ボッチ英雄譚

3匹の子猫

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第48話

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「ダークスパイク!!」


 現在薬草探索で確認して、花びらが存在する死竜草を体に宿したドラゴンゾンビに向けてダークスパイクの杭を連続で浴びせているところです。


かなり強めに魔力を込めていた為、ドラゴンゾンビはしばらくは動くことは叶わない筈です。僕は素早くドラゴンゾンビの上によじ登り、首元に生えていた死竜草の花びらを採集しました。

それを素早くラルクさんから預かった保管用の箱に入れ込み、異空間収納にし舞い込みました。


これで王都に戻れば無事にクエスト成功です。



おっと…のんびりしていたらもうそろそろドラゴンゾンビが動き出しそうです。



もうクエストも完了したし、もういいかな?



「ホーリーレイ!ホーリーインパルス!」


僕は聖属性魔法を連続で放ち、ドラゴンゾンビを浄化しました。


ホーリーレイは聖なる光のレーザーを放つ魔法で対象を貫通します。そして、ホーリーインパルスは聖なる波動、衝撃波のようなものを飛ばして広範囲に聖なる力で浄化していく力です。



うーん。これだけ時間がかかるなら、まだ回復魔法の方が早いな…



 僕がそんなことを考えながら、山をゆっくりと下っていっていると、昨日の冒険者パーティーとは別のパーティーと出くわしました。


「こんにちは。」


「よお!お前も死竜草の花びらの依頼を受けてきたのか?」


「はい、そうです。先ほど無事に得ることができ、これから王都に帰るところです。」


「本当か!?それは本物の死竜草の花びらなのか?」


他のメンバーとざわついています。


「多分間違いないと思います。では念の為鑑定で確認してみますね。」



 僕は荷物袋から取り出す振りをして、異空間収納から箱を取り出しました。戦闘職が異空間収納を使えると分かったら問い詰められて大変そうですしね…

本来は戦闘職が薬草鑑定のスキルを使えるのもおかしいということには僕は全く気づいてもいないのですけどね!


死竜草の花びら
あらゆる霊薬の材料になる花びら。


その後は調合のリストと方法が大量に述べられていました。



「やはり間違いないようです!」



僕がそこまで言ったところで、背中に鈍い痛みが走り、僕はそのまま地面に倒れこみました。


「悪いな!これは俺たちがもらっておくぜ!先輩からの忠告だ!!今会ったばかりの人間を簡単に信用するな!

まあ、これからすぐに死ぬお前には何の役にも立たないかもしれないがな!?」


「あーあ!やると思った!!Sランクにまでなってこんなことするのタンクくらいだよ!?」


「バレなきゃいいだけだ!こんなとこに1人で来てたんだ、死んでも誰も不思議に思わないさ!!死体もすぐに魔物の腹の中だしな!!」


「そうだね!じゃーさっさと終わらせて、早く街に戻りましょう!」


「そうだね!早くホームに帰ってゆっくりと風呂に入りたーい♪」


「私はこの花びらで白金貨が手に入るし、美味しいものをたっくさん食べたいよ!」


「あーいいぜ!俺たちはこれからも今日みたいにうまくやっていこうぜ!金も名声もある最高の人生だ!!お前たち3人もいるしな!最高の女たちだ♪

さてとやるか!」


タンクと呼ばれた男が僕に向けて再び剣を振り上げました。


 僕はその剣を地面を転がることで避けました。


「ちっ!まだ避けるだけの元気が残っていやがったか!念のため逃げられないように警戒しとけ!」


「「分かったよ!」」


「他のパーティーに気づかれても面倒だしね。」


「そういうことだ!さっさとやるぞ!!」



 僕はこの男たちに怒ってました。


「何故なんです?実力も名声もある筈のあなたたちのような高位の冒険者が、こんな盗賊と同じことをするのですか?他の冒険者の見本になるべき立場の筈でしょう!?」


「あれ?そいつの背中の傷治ってない?」


「ほんとだ!回復薬なんて飲む隙は無かった筈だけど…」


「回復魔法よ!こいつかなりの回復魔法の使い手みたい。無詠唱で回復魔法をたかったとしか考えられない。」


その通りです。話を聞きながら無詠唱でハイヒールを使っていました。


「いくら回復魔法が得意だろうと、一撃で殺しちまえば関係ないさ!!焼き殺せ!!」


「はいはい!いっくよー!ファイアボール!」


「ファイアアロー!ファイアアロー!」


2人の魔術師から次々と初級火属性魔法が飛んできます。


僕はそれをウォーターウォールを自分の前に放ち防ぎました。その間にもう1人の魔術師が準備をしていたもっと上位の火属性魔法を放ちました。


「フレイムウェイブ!!」
「フラッド!!」


僕は相手の魔術師が炎の強力な波を起こそうとしていたのが分かった為、それに合わせて水魔法の津波を起こす魔法を使い、レジストしました。


「嘘!何故あのタイミングでレジストできるのよ!私が何の魔法を使うか予測できてなければできない芸当よ!」


 答えは簡単です。先日のフラム師匠の指導により、魔力の動きを読むことで、どのような魔法を放とうとしてるかが何となく分かるようになったのです。

ただの冒険者にはたとえそれがSランク冒険者であっても、こんな魔術師同士の高度な戦い方は学ぶ機会などそうそうないものです。

本来は冒険者は魔物と戦うのが主な仕事であり、人間と戦うとしても盗賊程度に落ちぶれてしまったやつばかりです。王宮魔術師のような特殊な訓練をされている筈もありません。


「今度はこちらの番です。ダークミスト!ダークレイン!シャドウバインド!」


あっという間に鳳凰のしらべの周りは闇のミストが立ちこめ、ダークレインの効果でステータスが減少してしまいます。そこに20もの影の手が掴みかかってきます。


「何これ?変な手に捕まっちゃったよ!?」


「いやん。これイヤらしくない?」



えっ?そんな筈はないんだけど…



などと考えている隙に、ダークミストからタンクが飛び出してきて、そのまま僕に斬りかかってきました。

僕はそれをハンマーで受け流して、逆に風裂脚を返してやりました。


「何だお前は?これだけ魔法を使いこなす癖に近接の技まで持ってるなんて反則じゃねーか!!」


「反則なのは、僕の力ではなくて、あなたたちのした行いです!!盗賊行為は返り討ちにしても罪にはなりません。僕はこのままあなたたちを殺してもいいのです!

ただ反省して、素直に衛兵のところまで連行されるのでしたら命は奪いません。」


「はあ?俺たちはSランク冒険者の鳳凰のしらべだぞ!!お前ごときガキ1人にやられる訳がねーだろが!!!」



どうやら戦いはまだ終わらないようです。ここからは本気の殺し合いになりそうです。

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