ボッチ英雄譚

3匹の子猫

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第69話

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「ロン、お前は自分のしていたことの危険性を分かっているのか?」


王は静かに問いかけてきました。


「今回のことで理解しました。悪いことを考える人たちは付け入る隙を見つけて行動してくるのですね…そして僕はその危険性を理解もせずに、アリス様を危険に晒し、マゼンダさんを死なせてしまいました。」


「そうだ!だがそれだけではないぞ。今回はたまたま上手くいったが、もし霊化のスキルがなかった場合、状況証拠から私はロンを死刑にせねばならぬ状況だったのだぞ!!

何故そこまでして魔力回復薬を2人に渡さねばならなかったのだ?」


「お二人の魔法に関するスキルのレベルを上げる為でございます。」


「…?ロンよ、アリスはまだ未成年だぞ。スキルはそうそう得られないだろう!」


「アリス様はこの半年で既に多くのスキルを得られてます。魔力感知、魔力操作、魔力量上昇、魔力回復のスキルと全属性魔法をレベル1ながら覚えております。」


「なんだと!?まさか成人を迎える前に属性魔法まで使えるのか?とても信じられん!あれはこれまで優秀な養育係りをつけても生活魔法すら使えなかったんだぞ!?」


「お兄様、全て本当のことです!私はロンのお陰でこの半年ですごく成長したのです!!」


「アリス!」
「「アリス様!」」


僕はアリス様の前に跪きました。


「アリス様、この度は僕の甘い考えからアリス様を危険な目に合わせてしまいました。お詫びしようがありません!本当に申し訳ありませんでした。」


「ロン、私はあなたには感謝しかありません!マゼンダのことは私もとても悔しいですが、それはあなたのせいではありません。

私があなたから言われていた通りの確認方法で薬を何者かに入れ換えられていたことを事前に気づけたのに、それで大騒ぎをし犯人を刺激し、さらにこともあろにそのまま気絶してしまうなんて…」


「アリス、体の方はもう大丈夫なのか?」


「もうすっかり回復しましたわ、お兄様。」


「それで本当にアリスは魔法を使えるのかい?」


「はい。ロンのお陰で使えるようになりました!」


「そうか…回復したばかりで悪いがこれからその魔法を庭で見せてもらえるか?」


「分かりました。」



 庭に出ると、アリス様は次々と魔法を披露しました。


「ファイアアロー!」
「ウォーターボール!」
「エアスラッシュ!」
「エアバレット!」
「ライトアロー!」
「ダークアロー!」


「本当に6属性もの魔法を使いこなしているではないか!!しかし、ジョブの恩恵もなく一体どうやって…?ロンよ、秘密を教えてくれないか?」


「アリス様の才能としか言えませんが…」


「私にさえその秘密は教えられないか?まあよい!ロンの養育係りとしての教えは素晴らしかったことはこれで証明された!!

しかしそれでも今回のことはロンの責任も大きい!そこで罰を与えることにする!!

1つはアリスの養育係りの仕事はこれでクビとする!」


「そんなお兄様!ロンは私にはまだ必要です!!」


「アリスっ!お前の実力は既に成人前としてはあり得ないほどに成長している!これ以上を求める必要はない!!」


「わ、分かりました…」


アリス様は納得してなさそうだが、渋々引き下がりました。



「ロン、話が逸れてしまったが、もう1つの罰はこれから1ヶ月、国への奉仕活動をしてもらう!もちろん罰なのだ、報酬はないぞ!

活動内容は先ほどの霊化を使って、死体から話を聞いて回ることだ!それとまた何かあったときには私に協力することを約束しろ!!

それで今回の件は不問とする!」


「分かりました!お約束します!!」



 こうして、これから1ヶ月は王都中の謎のある死体を霊化して回りました。それ以外にも貴族が家族と最後の別れをする為にも多く使われました。

そのお陰で、僕は衛兵や貴族たちの間でも冒険者としてではなく、シャーマンとして有名になりました。

この1ヶ月を越えてからも、シャーマンとしての依頼も有償で屋敷に次々と寄せられるようになりました。


 この半年以上、冒険者として全く依頼をこなしてなかったので、益々冒険者ではなくなってしまったような気がします。

その間にもカッシュたち四魂の誓いは頑張っており、既にAランクの冒険者にまで上り詰めています。皆それぞれ二つ名まで持つほど有名な冒険者になっており、周りからもうすぐSランクではと期待も大きくなっています。

僕も王家からの依頼を毎週こなしたことになっていたので、他の依頼はしてませんが現在Bランクにはなっています。


 冒険者としては微妙ですが、この半年で僕はもう1つの顔でそれなりに有名になっています。それは、生産職の職人としての顔です。

鍛治士と裁縫士として一から鍛え直すことにした僕は、まずは生産に使う道具まで全て手作りで作成し、ボッチの特性を最高に発揮できるように環境を整えたのです。

そしてもう1つ大きな変化だったのは、裁縫の仕事で覚えていた素材強化のスキルが共通スキルの欄にあることに気づいたことでした。

これにより、鍛治や調合の前に素材となる金属や薬草に素材強化を使用することで出来上がりを大きく向上することが判ったのです。


 この技術とボッチの特性が合わさることで、現在僕の作る生産品は評価は悪くてもBランク、上手くいけばSランクのものを作り上げることも可能となったのです。


 僕の作った製品は商業ギルドが名前を伏せて、「職人R」の名前で世に送り出しています。最近ではオークションで高値が付くようになったとグレムリンさんがニコニコ顔で毎日のようにうちにやってきます。


あれからグレムリンさんは何故か僕専用のギルド員となったらしく、他の仕事もないので僕の製品を売り出すことと、よい素材を集めることにと頑張ってくれているのです。

お陰で最近では生産でも大金を稼げるようになっており、益々冒険者としての仕事が遠退いていたのです。


 この頃の僕は屋敷もあり、お金も十分にあり、さらに継続的な収入まである状況だった為、無理して冒険者として活動しなくても、このままのんびりと好きなように生産をしながらのんびりと暮らすことも悪くないのではないかとすら考えるようになっていました。


 おそらくあんな出来事がなければ僕はこのまま一生こんな生活を送っていたのではないでしょうか?

あの悲しい日が僕に徐々に忍び寄ってきていました。

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