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【後日談】
3 Ignis Nova②
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閉じられた扉を、Novaのメンバーが見つめる。
櫻井は本郷を追いかけようとも思ったが、掛ける言葉が見つかない。その場に立ち尽くし、ぎゅっと掌を握り締めた。
彼らの態度は、とても「かつて世話になったプロデューサー」に向けるものには見えなかった。何かある、櫻井はそう確信していた。
「Starのみなさんは、ずっとIgnisの人と活動されてたんですよね」
その場に居るStarメンバーに向けて、櫻井が声をかける。
「そうですね。と言っても、彼らの方が先輩でしたし、一年くらいではありましたが……」
「本郷さんとIgnis Nova、過去に何があったんですか?」
尋ねるも、答えはない。皆首を傾げたり、考えるような素振りを見せるだけ。
「うーん、正直、詳しいとこはあんま知らないんだよね。本郷さん、僕らには何も話してくれなくてさ」
「浩誠は何か知ってるんじゃない?」
「……詳しいことは知らねぇよ。良くも悪くも、昔のルカはあいつらに依存してたんだ。多分な」
櫻井の表情が曇る。それを見て、浩誠は面倒くさそうに顔を顰めた。
「昔の話だ。それに、Ignisはルカを捨てて海外に行ったし、ルカもお前を選んだんだろ」
「……俺たちの関係、知ってたんですね」
「あぁ、秘密にしてるつもりなんだっけ? バレバレだけどな」
浩誠が悪い笑みを浮かべる。
「ルカをよろしく頼む。あいつは、無茶しすぎるところがあるから」
その日の夜。櫻井は、本郷の部屋の前で、扉をノックした。
いつもなら、すぐにドアノブが回る。
けれど今日は、時間だけが静かに流れた。
「……誰だ?」
「ルカさん。俺です、来夢です」
名乗ると、短い沈黙が落ちる。言い淀むような息遣いが何度か聞こえた。やがて、扉は開かれないまま返答が来た。
「体調が優れないから……今日は、帰ってくれ」
過去に何があったか分からない。でも、本郷が傷ついてたこと、彼らが踏み込みすぎていることは分かる。
「……俺が守るから」
今、目の前にいる本郷を、過去に奪わせる気はなかった。
「今のルカさんには、俺がいる。あいつらと過去何があったって、俺が守るから」
扉越しに、はっきりと宣言する。暫くして、返事の代わりに、扉が開いた。
「悪い。昔のことは言いたくないんだ」
「良いですよ。聞きません。……だから、そばに居させて」
櫻井の言葉を聞いて、本郷はたまらず、櫻井に抱きついた。迎え入れた櫻井は、そのまま強く抱きしめる。
「来夢……ありがとう」
次の日、目が覚めると、本郷の声が聞こえてきた。どうやら、電話で誰かと話しているようだった。
「俺を迎えに来たんだって? 悪いけど、俺は行けないよ。……もう、大切なものが、できたからさ」
本郷の言葉に、櫻井は息を飲む。
「手放したくないんだ。頼むから、邪魔を、しないでくれ」
その後、数個言葉を交わした後に、本郷は電話を切る。そしてこちらに気づいた本郷が、恥ずかしそうに笑った。
「起こしちゃったか? 悪い」
「ん……」
櫻井は答えない。その代わり、起き上がり、両手を広げてみせた。本郷はすぐその意味を察する。
スマホを近くのテーブルに置いてから、櫻井の元へ向かう。その胸に飛び込むと、そのまま二人、ベッドに横になった。
どちらからともなく、口付けが落ちる。見つめ合う二人の視線は、確かな愛で満ちていた。
◾︎
(よし。とうとう言うんだ、今こそ)
本郷は、意を決してNovaの面々を呼び出した。報告の言葉も、質疑応答も、何度も心の中でシミュレーションして練習した。
それなのに、唇が震える。過去どんな局面よりも緊張する。本郷は、えいや、とついに言葉を発した。
「実は俺、……櫻井と付き合ってるんだ」
言い終わった後、心臓がどくんと跳ねた。
本当はもっと、ちゃんと説明する予定だったのが、頭が真っ白になって上手く言葉を繋げられない。みんなの反応を──そう顔を上げると、何故だかみんな、平然としていた。
「知ってるよ」
「バレバレだ」
「わかんないハズないでしょ。舐めてんの?」
「……へっ?」
驚いているのは、本郷だけだった。横で櫻井が、嬉しそうに笑っている。
「これで俺らも、公認の仲ですね。本郷さん」
抱き寄せ、口付けられる。その光景にさえもう誰も驚くことはなく──また、日常が過ぎていくのであった。
櫻井は本郷を追いかけようとも思ったが、掛ける言葉が見つかない。その場に立ち尽くし、ぎゅっと掌を握り締めた。
彼らの態度は、とても「かつて世話になったプロデューサー」に向けるものには見えなかった。何かある、櫻井はそう確信していた。
「Starのみなさんは、ずっとIgnisの人と活動されてたんですよね」
その場に居るStarメンバーに向けて、櫻井が声をかける。
「そうですね。と言っても、彼らの方が先輩でしたし、一年くらいではありましたが……」
「本郷さんとIgnis Nova、過去に何があったんですか?」
尋ねるも、答えはない。皆首を傾げたり、考えるような素振りを見せるだけ。
「うーん、正直、詳しいとこはあんま知らないんだよね。本郷さん、僕らには何も話してくれなくてさ」
「浩誠は何か知ってるんじゃない?」
「……詳しいことは知らねぇよ。良くも悪くも、昔のルカはあいつらに依存してたんだ。多分な」
櫻井の表情が曇る。それを見て、浩誠は面倒くさそうに顔を顰めた。
「昔の話だ。それに、Ignisはルカを捨てて海外に行ったし、ルカもお前を選んだんだろ」
「……俺たちの関係、知ってたんですね」
「あぁ、秘密にしてるつもりなんだっけ? バレバレだけどな」
浩誠が悪い笑みを浮かべる。
「ルカをよろしく頼む。あいつは、無茶しすぎるところがあるから」
その日の夜。櫻井は、本郷の部屋の前で、扉をノックした。
いつもなら、すぐにドアノブが回る。
けれど今日は、時間だけが静かに流れた。
「……誰だ?」
「ルカさん。俺です、来夢です」
名乗ると、短い沈黙が落ちる。言い淀むような息遣いが何度か聞こえた。やがて、扉は開かれないまま返答が来た。
「体調が優れないから……今日は、帰ってくれ」
過去に何があったか分からない。でも、本郷が傷ついてたこと、彼らが踏み込みすぎていることは分かる。
「……俺が守るから」
今、目の前にいる本郷を、過去に奪わせる気はなかった。
「今のルカさんには、俺がいる。あいつらと過去何があったって、俺が守るから」
扉越しに、はっきりと宣言する。暫くして、返事の代わりに、扉が開いた。
「悪い。昔のことは言いたくないんだ」
「良いですよ。聞きません。……だから、そばに居させて」
櫻井の言葉を聞いて、本郷はたまらず、櫻井に抱きついた。迎え入れた櫻井は、そのまま強く抱きしめる。
「来夢……ありがとう」
次の日、目が覚めると、本郷の声が聞こえてきた。どうやら、電話で誰かと話しているようだった。
「俺を迎えに来たんだって? 悪いけど、俺は行けないよ。……もう、大切なものが、できたからさ」
本郷の言葉に、櫻井は息を飲む。
「手放したくないんだ。頼むから、邪魔を、しないでくれ」
その後、数個言葉を交わした後に、本郷は電話を切る。そしてこちらに気づいた本郷が、恥ずかしそうに笑った。
「起こしちゃったか? 悪い」
「ん……」
櫻井は答えない。その代わり、起き上がり、両手を広げてみせた。本郷はすぐその意味を察する。
スマホを近くのテーブルに置いてから、櫻井の元へ向かう。その胸に飛び込むと、そのまま二人、ベッドに横になった。
どちらからともなく、口付けが落ちる。見つめ合う二人の視線は、確かな愛で満ちていた。
◾︎
(よし。とうとう言うんだ、今こそ)
本郷は、意を決してNovaの面々を呼び出した。報告の言葉も、質疑応答も、何度も心の中でシミュレーションして練習した。
それなのに、唇が震える。過去どんな局面よりも緊張する。本郷は、えいや、とついに言葉を発した。
「実は俺、……櫻井と付き合ってるんだ」
言い終わった後、心臓がどくんと跳ねた。
本当はもっと、ちゃんと説明する予定だったのが、頭が真っ白になって上手く言葉を繋げられない。みんなの反応を──そう顔を上げると、何故だかみんな、平然としていた。
「知ってるよ」
「バレバレだ」
「わかんないハズないでしょ。舐めてんの?」
「……へっ?」
驚いているのは、本郷だけだった。横で櫻井が、嬉しそうに笑っている。
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