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遅刻
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魔王からの手紙を読んだハーピィは、
こんな面白そうなものに参加しないわけにはいかない。
と、催し物感覚で塔から飛びたったが、鳥目故にまるで周りが見えず、魔王城への道が分からなくなり、
挙句に勢いよく飛び出したせいで塔の位置すら見失って、しょうがなく地に降りて陽が差すまで待つ事にした。
未だに転醒回数0回の彼女は、魔力を探知する、という行為がそもそも出来なかった。
▽
たった一頭の龍の登場。それだけのはずなのに戦況は傾いた。
馬鹿な、とリリスも吟遊詩人も驚愕する。マデラの実力を知るリリスですら見ている光景に思わず目を疑った。
何せ、苦戦したと聞いていた転醒トロールを翼爪の一薙ぎで戦闘不能に追い込み、こちらの攻撃などどこ吹く風と龍族の皮膚に弾かれる。
人型の時のマデラなど一体どれほど力が制限されていたのか……
そんなマデラの無双振りは、モンスターの行進を遅くするには十二分であり、動きさえ、囲まれさえしなければ側近もまた十分な戦力である。
トロールやゴーレム等の巨大なモンスターと、制空権を確保しているワイバーンにガーゴイルなど厄介なモンスターはマデラに丸投げし、その他の地上のモンスター達の相手をしていく側近は、突如として感じた悪寒に魔王城城門まで一気に引いた。
そして、夜とは思えぬ明るさが辺りを照らして、……それが、大軍の奥から飛んでくる巨大な火の玉である事を確認する。
なんだ、火の玉か、ここまで引いて損をしたかもしれない。と考える側近は大きな影に覆われた。
目の前で影を作っているのはマデラで、どうやら迫っている火の玉から守っているらしかった。
何を守っているか? 決まっている。城だ。
マデラの脇を抜けて側近が再び大軍への突撃を試みようとした時に、二人の頭上では魔王が若干の苦戦を強いられていた。
リリスと吟遊詩人に向かって空中へと飛んだはいいが、ガーゴイルに群がられ、なかなか思うように進めない。
闇を放てばリリスが反応して打ち消され、衝撃波は出しても防御力が何倍にも上げられたガーゴイルたちを僅かに仰け反らせる程度。
普段ならば問題なく文字通り瞬殺出来る相手だが、バフの恩恵を最大に受けているという事実がそうさせてくれなかった。
全く、煩わしい。苦戦など、一体いつ振りであろうか。
直接この大軍を扇動している存在を叩く事を諦め、一度地上に降りる。
ガーゴイル達もついては来るが、反応したマデラからブレスを貰えば、ようやく魔王から離れる。
「すまんな、助かった」
(おきになさらず)
しかしどうしたものか、マデラと側近で敵の数を減らしてはいるがやはり数の差は如何ともしがたく、戦闘不能に追いやった敵も時間が経てば、治癒魔法によりぞろぞろと戦線へ復帰してくる。
いかにマデラが無双と言えども押されている戦況が拮抗に変わっただけであるし、何か出来ないものか、と魔王は画策するが、視界に入るのは敵か城か大地のみ。
流石に自分の城をどうにかするわけには、と半ば変な方向に思考が寄っていた時である。
変化が起きた。……というか現れた。
「えらいおそうなったわ、堪忍な?」
時間にルーズなそのSランクのマスターは堂々と遅刻をして、大軍の前に着地をすれば、心地良い鈴の音を高らかに上げて、文字通り前線を吹っ飛ばした。
「「なっ!?」」
驚愕する敵味方一同だが、当の本人はこんなもんか、と煙管を吹かして煙を吐いて。
「魔王さん、これ、持ってきたで」
魔王の元へと投げたのは、魔王の記憶が入った刀で、かつて勇者だった時に魔王が使用していた武器であり、同じくそこに封印していた勇者だった時に女神から受け取った力を開放する。
瞬間、魔王の姿が消えた。
空中でそれを確認した、敵として唯一元勇者の能力を知るリリスは大軍へと通達する。
「全軍! 背後に注意なさい! 今の魔王様は、影を移動しますわよ!!」
リリスがそう叫び終わるが早いか、すでに大軍のあちこちで、断末魔が響いていた。
影から姿を現して、致命傷どころか絶命する傷を負わせ、また影に潜って別の影へ。
モグラたたきの穴ではなく影バージョンの魔王のその行動は、単純に強すぎた。
出てくる場所、不明。出てくる時間、一瞬。ダメージ、即死。
そんな理不尽な行動は、恐怖を伝播させ、士気を下げ、行軍を止める。
それを機に、マデラや側近、神楽は思い思いに大軍へ突っ込んで、それぞれまたも無双を開始する。
拮抗から優勢へ。次はリリス達が手札を切らざるを得なくなり、
「しょうがありませんわね、出来れば、巻き込みたくありませんでしたのよ?」
「まぁ、しょうがないね。ここまでして、負けるわけにもいかないから」
そう二人で言ってお互いに両手を絡め、
「おいで」「来て」「僕達の」「私達の」「「共感者達よ!!」」
二人で交互に、最後は合わせて、詠唱ではなく合図だったその言葉を受けて、大軍の最後尾にどでかい魔法陣が浮かび上がる。
その中から現れたのは……
「さぁて皆の衆、目指すは魔王の首、必ず打ち取り誉れとせよ!」
「いきなりステップ飛ばして魔王とか無理かも知んないけど、やれるだけやって暴れましょー!」
「油断すんなよ? つったって出来るわけないか。縮こまるなよ! 伸び伸びと、戦場を引っ掻き回すぞ!」
打倒魔王を目標とする、大勢の冒険者達だった。
こんな面白そうなものに参加しないわけにはいかない。
と、催し物感覚で塔から飛びたったが、鳥目故にまるで周りが見えず、魔王城への道が分からなくなり、
挙句に勢いよく飛び出したせいで塔の位置すら見失って、しょうがなく地に降りて陽が差すまで待つ事にした。
未だに転醒回数0回の彼女は、魔力を探知する、という行為がそもそも出来なかった。
▽
たった一頭の龍の登場。それだけのはずなのに戦況は傾いた。
馬鹿な、とリリスも吟遊詩人も驚愕する。マデラの実力を知るリリスですら見ている光景に思わず目を疑った。
何せ、苦戦したと聞いていた転醒トロールを翼爪の一薙ぎで戦闘不能に追い込み、こちらの攻撃などどこ吹く風と龍族の皮膚に弾かれる。
人型の時のマデラなど一体どれほど力が制限されていたのか……
そんなマデラの無双振りは、モンスターの行進を遅くするには十二分であり、動きさえ、囲まれさえしなければ側近もまた十分な戦力である。
トロールやゴーレム等の巨大なモンスターと、制空権を確保しているワイバーンにガーゴイルなど厄介なモンスターはマデラに丸投げし、その他の地上のモンスター達の相手をしていく側近は、突如として感じた悪寒に魔王城城門まで一気に引いた。
そして、夜とは思えぬ明るさが辺りを照らして、……それが、大軍の奥から飛んでくる巨大な火の玉である事を確認する。
なんだ、火の玉か、ここまで引いて損をしたかもしれない。と考える側近は大きな影に覆われた。
目の前で影を作っているのはマデラで、どうやら迫っている火の玉から守っているらしかった。
何を守っているか? 決まっている。城だ。
マデラの脇を抜けて側近が再び大軍への突撃を試みようとした時に、二人の頭上では魔王が若干の苦戦を強いられていた。
リリスと吟遊詩人に向かって空中へと飛んだはいいが、ガーゴイルに群がられ、なかなか思うように進めない。
闇を放てばリリスが反応して打ち消され、衝撃波は出しても防御力が何倍にも上げられたガーゴイルたちを僅かに仰け反らせる程度。
普段ならば問題なく文字通り瞬殺出来る相手だが、バフの恩恵を最大に受けているという事実がそうさせてくれなかった。
全く、煩わしい。苦戦など、一体いつ振りであろうか。
直接この大軍を扇動している存在を叩く事を諦め、一度地上に降りる。
ガーゴイル達もついては来るが、反応したマデラからブレスを貰えば、ようやく魔王から離れる。
「すまんな、助かった」
(おきになさらず)
しかしどうしたものか、マデラと側近で敵の数を減らしてはいるがやはり数の差は如何ともしがたく、戦闘不能に追いやった敵も時間が経てば、治癒魔法によりぞろぞろと戦線へ復帰してくる。
いかにマデラが無双と言えども押されている戦況が拮抗に変わっただけであるし、何か出来ないものか、と魔王は画策するが、視界に入るのは敵か城か大地のみ。
流石に自分の城をどうにかするわけには、と半ば変な方向に思考が寄っていた時である。
変化が起きた。……というか現れた。
「えらいおそうなったわ、堪忍な?」
時間にルーズなそのSランクのマスターは堂々と遅刻をして、大軍の前に着地をすれば、心地良い鈴の音を高らかに上げて、文字通り前線を吹っ飛ばした。
「「なっ!?」」
驚愕する敵味方一同だが、当の本人はこんなもんか、と煙管を吹かして煙を吐いて。
「魔王さん、これ、持ってきたで」
魔王の元へと投げたのは、魔王の記憶が入った刀で、かつて勇者だった時に魔王が使用していた武器であり、同じくそこに封印していた勇者だった時に女神から受け取った力を開放する。
瞬間、魔王の姿が消えた。
空中でそれを確認した、敵として唯一元勇者の能力を知るリリスは大軍へと通達する。
「全軍! 背後に注意なさい! 今の魔王様は、影を移動しますわよ!!」
リリスがそう叫び終わるが早いか、すでに大軍のあちこちで、断末魔が響いていた。
影から姿を現して、致命傷どころか絶命する傷を負わせ、また影に潜って別の影へ。
モグラたたきの穴ではなく影バージョンの魔王のその行動は、単純に強すぎた。
出てくる場所、不明。出てくる時間、一瞬。ダメージ、即死。
そんな理不尽な行動は、恐怖を伝播させ、士気を下げ、行軍を止める。
それを機に、マデラや側近、神楽は思い思いに大軍へ突っ込んで、それぞれまたも無双を開始する。
拮抗から優勢へ。次はリリス達が手札を切らざるを得なくなり、
「しょうがありませんわね、出来れば、巻き込みたくありませんでしたのよ?」
「まぁ、しょうがないね。ここまでして、負けるわけにもいかないから」
そう二人で言ってお互いに両手を絡め、
「おいで」「来て」「僕達の」「私達の」「「共感者達よ!!」」
二人で交互に、最後は合わせて、詠唱ではなく合図だったその言葉を受けて、大軍の最後尾にどでかい魔法陣が浮かび上がる。
その中から現れたのは……
「さぁて皆の衆、目指すは魔王の首、必ず打ち取り誉れとせよ!」
「いきなりステップ飛ばして魔王とか無理かも知んないけど、やれるだけやって暴れましょー!」
「油断すんなよ? つったって出来るわけないか。縮こまるなよ! 伸び伸びと、戦場を引っ掻き回すぞ!」
打倒魔王を目標とする、大勢の冒険者達だった。
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