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序章

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うぅ…飲みすぎた…テキーラ四杯とかヤバすぎだろ…!

オレは席を離れトイレの個室に駆け込む。

胃の中の物を吐き出し口を濯ぐ。

後一時間で今日の営業も終了だ。オレはスポーツ飲料を一気に飲み干す。

口臭ケアのソフトキャンディを三つ四つ口に放り込むと席に戻る。

「もぉー!アラシってば遅いー!」

「ごめんごめんカオリちゃん!ささ!飲み直そー!」

「じゃー罰としてテキーラね?」

この女…!

オレは内心頭に来つつも表面は取り繕い返事をする。

「わ、わかった!」

「五杯で許してあげる。それとも瓶ごとが良い?」

「いや…!五、五杯でおなしゃす…」

「ん、素直で宜しい。じゃあゴウさんテキーラ五杯お願い!」

同席していた先輩、ゴウさんが恭しく頷く。
背が高くガッチリした体格で、筋肉フェチには堪らないであろうその肉体にオーバー気味なリアクションでこの店のナンバー3に陣取る人だ。

所詮万年十位のオレとは比べるべくもない。

「畏まりました。アラシ情けねえな!まぁ姫が許してくれたんだし良いけどよ。宜しければ姫、俺もご一緒していいでしょうか?」

「オッケオッケー、お金ならいっぱい有るからドンドン飲んじゃって!」

クソー…!ゴウさんめ!数少ないオレの客を奪う気か?
幾ら先輩だからってそれだけは許さねえ!

こうなったらテキーラ五杯なんか飲み干してやらぁ!

オレは覚悟を決め届けられたテキーラを次々と飲み干した。

よし、勝っ…ーーあれ?

「おい、アラシ!アラシー!誰か救急車を呼べ!」

「キャー!!」

オレの意識はそこで途絶えた。
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