4 / 4
【了】
しおりを挟む
十八人の幼馴染。
その笑い話は、そんな名で貴族間の談笑として瞬く間に広まってしまいました……。
ルルエ。
ふわふわの金色の髪に、陶器のような白い肌。そして、肌にとても良く映えるイヤリング。
そんな特徴を持った彼女には、どうやら十八人の幼馴染がいたようです。
そう。
セレスも、ヴェラの婚約者も、その他十六人の貴族も全員、自身だけが彼女を守れる庇護者だと信じて、彼女に親身を尽くしていたのです。
……虚しさを通り越えて、その事情に圧倒を感じてしまいました。
本当に大したものです。
庇護者だと信ずる男たちを、針の穴を通すような緻密をもって、ずっと続けて顔を合わせ続け、騙し続けていた。
しかも――病弱であるのは、嘘ではなかったようです。
ルルエ・エヴァンス。
それが、後から判明した、彼女の本名。
当主の死により、資金繰りの尽きた没落家の、末の娘……。
彼女は真実、病弱で、肉体的にいつも辛い境遇に置かれていたのは間違いがないようです。
そんな中、男たちがばったり顔を合わせることなどないよう、口八丁で統率し続けていて、それを十八人、何年も、ずっと……。
もう、凄い、としか思えません。
ヴェラなどは、彼女と友達になりたいなどと言い出し、姿を消した彼女の行方を探り出そうと試みています。
――彼女に騙された十八人は、その談笑の広がりと共にお家の格を落とし、例外なく皆失墜の道を辿ったのですが……。
それに対し、ざまあみろ、という気持ちすら湧きませんでした。
私があの日感じた惨めさは――あの日々に感じていた虚しさは、今や不思議な清々しさに変わり、彼方へと消え去ってしまいました。
また意外なことに――その奇妙な事情は、私たちに“恩恵”をもたらしました。
十八人の幼馴染の当事者。それが判明したとき、色物を見る目で見られ、貴族間で浮いた存在となることを恐れていたのですが――実際はそんなこともなく、私たちの置かれた立場を慮ってくださる方々ばかりでした。
世も捨てたものではないと、柄にもなくしみじみと感じ入ったものです。
どころか、その奇妙が話のタネになり、以前よりも格段に交流が広まるという幸運に恵まれました。
お付き合いを真剣に相談してくるご縁とも、そのうちに出会えました。
もう、なにがなにやらです……。
まるで激流のような目まぐるしさに翻弄される日々。しかし、人間万事塞翁が馬とは違いますが――悪くはなかったのでしょう。お家に傷を付けるようなこともなくて、本当に良かった。それに安心と幸いを覚え――あとの諸々の感傷は、もう全て、吹き飛んでしまいました……。
幼馴染だけを見つめる婚約者との決別の先にあった、意外すぎる結末。
私の奇妙な婚約破棄の物語は、これでお終いです。
ルルエ。
彼女は今、どこでなにをしているのだろう? ふと、そんなことを考えるときがあります。
不思議なことに、彼女にもう一度会ってみたい、という心があるのです。理由は自分でも分かりません。
何故でしょうか?
あなたには、それが何故なのか、その心持ちの正体が、分かりますか――?
その笑い話は、そんな名で貴族間の談笑として瞬く間に広まってしまいました……。
ルルエ。
ふわふわの金色の髪に、陶器のような白い肌。そして、肌にとても良く映えるイヤリング。
そんな特徴を持った彼女には、どうやら十八人の幼馴染がいたようです。
そう。
セレスも、ヴェラの婚約者も、その他十六人の貴族も全員、自身だけが彼女を守れる庇護者だと信じて、彼女に親身を尽くしていたのです。
……虚しさを通り越えて、その事情に圧倒を感じてしまいました。
本当に大したものです。
庇護者だと信ずる男たちを、針の穴を通すような緻密をもって、ずっと続けて顔を合わせ続け、騙し続けていた。
しかも――病弱であるのは、嘘ではなかったようです。
ルルエ・エヴァンス。
それが、後から判明した、彼女の本名。
当主の死により、資金繰りの尽きた没落家の、末の娘……。
彼女は真実、病弱で、肉体的にいつも辛い境遇に置かれていたのは間違いがないようです。
そんな中、男たちがばったり顔を合わせることなどないよう、口八丁で統率し続けていて、それを十八人、何年も、ずっと……。
もう、凄い、としか思えません。
ヴェラなどは、彼女と友達になりたいなどと言い出し、姿を消した彼女の行方を探り出そうと試みています。
――彼女に騙された十八人は、その談笑の広がりと共にお家の格を落とし、例外なく皆失墜の道を辿ったのですが……。
それに対し、ざまあみろ、という気持ちすら湧きませんでした。
私があの日感じた惨めさは――あの日々に感じていた虚しさは、今や不思議な清々しさに変わり、彼方へと消え去ってしまいました。
また意外なことに――その奇妙な事情は、私たちに“恩恵”をもたらしました。
十八人の幼馴染の当事者。それが判明したとき、色物を見る目で見られ、貴族間で浮いた存在となることを恐れていたのですが――実際はそんなこともなく、私たちの置かれた立場を慮ってくださる方々ばかりでした。
世も捨てたものではないと、柄にもなくしみじみと感じ入ったものです。
どころか、その奇妙が話のタネになり、以前よりも格段に交流が広まるという幸運に恵まれました。
お付き合いを真剣に相談してくるご縁とも、そのうちに出会えました。
もう、なにがなにやらです……。
まるで激流のような目まぐるしさに翻弄される日々。しかし、人間万事塞翁が馬とは違いますが――悪くはなかったのでしょう。お家に傷を付けるようなこともなくて、本当に良かった。それに安心と幸いを覚え――あとの諸々の感傷は、もう全て、吹き飛んでしまいました……。
幼馴染だけを見つめる婚約者との決別の先にあった、意外すぎる結末。
私の奇妙な婚約破棄の物語は、これでお終いです。
ルルエ。
彼女は今、どこでなにをしているのだろう? ふと、そんなことを考えるときがあります。
不思議なことに、彼女にもう一度会ってみたい、という心があるのです。理由は自分でも分かりません。
何故でしょうか?
あなたには、それが何故なのか、その心持ちの正体が、分かりますか――?
1,350
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
(完結)私より妹を優先する夫
青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。
ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。
ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。
「婚約破棄してやった!」と元婚約者が友人に自慢していましたが、最愛の人と結婚するので、今さら婚約破棄を解消してほしいなんてもう遅い
時雨
恋愛
とある伯爵家の長女、シーア・ルフェーブルは、元婚約者のリュカが「シーア嬢を婚約破棄にしてやった!」と友人に自慢げに話しているのを聞いてしまう。しかし、実際のところ、我儘だし気に入らないことがあればすぐに手が出る婚約者にシーアが愛想を尽かして、婚約破棄をするよう仕向けたのだった。
その後リュカは自分の我儘さと傲慢さに首を締められ、婚約破棄を解消して欲しいと迫ってきたが、シーアは本当に自分を愛してくれる人を見つけ、結婚していた。
だから今更もう一度婚約して欲しいなんて、もう遅いのですっ!
(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?
青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。
けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの?
中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。
完璧すぎる幼馴染に惚れ、私の元を去って行く婚約者ですが…何も知らず愚かですね─。
coco
恋愛
婚約者から、突然別れを告げられた私。
彼は、完璧すぎる私の幼馴染に惚れたのだと言う。
そして私の元から去って行く彼ですが…何も知らず、愚かですね─。
元婚約者は、ずっと努力してきた私よりも妹を選んだようです
法華
恋愛
貴族ライルは、婚約者アイーダに婚約破棄を宣告し、アイーダの妹であるメイと婚約する道を選ぶ。
だが、アイーダが彼のためにずっと努力してきたことをライルは知らず、没落の道をたどることに。
一方アイーダの元には、これまで手が出せずにいた他の貴族たちから、たくさんのアプローチが贈られるのであった。
※三話完結
お姉様から婚約者を奪い取ってみたかったの♪そう言って妹は笑っているけれど笑っていられるのも今のうちです
山葵
恋愛
お父様から執務室に呼ばれた。
「ミシェル…ビルダー侯爵家からご子息の婚約者をミシェルからリシェルに換えたいと言ってきた」
「まぁそれは本当ですか?」
「すまないがミシェルではなくリシェルをビルダー侯爵家に嫁がせる」
「畏まりました」
部屋を出ると妹のリシェルが意地悪い笑顔をして待っていた。
「いつもチヤホヤされるお姉様から何かを奪ってみたかったの。だから婚約者のスタイン様を奪う事にしたのよ。スタイン様と結婚できなくて残念ね♪」
残念?いえいえスタイン様なんて熨斗付けてリシェルにあげるわ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
婚約者の名前がセシルなのかセレスなのか?どちらがた 正しいですか?
本文はセレスになっていて説明ではセシルになっています。
とんでもない女性でしたね…
私もルルエの今後が気になります