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季節病
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突然の事に驚く人間達は、なるほど。
確かに配下の妖狐が言うように怖い見た目であった。
ぼろぼろの服に汚れだらけの顔、顔もげっそりと頬がこけており、彼女ですら少し身じろぎそうになった。
た、助けて、助けてくだせぇ。
助けを仙狐に求めるも、それに応じる義務は当然彼女にはない。
しかし、彼女の姿を見て、何故か安心した人間達の命を奪おう等と言う考えには至らず……
う、うちに迷惑かけへんねやったら好きにしいや。
と、思わず彼女が妥協してしまう程度には、人間達の見た目が酷かった。
▽
「それで? わざわざこちらまで出向いて来た訳を、教えていただきたいのですが」
「そ、そのぉ、……で、ですから。あのぅ……えぇと……」
もじもじと体を揺らすばかりで一向に訳を話そうとしない目の前のマスターに僅かに苛立ちを覚えるが、残念な事にこれでも彼は同じ種族の中では口数が多い方なので、とりあえずは待つ事にする。
一瞬意を決してこちらを向いたかと思えば、すぐに俯いてて遊びをはじめもじもじ。
そんな繰り返しをもうすでに20分ほどは繰り返していた。
早く内容を言ってくれた方がお互いに楽だろうに。私なら即座にそう考えるが、目の前の彼はそこまで考えないのか。
ようやく彼の口から出てきた、ダンジョン課に来た目的とは、
「ぼ、僕にはもう、……ダンジョンマスターなんて向いて無いんです! なので、……格下げをして貰いたくて!」
本人は叫んだつもりであろうその声は、実際はようやく聞き取れるレベルの声量であり、動きだけがなんともダイナミックな囁きとして私の耳に届いた。
*
スペクター
一般的には鎌を持った怨霊であり、物理攻撃が効かず魔法によって攻撃しなければダメージを与える事が出来ない。聖属性に弱いという特性を持つ強さで言えば下の方に位置するモンスターである。
目の前のこのマスターは鎌すら持ち上げられない程の子供のスペクターであるが。
「はぁ、一体どのような考えでそう結論付けたかを教えてください」
周りの視線が気になる。と言われ、防炎室の隣の空き部屋に案内し、そこで理由を聞くことにした。
「うぅ、だって、だって。ダンジョンの中のモンスターがみんな僕の事を狙ってくるんですよぅ?」
下克上を狙うモンスターに取っては当たり前ですね。見た目が子供の彼であればなおさら。
「こん棒や、斧や剣で僕の事を倒そうと襲ってくるんですよぅ?」
物理攻撃は全て体が透けるのでダメージなんて入らないじゃないですかあなたは。
「それにそれに、冒険者達だって最近急に挑戦する人が多くなったし、みんなして僕の事をイジメてるんですよぅ」
挑戦者が増えたのは主に冒険者達の意識が変わったからなのですが。それに、あなたも強くなるので悪い事では無いのでは?
「だからもう、僕マスターじゃなくて一般モンスターに戻って、壁の中に隠れて平穏な日々を過ごしたいんですよぅ」
残念ですが、あなたの代わりになるようなモンスターが居ない為却下です。
「えぇと、マスターになるという契約を結んだ際の事を覚えておられますか?」
「あの日から地獄が始まったんです。忘れてませんよぅ」
「では、自分の意思ではマスターを降りられないとの事項に関しては?」
「たった今忘れました。なので一般モンスターに戻してください」
この子は……。毎回雨続きの季節が明け、日差しが強くなるころに彼みたく大きくやる気が削がれ、マスターとして適当になってしまうモンスターは少なからず居ますが。
それでもマスターという地位はその程度では手放したくない、と普通はこの子のようには言わないものですが。
現に自分以外のモンスターが壊滅したスライムちゃんですら、ここまで弱音は吐かなかったですし。
「そうはいかない理由が3つあるので聞いてください。一つはそう簡単に代わりになるマスターが見つからない点。ですがこれは時間さえあれば現れるかもしれませんのでそこまで問題ではありません」
最初は曇っていた彼の顔が一気に明るくなる。
「次にあなたの新しい配属先の件です。様々なダンジョンをあなたが移動したことによる難易度の変更や種族間のわだかまり等、あなた一人の為に多くのモンスターが移動しなければならない可能性が出てきます」
明るかった表情に陰りが見える。
「そして最後に、あなたはあの墓場の地縛霊でしょうに。今の様にしばらくならば離れても平気なのでしょうが、ずっとあそこを離れるという事は出来ないはずですので、あなたを移動させることが出来ません」
「あ、いえ。本体は墓場にちゃんといますよ? 本体を少し千切って、分体としてここにきてます」
「それでも墓場を離れられないという事実には何も変わりはありませんよ?」
少し口をはさんできたが、特に意味は無く。
「よって、あなたを降格させるという提案は受け入れかねます」
「そ、そんな~」
地に手を着いて、落ち込んだ様子のスペクターですが、そもそもそのような提案をされたことが初めてなので、正直どう対応するのが正解か分かりません。
下手に前例を作れば、後から後から、なんてことも考えられるため、ここはひとつ。彼には我慢して貰う事にしましょう。
「あなたは今まで立派にマスターとして全うしてきたではありませんか。もっと自信を持ってください」
そう言って彼を抱き、頭を撫でれば、
「うー、…………わかりました。もう少しだけ頑張ってみます」
と頬を膨らませ、渋々と言った感じで呟くのだった。
確かに配下の妖狐が言うように怖い見た目であった。
ぼろぼろの服に汚れだらけの顔、顔もげっそりと頬がこけており、彼女ですら少し身じろぎそうになった。
た、助けて、助けてくだせぇ。
助けを仙狐に求めるも、それに応じる義務は当然彼女にはない。
しかし、彼女の姿を見て、何故か安心した人間達の命を奪おう等と言う考えには至らず……
う、うちに迷惑かけへんねやったら好きにしいや。
と、思わず彼女が妥協してしまう程度には、人間達の見た目が酷かった。
▽
「それで? わざわざこちらまで出向いて来た訳を、教えていただきたいのですが」
「そ、そのぉ、……で、ですから。あのぅ……えぇと……」
もじもじと体を揺らすばかりで一向に訳を話そうとしない目の前のマスターに僅かに苛立ちを覚えるが、残念な事にこれでも彼は同じ種族の中では口数が多い方なので、とりあえずは待つ事にする。
一瞬意を決してこちらを向いたかと思えば、すぐに俯いてて遊びをはじめもじもじ。
そんな繰り返しをもうすでに20分ほどは繰り返していた。
早く内容を言ってくれた方がお互いに楽だろうに。私なら即座にそう考えるが、目の前の彼はそこまで考えないのか。
ようやく彼の口から出てきた、ダンジョン課に来た目的とは、
「ぼ、僕にはもう、……ダンジョンマスターなんて向いて無いんです! なので、……格下げをして貰いたくて!」
本人は叫んだつもりであろうその声は、実際はようやく聞き取れるレベルの声量であり、動きだけがなんともダイナミックな囁きとして私の耳に届いた。
*
スペクター
一般的には鎌を持った怨霊であり、物理攻撃が効かず魔法によって攻撃しなければダメージを与える事が出来ない。聖属性に弱いという特性を持つ強さで言えば下の方に位置するモンスターである。
目の前のこのマスターは鎌すら持ち上げられない程の子供のスペクターであるが。
「はぁ、一体どのような考えでそう結論付けたかを教えてください」
周りの視線が気になる。と言われ、防炎室の隣の空き部屋に案内し、そこで理由を聞くことにした。
「うぅ、だって、だって。ダンジョンの中のモンスターがみんな僕の事を狙ってくるんですよぅ?」
下克上を狙うモンスターに取っては当たり前ですね。見た目が子供の彼であればなおさら。
「こん棒や、斧や剣で僕の事を倒そうと襲ってくるんですよぅ?」
物理攻撃は全て体が透けるのでダメージなんて入らないじゃないですかあなたは。
「それにそれに、冒険者達だって最近急に挑戦する人が多くなったし、みんなして僕の事をイジメてるんですよぅ」
挑戦者が増えたのは主に冒険者達の意識が変わったからなのですが。それに、あなたも強くなるので悪い事では無いのでは?
「だからもう、僕マスターじゃなくて一般モンスターに戻って、壁の中に隠れて平穏な日々を過ごしたいんですよぅ」
残念ですが、あなたの代わりになるようなモンスターが居ない為却下です。
「えぇと、マスターになるという契約を結んだ際の事を覚えておられますか?」
「あの日から地獄が始まったんです。忘れてませんよぅ」
「では、自分の意思ではマスターを降りられないとの事項に関しては?」
「たった今忘れました。なので一般モンスターに戻してください」
この子は……。毎回雨続きの季節が明け、日差しが強くなるころに彼みたく大きくやる気が削がれ、マスターとして適当になってしまうモンスターは少なからず居ますが。
それでもマスターという地位はその程度では手放したくない、と普通はこの子のようには言わないものですが。
現に自分以外のモンスターが壊滅したスライムちゃんですら、ここまで弱音は吐かなかったですし。
「そうはいかない理由が3つあるので聞いてください。一つはそう簡単に代わりになるマスターが見つからない点。ですがこれは時間さえあれば現れるかもしれませんのでそこまで問題ではありません」
最初は曇っていた彼の顔が一気に明るくなる。
「次にあなたの新しい配属先の件です。様々なダンジョンをあなたが移動したことによる難易度の変更や種族間のわだかまり等、あなた一人の為に多くのモンスターが移動しなければならない可能性が出てきます」
明るかった表情に陰りが見える。
「そして最後に、あなたはあの墓場の地縛霊でしょうに。今の様にしばらくならば離れても平気なのでしょうが、ずっとあそこを離れるという事は出来ないはずですので、あなたを移動させることが出来ません」
「あ、いえ。本体は墓場にちゃんといますよ? 本体を少し千切って、分体としてここにきてます」
「それでも墓場を離れられないという事実には何も変わりはありませんよ?」
少し口をはさんできたが、特に意味は無く。
「よって、あなたを降格させるという提案は受け入れかねます」
「そ、そんな~」
地に手を着いて、落ち込んだ様子のスペクターですが、そもそもそのような提案をされたことが初めてなので、正直どう対応するのが正解か分かりません。
下手に前例を作れば、後から後から、なんてことも考えられるため、ここはひとつ。彼には我慢して貰う事にしましょう。
「あなたは今まで立派にマスターとして全うしてきたではありませんか。もっと自信を持ってください」
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