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【番外編】沙也のお話 5
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「店長」
営業終了後、掃除を終えると他のメンバーが帰るのを待ってからパントリーにいる声を掛けた。
「ん、どうした?」
「あのぅ、昨日はありがとうございました。それで……」
「ああ、鍵か」
「はい」
差し出した手に借りていた部屋の鍵を乗せる。
なんとなく返すのが名残惜しい気持ちが湧いた。
「飯、ちゃんと食ったか?」
「フレンチトースト美味しかった。ご馳走様です」
「そりゃ良かった」
店長は鍵をポケットに入れるとニコッと笑った。
あれ……胸が……。
違和感に胸を押さえる。
「どうした?」
「ううんっ。あの、朝のフレンチトーストも夜食のサンドウィッチも美味しかったから作り方教えて欲しいなぁ……なんて」
咄嗟に適当なことを言う。
や、実際に教えてほしいけど。
「今度な。途中まで送ってやるから今日はもう帰って休め。昨日の疲れ、まだ残ってんだろ?それに他人のベッドは落ち着かなかっただろ?」
「あ……」
ぐっすり二度寝してスッキリ爽快でした。
すれ違い様に頭をポンと撫でられ微笑まれたら言えない……。
着替えが終わった店長と並んで駅まで歩く。
昨日のこと、今朝の自分の行動を思い出してちょっと気不味い。
昨日のあの瞬間までこんなんじゃなかったのに、今は店長がキラキラして見える。
「あ」
「えっ」
突然こっちを向かれてドキッとする。
「そういえば、沙也、俺の名前思い出した?」
「あ……えと…」
忘れてた。
昨日は喉のとこまで出てきてたんだけど、今ビックリしたせいで飛んでしまった。
居た堪れず目を逸らすと、ブハッと笑われた。
「動揺しすぎ。忘れたなら忘れたって言えよ」
「ご、ごめんなさい」
「いいよ」
また頭を撫でられる。
その手は優しくてどんな顔をしているか見たくなったけど、顔を上げられなかった。
今見たら何かが変わってしまうような気がして。
それでも深く息を吐いて新しい空気を吸い込むと顔を上げる。
不思議そうな顔をした目と合う。
「もう忘れないから、名前っ教えて下さい」
今度は絶対忘れない自信があるから。
店長は少し考える素振りをしてニッと笑う。
「教えない」
「えっ⁉︎」
「頑張って思い出せ……思い出したら呼んでくれ」
そう言って優しく微笑まれると胸がギュッと締められるような錯覚を感じた。
店長の名前はそれからすぐ思い出したけど、悔しいから黙っていた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
あの時の気持ちがなんなのか分からなかった。
分かったのは半年後。
そしてーー
「沙也」
「……伊吹さんっ」
そう呼び合う関係に変わるのは更にもう少し後の話。
【沙也のお話】終わり
____________________
21時に最後の番外編UPします。
営業終了後、掃除を終えると他のメンバーが帰るのを待ってからパントリーにいる声を掛けた。
「ん、どうした?」
「あのぅ、昨日はありがとうございました。それで……」
「ああ、鍵か」
「はい」
差し出した手に借りていた部屋の鍵を乗せる。
なんとなく返すのが名残惜しい気持ちが湧いた。
「飯、ちゃんと食ったか?」
「フレンチトースト美味しかった。ご馳走様です」
「そりゃ良かった」
店長は鍵をポケットに入れるとニコッと笑った。
あれ……胸が……。
違和感に胸を押さえる。
「どうした?」
「ううんっ。あの、朝のフレンチトーストも夜食のサンドウィッチも美味しかったから作り方教えて欲しいなぁ……なんて」
咄嗟に適当なことを言う。
や、実際に教えてほしいけど。
「今度な。途中まで送ってやるから今日はもう帰って休め。昨日の疲れ、まだ残ってんだろ?それに他人のベッドは落ち着かなかっただろ?」
「あ……」
ぐっすり二度寝してスッキリ爽快でした。
すれ違い様に頭をポンと撫でられ微笑まれたら言えない……。
着替えが終わった店長と並んで駅まで歩く。
昨日のこと、今朝の自分の行動を思い出してちょっと気不味い。
昨日のあの瞬間までこんなんじゃなかったのに、今は店長がキラキラして見える。
「あ」
「えっ」
突然こっちを向かれてドキッとする。
「そういえば、沙也、俺の名前思い出した?」
「あ……えと…」
忘れてた。
昨日は喉のとこまで出てきてたんだけど、今ビックリしたせいで飛んでしまった。
居た堪れず目を逸らすと、ブハッと笑われた。
「動揺しすぎ。忘れたなら忘れたって言えよ」
「ご、ごめんなさい」
「いいよ」
また頭を撫でられる。
その手は優しくてどんな顔をしているか見たくなったけど、顔を上げられなかった。
今見たら何かが変わってしまうような気がして。
それでも深く息を吐いて新しい空気を吸い込むと顔を上げる。
不思議そうな顔をした目と合う。
「もう忘れないから、名前っ教えて下さい」
今度は絶対忘れない自信があるから。
店長は少し考える素振りをしてニッと笑う。
「教えない」
「えっ⁉︎」
「頑張って思い出せ……思い出したら呼んでくれ」
そう言って優しく微笑まれると胸がギュッと締められるような錯覚を感じた。
店長の名前はそれからすぐ思い出したけど、悔しいから黙っていた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
あの時の気持ちがなんなのか分からなかった。
分かったのは半年後。
そしてーー
「沙也」
「……伊吹さんっ」
そう呼び合う関係に変わるのは更にもう少し後の話。
【沙也のお話】終わり
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21時に最後の番外編UPします。
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