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■第三章 大地の中に
第四話 高炉造りと透明な結界
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『そり』に積めるだけ石炭を積み込んだ僕らは、その日の夜遅くにはなんとかボックスホームの村に戻ることができた。野宿も考えていたが、春とはいえ、雪の積もった野外で一夜を過ごすのは大変だ。日帰りができて助かった。
翌日――。
「じゃ、今から高炉の造り方を説明するぜ。まず、鉄を溶かすほどの高温だからな、土台に木は使えねえ」
村の広場で鍛冶職人のアイゼンが説明する。
「そりゃそうよね。でも、じゃあ、鉄も木も使わずに、何を使うって言うの?」
レニアが質問した。
「石があるだろうが。粘土やモルタルもな」
「あ、ごめん、アイゼンさん、モルタルは家で使い切っちゃった」
僕は申し訳なく思いながら、それを伝える。
「なに? まあいい、粘土だけでもなんとかなるだろ。じゃ、でっかい塔を造るぞ、でっかい塔を!」
アイゼンの指示のもと、僕らは広場に大きな塔を造った。そこで石炭を燃やすので、家からは少し離し、安全な場所にしてある。
次に、石と粘土で造った塔の中に、黒い砂鉄と、石炭を砕いたものと、木くずを混ぜて入れ、火を点ける。砂鉄は川の砂から磁石で吸い付け集めている。
あとは『一式』にうちわで風を送らせ、砂鉄が溶けるのを待つだけだ。
「おし、『一式』、もっと気合いを入れろや!」
「ピピッ、『気合い』ノ定義ガ曖昧デス。説明シテクダサイ」
「馬鹿野郎、気合いって言やあ、気合いよ! 他に何があるってんでい。腹から声を出せ、腹から!」
「ピピッ、スピーカーハ頭部ニ有リマス。腹カラ声ハ出セマセン」
「なにぃ? ったく、大地の精霊は物わかりが悪くていけねえ」
ごめんね、アイゼンさん、大地の精霊じゃないんだ、それ。
「『一式』、もっと速く風を送って」
「了解デス」
代わりに僕が小声で指示を出して、火を強めた。
一晩中、火を燃やし続け――そして翌朝、高炉の下側に設けた石の蓋が外されると、オレンジ色に光り輝く溶けた鉄がそこからどろりと流れ出た。
「よしっ、これで武器でも鍬でも何でも造ってやらぁ!」
アイゼンさんの気合いの入った声が、ノースオーシャンの空に高らかに響き渡った。
高炉の完成だ。
「じゃ、アッシュ、最初に造るのは鉄パイプでいいんだな?」
「ええ、鉄パイプを。形は、半円に反った形で。それと鋤と鍬もお願いします。そのあとはアイゼンさんが思うものを作って下さい」
「よし、任せとけ!」
さっそくアイゼンさんが粘土をこねて棒を造り始めた。棒と外側の筒を作り、そこに鉄を流し込むのだろう。できあがった鉄パイプの中の粘土をくりぬいて捨てれば鉄パイプの完成だ。
「それで、アッシュ、鉄パイプは何に使うの?」
レニアが聞いてくる。
「木だとちょっと難しい建物さ」
僕は肩をすくめてそれだけ言い、もう一つの材料造りに取りかかる。
樹脂と潰したスライムを混ぜ、それを雪の上に撒く。少し固まりかけたところで引っ張り、薄くのばしていく。
「あ、それ、面白そう。アタシにもやらせて」
「うん、いいよ。手伝って。たくさん枚数がいるからね」
のばした膜を松明であぶり、完全に固める。雪の上から剥がすと、透明な膜ができあがった。
それをアイゼンに造ってもらった鉄パイプに貼り付け、松明であぶってくっつけ、地面に建てていく。
「あっ、丸い家みたいになった」
そう、ビニールハウスである。
これなら、日光は通して外の冷たい風を遮断するため、作物を育てやすい。
「じゃ、春菊とジャガイモを植えようか」
「うん! アタシ、ジャガイモは大好き! バター醤油焼きと、ポテマヨサラダね! それと――」
「「 ポテチ! 」」
僕とレニアの声が綺麗にハモった。思わずお互いに噴き出して笑ってしまう。
本当はラピュドーラ領でも広めたかったジャガイモだが、芽を取れば食べられると言ってもなかなか信じてもらえず、一部の人間だけが細々と育てている作物だ。
また雪が降ったら、こまめに除雪しないといけないが、まずは挑戦だ。
領地は住む家と、着る物と、食べ物さえあれば、なんとかなる。
僕の領地経営は順調そのものだ。
翌日――。
「じゃ、今から高炉の造り方を説明するぜ。まず、鉄を溶かすほどの高温だからな、土台に木は使えねえ」
村の広場で鍛冶職人のアイゼンが説明する。
「そりゃそうよね。でも、じゃあ、鉄も木も使わずに、何を使うって言うの?」
レニアが質問した。
「石があるだろうが。粘土やモルタルもな」
「あ、ごめん、アイゼンさん、モルタルは家で使い切っちゃった」
僕は申し訳なく思いながら、それを伝える。
「なに? まあいい、粘土だけでもなんとかなるだろ。じゃ、でっかい塔を造るぞ、でっかい塔を!」
アイゼンの指示のもと、僕らは広場に大きな塔を造った。そこで石炭を燃やすので、家からは少し離し、安全な場所にしてある。
次に、石と粘土で造った塔の中に、黒い砂鉄と、石炭を砕いたものと、木くずを混ぜて入れ、火を点ける。砂鉄は川の砂から磁石で吸い付け集めている。
あとは『一式』にうちわで風を送らせ、砂鉄が溶けるのを待つだけだ。
「おし、『一式』、もっと気合いを入れろや!」
「ピピッ、『気合い』ノ定義ガ曖昧デス。説明シテクダサイ」
「馬鹿野郎、気合いって言やあ、気合いよ! 他に何があるってんでい。腹から声を出せ、腹から!」
「ピピッ、スピーカーハ頭部ニ有リマス。腹カラ声ハ出セマセン」
「なにぃ? ったく、大地の精霊は物わかりが悪くていけねえ」
ごめんね、アイゼンさん、大地の精霊じゃないんだ、それ。
「『一式』、もっと速く風を送って」
「了解デス」
代わりに僕が小声で指示を出して、火を強めた。
一晩中、火を燃やし続け――そして翌朝、高炉の下側に設けた石の蓋が外されると、オレンジ色に光り輝く溶けた鉄がそこからどろりと流れ出た。
「よしっ、これで武器でも鍬でも何でも造ってやらぁ!」
アイゼンさんの気合いの入った声が、ノースオーシャンの空に高らかに響き渡った。
高炉の完成だ。
「じゃ、アッシュ、最初に造るのは鉄パイプでいいんだな?」
「ええ、鉄パイプを。形は、半円に反った形で。それと鋤と鍬もお願いします。そのあとはアイゼンさんが思うものを作って下さい」
「よし、任せとけ!」
さっそくアイゼンさんが粘土をこねて棒を造り始めた。棒と外側の筒を作り、そこに鉄を流し込むのだろう。できあがった鉄パイプの中の粘土をくりぬいて捨てれば鉄パイプの完成だ。
「それで、アッシュ、鉄パイプは何に使うの?」
レニアが聞いてくる。
「木だとちょっと難しい建物さ」
僕は肩をすくめてそれだけ言い、もう一つの材料造りに取りかかる。
樹脂と潰したスライムを混ぜ、それを雪の上に撒く。少し固まりかけたところで引っ張り、薄くのばしていく。
「あ、それ、面白そう。アタシにもやらせて」
「うん、いいよ。手伝って。たくさん枚数がいるからね」
のばした膜を松明であぶり、完全に固める。雪の上から剥がすと、透明な膜ができあがった。
それをアイゼンに造ってもらった鉄パイプに貼り付け、松明であぶってくっつけ、地面に建てていく。
「あっ、丸い家みたいになった」
そう、ビニールハウスである。
これなら、日光は通して外の冷たい風を遮断するため、作物を育てやすい。
「じゃ、春菊とジャガイモを植えようか」
「うん! アタシ、ジャガイモは大好き! バター醤油焼きと、ポテマヨサラダね! それと――」
「「 ポテチ! 」」
僕とレニアの声が綺麗にハモった。思わずお互いに噴き出して笑ってしまう。
本当はラピュドーラ領でも広めたかったジャガイモだが、芽を取れば食べられると言ってもなかなか信じてもらえず、一部の人間だけが細々と育てている作物だ。
また雪が降ったら、こまめに除雪しないといけないが、まずは挑戦だ。
領地は住む家と、着る物と、食べ物さえあれば、なんとかなる。
僕の領地経営は順調そのものだ。
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