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第十五話 正体
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アリスは意を決したように小さな深呼吸をすると、全員の視線が集まる船内の中央に歩み出た。
彼女は、履き慣れないズボンの裾を優雅につまみ上げると、背筋をピンと伸ばし、流れるような動作で膝を折った。その洗練された所作は、薄汚れた服を着ていても隠しきれない、生まれながらの気品を漂わせていた。
「改めまして、わたくしの名前は、アリス・シビーク・カルファス。カルファス王国の王女でございます」
凛としたその声が、静まり返った船内に響いた。
アリスの打ち明けに、船内には驚きと共に、妙に納得したような空気が流れた。
「……やっぱり、そういうことだったのね」
カリーナは、腕を組みながら深く頷いた。
「知っていたのか?」
ブレイブが眉間に皺を寄せる。
「姫かどうかまでは確信がなかったけど、そういう『やんごとなき身分』なのは大体、想像がついていたわ」
「経験則みたいなやつか?」
「そうね……纏っている空気が、普通の子とは違ったもの」
カリーナの言葉には、どこか自分自身の過去を重ねているような響きがあった。
「その……」
アリスが不安げに瞳を揺らす。
「ごめんね、話を遮っちゃって。続けて、アリス」
カリーナが優しく促すと、アリスは「はい」と小さく頷き、再び口を開いた。
「わたくしの依頼は……お父様とお母様を、助けて欲しいのです」
「助ける?」
「一年前私の国が……何者かに乗っ取られてしまいました。お父様とお母様は、その者たちに捕らわれ、城の地下に幽閉されてしまったのです」
アリスは、恐怖を押し殺すように胸の前で手を握りしめた。
「国の兵士がいるだろ?何していたんだ? 王が捕まるなんてよっぽどだぞ」
アイに取り上げられた芋を奪い返そうとしていたブルーが、手をピシャリと叩かれながら尋ねた。
アリスは首を横に振る。
「兵士たちは……国が乗っ取られる前に、無実の罪を着せられたり、解雇されたりして、散り散りになっていました」
「……内部から崩されたか。誰かの計画だろう」
サラマンダーが静かに呟く。
「わたくしは、何とか国を助けて貰おうと、乳母の手引きで馬車に隠れて城外へ出ました。幾つもの国を渡って……でも、盗賊団の人たちに見つかり……この国まで連れてこられたのです」
アリスはそこまで言うと、こらえきれずに顔を伏せた。
「あー、なるほどな」
ブレイブが、パチンと指を鳴らして納得した声を上げた。
「どうした? ブレイブ」
「いや、俺の中で点と点が繋がった気がしてな。アリス、お前が捕まったのって共和国だろ?」
「は、はい」
「あの地下にあった『赤蛇』のマークをつけた盗賊団。そいつらが関わっていると俺は踏んだ。アジトがカルファス王国と貿易するためのこの港にあったことと、王国の姫であるアリスを捕らえていたこと。これが無関係だとは考えにくいだろ?」
ブレイブは、操縦席をクルクルと回しながら、名探偵のように語った。
「つまりだ。俺たちが潰したあのアジトは、王国の乗っ取りを裏で支援している、もしくは黒幕である可能性がある。どうだ? この俺の完璧な考察」
「えーっと……」
アリスは、早口でまくし立てるブレイブの言葉に、困ったように眉を曲げた。
「あんたの話は長いし、難しいわよ」
カリーナが呆れたようにツッコミを入れる。
「そうですねー」
ブレイブは不満げに席を回すと、カリーナ達に背を向けた。
またしばしの沈黙が場に流れた。
しばらく経ってから、アリスは再び真剣な眼差しをみんなに向けた。
そして、頭を下げた。
「どうか……皆さんのお力をお貸し下さい! お金なら、国を取り戻せば必ずお支払いします! だから……お願いします!」
小さな姫の震える肩と、その力強い訴えから、必死さが伝わってくる。
それはかつて国を追われ、何もかも失った時のカリーナの心を動かすには、十分であった。
「良いわよ」
カリーナは、迷うことなくあっさりと承諾した。
アリスが驚いて顔を上げる。
「え……?」
「子供がそんな顔をするもんじゃないわ。泣かなくていい」
カリーナが微笑みかけると、アリスの張り詰めていた表情が一気に和らぎ、大きな瞳からポロポロと大粒の涙が溢れ出した。
「うっ……うぅ……ありがとうございます……!」
カリーナはその涙を指で優しく拭い取ると、アリスの小さな手を両手で包み込み、固い握手を交わした。
「アリスの父ちゃん母ちゃんを助けるったって、兵士も機能していない国なんだろ? どうすんだ?」
ブレイブが背を向けたまま、現実的な問いを投げる。
「どうするも何も、今ここで作戦を考えても仕方ないでしょ。アリスの話だけだと実情が分からないもの」
「それは確かに……そうか」
「じゃあ決まりね。私たちの行き先は、カルファス王国よ。みんな、良いね?」
カリーナが皆んなを見渡す。
全員、頷いて返事をした。
全員から返事をもらったカリーナは、涙を拭いて笑顔になったアリスを見て、ニッコリと笑った。
「というわけでアリス。報酬は、国一つ分くらい弾んでもらうわよ?」
「はい! 」
アリスは涙目で、精一杯のお姫様スマイルを見せた。
「なんか今、サラッと凄いこと言わなかったか?」
彼女は、履き慣れないズボンの裾を優雅につまみ上げると、背筋をピンと伸ばし、流れるような動作で膝を折った。その洗練された所作は、薄汚れた服を着ていても隠しきれない、生まれながらの気品を漂わせていた。
「改めまして、わたくしの名前は、アリス・シビーク・カルファス。カルファス王国の王女でございます」
凛としたその声が、静まり返った船内に響いた。
アリスの打ち明けに、船内には驚きと共に、妙に納得したような空気が流れた。
「……やっぱり、そういうことだったのね」
カリーナは、腕を組みながら深く頷いた。
「知っていたのか?」
ブレイブが眉間に皺を寄せる。
「姫かどうかまでは確信がなかったけど、そういう『やんごとなき身分』なのは大体、想像がついていたわ」
「経験則みたいなやつか?」
「そうね……纏っている空気が、普通の子とは違ったもの」
カリーナの言葉には、どこか自分自身の過去を重ねているような響きがあった。
「その……」
アリスが不安げに瞳を揺らす。
「ごめんね、話を遮っちゃって。続けて、アリス」
カリーナが優しく促すと、アリスは「はい」と小さく頷き、再び口を開いた。
「わたくしの依頼は……お父様とお母様を、助けて欲しいのです」
「助ける?」
「一年前私の国が……何者かに乗っ取られてしまいました。お父様とお母様は、その者たちに捕らわれ、城の地下に幽閉されてしまったのです」
アリスは、恐怖を押し殺すように胸の前で手を握りしめた。
「国の兵士がいるだろ?何していたんだ? 王が捕まるなんてよっぽどだぞ」
アイに取り上げられた芋を奪い返そうとしていたブルーが、手をピシャリと叩かれながら尋ねた。
アリスは首を横に振る。
「兵士たちは……国が乗っ取られる前に、無実の罪を着せられたり、解雇されたりして、散り散りになっていました」
「……内部から崩されたか。誰かの計画だろう」
サラマンダーが静かに呟く。
「わたくしは、何とか国を助けて貰おうと、乳母の手引きで馬車に隠れて城外へ出ました。幾つもの国を渡って……でも、盗賊団の人たちに見つかり……この国まで連れてこられたのです」
アリスはそこまで言うと、こらえきれずに顔を伏せた。
「あー、なるほどな」
ブレイブが、パチンと指を鳴らして納得した声を上げた。
「どうした? ブレイブ」
「いや、俺の中で点と点が繋がった気がしてな。アリス、お前が捕まったのって共和国だろ?」
「は、はい」
「あの地下にあった『赤蛇』のマークをつけた盗賊団。そいつらが関わっていると俺は踏んだ。アジトがカルファス王国と貿易するためのこの港にあったことと、王国の姫であるアリスを捕らえていたこと。これが無関係だとは考えにくいだろ?」
ブレイブは、操縦席をクルクルと回しながら、名探偵のように語った。
「つまりだ。俺たちが潰したあのアジトは、王国の乗っ取りを裏で支援している、もしくは黒幕である可能性がある。どうだ? この俺の完璧な考察」
「えーっと……」
アリスは、早口でまくし立てるブレイブの言葉に、困ったように眉を曲げた。
「あんたの話は長いし、難しいわよ」
カリーナが呆れたようにツッコミを入れる。
「そうですねー」
ブレイブは不満げに席を回すと、カリーナ達に背を向けた。
またしばしの沈黙が場に流れた。
しばらく経ってから、アリスは再び真剣な眼差しをみんなに向けた。
そして、頭を下げた。
「どうか……皆さんのお力をお貸し下さい! お金なら、国を取り戻せば必ずお支払いします! だから……お願いします!」
小さな姫の震える肩と、その力強い訴えから、必死さが伝わってくる。
それはかつて国を追われ、何もかも失った時のカリーナの心を動かすには、十分であった。
「良いわよ」
カリーナは、迷うことなくあっさりと承諾した。
アリスが驚いて顔を上げる。
「え……?」
「子供がそんな顔をするもんじゃないわ。泣かなくていい」
カリーナが微笑みかけると、アリスの張り詰めていた表情が一気に和らぎ、大きな瞳からポロポロと大粒の涙が溢れ出した。
「うっ……うぅ……ありがとうございます……!」
カリーナはその涙を指で優しく拭い取ると、アリスの小さな手を両手で包み込み、固い握手を交わした。
「アリスの父ちゃん母ちゃんを助けるったって、兵士も機能していない国なんだろ? どうすんだ?」
ブレイブが背を向けたまま、現実的な問いを投げる。
「どうするも何も、今ここで作戦を考えても仕方ないでしょ。アリスの話だけだと実情が分からないもの」
「それは確かに……そうか」
「じゃあ決まりね。私たちの行き先は、カルファス王国よ。みんな、良いね?」
カリーナが皆んなを見渡す。
全員、頷いて返事をした。
全員から返事をもらったカリーナは、涙を拭いて笑顔になったアリスを見て、ニッコリと笑った。
「というわけでアリス。報酬は、国一つ分くらい弾んでもらうわよ?」
「はい! 」
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