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本編
1月 ②
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「如月結季くんって君で合ってる?」
「え、あ、はい」
古文の授業の後、先生に声を掛けられた。
確か『神凪』という珍しい苗字だと瑠可が言っていた。
珍しい、か…。
って、何だろう、このモヤモヤは…?
考えてもやっぱりよく分からない。
だが、その考えは授業が始まったらなくなった。
「僕は3ヶ月間だけ、このクラスの古文を担当する神凪清暙です。短い間だけどよろしくね」
「はい。よろしくお願いします」
態々、挨拶に来てくれるとはご丁寧な先生だ。
でも、なんだろう。先生の顔を見た時、なんか胸の奥が騒つくような悪寒が走った。
「前回、欠席したようだけど、さっきの僕の授業、わからないところはなかった?」
「あ…はい。たぶん、大丈夫だと思います」
「そう?わからないことがあったらいつでも聞きにおいで。準備室にいるから」
「はい、ありがとうございます」
妙に優しい先生だから、既に生徒には人気があるようだ。
しかもアルファで瑠可はいい匂いだというが、その匂いに俺は頭が少し痛くなった。
だから、出来るだけ関わらないようにしようと思った。
……のだけど。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「ごめんね。手伝ってもらって」
「大丈夫ですよー。なー如月」
「あ、うん」
現在、オレとクラスメイトの矢部の2人で副担が使っている準備室の掃除をしている。
準備室は物置部屋と化していて、その辺の物を触ると埃が舞い使える状態ではないため、クラスからオレと矢部が掃除の手伝いに駆り出された。
準備室は一階にあるため、埃を被った本を窓から外に運び出して、ブルーシートを敷いた上に並べることにした。
幸いそこは日陰になっていて程よく風が通るので、置いておくだけである程度埃が飛んでいってくれた。
とはいえ、時間は限られているからテキパキと働いた。
オレと矢部が本棚に積もった埃をハタキで落としてから雑巾で拭いて、床も掃除機を掛けた後モップで仕上げ、その間に先生には机の上を片付けてもらった。
本に埋もれていたテーブルが現れたから、そこで埃を除いた本を先生に分類してもらい、それをオレたちで本棚に戻していく。
ふと視界の悪さに窓の外を見ると、だいぶ日が落ちてきていた。
片付けも終わりそうにないし、今日は先輩と勉強会はもう無理だなと、ちょっと凹んだ。
「如月くん、疲れちゃった?」
「え、あ、大丈夫です」
「先生、俺は疲れましたー」
矢部が手を上げた。
実のところ、オレもだいぶ疲れてんだけど、それより早く終わりたかった。
「では、手伝ってくれたお礼に、何か食べ物と飲み物を買ってきますよ。何が良いですか?」
「あ、俺買ってきます!」
急に元気になる矢部。
現金なやつだな。
「なら、オレも一緒に買ってくるんで、先生は少し休んでいてください」
そう言ったのだが、矢部がオレの肩を押さえて無理矢理椅子に座らせた。
「俺1人で大丈夫です」
矢部はそう言うと、先生からお金を預かって走っていった。
つか、あいつ元気じゃん。
矢部の帰りを待つ間、本の分類をする先生に向かい合う形で座っているが、なんとなく気不味い。
やっぱり、胸が少し騒めく。
ここにいてはいけないと、警告しているみたいだ。
「如月くんはオメガなんですね」
「え…はい」
「いつ分かったんですか?」
突然振られた先生の質問の意図が判らない。
「高校に上がって直ぐの血液検査でオメガと判定されました。それまではベータでした」
「後天性ですかね?ベータがオメガに変わる例は聞いたことがないので、如月くんのようなタイプは珍しいですね」
「そう、なんですか…」
微笑みながら喋る先生の目は笑っていないように見える。
「君はあの『如月』の家の子なのかい?」
「……はい」
「本当に?」
何だろう。
探られている感じがする。
両親と血が繋がっていないことはこの人には言わない方が良いのかもしれない。
「はい」
とても居心地が悪い。
心臓がバクバクいって苦しいし、先生の匂いでまた頭痛がしてきた。
矢部、早く帰ってこい。
「如月くん、顔色が少し悪いね。大丈夫?」
本を置き、オレに触れようと伸ばされた手を反射的に躱すと、先生の目が微かに大きく開いた。
「ぁ……と、大丈夫です」
「そう」
目を細め答える声。
背中に寒気が走り、頭が脈打つようにズキズキ痛む。
「ぁ…の…」
「心配だな」
先生はそう言うと、立ち上がって俺の目の前に来た。
漂うフェロモンに脚に力が入らず立ち上がれないどころか、体を動かすことができなくなった。
先生はオレの肩に手を置き顔を寄せてきた。
警告のように頭がズキンズキンと痛みが強くなる。
あと数センチ…。
「ぁ……」
「おっ待たせしましたぁー!」
空気を打ち破る能天気な声と共にパンパンに詰まった袋を二つ持った矢部が帰ってきた。
矢部の登場により先生がオレから離れ、それによりオレの身体の緊張が解けた。
「ああのっ!オレ、用事あるんでこれで失礼します!」
ガバリと立ち上がって、逃げるように準備室を後にした。
翌日、矢部に残りの片付け1人で全部やらされたと文句を言われたが聞き流した。
「え、あ、はい」
古文の授業の後、先生に声を掛けられた。
確か『神凪』という珍しい苗字だと瑠可が言っていた。
珍しい、か…。
って、何だろう、このモヤモヤは…?
考えてもやっぱりよく分からない。
だが、その考えは授業が始まったらなくなった。
「僕は3ヶ月間だけ、このクラスの古文を担当する神凪清暙です。短い間だけどよろしくね」
「はい。よろしくお願いします」
態々、挨拶に来てくれるとはご丁寧な先生だ。
でも、なんだろう。先生の顔を見た時、なんか胸の奥が騒つくような悪寒が走った。
「前回、欠席したようだけど、さっきの僕の授業、わからないところはなかった?」
「あ…はい。たぶん、大丈夫だと思います」
「そう?わからないことがあったらいつでも聞きにおいで。準備室にいるから」
「はい、ありがとうございます」
妙に優しい先生だから、既に生徒には人気があるようだ。
しかもアルファで瑠可はいい匂いだというが、その匂いに俺は頭が少し痛くなった。
だから、出来るだけ関わらないようにしようと思った。
……のだけど。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
「ごめんね。手伝ってもらって」
「大丈夫ですよー。なー如月」
「あ、うん」
現在、オレとクラスメイトの矢部の2人で副担が使っている準備室の掃除をしている。
準備室は物置部屋と化していて、その辺の物を触ると埃が舞い使える状態ではないため、クラスからオレと矢部が掃除の手伝いに駆り出された。
準備室は一階にあるため、埃を被った本を窓から外に運び出して、ブルーシートを敷いた上に並べることにした。
幸いそこは日陰になっていて程よく風が通るので、置いておくだけである程度埃が飛んでいってくれた。
とはいえ、時間は限られているからテキパキと働いた。
オレと矢部が本棚に積もった埃をハタキで落としてから雑巾で拭いて、床も掃除機を掛けた後モップで仕上げ、その間に先生には机の上を片付けてもらった。
本に埋もれていたテーブルが現れたから、そこで埃を除いた本を先生に分類してもらい、それをオレたちで本棚に戻していく。
ふと視界の悪さに窓の外を見ると、だいぶ日が落ちてきていた。
片付けも終わりそうにないし、今日は先輩と勉強会はもう無理だなと、ちょっと凹んだ。
「如月くん、疲れちゃった?」
「え、あ、大丈夫です」
「先生、俺は疲れましたー」
矢部が手を上げた。
実のところ、オレもだいぶ疲れてんだけど、それより早く終わりたかった。
「では、手伝ってくれたお礼に、何か食べ物と飲み物を買ってきますよ。何が良いですか?」
「あ、俺買ってきます!」
急に元気になる矢部。
現金なやつだな。
「なら、オレも一緒に買ってくるんで、先生は少し休んでいてください」
そう言ったのだが、矢部がオレの肩を押さえて無理矢理椅子に座らせた。
「俺1人で大丈夫です」
矢部はそう言うと、先生からお金を預かって走っていった。
つか、あいつ元気じゃん。
矢部の帰りを待つ間、本の分類をする先生に向かい合う形で座っているが、なんとなく気不味い。
やっぱり、胸が少し騒めく。
ここにいてはいけないと、警告しているみたいだ。
「如月くんはオメガなんですね」
「え…はい」
「いつ分かったんですか?」
突然振られた先生の質問の意図が判らない。
「高校に上がって直ぐの血液検査でオメガと判定されました。それまではベータでした」
「後天性ですかね?ベータがオメガに変わる例は聞いたことがないので、如月くんのようなタイプは珍しいですね」
「そう、なんですか…」
微笑みながら喋る先生の目は笑っていないように見える。
「君はあの『如月』の家の子なのかい?」
「……はい」
「本当に?」
何だろう。
探られている感じがする。
両親と血が繋がっていないことはこの人には言わない方が良いのかもしれない。
「はい」
とても居心地が悪い。
心臓がバクバクいって苦しいし、先生の匂いでまた頭痛がしてきた。
矢部、早く帰ってこい。
「如月くん、顔色が少し悪いね。大丈夫?」
本を置き、オレに触れようと伸ばされた手を反射的に躱すと、先生の目が微かに大きく開いた。
「ぁ……と、大丈夫です」
「そう」
目を細め答える声。
背中に寒気が走り、頭が脈打つようにズキズキ痛む。
「ぁ…の…」
「心配だな」
先生はそう言うと、立ち上がって俺の目の前に来た。
漂うフェロモンに脚に力が入らず立ち上がれないどころか、体を動かすことができなくなった。
先生はオレの肩に手を置き顔を寄せてきた。
警告のように頭がズキンズキンと痛みが強くなる。
あと数センチ…。
「ぁ……」
「おっ待たせしましたぁー!」
空気を打ち破る能天気な声と共にパンパンに詰まった袋を二つ持った矢部が帰ってきた。
矢部の登場により先生がオレから離れ、それによりオレの身体の緊張が解けた。
「ああのっ!オレ、用事あるんでこれで失礼します!」
ガバリと立ち上がって、逃げるように準備室を後にした。
翌日、矢部に残りの片付け1人で全部やらされたと文句を言われたが聞き流した。
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