真面目に生きたいのにジョブ遊び人って…ホンマもんの遊び人やん!

3匹の子猫

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第86話 ビアンカの運の反動

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ビアンカは王宮内にある牢に入れられていた。待遇はかなり広めの牢に1人部屋で、食事も3食まともなものがきちんと出るという悪いものではなかった。


しかし、アランがアーガイア鉱山へ連れて行かれて、3日目の夜何か空気が変わった。牢を巡回する兵士の様子がおかしいのだ。

『俺たち、ここに居ていいのか?上で何か騒ぎが起きてるようだぜ?』

『命令もなく、持ち場を離れる方が問題になるだろ?』

『何かあったの?』

『囚人には関係のない話だ!』


実際は、この時クーデターが起き、ビアンカを牢に入れた王が殺され、ビアンカを解放してくれる人間が誰もいなくなるという、重要な関わりを持つ出来事があったのだったが、ビアンカはまだ知るよしもなかった。


ビアンカの牢獄生活は、当初アランがアーガイア鉱山へ無事、到着したことを確認できるまでの10日程度と聞いていたのだが、2週間を越えても一向に出される気配はなかった。


『看守のおじさん!王様の話では、私はもうとっくに出される予定になってたはずなんだけど…どうなってるか知らない?』

『王様が亡くなられたからな…もう確認のしようがない。お前のことなんて、何の命令も残されてなかったしな。

諦めて、命令が下るまでそこで大人しくしてるんだ!』


『王様が亡くなった!?どういうこと?何があったのよ?』

『囚人には関係のない話だ!』


『ちょっと待って!教えてよ!!』


(王様が死んだ?病気でも持ってたの?元気そうに見えたけど…)


ビアンカには分からないことばかりだった。


次の変化が訪れたのは、それからさらに2週間ほど経過してからだった。

『この牢にいる者は、王族に害を及ぼす恐れのある者を捕らえております。もしくは、その恐れがある者を一時的に捕らえておく場所となっております。

現在、この牢には18名収監されており、男15人女3人となっております。』

『それは、気の強い元気な囚人が多くいそうだな!?我々帝国では、肉体も精神力もより強い者を求めている!』

『この女が、ここでは一番の若者で12歳となります。罪状は不明、前王の直々の命令でここに入れられていたようです。』


『帝国?何故ここに帝国の人間がいるのよ!?王が死んだことといい王宮で一体何があってるのよ?』

『かわいそうなお嬢さんは、何も知らないと見える?

お前ら王国は帝国の飼い犬になったのだ!そしてお前ら囚人は、新たに王になるユリウス王子から帝国へ捧げられるのだ!!

近いうちに帝国へ運ばれることになるから、楽しみにしておくがよい!』

『な、何よそれ!!?』

『その時が来れば、嫌でも分かる。』


この男こそ、帝国のゲバン大臣である。この時、帝国に連れていく囚人の人数を確認するために、各牢獄を回っていたのである。

これにより、馬車の手配や、部下の割り振り、食料の手配などを完璧にこなす当たりは優秀な大臣である。


それから4日後、ビアンカは牢の外に出ることが出来た。それは、自由になったのではなく、先日の帝国の男が言っていた通り、ただの帝国への連行であった…

狭い馬車の牢獄に約20人の女を詰め込み、馬車は出発した。


馬車の中の環境は最悪だった。窮屈に詰め込まれているため、座ることも叶わず、トイレも寝るのも、その狭く暗い空間の中で、立ったまますることになる。

1日に1回は水と僅かな食料の支給はあるが、狭い馬車の中、不衛生な環境で皆弱っていき、食事を取れなくなるものもいた。ビアンカは、アランに言われた「死ぬな」という約束を守るため、意地でも全部平らげ、決して今の状況にも諦めなかった。


王都を出発して、6日目の昼奇跡が起きた。

こんな所で聞ける筈のない、愛しいアランの声が聞こえてきたのだ。名前は名乗らず、何故か神の使徒を名乗っているが、自分を助けに来てくれたのは間違いないだろう。


鉱山に送られて1ヶ月とちょっとしか経ってないのに、どうやって?

人知れず出発したこの馬車に私がいることをどうやって知ったのだろう?どうやって追い付いて来たのだろう?多くの帝国の兵たちをどうしてるのだろう?


奇跡を幾つ起こせばそんなことが可能なのだろう?

でも、アランは約束通り迎えに来てくれた!そのことがビアンカには嬉しくて堪らなかった。


アランの口上の後、突然馬車が大きく揺れ、動かなくなった。

この時、奇しくもビアンカにできるだけ怪我をさせたくないと願いながら放ったアランの気功波は、その運から、ビアンカの乗る馬車の損害を他に比べるとかなり軽微なものとしてしまった。

そのことが、ビアンカを更なる窮地に追い込む原因になることは、アランも思ってもいなかった。

馬車を全て停止させられたゲバン大臣は、その優秀な頭で、この馬車の損害が軽微なことに直ぐに気付き、部下たちに指示を出す。

『この馬車は車輪を1つ付け替えれば、走れそうです。無事な車輪を1つ他の馬車から取ってきて、修理しなさい。あなたたちは、馬を元気な馬に付け替えなさい!』


こうして、的確な指示の中で素早く修理された馬車は、間を置かずに出発することとなったのだ。

『アランー!』

ビアンカの叫びは兵たちの声にかき消され、アランに届くことはなかった。

それから少し経った時、何の音か分からない音が聞こえたと思ったら、突然空気が変わり、先程まで遠くに聞こえていた兵たちの喧騒は全く聞こえなくなっていた。代わりに聞こえて来たのは、ゲバンの怒声だった。

『何だ!?あの攻撃は!!
我が100を越える精鋭たちが一瞬で…
…本当に神の使徒だとでもいうのか?

急げ!あの化け物に見つからないよう、国境を越えるんだ!!』


ビアンカは必死で叫んだ。
『アランー!私はここよ!助けてー!

皆も助かりたいなら叫びましょう!この馬車だけ気付かれず国境を超えたら大変なことになるわ…』

『神の使徒様ー!助けてください!!』

『使徒様お救いをー!』

馬車の中は助けを求める囚人の大合唱となった。

『煩いぞ!黙れ!!』

ゲバンは、囚人の態度にイライラしていたが、目の前に国境が近づくと、逆に落ち着きを取り戻し嘲笑いだした。

『無駄だったようだな…もう、国境は目の前だ!もう助けなど来ない!!諦めるんだな。』


『ゲバン様後方に奴が迫って来ております。』

『何!?しかし、もう遅い…お前ら俺の逃げる時間を稼げ!』

『『『ハッ!』』』


『何なのだ?あの蜥蜴は…これだけ飛ばしてる馬車があっという間に距離を詰められる!』

再び焦ってきていたゲバンたが、

『ゲバン様がモンスターに追われてるぞー!助けろー!!』

物凄い数の兵が次々と国境の砦から兵が飛び出てきた。



そして、とうとう国境の砦の中に抜けてしまうのだった。


『外の兵400名、雷の攻撃で全滅ー!!現在モンスターは外壁を登って上へ移動中!』

『上へ人員を集めろ!帝国側へは絶対に入れるなー!!!』

国境の兵の隊長の鬼気迫る指示が飛ぶ。


ここに来るまでの間に、ビアンカとアランがお互いを認識し、その存在を確認出来ていれば、ビアンカの運の反転は止まっただろう…

近くにいることはお互いに感じている。しかし、奇しくも一度も顔を合わせることが出来なかった2人…

それが2人にとって辛い運命を決定付けることとなるのだった。



『これは、長くは持たないかもしれん。急ぐぞ!!』


ゲバンは国境を越えしばらく行くと、一度馬車を止めさせ、周りの木と同化させた秘密の道の入り口を手探りで探し出す。

これはダンジョンで発掘された魔道具を利用した装置で、周りの風景に紛れて特定の存在を全く認識できなくする装置である。

この装置によって、この先に本来ある道を誰にも認識することが出来なくなっているのだ。ここに道があることを知っているゲバンですら、手探りで探さなければ見つけられないほどの精巧なもので、知らなければまず見つけることは叶わないのだ。


馬車がその道に入って行き、逃げ切ったことを確信したゲバンはほっと一息を入れるのだった。


『くそっ!何だったんだ?あの化け物蜥蜴とそれに乗る神の使徒…皇帝陛下に何と報告するべきか…』

ゲバンの立場からすると、今回のアランとのやり取りは完全に完敗である。

1000人近い自由に出来る実験素材を得たはずだったのに、連れてこられたのは僅か20人たらず…それを得るために失った兵の数は約1300人。割りに合うはずもない。


さらに、王国の民に今回のことが全てバレたのだ。ユリウス王子の求心力は、只でさえ少なかったのに今回のことで致命的になりかねない…

王国はあの神の使徒のせいで流れが変わってしまった。
しばらくは王国からは手を引くべきかもしれん…


それから数十分、馬車は帝国の秘密の実験場に辿り着く。

ビアンカたちは、そこでようやく馬車から降ろされることになる。

『ヒョッヒョッヒョッ…初めまして。私はあなたたちの親になる【グロクテス博士】です。ヒョッヒョッヒョッ…』

『何?あの気持ち悪いお爺さん…』

『まずは、理性を無くしても私の言うことを何でも聞くように訓練をしましょう。この気持ちよくなれる薬を皆さんに飲ませます。ヒョッヒョッヒョッ…』

そういうと、周りの兵たちはビアンカたちを囲み薬を飲ませようとしてくる。

『体当たり!』
ビアンカは、スキルを使い薬を飲ませようとした兵を吹き飛ばす。

『ヒョッヒョッヒョッ…今回の子供には、元気な子供が混じってますね♪いつまで続くか楽しみですね…ヒョッヒョッヒョッ…』


しばらくは暴れて抵抗していたが、とうとう兵たちに捕まり無理やり薬を飲まされる。確かに気持ち良くなり、力が抜けてくるが、これ以上の快楽をビアンカは知っている!

薬を飲ませたことで油断している兵の剣を奪い、

『スラッシュ!』

斬撃を飛ばしグロクテスを斬ろうとするも、兵たちに防がれる。

すぐに兵たちに囲まれビアンカは押さえつけられる。

『ヒョッヒョッヒョッ!これはこれは…あの薬を飲んでもこれだけ自我を保って、動ける人間は初めてです。ヒョッヒョッヒョッ…これは、とんでもない逸材かもしれませんね!?』


『本当か?この女なら、実験に成功出来そうか?それならば今回の損害も目を瞑ることが出来る!』

ゲバンが息巻いて言ってくる。


『ヒョッヒョッヒョッ…分かりません!しかし、可能性は今までで一番高いのではないかと考えております。』

『そうか、グロクテス博士…必ず成功させてくれ!期待してるぞ!!』


(実験?これから一体何をされるの?
…アラン…怖い…
…助けて……早く来て。。)



ビアンカの意識は徐々に失われるのであった…


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