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第三十一話 ミスリルの体
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「全員、何をしているのですか!?何故これほどまでに手間取っているのですか」
カルファス城四階、執務室。未だ戦いの終結しない王都の光景に苛立っていたクラリオは、怒りに任せて机を叩く。クラリオの剣幕に、目の前で戦況報告を読み上げようとしていた兵士の肩が、ビクッと跳ね上がった。
「読み上げます。報告によれば……王都の市街地戦に、突如としてアリス王女が現れ、戦況が一気に劣勢へ……」
「小娘一匹ごときに手こずっているのですか!?さっさと始末してください!」
クラリオは顔を真っ赤にして叫んだ。
しかし、報告はそれだけでは終わらず、兵士は頬を伝う冷や汗を拭い、声を震わせながら続けた。
「それともうひとつ……ご報告が」
「言って下さい」
「城内に侵入した者たちの勢いが、全く止まりません」
「グルードのところの手下を向かわせたでしょうが!」
「それが……」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴン!!!
部屋の外の廊下から衝撃音が聞こえてくる。廊下を守護する兵士たちの絶叫が執務室にまで響き渡り、クラリオは目の前の兵士をジロリと睨んだ。
「テメェらのボスはどこにいる!」
聞こえてくるそれは猛獣の咆哮であった。
「よし分かったぞ、ここだな?」
バキバキバキバキッ!!
突如、凄まじい力で、執務室の扉が音を立てて割れ始める。
舞い上がる粉塵の中から現れたのは、全身が真紅に染まったオーク――ブルーであった。
「クラリオ様、早くお逃げください!」
報告していた兵士が剣を抜き、ブルーの前に立ちはだかる。
「なんだ、守りは一人か?」
ブルーはボキボキと指を鳴らすと、兵士に突進した。
一瞬で距離を詰めたブルーは、剣を構えた兵士の頭を鷲掴みすると、そのまま窓の外へ放り投げる。ガラスを突き破って飛んでいった兵士の悲鳴が遠ざかっていく。
「……あいつどこへ逃げた?」
ブルーは兵士を投げ飛ばしたその一瞬で、もう一人の姿を見失っていた。
野生の勘で、入り口へと視線を向けてみると、執務室の割れた扉から外へ這い出ようとしているクラリオの必死な後ろ姿を見つけた。
「何勝手に逃げようとしてんだ?」
ブルーは不敵な笑みを浮かべると、クラリオを追いかけた。
◆◇◆◇
背後から猛牛の如く迫るブルーから、クラリオは必死に逃走していた。
クラリオに命令され、ブルーを止めようと兵士たちが奮闘するが、その突進の前では、そこら辺の兵士など道端の石ころも同然で、止めることなど不可能であった。
「ぐあああ」
「ぎゃあああ」
「退きやがれ!」
それでもクラリオは、兵士たちをブルーの突進を止めるための壁として扱う。道端の小石といっても積み上がればそれなりの大きさになる。
クラリオは兵士の壁を使い、なんとかブルーとの距離を離すと、廊下に隠されている緊急時用の隠し扉を使い、ブルーを撒くことに成功した。
クラリオは息を切らしながら、避難用の螺旋階段を駆け降りると、城の最深部――地下保管室へ向かう。
(予定とは違いますが、始めましょうか)
薄暗い地下通路を歩き、クラリオは目的地に到着する。地下保管室の扉を守る二人の兵士は、形相を変えて現れたクラリオに驚き、ひざまづいて出迎えた。
「扉を開けてください」というクラリオの命に従い、兵士たちは扉が開ける。
そこには、トゥオブ商会のジルから頂いたドワーフ製の最新型兵器が保管されていた。
クラリオは狂気を孕んだ目でその兵器を見つめると、愛おしそうに、冷たい金属の体をそっと撫でた。
そのまま操縦席へ乗り込むと、起動スイッチを入れて操作させる。
「今からこの私が直々に、侵入者に地獄を体験させてあげますよ」
クラリオは保管室に垂れている太い紐を引く。すると、巨大な金属の鎖で吊るされていた地下保管室の床全体が、音を立てながら動き始めた。
ガガガガガ……カラ……カラ……カラ……
上昇を始める巨大な昇降床に乗って、クラリオは三階へと上がった。
◆◇◆◇
ブルーは、目の前に現れた謎の乗り物に驚愕していた。
それは全身が金属で出来ていて、球体の胴体から手足が伸びていた。胴体の中央には小さなガラス窓がついており、中からクラリオがブルーを覗いていた。
「ふふふふふ……さきほどのオークよ。私と戦おうではありませんか」
「逃げるのをやめたのは、その中に隠れたからか?小心者だな」
ブルーは走り出すと、兵器の胴体を思い切りに殴った。
ゴンッ!
「痛てぇぇぇ」
ブルーは痺れる手を押さえて、撫でた。ブルーの打撃に、兵器はびくともしていなかった。
「硬すぎだろ!」
「あなたの攻撃など、このミスリルで出来た体には通じませんよ」
クラリオは操縦席のレバーを引いて腕を動かすと、油断していたブルーの体を横殴りにする。
ミシッ!
「ぐあっ!!」
ブルーの体は廊下の壁に勢いよく叩きつけられ、床に落ちた。
「先ほどまでの威勢はどこに消えたのですか?」
兵器は地面に横たわるブルーに近づいた。
「消えてねぇよ!」
ブルーはゆっくりと立ち上がると、兵器を蹴ろうとその足を伸ばす。
しかし、その足は兵器の長い腕に掴まれてしまった。
足を掴まれ宙づりになったブルーの体を兵器の腕は掴み直す。
腹を掴まれたブルーは手足をバタつかせて、なんとかそこから抜け出そうとするが、兵器はブルーを思い切り握りつぶした。
ミシミシミシ
「ぐあぁぁああああああああ!!!」
骨が軋むほどの圧力にブルーが叫び声を上げる。
「素晴らしい悲鳴ですね。もっと聞かせてください」
そう言うとクラリオは、ブルーの体を思い切り大理石の床に投げつけた。
ズドオオオオン……パラパラパラ。
凄まじい衝撃音と共に床に穴が空き、ブルーの体は三階から一階へと一気に突き落とされた。
カルファス城四階、執務室。未だ戦いの終結しない王都の光景に苛立っていたクラリオは、怒りに任せて机を叩く。クラリオの剣幕に、目の前で戦況報告を読み上げようとしていた兵士の肩が、ビクッと跳ね上がった。
「読み上げます。報告によれば……王都の市街地戦に、突如としてアリス王女が現れ、戦況が一気に劣勢へ……」
「小娘一匹ごときに手こずっているのですか!?さっさと始末してください!」
クラリオは顔を真っ赤にして叫んだ。
しかし、報告はそれだけでは終わらず、兵士は頬を伝う冷や汗を拭い、声を震わせながら続けた。
「それともうひとつ……ご報告が」
「言って下さい」
「城内に侵入した者たちの勢いが、全く止まりません」
「グルードのところの手下を向かわせたでしょうが!」
「それが……」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴン!!!
部屋の外の廊下から衝撃音が聞こえてくる。廊下を守護する兵士たちの絶叫が執務室にまで響き渡り、クラリオは目の前の兵士をジロリと睨んだ。
「テメェらのボスはどこにいる!」
聞こえてくるそれは猛獣の咆哮であった。
「よし分かったぞ、ここだな?」
バキバキバキバキッ!!
突如、凄まじい力で、執務室の扉が音を立てて割れ始める。
舞い上がる粉塵の中から現れたのは、全身が真紅に染まったオーク――ブルーであった。
「クラリオ様、早くお逃げください!」
報告していた兵士が剣を抜き、ブルーの前に立ちはだかる。
「なんだ、守りは一人か?」
ブルーはボキボキと指を鳴らすと、兵士に突進した。
一瞬で距離を詰めたブルーは、剣を構えた兵士の頭を鷲掴みすると、そのまま窓の外へ放り投げる。ガラスを突き破って飛んでいった兵士の悲鳴が遠ざかっていく。
「……あいつどこへ逃げた?」
ブルーは兵士を投げ飛ばしたその一瞬で、もう一人の姿を見失っていた。
野生の勘で、入り口へと視線を向けてみると、執務室の割れた扉から外へ這い出ようとしているクラリオの必死な後ろ姿を見つけた。
「何勝手に逃げようとしてんだ?」
ブルーは不敵な笑みを浮かべると、クラリオを追いかけた。
◆◇◆◇
背後から猛牛の如く迫るブルーから、クラリオは必死に逃走していた。
クラリオに命令され、ブルーを止めようと兵士たちが奮闘するが、その突進の前では、そこら辺の兵士など道端の石ころも同然で、止めることなど不可能であった。
「ぐあああ」
「ぎゃあああ」
「退きやがれ!」
それでもクラリオは、兵士たちをブルーの突進を止めるための壁として扱う。道端の小石といっても積み上がればそれなりの大きさになる。
クラリオは兵士の壁を使い、なんとかブルーとの距離を離すと、廊下に隠されている緊急時用の隠し扉を使い、ブルーを撒くことに成功した。
クラリオは息を切らしながら、避難用の螺旋階段を駆け降りると、城の最深部――地下保管室へ向かう。
(予定とは違いますが、始めましょうか)
薄暗い地下通路を歩き、クラリオは目的地に到着する。地下保管室の扉を守る二人の兵士は、形相を変えて現れたクラリオに驚き、ひざまづいて出迎えた。
「扉を開けてください」というクラリオの命に従い、兵士たちは扉が開ける。
そこには、トゥオブ商会のジルから頂いたドワーフ製の最新型兵器が保管されていた。
クラリオは狂気を孕んだ目でその兵器を見つめると、愛おしそうに、冷たい金属の体をそっと撫でた。
そのまま操縦席へ乗り込むと、起動スイッチを入れて操作させる。
「今からこの私が直々に、侵入者に地獄を体験させてあげますよ」
クラリオは保管室に垂れている太い紐を引く。すると、巨大な金属の鎖で吊るされていた地下保管室の床全体が、音を立てながら動き始めた。
ガガガガガ……カラ……カラ……カラ……
上昇を始める巨大な昇降床に乗って、クラリオは三階へと上がった。
◆◇◆◇
ブルーは、目の前に現れた謎の乗り物に驚愕していた。
それは全身が金属で出来ていて、球体の胴体から手足が伸びていた。胴体の中央には小さなガラス窓がついており、中からクラリオがブルーを覗いていた。
「ふふふふふ……さきほどのオークよ。私と戦おうではありませんか」
「逃げるのをやめたのは、その中に隠れたからか?小心者だな」
ブルーは走り出すと、兵器の胴体を思い切りに殴った。
ゴンッ!
「痛てぇぇぇ」
ブルーは痺れる手を押さえて、撫でた。ブルーの打撃に、兵器はびくともしていなかった。
「硬すぎだろ!」
「あなたの攻撃など、このミスリルで出来た体には通じませんよ」
クラリオは操縦席のレバーを引いて腕を動かすと、油断していたブルーの体を横殴りにする。
ミシッ!
「ぐあっ!!」
ブルーの体は廊下の壁に勢いよく叩きつけられ、床に落ちた。
「先ほどまでの威勢はどこに消えたのですか?」
兵器は地面に横たわるブルーに近づいた。
「消えてねぇよ!」
ブルーはゆっくりと立ち上がると、兵器を蹴ろうとその足を伸ばす。
しかし、その足は兵器の長い腕に掴まれてしまった。
足を掴まれ宙づりになったブルーの体を兵器の腕は掴み直す。
腹を掴まれたブルーは手足をバタつかせて、なんとかそこから抜け出そうとするが、兵器はブルーを思い切り握りつぶした。
ミシミシミシ
「ぐあぁぁああああああああ!!!」
骨が軋むほどの圧力にブルーが叫び声を上げる。
「素晴らしい悲鳴ですね。もっと聞かせてください」
そう言うとクラリオは、ブルーの体を思い切り大理石の床に投げつけた。
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