ボッチ英雄譚

3匹の子猫

文字の大きさ
70 / 73

第70話

しおりを挟む
「ヴェルドンさん、とうとうヴェルドンさんの求めていたスキルを覚えることができました!!」


 霊化のスキルがレベル10になったことで憑依合体というスキルを覚えました。スキルの説明を見ると、霊を自分の体に同化することで霊と一定時間1つになれるということです。

この時、体の主導権は僕にも霊にもできるらしいのですが、僕が動かそうとすれば僕が優先されるようです。


「本当か!!では早速試してみるぞ!」


「分かりました。ではいきますよ。憑依合体!」



 スキルが発動すると目の前にいたヴェルドンさんは僕の中にあっという間に吸い込まれ、1つになりました。


『上手くいったようだな!』


『何だか変な感じですね?声もしゃべるんじゃなくて、頭の中に直接響く感じになってますね?』


『まずは儂の好きなように動かさせてくれ!』


『分かりました。ではお任せしますね!』


僕がヴェルドンさんに体の主導権を譲る気持ちでいると、不思議と勝手に体が動いていきます。ヴェルドンさんが動いたり、何かに触れるとその感触は僕にもそのまま伝わってきました。


『すごいのー!まるで生き返ったようじゃ!!

これならば鍛治も好きなだけできるぞ♪試しに何かを打たせてもらおうか!!』


ヴェルドンさんが嬉しそうに武器を作成する準備を始めていると、突然ヴェルドンさんが強制的に外に追い出されてしまいました。



《スキル 憑依合体 のレベルが上がりました》



「どうやら時間切れみたいですね?」


「なんじゃと!?ようやく鍛治をできると思ったところじゃったのに…なんてことじゃ!!すぐにまた合体するのだ!!!」


ヴェルドンさんのあまりの勢いに負けてすぐにスキルを使いました。


「憑依合体!」


《同じ霊とは1日に1度しか使用できません》


「どうやら1日に1回だけしか使用することができないようですね…」


「な、なんじゃと!?では明日までこのまま儂は生殺しにされてしまうのか??」


「明日はすぐに打ち始められる準備をしてからスキルを使いましょう!スキルのレベルも上がりましたし、少しは接続時間が伸びてる筈ですよ。」


「嫌じゃー!!」


この日ヴェルドンさんの叫び声が屋敷中に響き渡りました。



 この後も何日も掛けてこのスキルを検証したところ、どうやらレベルが1上がる毎に接続時間を30分ずつ増やせるようです。

ヴェルドンさんにレインボーアテブューオリハルコンを武器にするのにどのくらいの時間を必要か確認したところ少なくとも10時間は欲しいと言われました。

ということは少なくともスキルレベルを20にはしないといけないようです。1時間の余裕を持って、スキルが22まで上がったらレインボーアテブューオリハルコンを使って武器を作成するということで話が決まりました!

それまでの期間、毎日限界までヴェルドンさんと憑依合体して過ごし、レベルを上げていくことにしました。



『ヴェルドンさんって屋敷から離れられたんですね?』


『儂も知らなかったぞい!この憑依合体をしていれば大丈夫なようじゃな!!』


『じゃー外でスキルの効果が切れたらどうなるんですかね?』


『あまり想像したくないのでそうなる前に屋敷に戻ってくれ!』


『分かりました。』



 今僕たちは、朝の日課である西の森へのダッシュをしています。


現在憑依合体のスキルレベルも21となり、間もなく本番となったことでヴェルドンさんが僕の戦うところを見てみたいという話になったのです。

大した戦闘は行いませんが、日課のランニングと、合間に薬草採取、現れる魔物の退治です。


「ファイアアロー!」


『ロンは強いのー!それに思っていた以上に魔法を多用する様じゃな?』


『そうですね。言われてみれば魔法を覚えてからは便利なので魔法を中心に戦闘してるかもしれません。』


『ならば、作るハンマーに魔力を増大させる魔石を埋め込むとよいかもな?そうすれば魔法の威力が上がるぞい!』


『それは助かりますね!完成が楽しみです。』


『儂ももうすぐあの石を打てると思ったら、魂が震えてくるぞい!儂は心の底からロンに感謝してるぞ!このヴェルドンの人生全てを注いだ最高のハンマーを仕上げてやるから楽しみにしておくんだぞ!!』


『はい!』



 それから間もなく、憑依合体のスキルは目標であった22レベルになりました。ヴェルドンさんは張り切って、前日から気合いを入れています。


『よしっ!明日の為に今からレインボーアテブューオリハルコンを取り出すことにする!!』


そう言うと、僕の体を操るヴェルドンさんはこともあろうか火を消した鍛治炉の中に入っていき、その地面を壊し始めました。


『ヴェルドンさん?鍛治炉を壊して明日は使えるんですか?』


『儂は土魔法も使えるからな!それですぐに直すこともできるわい!!ここには儂が生きてる頃は絶えず火が消えることなく燃えていた。だから誰にも見つけられなかったのじゃ!!』


『なるほどー!』


鍛治炉の中をかなり深く掘り進めたところで、袋に詰められた金属が出てきました。


『これがレインボーアテブューオリハルコンじゃ!』


それは見る角度により様々な色に見える金属で、7色どころかもっと沢山の色の光を放っていました。


『きれいですね!!こんな金属見たことないです。』


『そうそうお目に掛かれる金属ではないからのー!言い伝えでは、アイダ·ウェドと呼ばれる伝説のドラゴンの魔石が長い年月大地に埋まることでできると言われておるぞい!!』


『へー。僕もいつかこのレインボーアテビューオリハルコンのような伝説的な素材を使って装備を作ってみたいですね!!』


『ロンなら簡単に叶えてしまいそうだがな!』


『そうだといいのですが。』




 鍛治炉を再びきれいに作り直したヴェルドンさんは翌日、生涯の全てをかけてレインボーアテビューオリハルコンに挑みました。


『ロン、儂の全てを見ておれ!!』


 ヴェルドンさんはその言葉以降、一言の言葉を発することもなく、行動だけで全てを語り掛けてきました。


ヴェルドンさん越しに伝わってくる感触からだけでも、レインボーアテビューオリハルコンの取り扱いの難しさは分かりました。ヴェルドンさんはその難しいレインボーアテビューオリハルコンを時に優しく、時に鬼気迫るような激しさで叩き続けました!!

僕はただ見てるだけなのに、手が熱くなっていきました。


10時間にも及ぶ炎と魂の語り合いは長いようで、あっという間に過ぎていきました。


「カーン!」


 ヴェルドンさんの最後の一打が叩きつけられると、完成したハンマーが様々な色に変化しながら光り輝いていきます!


『完成じゃ!!!これが儂の人生の全てじゃ!銘は「英雄の鎚」とでもするかのう。』


満足そうに呟くと、ヴェルドンさんは僕の体から出ていきました。


そしてそのしわくちゃなおじいさんの顔を、満面の笑顔にして浄化のように光の粒になり消え始めました。


「ヴェルドンさん?まさかもう成仏するんですか?」


「ああ!儂はもうこの世に思い残すことはないからのう。全てロンのお陰だ!お前のこれからの人生にその英雄の鎚が役立つことを願っているぞ!!儂の最後の子供を頼んだぞ!!!」


「はい!必ず大事にすることを誓います!!こちらこそ色々と教えて頂き本当にありがとうございました!」


ヴェルドンさんは最後にもう一度優しく微笑んで消えていきました。



英雄の鎚…僕が使うには大それた名前のハンマーですが、できたばかりのそれを手に取りました。


「すごい!始めて手にするのに、ずっと使い続けてきたようにフィットする!!それに持ってるだけで力が溢れてくるようだ!!」


その理由は鑑定をすることで分かりました。


英雄の鎚
ランク SS
攻撃力 276/276
耐久力 780/780
評 価 SS
特 性 鎚に魂が宿っており、選ばれた者にしか扱えない、不壊、全ての攻撃が相手の弱点属性をつける、全能力アップ



スゴ過ぎる…これは以前鑑定した王者の剣と同レベルの武器だ!寧ろこの英雄の鎚の方が凄い気がする!?


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...