なされない方がいいと思いますよ?」
報告を終えたパパラは今のダンジョンマスターの意向をしっかりと理解し、他のサキュバスたちにこう告げた。
「皆さん、今からくる冒険者達を、しっかりともてなしますわよ」
*
デタラメと呼ばれるSランクのダンジョンでも、特に狂っていると言われるダンジョンであるリリスの館。
そんなダンジョンのマスターが最近変わった事を聞き、今ならばもしかしたらクリア出来るか?
と淡い、甘い期待をしながら挑むは5人。
前衛職3人に後衛職2人。剣士、シールダー、拳士に魔法弓士と僧侶の非常にバランスの取れたパーティであった。
緊張が表情からも見て取れる5人は、ゆっくりと、ダンジョンの扉を開ける。
音も無く、静かに開いた扉の先に見えた光景は……
「「いらっしゃいませ、冒険者様ー」」
全員が給仕服に身を包み、ずらりと列をなして、冒険者達に向け一斉に頭を下げる光景だった。
冒険者一同、絶句である。
予想もしておらず、いくつか考えてあった作戦も一瞬頭から抜け落ちた。
が、すぐに皆意識を現実に引き戻し、瞬時に警戒態勢へ移ると、列の中から一人のサキュバスが。
「ダンジョンマスターがお待ちです。私共は戦闘の意思はございませんので、ここで無駄な体力や魔力を消費する事はオススメいたしませんわ」
そう答えて冒険者達を手招きし屋敷の奥へ。
サキュバス達の行動を訝しんでいた冒険者達であったが、本当に戦闘する気配も敵意も感じられぬため、警戒は解かぬまま、前のサキュバスの後に続く。
案内されたのはダンスホールだろうか。
かなり広く間取りを取られたその部屋の中央に佇むは屍霊王。
寒気すら感じるほど、周りの空気が違う事を肌で感じ、冒険者達は一気に臨戦態勢へ。
そんな冒険者達へ屍霊王が投げかけた言葉は、冒険者達の予想の外だった。
「入り口のサキュバス達はどうだった? そそる見た目であっただろう」
全員の目が、点になった。
しかし即座に剣士が切り込んでいく。初撃は頂いた、とでも言うように。
されど、その刃は屍霊王には届かず。いや、少し表現が合っていなかった。
刃が届かなかったではなく、そもそもそのような行動すら取れていなかった。
屍霊王に剣士が近づいた瞬間に、膝を折って動かなくなったのだ、……剣士が。
見れば屍霊王を中心に、なにやら禍々しく光る魔法陣がいつの間にか展開されていて、
「いかに予想外の事を言われようと、警戒を怠るのは感心せんな。このように、簡単に相手の思惑の中に絡めとられてしまうぞ?」
剣士を、瞳の無い眼窩で見下し、そう諭すように言う屍霊王に、何も言い返せない剣士。
「―――《氷雪の槍》!」
そんなやり取りを行っている敵に対し、弓を引き絞り、放った弓矢を魔法で氷の槍に変えた魔法弓士。
特に慌てず杖でその槍を弾く屍霊王を尻目に、拳士とシールダーが剣士を魔法陣の外へと引きずり出す。
「油断すんなっての!」
「悪い、その通りだ。気を付けろよ、あの魔法陣、入るととんでもない疲労が襲ってくるぞ!」
「んじゃ遠距離で戦うだけよっと!」
再度弓構える魔法弓士と、拳を構える拳士、そして、シールダーの後ろでなにやら詠唱を始める僧侶。
それを、本当にただただ屍霊王は見ているだけで。
「《暴炎の槍》!!」
「天駆衝!!」
「《神聖なる神の意思》!!」
炎渦巻く槍と、拳から放たれた超速の不可視の衝撃と、アンデッド系の弱点とも言える聖なる力を宿した魔法が屍霊王に襲いかかり……虚空へと消えた。
「「なっ!?」」
「残念、実に残念である。思うに貴様等、私の事を知らぬのだな。敵を知り、己を知ればという言葉があるが、よもやそれすら知らぬか?」
本当に残念そうに、頭を手で押さえて天を仰ぎ、その理不尽は言い放つ。
「私に対して魔法を放つという事は、だ。それは「この魔法をあなたの手で別の無害な魔法に好きに変えてください」と言っている事に等しく、魔法を上書きされたくなければ今の10倍の威力は必要だぞ」
虚空へ消えたのは、放った魔法に「ただし今すぐ虚空へ消える」と上書きされたためだと。
「もっとも10倍の威力になったら、書き換えではなく掻き消すに変更するだけではあるが」
全く面白くなさそうに響かせたその声は、冒険者達の心を半分ほど折った。
そう、半分ほど。
「――っ!! 取ったり!!」
一体いつ屍霊王の背後に回ったか、しっかりと狙いを定めて剣を振り下ろそうとした剣士は、
今度は膝をつくことは無く、ただ、床に横たわった。
「言い忘れていたが魔法陣の効果なぞ、私の意思一つで変わる。先ほどは疲労を与え、今のは意識を奪い去る。何度も安易に入らぬ事だ。いつ、命を奪う魔法陣に変わっているか分からんぞ?」
今度は、残りの半分も……折れた。
そう声を山に響かせた仙狐は、それでもなお登ってくる人間に苛立ちを覚える。
何や急に、人んちの領域にどかどか踏み入りよって……
今度は声を響かせる事無く、彼女は直接人間に姿をさらして、こう叫ぶ。
あんたら何が目的や! 言うてみぃや!!
と。
▽
「屍霊王様、冒険者一行がこのダンジョンへ向かっているとの事です」
「ほう、実に楽しみである。どれほどの実力か」
「あまり期待なされない方がいいと思いますよ?」
報告を終えたパパラは今のダンジョンマスターの意向をしっかりと理解し、他のサキュバスたちにこう告げた。
「皆さん、今からくる冒険者達を、しっかりともてなしますわよ」
*
デタラメと呼ばれるSランクのダンジョンでも、特に狂っていると言われるダンジョンであるリリスの館。
そんなダンジョンのマスターが最近変わった事を聞き、今ならばもしかしたらクリア出来るか?
と淡い、甘い期待をしながら挑むは5人。
前衛職3人に後衛職2人。剣士、シールダー、拳士に魔法弓士と僧侶の非常にバランスの取れたパーティであった。
緊張が表情からも見て取れる5人は、ゆっくりと、ダンジョンの扉を開ける。
音も無く、静かに開いた扉の先に見えた光景は……
「「いらっしゃいませ、冒険者様ー」」
全員が給仕服に身を包み、ずらりと列をなして、冒険者達に向け一斉に頭を下げる光景だった。
冒険者一同、絶句である。
予想もしておらず、いくつか考えてあった作戦も一瞬頭から抜け落ちた。
が、すぐに皆意識を現実に引き戻し、瞬時に警戒態勢へ移ると、列の中から一人のサキュバスが。
「ダンジョンマスターがお待ちです。私共は戦闘の意思はございませんので、ここで無駄な体力や魔力を消費する事はオススメいたしませんわ」
そう答えて冒険者達を手招きし屋敷の奥へ。
サキュバス達の行動を訝しんでいた冒険者達であったが、本当に戦闘する気配も敵意も感じられぬため、警戒は解かぬまま、前のサキュバスの後に続く。
案内されたのはダンスホールだろうか。
かなり広く間取りを取られたその部屋の中央に佇むは屍霊王。
寒気すら感じるほど、周りの空気が違う事を肌で感じ、冒険者達は一気に臨戦態勢へ。
そんな冒険者達へ屍霊王が投げかけた言葉は、冒険者達の予想の外だった。
「入り口のサキュバス達はどうだった? そそる見た目であっただろう」
全員の目が、点になった。
しかし即座に剣士が切り込んでいく。初撃は頂いた、とでも言うように。
されど、その刃は屍霊王には届かず。いや、少し表現が合っていなかった。
刃が届かなかったではなく、そもそもそのような行動すら取れていなかった。
屍霊王に剣士が近づいた瞬間に、膝を折って動かなくなったのだ、……剣士が。
見れば屍霊王を中心に、なにやら禍々しく光る魔法陣がいつの間にか展開されていて、
「いかに予想外の事を言われようと、警戒を怠るのは感心せんな。このように、簡単に相手の思惑の中に絡めとられてしまうぞ?」
剣士を、瞳の無い眼窩で見下し、そう諭すように言う屍霊王に、何も言い返せない剣士。
「―――《氷雪の槍》!」
そんなやり取りを行っている敵に対し、弓を引き絞り、放った弓矢を魔法で氷の槍に変えた魔法弓士。
特に慌てず杖でその槍を弾く屍霊王を尻目に、拳士とシールダーが剣士を魔法陣の外へと引きずり出す。
「油断すんなっての!」
「悪い、その通りだ。気を付けろよ、あの魔法陣、入るととんでもない疲労が襲ってくるぞ!」
「んじゃ遠距離で戦うだけよっと!」
再度弓構える魔法弓士と、拳を構える拳士、そして、シールダーの後ろでなにやら詠唱を始める僧侶。
それを、本当にただただ屍霊王は見ているだけで。
「《暴炎の槍》!!」
「天駆衝!!」
「《神聖なる神の意思》!!」
炎渦巻く槍と、拳から放たれた超速の不可視の衝撃と、アンデッド系の弱点とも言える聖なる力を宿した魔法が屍霊王に襲いかかり……虚空へと消えた。
「「なっ!?」」
「残念、実に残念である。思うに貴様等、私の事を知らぬのだな。敵を知り、己を知ればという言葉があるが、よもやそれすら知らぬか?」
本当に残念そうに、頭を手で押さえて天を仰ぎ、その理不尽は言い放つ。
「私に対して魔法を放つという事は、だ。それは「この魔法をあなたの手で別の無害な魔法に好きに変えてください」と言っている事に等しく、魔法を上書きされたくなければ今の10倍の威力は必要だぞ」
虚空へ消えたのは、放った魔法に「ただし今すぐ虚空へ消える」と上書きされたためだと。
「もっとも10倍の威力になったら、書き換えではなく掻き消すに変更するだけではあるが」
全く面白くなさそうに響かせたその声は、冒険者達の心を半分ほど折った。
そう、半分ほど。
「――っ!! 取ったり!!」
一体いつ屍霊王の背後に回ったか、しっかりと狙いを定めて剣を振り下ろそうとした剣士は、
今度は膝をつくことは無く、ただ、床に横たわった。
「言い忘れていたが魔法陣の効果なぞ、私の意思一つで変わる。先ほどは疲労を与え、今のは意識を奪い去る。何度も安易に入らぬ事だ。いつ、命を奪う魔法陣に変わっているか分からんぞ?」
今度は、残りの半分も……折れた。
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