ボッチ英雄譚

3匹の子猫

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第13話

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「冒険者登録を祝って乾杯!」


 カッシュの乾杯の音頭で、食事の開始となりました。


ここは僕たちの取った宿の1階にある酒場です。部屋を無事に取ることができたので、そのまま今日はお祝いの酒を飲もうという話になったのです。

この国では成人を迎えると飲酒を許されます。でもこれまで飲む機会もなかったので、生まれて初めてのお酒です。


「うぇっ、まっずー!!」


ニナが一口飲むなり渋い表情で言いました。


でも同意するよ。確かに不味い。大人は何でこんな飲み物をあんなに美味しそうに飲むんだろう?



「ニナはまだ子供だな?俺はこれくらい飲めるぜ!」


キースが調子に乗って一気に飲み干しました。


「キース、すごーい!よくこんなものを一気に飲めるわね?」


ニナが褒めたことで余計に調子に乗ってしまったキースは、


「じゃーニナの分も俺が飲んでやるよ!」


と言ってもう1杯一気に飲んでしまいました。


「ちょっとキース?そんなに一気に飲んで大丈夫なの?お酒って酔うんでしょ?」


「だいひょうふ…このふらいにゃんともにゃい…」


とだけ言ってその場で眠ってしまいました。



「あらら…これは酔い潰れたってやつだよね?」


「だな。大して食べ物も入れずに、慣れない酒をあんな飲み方するからだ!世話が焼ける…」


「でも何だか幸せそうな顔をしてるね?」


「確かにな!」


酔い潰れたキースを見て3人で笑い合いました。




 早めの夕飯を済ませて僕たち4人は部屋でゆっくりしていました。

結局キースはあのまま目を覚ますことなく、今もベッドでグースカ気持ち良さそうに眠っています。


「明日から依頼をこなすのにこんなんで大丈夫なの?」


ニナがキースの姿を見て辛辣なコメントをしているけど、これはフォローしてあげれない。ごめん、キース。


「まあ明日は初めての依頼だし、簡単な依頼を選ぶつもりだから何とかなるだろ?」


「そうね。ロンはどんな依頼を受けるの?討伐系?」


「いやー多分得意な薬草採集系かな?」


「そっかー。それなら気をつけていたら安全だし、ロンならすぐに終わりそうだね?」


「うん。時間が余ったら出来ればこの街で鍛冶をさせてくれる場所がないか探すつもりだよ。裁縫や調合は簡単なものなら何処でもできるんだけど、鍛冶だけはちゃんとした施設がないとどうしようもないからね!!」


「そっか。ロンも意外にちゃんと考えてるんだね!」


「えっ?僕ってそんなに何も考えてなさそうに見える?」


「うん!」


即答でした…あはは…苦笑いしかできません。



 その時です。扉がノックされました。


「こんな時間に誰だろ?」


僕は宿の人だろうと思い何も警戒せずに扉を開けました。



 扉の前には知らない男たちが5人立っていました。その手にはナイフや短めのこん棒が持たれています。


状況を理解もできないまま僕は問答無用に襲われ始めました。


 そいつらの動きはそれなりには早いですが、それでもその動きはハッキリと見えていたので楽に避けられると思ってたのですが、何故かそいつらの攻撃はことごとく僕に当たっていきます。



あー!みんなと一緒だからレベル1のステータスに弱体化されているのか…


 慣れとは恐ろしいもので、3ヶ月もレベル18のステータスで生活をしていると急にレベル1のステータスになると思ったように動けないのです。


それに気づいたときには時既に遅く、僕はこん棒で袋叩きにあっており、意識を失うこととなっていたのです。打たれ強さもレベル1なんですね…


「ロン!!!」


「あんたたちいきなり一体何なのよ!?何でロンにそんなことするのよ!?」


「安心しな!お前らもこいつと同じように拐ってやるからよー!お前らみたいな冒険者に登録したての奴等はまだ弱っちくて、拐っても誰もお前らのことなんて知らねーから捜索すらでねーんだ!!

俺らの小遣いになることを誇って素直に奴隷に堕ちるんだな!!」


「ふざけるなっ!!俺たちを甘くみすぎだ!ロン、すぐに助けるからな!!」



 カッシュは一番前にいた男に斬りかかった。しかし男は短剣を上手く扱い、その剣撃を流してしまった。

体制を崩されたカッシュは、男に腹を蹴り飛ばされ、部屋の奥の壁に吹き飛ばされてしまった。


「カッシュ!!」


「へー!冒険者成り立てにしてはいい剣撃だ!それに人を斬ることに迷いがない。素質だけは大したもんだ!

だが残念だったな!俺たちはお前たちよりは強い!諦めろ!!」


男はこう言ってますが、実はカッシュとこの男の実力差など大してないのです。あるとすれば経験の差くらいです。男たちは短めの武器を持ってるのに対して、カッシュは長剣です。

狭い屋内での戦闘ではどちらが有利かは火を見るより明らかでしょう。



「宿の人は何をしてるのよ!これだけ騒いでるのに誰1人来ない!!せめて衛兵を呼んでくれればいいのに…」


「絶望させちまうかもしれねーが、宿の奴等は全員俺たちの仲間だ!お前らがここに宿泊を決めた時点で、他の客はとってねー!つまりは騒いでも誰も来ねーよ!!残念だったな!」


「宿の人までグルなの!何てタチが悪いの!!でもそれなら遠慮はいらないわね!ファイアウォール!!」



ニナが火の中級魔法を放つと、部屋の真ん中に灼熱の炎の壁が現れ、3人と男たちの間を隔てた。


「この女、魔術師か!!こんなとこでこんな魔法を使ったら宿が燃えちまうことになるぞ!この女狂ってるか、ただのバカだ!!」


「それくらいしないと人がここに集まらないでしょ!これが頭脳プレイよ!!」


「ちっ!面倒だ!!小遣いは減るが、こいつらはここで死んでもらうことにするか…顔も見られちまってるしな!」


「この炎を越えて攻撃する手段があるとでもいうの?」


「そんなもん無くても、炎が燃え広がるまでお前たちをここに閉じ込めたら、勝手に燃え尽きて自滅だろ?そんな窓もない密閉空間でそんな火を焚いちまったら、下手をすればその前に窒息死しそうだがな!?」


「…あっ!これはちょっとやらかしちゃったかも!?」


「やっと状況を理解したらしいぜ!やっぱりただのバカだ!」




 ちなみに気絶した僕は、この時点で既に大きな袋に入れられ、大柄の男に抱えられ宿を離れた後でした。

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