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第2部
2-52
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怖い怖いお嬢様方の巣窟から脱出したオレはバラ園に逃げ込んだ。
「ふぃぃ、疲れたぁ」
バラ園の奥まで進んだ先にあるベンチに座ると真っ先にパンプスを脱いだ。
ヒールから解放された足の開放感は最高で暫く浸った。
こんな不安定な靴をなんでもない顔で履きこなす女の人ってすげぇなと考えながら足を見ると至る所が靴擦れで赤くなっていた。
踵なんて皮が剥けて血が滲んでいる。
あそこから逃げることでいっぱいいっぱいでこんなに酷かったとは気付かなかった。
「気づいたら痛くなってきたかも……」
足をぷらぷらさせていると少しだけ痛みが和らいような気がする。
でも移動するときにはまたこの靴を履かなければいけないと考えるとため息が溢れた。
「このまま裸足でお城に帰っちゃおうかな……」
そんなことを呟いているとカサッと草を踏む音がした。
「あの……ユームさん、少しよろしいかしら?」
「……ぇ……マリフェス、様?」
振り返るとそこにいたのはマリフェス嬢だった。
脱ぎ捨てたパンプスを慌てて履き直して少しずれると、マリフェス様は空いた場所に腰掛けた。
オレの隣に座った彼女は初めて会った宴の時ともさっきのお茶会の席とも違っていた。
言いにくいことがあるのかすごく気不味そうな様子に思わず身構えてしまう。
「……あの……あのね……貴女にお話しがあって……あの……お話というのは……」
俯きモジモジする彼女の顔を見ようと覗き込む。
「……マリフェスさっ、まぁっ?」
「あ、貴女の住んでいる街や人のことを私に教えてくれないかしらっ」
オレの両手を掴んだマリフェス様は、今まで見たこともないほど好奇心に目を輝かせてオレを見た。
「あ、あの……ど、ういう、ことですか?」
「私ねっ、私はーー」
マリフェス様が続きを言おうとした時、ガサガサッと草を踏み締める音がした。
2人同時に振り返ると、そこには丸太……基、マルタ嬢が顔を真っ赤にして仁王立ちしていた。
「ちょっとそこの平民っ。マリフェス様に何にしようとしてるのっ。その汚い手を離しなさいっ」
丸太……じゃなくてマルタ嬢が突進してきた。
そしてーー
「「あっ」」
つまづいた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
オレの身体はその日の夜、やっと元の男の姿に戻った。
「ふぃぃ、疲れたぁ」
バラ園の奥まで進んだ先にあるベンチに座ると真っ先にパンプスを脱いだ。
ヒールから解放された足の開放感は最高で暫く浸った。
こんな不安定な靴をなんでもない顔で履きこなす女の人ってすげぇなと考えながら足を見ると至る所が靴擦れで赤くなっていた。
踵なんて皮が剥けて血が滲んでいる。
あそこから逃げることでいっぱいいっぱいでこんなに酷かったとは気付かなかった。
「気づいたら痛くなってきたかも……」
足をぷらぷらさせていると少しだけ痛みが和らいような気がする。
でも移動するときにはまたこの靴を履かなければいけないと考えるとため息が溢れた。
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そんなことを呟いているとカサッと草を踏む音がした。
「あの……ユームさん、少しよろしいかしら?」
「……ぇ……マリフェス、様?」
振り返るとそこにいたのはマリフェス嬢だった。
脱ぎ捨てたパンプスを慌てて履き直して少しずれると、マリフェス様は空いた場所に腰掛けた。
オレの隣に座った彼女は初めて会った宴の時ともさっきのお茶会の席とも違っていた。
言いにくいことがあるのかすごく気不味そうな様子に思わず身構えてしまう。
「……あの……あのね……貴女にお話しがあって……あの……お話というのは……」
俯きモジモジする彼女の顔を見ようと覗き込む。
「……マリフェスさっ、まぁっ?」
「あ、貴女の住んでいる街や人のことを私に教えてくれないかしらっ」
オレの両手を掴んだマリフェス様は、今まで見たこともないほど好奇心に目を輝かせてオレを見た。
「あ、あの……ど、ういう、ことですか?」
「私ねっ、私はーー」
マリフェス様が続きを言おうとした時、ガサガサッと草を踏み締める音がした。
2人同時に振り返ると、そこには丸太……基、マルタ嬢が顔を真っ赤にして仁王立ちしていた。
「ちょっとそこの平民っ。マリフェス様に何にしようとしてるのっ。その汚い手を離しなさいっ」
丸太……じゃなくてマルタ嬢が突進してきた。
そしてーー
「「あっ」」
つまづいた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
オレの身体はその日の夜、やっと元の男の姿に戻った。
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