真面目に生きたいのにジョブ遊び人って…ホンマもんの遊び人やん!

3匹の子猫

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第89話 再会する二人

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俺は扉の先の通路を1人進んでいた。


あれから、敵の兵士は見かけない。入り口付近を守っていた兵士は全員倒していたようだ。

通路の先には螺旋階段のように下りと上りの螺旋の坂道があった。俺は迷わずに下行きを選んだ。

入り口と崖上との距離を考えると上はおそらくは、1階層分しかスペースは無い筈だ。上は、ここで働く兵士のためのスペースなのではないかと予想したのだ。

それに、こういうのは深く潜るほど重要な施設があるのが定番だからだ。


坂を下るとそこには、闘技場の裏側にでも迷い込んだのかと思うくらいに、多くのモンスターたちが広い通路の両側にある大きな檻に入れられていた。

狼のモンスターや、猫のモンスター、猿のモンスターなどバラエティーに富んだモンスターたちが大量に収監されていた。

『何なんだ?これだけの施設を作って、このモンスターたちを何に使うんだ!?

侵入者の撃退用?…にしては、俺を見てもチラッと見るだけで大した反応もしない。。』


そのモンスターの檻の通路を抜けると、再び下に降りる螺旋の坂道が待ち構えていた。


(結局何事もなく通り抜けることが出来たな。最初の兵士以外敵との遭遇が全くないのも逆に不気味だ…)


その坂道を下ると、今度も通路の両側が牢になった通路だった。先ほどとは違うのは、その中にいるのが、モンスターではなく人間だということだ。

牢の中の人間は1つの牢に1人入れられており、その牢の数からすると中の人間の数は圧倒的に少なかった。おそらくは、俺が救った囚人たちを詰め込む予定だったのだろう。


俺は、ビアンカもここにいるかもと期待しつつも、敵が潜んでいないかを疑いながら慎重に進んでいたが、特に牢に捕まっていると見せかけて襲ってくるような敵は紛れていなかった。

そして、この牢にはビアンカの姿は見当たらなかった。


『俺は、君たちを助けに来た。お下げ頭をした、ビアンカという俺と同じくらいの少女を知らないか?』

牢の中の人間に声を掛けるが、皆一様に反応すらせずボーッとしているか、ブツブツ何かを呟いていたり、中には俺を見て、『もっと薬をちょうだい!』と叫ぶ人間もいた。


(薬を使って、自由を奪ってるのか?しかし、何の目的で?

ビアンカも薬を使われているんじゃないのか?急がなければ…ビアンカどこにいるんだ…)


俺は通路を駆け抜け、再び現れる下へと続く螺旋坂道を降りていく。

階段の下には少し大きめの扉があり、その扉を開くと、そこには何かの実験をするための施設のようで、大きな牢が2つ並べられていた。

1つの牢には何匹かの狼のモンスターが入れられており、何匹かは既に死んでいるようだった。

もう1つの牢には手術台のような台の上に、裸のビアンカが寝せられており、その牢の周りには、7人の男たちが囲んでいた。


『ビカンカ!!』

俺が大声を出したことで、俺の存在に気付いた男たちは一様に驚いた顔をしていた。


『その声は…!…どうやってここが分かったのだ!?お前は本当に神の使徒だとでもいうのか?』

取り乱しているのは、ゲバン大臣である。


『ゲバン様、グロクテス博士、危険です。奥にお下がり下さい。』


5人の兵士たちが俺との間に広がる。

『お前がゲバン大臣か!?
貴様!!ビアンカに何をしたー!?』


俺は、そこにいるビアンカの姿に怒りを覚えていた。何故、男7人に囲まれ裸でそこに寝ているのか?薬付けにしたのは抵抗をする力を失わせるためなのか!?


ゲバン大臣とグロクテス博士と呼ばれた男は、返事をすることもなく、部屋の奥の壁一面に敷き詰められた鉄格子の奥に逃げ込んでしまった。

そこから、こちらの様子を伺っているようだ。


俺は、ビアンカを救うために、目の前の邪魔な5人の兵士と対峙する。

5人程度なら、この2日の間ずっと戦ってきている。恐れることもない。俺は囲まれないようにだけ気をつけ、1人づつ確実に片付けていく。

多少の傷なら負ったとしても、吸血のナイフで回復出来るので、怖がらずに戦えるのだ。マジックバッグには、エリーの尻尾も入っているのも安心材料だ。

俺は時間にすると1分ほどで5人を片付けてしまった。急いでいたため、魔法剣を使い防御している剣ごと、相手を切り裂いて回ったのだ。


『お前は何なのだ…!?何故その若さでそんな強さを持っているのだ!?』

ゲバンは、俺に向けて吠える。

『俺の強さなんてどうでもいい!それよりもお前らはビアンカに何をした!?』


俺は急ぎ、ビアンカの元に近づく。

ビアンカは檻の中で寝ているのだが、非常に苦しそうな顔をしていた。そして、時折小さくうめき声をあげていた。


『ヒョッヒョッヒョッ…その娘は今まさに生まれ変わろうとしているのですよ!』

今までずっと黙っていたグロクテスが説明を始めた。


『その娘は私の研究の素体となったのです。本来はもっとゆっくり調教していきたかったのですが、ゲバン大臣が成果を急がれてるもので、今日決行したのです。

本意ではなかったですが、こうなるとそれで良かったのかもしれません。その娘は今までで最高の素材です!きっと実験は進んでくれる筈です。ヒョッヒョッヒョッ…』


『何を訳の分からないことを言ってる!?実験?ビアンカに何をしたんだ!?』

『ヒョッヒョッヒョッ…
私の研究とは、「人間」と「モンスター」の融合です!』


『なっ!?そんなこと、この世界の文明では不可能に決まってるだろう!!そんなふざけたことにビアンカを…』

『ほう…ヒョッヒョッヒョッ…
君はそこそこ賢いようですね?

そう!この世界の文明だけでは、実現不可能なことです。しかし、そこに私の力が加われば、可能となるのです。

私のジョブは「科学者」。スキルに「結合」というスキルがあるのです。』

『なっ!?科学!?この世界に科学の概念を活用出来るというのか?しかし、たとえ無理やり結合させることが出来ても相性の良くないものを無理やり結合しても、「拒絶反応」が起きるだけだろう!?』

『ヒョッヒョッヒョッ…
本当に君は何者ですか?それだけの情報でそこまでの結論に辿り着けるとは…!?この世界の知識のレベルを越えた存在のようですね…』

『まさか…既にビアンカにモンスターを結合したのか!?』

『はい。その娘にはダイヤウルフと結合しました。今のところは、落ち着いておりますが、そろそろ本格的に結合が始まり拒絶反応が始まる頃だと思いますよ。ヒョッヒョッヒョッ…』


『何だと!?ふざけるな!!人の大事な婚約者に何てことしてくれてるんだ!!すぐに結合を解除しろ!!!結合のスキルがあるなら「分解」のスキルもあるんだろ!?』

『ヒョッヒョッヒョッ…確かに分解のスキルはあります。しかし、そんなこと私がする筈もないでしょう?私はその娘がモンスターと一つになり、生き残ることを心から望んでいるのですから…

しかし、結合という言葉から分解という概念に辿り着くその頭脳…やはりおかしいですね。君はどうやら、私と同じように別の世界から生まれ変わった人間なのではないですか?』

『なっ!?お前も転生者なのか?それなのに、そんな非人道的なことをしているのか?』

『ヒョッヒョッヒョッ…逆ですよ!

前の世界の方が私のしたいことを、やれ人道的・倫理的な問題がとか、神への冒涜だとか、訳のわからない理由で邪魔ばかりしてくるんですよ!

戦時中は私のことを天才だと、褒め称えていた癖にね…』


『まさか…前の世界でもマッドサイエンティストだったのか?』


『今も昔も私はただの純粋な科学者だっただけですよ…それを他人がどう評してるかは大した問題ではないのですよ。

ただ私のしたい研究に打ち込める環境があるかどうかだけが問題なのです!』



『うぎゃーーーーーーーー!!!!!!!』


突然ビアンカが目を大きく見開き、全身を真っ赤にしながら、暴れ出した!

『ビアンカ!?大丈夫か??

グロクテス博士、頼む!同じ転生者のよしみで俺の婚約者を助けてくれないか?』


『ヒョッヒョッヒョッ…始まったようですね?

よしみも何も君とは赤の他人です。むしろ、敵として目の前に現れた存在ではないですか?

君の婚約者に生きて欲しいのでしたら、私の実験の成功をただただ祈りなさい!』


こういうタイプの人間は、もっと自分の興味深いものを提示出来ねば、考えは変わることがないことは知っていたが、俺には何も提示できるものがなかった…


『グロクテスー!!ビアンカに何かあったら必ず貴様を殺す!絶対に許さないからな!!!』

そうグロクテスに言い放つと、俺はビアンカを囲んでいる檻を魔法剣で切り裂き、暴れているビアンカを強く抱き締めた。


『ビアンカ!やっと会えた!!会いたかった…

なのにこんなところで絶対に死ぬな!愛してる!!愛してるんだ…』



俺には苦しんでるビアンカの前に、ただ声を掛けることしかできないのだった…
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