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今宵【流れ星】にてお会いしましょう。

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「ねぇ、アラシ。今夜は私の側に居てくれるんでしょ?」

目元に涙を湛えた今宵・・の姫がオレの手を取り問い掛けてくる。

「勿論です姫。私は今宵貴女様だけを守る騎士ナイトとなりましょう。ですが魔法は明日の朝には解けてしまいます。御覚悟だけはして下さいね?」

これも仕事だ。どんなに心奪われそうな女性でも誑し込む話術が必要。その為には情報が何よりの武器である。

今宵の姫は伯爵令嬢、この世界の貴族令嬢という者は騎士や平民との身分差恋愛と言う物に飢えている。

オレはホストだ、この訳分からん異世界に飛ばされて気付いたらダンジョンマスターとか言う訳分からん使命を負わされたが生き残って見せよう。

「嬉しいわ、アラシ!あぁ、私だけの騎士ナイト!!シャンパンどんどん持って来て!!朝まで飲むわよ!」


「姫からシャンパン戴きましたァ!」

オレの声を聞いたダークエルフのカイン、シャインエルフのアルマがグラスとシャンパンを配膳してくる。

ボトルを受け取るとオレはカイン、アルマ、姫、オレの四人分をグラスに注ぐ。

「「シャンパン!シャンパン!今宵の貴女はプリンセス!ジャンジャンバリバリ×2!御馳走様が聞こえない!」」

カイン、アルマがコールを唱えると姫は両手でグラスを持ちコクコクと喉を鳴らしグラスを煽る。

三度目、四度目と時間を掛けて一気飲みをすると姫はオレの肩ですぅすぅと寝息を立て始めた。

「カイン、休憩室へ姫を運べ。オレは他のテーブルを回ってくる」

「ラジャっす!」

今宵もホストクラブ【流れ星】は満員御礼だ。

この洞穴には仮想恋愛に飢えた淑女達が集う。

立ち上がると軽い目眩を起こす。
クソ、飲みすぎたか…?

CPを消費し酔い覚ましを飲むとオレは別のボックス席へと移動した。
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