ボッチ英雄譚

3匹の子猫

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第14話

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 火は瞬く間に部屋の天井に燃え移っていきます。


「どうする?死んじまったら全て終わりだ!今なら魔法を解除すれば俺らに捕まって、奴隷として幸せに生きていけるぜ!?それともそのまま自殺しちまうか?」


「ウルサイ!!」


とは言ったもののこれは不味いわね…魔法を解除しても私1人ではあの男たちを倒すのは難しそう。ゆっくり悩んでる時間もなさそう…

どうしよう…どうしよう…



「すまなかったな…」


「カッシュ!大丈夫なの!?」


気絶したかと思っていたカッシュが起き上がっていました。



「あー!ちょっと雑魚だと思って油断した。すまなかった!」


「良かった!キースも起きて!!緊急事態よ!!!」


「うぇ…?緊急事態!?
って何だこりゃ!?部屋が燃えてる!燃えてるぞ!?」


「おっ!起きたか!!キース、酒は残ってるかもしれないが、動けそうか?」


「あー。頭は何だかガンガンするが動けはするようだ。それよりもこれは一体何が起きてるんだ!?そこのおっさんたちは誰なんだ!?」


「今は細かく説明をしてる暇はない!奴等は敵だ!俺たちはこれから奴等を返り討ちにする!!

ニナ、合図と共に魔法を解除してくれ!キース、ニナの魔法の解除と共に奴等に矢を浴びせるんだ!あとはいつも通りだ!!」



「おっ!?もう1人も起きちまったか!?あいつら何かをするつもりみたいだぞ!!お前ら警戒しろ!」


「おう!」


 その瞬間炎の壁が消えました。そのタイミングに合わせて事前にキースが放っていた矢の嵐の技が男たちを襲いました。炎の壁が目隠しになっていたので、男たちは反応しきれません。

この技は、本物の矢の回りに無数の風の矢が並走するのです。1つ1つの矢は本物の矢に比べると威力は弱いけどその数は驚異です。

風の矢は男たちの体に次々と刺さりました。

そして本物の矢は男たちの一人の喉元に突き刺さり、絶命させました。


突然の矢の嵐に驚いていた男たちは、気づけばまた1人倒されていました。カッシュが矢の嵐のすぐ後を追走して、風の矢を受けて固まっている瞬間を切り伏せたのです。

さらにそこにニナのアイスアローの魔法が襲いかかりましたが、男は持っていたナイフで氷の矢を弾き飛ばしました。


「なっ!?あんなガキどもに一瞬で…!!」


「俺たちは3人で四魂の誓いだからな!!1人では敵わなくとも、3人なら楽勝だ!!お前たちもすぐにあの世に送ってやるから覚悟しろ!!!」


 カッシュの気迫のこもった言葉に男たちは不安を覚えました。


自分等は2人…相手は連携の取れたパーティー3人…



「ラット、剣士の動きを止めろ!」


「分かった!」



 ラットと呼ばれた男はカッシュの前にこん棒を構えながら近づいていきました。


だがラットはカッシュと相まみえる前にキースの矢とニナの魔法で全身を貫かれて倒れることとなりました。


「アニキ…ごめん。止められなかった。」


「お前のアニキなら、お前を見捨ててとっくに逃げたぞ!」


 そうリーダーらしきアニキと呼ばれた男は、ラットがカッシュに向かった瞬間、部屋から飛び出し、逃げ出したのです!ラットは自分が逃げ出す時間を稼ぐ為の囮にされたのです。


「そんな…アニキ~!!」


「ちっ!あいつ逃げ足が速いな!追い付くのは難しそうだ…

ラットと言ったか?お前はあいつに裏切られた!仇は俺たちが取ってやる!だからロンを、拐った男をどこに運んだか教えろ!!」


「えっ?ロンは拐われたのか!?」


今さらながらにキースが騒いでいます。


「おでは詳しくは聞いてない!でもいつも集まる場所なら幾つか知っている!!」




 3人はラットと宿の人間を縛り上げ、衛兵の詰所に連れていきました。  


そして、ラットに聞いた複数の場所を順番に巡ることにしました。





 その頃、僕はようやく目覚めていました。

もう袋には入れられておらず、椅子に座らされた状態でロープで縛り上げられていました。


「目覚めたか!?」


「あなたは…?

あっ!いきなり僕を襲ってきた奴等の1人ですね?みんなはどうしたんですか?ここはどこなんですか?」


「お前の仲間たちに俺とあいつ以外の仲間はみんな殺られてしまったぜ!おそらく俺も近々指名手配されちまうだろう。ホントしくじっちまったぜ…

その前にお前を奴隷商に売り付けて、俺らはこの国を出ることにする!

それにしてもお前の仲間たちは中々に優秀だな!
お前のジョブは何だ?
 
お前のような雑魚があの優秀な奴等の中に1人だけ混じってたんだ?何かお前も優秀なとこがあるんだろ?」



 そうか、みんなはこいつらを返り討ちにしたんだ!!やっぱりみんなは凄い!


「彼らは僕と同じ村で育った幼なじみです。僕と違って凄く優秀なんです!僕は生産職のジョブだから、王都で鍛冶士になる為に一緒に連れてきてもらったんです。明日には別々の道に進むことになっていました。」


 僕は無理のない程度の嘘をついてみました。「僕のジョブはボッチです。」なんて説明をしても絶対に話がややこしくなるに決まってるからです。



「そうか…鍛冶士か!どうりで戦闘は大したことねーわけだ!そういえば腰に鍛冶のハンマーを身につけてたな!!」



 男の視線の先にはテーブルに置かれた僕のハンマーが置かれてました。


「それならあのハンマーも一緒に奴隷商に売りつけてやるか!鍛冶士の奴隷はそれなりに需要があるからな!思ってたより高く売れるかもしれねーな!!」


男たちは少し上機嫌になって、部屋を出ていきました。




 1人になった僕は、必死に縄をほどこうとしました。しかし固く結ばれたロープはそう易々とほどけることはありません。

それでもこのまま奴隷商に売られる訳にはいかないので諦めませんでした。暫く続けていると、


《スキル 縄縛りlv1 をおぼえました》


と聞き覚えのあるアナウンスが流れてきました。



縄縛りってどんなジョブで本来覚えるスキルなんだよ!僕は縛りたいんじゃなくて、抜け出したいんだよ!と心の中で叫びました。


 しかしスキルを覚えたことで、その意味が理解できました。

縄を抜けるのは、縛ることを理解してないと無駄な動きで余計に抜け出すことが難しくなるのです。自分を縛っているロープの縛り方を理解し、力をうまく抜いたり動かしたりすることで、少しずつほどいていくのです。

さらにロープと格闘すること1時間あまり…とうとう縄縛りのスキルもレベル3になりました。


そこからは劇的に変化しました。これまでの努力でわずかに緩んでいた部分を絶妙な力加減でほどいていくのです。

わずかでもほどければ縛りというものは脆いものです。スルスルっとロープはほどけて自由の身になりました。


 自由になった僕は、男たちがテーブルに置いていった愛用のハンマーを身につけ、部屋を出ようとしましたが、扉には外から鍵がかけられていました。



「ハンマーを部屋に置いておいてもらえたのは助かったな!そこだけは感謝しないとだな。メガインパクト!!」


 僕の放った技で扉は轟音を立てて吹き飛びました。


さすがにこの音です。すぐに男たちがやって来ました。

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