金の野獣と薔薇の番

むー

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本編

12月 ②

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「結季くん、早く早くー」
「ま、待って」

期末試験も終わって、もう冬休みを待つだけの土曜日。
瑠可のアドバイスを元に作成した外出許可申請でこの学園に入って初めて許可が降りた。

今日は瑠可とクリスマスパーティー用のプレゼントを買いに行く。
終業式がクリスマスの後のため、毎年、24日に学園の講堂でささやかなクリスマスパーティーを開催する。
その際にくじ引きでのプレゼント交換があるため、それ用に各自で一個用意しないといけない。
オメガの生徒は外出許可が出にくいから、大体は父兄に代わりに買ってきてもらうそうだ。
オレも今回ダメだったら義母に頼むつもりだったけど、瑠可のおかげで出かけることができた。


❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

今回は瑠可プロデュースで買い出しだ。
月に2、3度外出している瑠可は、店に詳しくパーティー用のプレゼントは昼前には決まった。

「結季くん、ボク疲れちゃった。カフェ行こ」
「ちょっと待って、これも買ってくるから」

急いでレジで目当てのものを購入したオレは、手を引かれて瑠可オススメのカフェに向かった。


瑠可のオススメのカフェは電車で二駅移動したオフィス街にあった。

「うわっ、何これ、美味っ」
「でしょ、でしょ!今しか食べれないクリスマス限定ケーキなんだよ。ボクも食べれて良かったーー。うん、美味しいー!」

ブッシュドノエルをカフェオレで楽しむ。
ケーキの甘さが疲れを癒してくれる。

「あれ、結季じゃねぇか」

不意に声を掛けられ振り返る。

「あ…伊吹くん。なんでココに?」
「何でって、ココ、俺の店」
「伊吹くん、ちゃんと働いてたんだ!」
「おい、失礼だな……」

エプロン姿の伊吹くんに驚きを隠せず、うっかり思ったことがスルリと出た。

「結季くん?」
「あ、瑠可。この人、オレの従兄弟」
「いつもご利用ありがとうございます」
「えっ、あっ、はいっ」

ニッコリ営業スマイルの伊吹くんに瑠可は頬をピンクに染めてポーッとしていた。
オレはちょっとうぇっときたけど。

「うわっ」

頭をぐしゃぐしゃされ、恨めしげに見上げると伊吹くんは口の端を上げてニヤリと笑った。

「お子様は、あんま遅くまで遊んでないで早く帰れ」
「わかってるし、まだ昼過ぎたばっか」

伊吹くんとのやりとりに、瑠可はふふふふっと笑う。

「分かればいい。あ、ここの飲食代は俺がご馳走してやる」
「……えっ、と、ありがと」
「ボクの分も?ありがとうございます!」

伊吹くんは伝票を持ってカウンターのスタッフに声をかけ渡すと、奥に引っ込んでいった。
盆正月くらいしか会わない伊吹くんは、楓兄と同じ人種で時々ムカつくことを言うけど基本優しい。
絶対、人を傷つける事はしないから、なんだかんだで憎めないんだよな。


❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

外に出ると少し風が強くなっていてブルリと震えた。
目的は果たしたし、帰ろうと駅へ向かっている途中、瑠可が前から来た人にぶつかられて尻餅をついた。

「瑠可っ」

瑠可の傍に膝をつくとふんわり甘い香りが漂っていた。
キッと瑠可にぶつかった奴を振り返ると、そいつはもうだいぶ遠くまで逃げていた。

「結季くん、ボクは大丈夫だから」

瑠可は笑って立ち上がったが、すぐ膝をついた。

「瑠可?」
「あ……ゆう…きくん……。ん、ちょっとヤバ、い、かも…」

はぁと吐く息が熱く、コート越しでも分かるくらい身体が熱くなっていた。

「まさか…発情期?」
「ん……」

オレの問いに瑠可はなんとか頷くが、だいぶ辛そうだ。
瑠可の発情期は先月のはずなのに何故?
瑠可のバックを漁って抑制剤を探していると、誰かが近づいてきた。

「瑠可、やっと見つけた」
「ぇっ………ぁ…」
「瑠可?」

声を掛けてきた人を見上げた瑠可は、顔を真っ青にしてガクガク震えながらオレにしがみついた。

「瑠可、お前、俺以外とは仲良くするのに、なんで俺には冷たい訳?」
「そ、そんなの……はっ…わかってる、くせに…」
「まあいいよ。俺もお友だちといるから、瑠可もお友だちと一緒に楽しくやろうぜ」
「なっ」

オレと瑠可は背後に回っていた男たちに掴まれ無理矢理立ち上がらせられた。

「おっ、コイツもオメガだ。やっべ、いい匂い」
「は、はなっ…」

後ろから抱え込まれたオレと瑠可はもがいて抵抗するが、体格差からピクリとも動かない。

「瑠可は俺のモノだから、そっちのはお前らの好きにしていい」
「……んっ、やぁ」

目の前の男に手を引かれて抱き込まれた瑠可は、男の腕の中でイヤイヤともがく。
さっきまで瑠可を掴んでいた男がオレの前に立ち、顔を覗いてきた。

「だってよ。こっちもなかなかいいじゃん。これから俺の突っ込んで気持ちよくしてやるからねー。あ、具合がよかったら俺が番にもしてやってもいいよ」
「何言ってんだよ。お前もう番いるだろ。ヤって良かったら俺の番にするから、なー」

ネックプロテクターの上から首筋を撫でてくる男と、オレを抱きこんで口を塞ぐ男が頭の上で好き勝手話す。
休日で人通りの少ない道には、人がいてもオレたちを避けて行くため、誰も助けてくれない。

「じゃあ、ホテル行く……」

ドサリと人が倒れる音がした。
その音にオレの目の前の男が振り返ろうとするが白眼を向いて倒れた。

「え……」

倒れる男の背後からスーツ姿の男が現れた。
オレの後ろで呆然とする男の手首を掴み、オレの口から剥がすと捻り上げた。

「い゛だだだっ…ぐはっ」

スーツ姿の男は、オレから背後の男を引き剥がすとあっという間に昏倒させた。
素早く動くスーツ姿の男を目で追うと、その背後に瑠可が見えた。

「……あっ、瑠可っ」

瑠可を捕まえていた男は瑠可の横で倒れ、瑠可はスーツ姿の男の連れっぽい男に緊急抑制剤を打たれていた。

慌てて瑠可に駆け寄る。
瑠可は意識を失っていたが、呼吸はだいぶ落ち着いていた。

「薬を打ったからもう大丈夫だと思うよ」
「はぁ、良かった」

ニッコリ微笑まれてオレもほっとする。

「はい、コレ」
「えっ?」
「抑制剤。一番弱いものだけど副作用はあまりないから」
「……えっと、なんで?」

徐ろに錠剤とペットボトルのミネラルウォーターをオレに渡すその手は、寒いのか少し震えていた。

「発情期の人に当てられたんじゃない?君からも少し香りがするよ。これ噛んで飲んだらちょっとだけわら早く効くから」
「あ、ありがとうございます。あの……いいんですか?」
「うん、僕には必要のないモノだから」

その言い方からオメガと思しきこの人は、青白い顔で少し悲しげに微笑んだ。
急かされるように、その場で薬を口に含んで水を流し込む。

「真琴様。彼は私が運びます」
「あ、うん。お願いします」

スーツ姿の男は『マコトさま』と呼ばれた人の腕から瑠可を軽々と抱き上げた。
あれ、この人何処かで見たことがあるような…。

「じゃ、僕たちも行こう」
「行こうって……」
「車で送るよ」

マコトさまはオレの手を取り立ち上がらせてくれた。
オレは瑠可と自分の荷物を拾って、乗り込んだ車で寮まで送ってもらった。


……って。
なんでここの生徒だって知ってるんだ?

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