ボッチ英雄譚

3匹の子猫

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第27話

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 ガープ師匠との訓練を終え、西門に戻るとそこにはニコルさんが待っていてくれました。


「ロンさん、お疲れさまでした!濡れタオルです。汗と汚れを落として下さい。」


「ニコルさん、ありがとうございます。」


疲れた体に、この優しさは染みました。


「この後の予定はガープさんから伺ってます。ギルドに行って、討伐クエストを受けましょう。今日のクエストには私とパーティーを組んで挑むように指示を受けてます。」


「えっ?どういうことですか?」


「私は一応Dランクの冒険者なんで、私とパーティーを組んでいれば最大Cランクのクエストを受注できます。

ガープさんからの伝言としては、今日はスキルに頼らず1レベルのステータスで素手のみで討伐することで、フェイントのコツを掴んでこい!とのことです。

それと私にはロンさんに解体について教えるように指示されています。」



マジですか…まさかジョブのデメリットすらも特訓に有効利用するんですね!

実はこれは僕には衝撃的でした。こんなデメリットがあるからにはパーティーは生涯組むことすら許されないと考えていたので、パーティーを組むことを許されただけでも驚きなのに、発想を変えることで僕にとってもメリットにすら感じられることになったことはまさに青天の霹靂でした。



 僕はギルドにつくと、指示通りニコルさんと臨時パーティーを組みました。臨時パーティーとは今回受けるクエストの間のみパーティーを組む方法です。


「ありました!ガープさんからの指定の討伐クエストの1つが残ってました。東の山に生息する羽ウサギの皮を収集してくるクエストです。ランクはEランクですが、難易度は少々高めです。」


 羽ウサギとは攻撃力は低いのですが、その名の通り羽のように軽く、素早い動きをしてくることで有名な魔物です。肉も美味しいのですが、その軽くて綺麗な皮はドレスを作ることに適しており、それなりに高額で取引きされます。

今回の依頼も1匹分にも関わらず銀貨5枚となかなかに高額です。


東の山は東門を出れば入り口までは比較的近いのですが、王都方面の魔物は定期的に国の騎士たちが討伐をしてくれてる為、山の奥に入らねば魔物はそうそう出てきません。


「僕はガープ師匠から移動はダッシュをするように指示されてるんですが、ニコルさんはどうされますか?一緒に走られます?」


「それも指示を受けてるのですが、私をおんぶしてダッシュをしろとのことでした。」


「えっ?ニコルさんをおんぶするんですか?えっと…いいんですか?」


「私は構わないのですが、ロンさんが辛いのではないかと心配です。」


「多分大丈夫です。」



うっ。昨日のことがあったばかりだから意識しちゃうな…鎧を着てるから分からない筈なのに、背中に柔らかいものが当たってる気がしちゃうよ。。


「ロンさん、重くないですか?辛いようなら私も走りますよ。」


「いえ、ニコルさんはとても軽いので平気です。飛ばしてますが怖くないですか?」


「思っていたよりずっと早いので驚いていますが、不思議と怖くはないです。やっぱりロンさんだからだと思います。」



ニコルさんのこういう発言にはどう返していいか分からないよー。



 結局それからは何も返事をせずに東の山まで走り抜きました。



「ロンさんは羽ウサギを見たことはありますか?」


「いえ、話には聞いたことはあるのですが、実際に遭遇したことはありません。」


「そうですか…通常羽ウサギを討伐する際は避けられないように対策を練って挑みます。たとえば追跡能力のある魔法を使える方をパーティーに入れたり、範囲攻撃を使える方をパーティーに入れたりですね。

羽ウサギは察知能力が強く、本能でこちらの動きを読んできますので、今回のように武器も攻撃技も使えない状況で挑むことは本来は無謀な討伐方法です。ましてレベル1のステータスまで落とした状況では…

それでもロンさんなら達成されると私も信じてます。」


「はい。頑張ってみます!」



 それからさらにしばらく山の中を走っていると白い狼程度の大きさの魔物を見つけました。


「あれが羽ウサギです。」


「思っていたより大きいのですね?」


「ウサギに似てるだけでウサギではないですからね…見た目によらず結構好戦的ですのでお気をつけ下さい。」


「分かりました。」



 僕が羽ウサギに近づくと、真っ赤な目を獰猛に見開き突進してきました。それに合わせてパンチをしようとしましたが、レベル1のステータスになってる為タイミングがかなり遅れました。

羽ウサギの突進は僕のお腹にクリーンヒットして吹き飛ばされてしまいました。やはり打たれ強さも弱くなってるようです。


 痛みに耐えつつ起き上がった時には、羽ウサギは追撃の噛みつき攻撃をしようと、僕の腕に大きな口を空けて飛びかかってきていました。僕は考えるよりも先に腕を移動して避けました。



今のような動きがガープ師匠の言っていた意識しなくても自然に動けるってことなんだろうか?


「ロンさん、大丈夫ですか?」


「ステータス減少に感覚が慣れていないので思ったように動けないんです。でも大丈夫です!」



 僕は確認するように自分の体を確認していきました。


「もう1度勝負だ!」


 僕は10メートルほど離れた場所で警戒している羽ウサギに駆け寄りました。今度は感覚に違和感はないです。これなら羽ウサギの動きに合わせられると思っていましたが、そんなに甘くはなかったようです。

僕がパンチを放とうと動いた直後、羽ウサギは軌道を変更し、僕のお腹に再び体当たりを当ててきました。


「ふがっ!」



こいつ…動きが速いだけでなく、僕の動きを読んで事前に動き出している?そうか…ガープ師匠がこいつをフェイントの練習台に選んだ理由が分かったぞ!

ガープ師匠は言いました。攻撃を当てる為には、本物の攻撃以外にも虚偽の攻撃を織り混ぜることで相手に自分の狙いを悟られないようにする必要があると…


羽ウサギが僕の動きを先読みして動いてくれるなら嘘の動きを入れて逆に羽ウサギの行動を誘導したらいいんじゃないかな?


 頭で分かったからといっていきなり実践で完璧にこなせるわけもなくそれからも僕は羽ウサギを相手にダメージを喰らいまくりました。幸いダメージは命に関わるほどでもなく、蓄積していったら回復薬を飲んで回復しました。

それから1時間が経過した頃、ようやくフェイントのコツを掴んできました。そしてその頃には僕の中では羽ウサギは敵ではなく、師匠と化していました。


 僕の思い描いた通り、僕のフェイントに引っ掛かり右へ軌道を変えた師匠は、さらに僕の次のフェイントに引っ掛かり再び左へ軌道を修正しました。

そこには師匠からは死角になっていた僕の左手のパンチが師匠の顔面にクリーンヒットしました。

さらにその吹き飛んだ師匠に向けて駆け寄り、師匠が逃げようとしている方向を師匠のこれまでの癖から予想し、強烈な蹴りを無防備な師匠の首に当てました。師匠の首はそのまま折れ、亡くなたようです。


師匠…ありがとうございました!!お陰でフェイントの基礎は理解できました!


 僕は師匠に軽く礼をし、師匠の遺体を抱えてニコルさんのところへ戻りました。

この後、師匠の解体をニコルさんに教わりながら僕はいつの間にか涙が溢れてしまったのは仕方ないことでしょう…

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