ボッチ英雄譚

3匹の子猫

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第26話

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 翌日ガープさんが休日だった為、僕は西門の前に呼び出されました。現在の時刻は午前5時です。まだ空も薄暗いです。


「ガープ師匠おはようございます!今日からよろしくお願いします!!」


「おう、ちゃんと遅れずに来たみたいだな!感心だ!!」


「もちろんです!教えを乞うのに遅刻するなんてありえません。」


「そういう考え方…最近の若者にしては珍しいな!?」


「そうですか?昔から待つのは平気なんですが、人を待たせるのは苦手なんです。」


「まあ、悪い考えじゃない!それじゃー始めるか!!まずはロンの今の実力を見たい!少し移動して模擬戦をするぞ!」


「はい!」


「既に使えるかは分からないが、魔法や補助魔法の使用は禁止だ!俺が教えるのは武術と武器を使った戦闘方法だからな!!他は実戦と同じでスキルでも攻撃技でも使って構わない。かかってこい!!」


「はい。ではいきます!」


 僕はガープ師匠に向けて駆け出しました。ゴブリンジェネラルとの戦いでまたかなりレベルが上がっていたので、思っていた以上のスピードがでます。


「ほう、思っていたよりはずっと早いな!だが、攻撃が単調だ!」


僕の繰り出したハンマーはガープ師匠の剣に流され、バランスを崩されたところに足を払われ、受け身も取れず地面に頭を打ち付ける結果となりました。


 僕はすぐに立ち上がり構えました。


「いいぞ!追撃に備えることもできるようだな。だがそのふらついた様子で、この一撃を防げるか?流星斬!」


ガープ師匠は剣を構えスキルを放ってきました!

ガープ師匠の剣がまるでいくつもの流れ星のように僕に次々と降り注いできます。目だけでは動きの全てを追えそうにないので、気配を感じ、ガープ師匠の攻撃を1つずつ受け流していきました。



「まさか今のを完全に受け流されるとはな…ロンは攻めは大したことないが、守りに関しては既に一流だな!!だからゴブリンジェネラルの攻撃にも耐えきれたのだな!

では次にゴブリンジェネラルを倒すに至った攻撃を俺に見せてみろ!」



ゴブリンジェネラルを倒すに至った技?ってこれのことだよね?


「エネルギーブレイク!」


 僕がスキルを放ちましたが、ガープ師匠はエネルギーブレイクをあっさりと避け、逆に剣の柄を使いお腹を抉ってきました。


「ぐっ!」


「何だ今の技は?何の変哲もない攻撃にしか見えなかったが…よく今の技をゴブリンジェネラルに当てられたな?」


「この技を放つまでに2時間以上ゴブリンジェネラルに攻め続けさせました。当てられた頃にはゴブリンジェネラルは肩で息をしていました。」


「ゴブリンジェネラルの攻撃を一方的に2時間受けきったということか…本当によく生き残ったな?今の技の効果はどんなものだ?」


「ダメージは与えられませんが、体力を奪います!」


「はぁ?体力にのみに攻撃する技なのか?分かった、今度は避けないし反撃もしないからもう一度放ってみせろ!」


「はい。エネルギーブレイク!」


僕の放ったエネルギーブレイクはガープ師匠のお腹に突き刺さりました。


「なるほど…痛くも何ともないな!しかし疲労感はかなりくるものがある。これを2時間攻め続けた後に喰らえば動けなくなるか…」 


「はい!正確にはこの技を10回以上当てました。そして体の中にダメージを与える技を5回当てたところでようやくゴブリンジェネラルは動くことができなくなりました。その後、ゆっくりとトドメをさしました!」


「疲れてるところに今のを10回以上ね…動けなくなる気持ちは分かるわ。

だが今のでロンの課題が見えてきたな!攻撃を当てる為には、本物の攻撃以外にも虚偽の攻撃を織り混ぜることで相手に自分の狙いを悟られないようにする必要がある。

これができなければ格下の相手にも下手をすれば殺られてしまうからな!」



 そこからは訓練と称した地獄の始まりでした。まずは西の森まで全力疾走。少しでも速度が落ちるとガープ師匠の剣技が襲ってきました。


「往復で2時間以上掛かったら、この後の休憩は抜きだぞ!!お前のジョブの特性上俺と一緒に行動してる時点で今日は大した訓練にはならんのは分かっている!だが精神や根性は関係なく鍛えられる!!疲れや自分の弱さに負けるな!

明日からはお前1人で自分を律していかねばならんのだからな!!」


「は、はい!!」


 西門の前に辿り着いた僕は倒れこみました。



なぜガープ師匠は同じ速度で走ってきてたのに平然な顔をしてるのだろう?


「残念だったな、2時間3分だ!起きろ!!次の訓練に入る。」


「は…はい……」


 僕は重くなった体を何とか起こし、ガープ師匠についていきました。そこは王都の巨大な城壁の中でした。その奥へ進んで行くと、城壁の上まで延々と続く螺旋階段の塔が存在しました。


「この階段を3往復だ!ここは普段は誰も使うことない階段だ!!門番たちには俺から通達しておくから、ロンは勝手にここまで入っても問題ない!これから毎日西の森までのダッシュとこの階段の3往復を朝の基礎訓練とする!!戦闘職ならばすぐに慣れて合わせて2時間で終わる筈だ!絶対にサボるなよ!」


「はい!」


 と答えたものの、2時間のダッシュの直後の階段の登り降りは地味に地獄でした。唯一の救いは、この階段は1人で行動となった為ボッチの特性が発動し、自然回復力が5倍となったことです。

それに取得経験値が10倍になったことにより、スキルレベルが上がりました。


《スキル 疲労回復 のレベルが上がりました》



 おそらくはこの訓練は体を虐めることで速度上昇や疲労回復のスキルを伸ばしていくことを目的にしてるのだと思います。もちろん精神を鍛えるのも目的の1つなのでしょう。


この訓練はこれからの毎日の朝の日課となりました。



「終わりました!」


「遅い!明日からはもっと早く終わらせろ!!」


「はい。すいませんでした!」



 ここからは実戦を交えた戦闘訓練となるのですが、ここでも休息が殆どないのです。合間は水を飲むとすぐに再開です。

終始攻めるのが苦手な僕が攻め続けることを強要されました。僕が攻め方を迷い、動きが止まるとその瞬間僕にガープ師匠の攻撃が加えられます。


なんて状況判断の速さなんだ…全く当てられる気がしない。。虚偽の攻撃を織り混ぜろと言われてもどうすればいいか分からないよ。



「1つ1つ考えて行動しろ!だが動きは意識せずに自然に動けるよう訓練するんだ!そうすればより早く無駄なく動けるようになる!!」



 昼前には訓練は終了となりました。


「お疲れ!俺は家族サービスがあるからこれで帰るが、ロンは今教えたことを復習する為にこれから討伐クエストを受けて魔物と戦うように!!

低ランクの魔物では弱すぎて訓練にならんだろうし、武器を使用することを禁ずる!しばらくは討伐は素手だけで退治してくるんだ!!もちろん移動は全てダッシュだ!!」


「…」


僕はこれを聞いて返事をする気力も失いました。


「分かったのか!?返事は!!」


「はい!!」



 正直想像していた以上の訓練でした。こんなに本格的に教えてもらえるとは想像もしていませんでした。正直きついですが、ニコルさんから言われていたからこそ、ここまでしてもらえることに素直に感謝できました。


僕はガープさんの期待に応えられるように全力で努力します!!

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