Nova | 大人気アイドル×男前マネージャー

むぎしま

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【後日談】

2 Ignis Nova

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「あとの二人は向こうアメリカの仕事が忙しくてな。でも、俺たちだけで十分だろ」
 Ignis Novaの、メイン三人が日本に戻ってきた。その知らせを受けた本郷の気持ちは、正直複雑だった。考えた結果、会うことを拒否しようとすら思ってきた。
 なのに、そいつらは勝手に、Novaの寮に現れた。


 五年前、アイドルグループのStar Novaより少し先に、ダンスグループであるIgnis Novaがデビューした。プロデュースもマネージメントも本郷が務めた。
 そして四年前──Novaが軌道に乗り始めた頃、海外の大手事務所が、彼らを引き抜きにやってきたのだ。
 事務所はざわついたし、社長はその要求を跳ね除けるつもりだった。
 それでも。
「こんな弱小事務所にいるよりも、もっと大きな力を持つ環境に行くべきだ」
 そう、誰でもない、本郷自身が背中を押して、彼らを送り出したのだった。

 Ignis Novaのメンバー──とりわけ今回帰国した三人は、勢いがありすぎる連中だった。本郷にちょっかいをかけ、半ばいじめのように扱うことも珍しくなかった。
 ただ、あの頃の本郷はまだ若かった。愛に飢えていた本郷は、彼らの虐めを嫌がるどころか、強引に求めてくる三人に依存していた。
 強請れば温もりもくれた彼らは、心の支えでもあったのだ。

 ──今となっては、それらは本郷ルカの黒歴史と言ってもいい。


 寮の共有スペースには、運の悪いことに、Star NovaだけでなくL-Novaの三人まで集まっていた。
「何しに来たんだ、お前ら」
「そろそろ回収しようかなって思ってな。俺らの本郷ルカを、さ」
「はぁ?」
 本郷に近付いてくるのは、長いブロンドの髪を靡かせた、一番大きな身体のルイだった。本郷の隣に当然のように腰掛け、息が触れる距離まで顔を寄せた。
「へぇ、香水なんてつけるようになったんだ。前はもっと……俺たちの匂いが染み付いてたのにね」
「……は?」
 櫻井の怒りの声は、本人には届かない。しかし、Ignis Novaのリーダー、マサはその様子に気が付いて、意地の悪い笑みを浮かべた。
ルカ・・は俺らが三人で、仲良く可愛がってやってたんだよ」
「……ふざけるな。本郷さんは、俺だけの……」
「〝だけの〟? お前とルカは、ただのタレントとマネージャーって聞いてるけど。ルカ本人から、な」
 マサの視線がねっとりと本郷に向かう。何も言い返せないまま、本郷が視線を逸らした。

「本郷さんを回収するって言ってましたけど。どういう意味ですか?」
 三井が刺々しい口調で言う。
「決まってんだろ。海外連れてくの。お前らも来る?」
「はぁ? 勝手言うんじゃねぇ」
 浩誠も、マサに牙を向ける。Starの年長組二人から睨まれ、ため息をつくマサは、本郷の隣……ルイの反対側に堂々と座った。
「なんか、お前が居ねぇと物足りねェんだよ」
 本郷の耳元で囁く。その距離の近さに、櫻井はまた、眉をひそめた。

「マサ、ルイ。俺らも仕事があるんだから……一旦引くよ」
 入口から声を掛けたのは、Ignis Novaのメンバー、レイだった。背こそ高いが、細いからか、ほかの二人ほど威圧感はない。
「あー、めんどくせェ」
「そかそか、今日は四テレだっけ? 久々に木戸ちゃんに会えるかなぁ」
 ルンルンなルイと、気だるそうなマサを外に追い出すレイ。そして、振り返って、一度だけ本郷を見た。
 本郷の気まずそうな顔に、レイの瞳が少しだけ揺れた。そのまま何も言わず、その場を去った。


「本郷さん。なんなんですか、あいつら」
 男たちが出て行って、すぐに櫻井は本郷の元に駆け寄る。
「悪い、櫻井。乱暴な奴らでさ……」
 本郷は櫻井と視線を合わせようもしなかった。その姿に、櫻井は嫌な予感がした。
「……過去、何があったんですか?」
「……昔、俺が弱かった頃の話だ。今は関係ない」
 そう言い残して、本郷は扉を閉めた。
 ぱたん、という音だけが、共有スペースに落ちた。
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