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■第四章 橋を架ける
第六話 黒煙
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アッシュ達が橋を造りあげた頃、『ビッグウッド商会L』――つまりはレジーナお嬢様が率いるほうの商会だが……こちらではプラスチック廃棄物の処理が追いつかなくなり、従業員達が悲鳴を上げていた。
「大変です、レジーナ様! プラスチックを捨てる場所が無くなりました」
プラスチックは木と違って、いつまで経っても土に還らない。
「それなら山でも森でも、別な場所にすればいいでしょ。いちいちそんなことで無駄な雑務をこの私に押しつけないでちょうだい」
「しかし……森や山では遠すぎて……モンスターも出ますから、護衛の冒険者を雇う費用が掛かってしまいます」
「じゃあ、燃やしなさい。そうよ、最初から燃やして灰にすれば良かったのよ」
「なるほど。すぐに燃やします」
従業員がうなずいて執務室から出ていく。
それを見送ったレジーナはため息をついた。
「まったくもう、そんなことも思いつかないなんて、もっと有能な人材が必要ね。でも、お給料を安くするには、あまり賢い人間でも困るし……こういうとき、賢者エムバの教えではどうするのだったかしら。確か習ったはずだけど……」
本棚から『最先端の合理的経済学』『節税のすすめ』『回転率の上げ方』『業界トップになる9割不法術』『リトルペロスのちっとも努力しない思考』『騙すチカラ』『エムバの商法』というタイトルを選んで抜き出し、ページをめくっていく。
「ああ、あった! そうね、定期的に従業員をクビにして、給料が上がる前に使い倒していけば、賢い人間でも安くこき使えるわ! 素晴らしい!」
「た、大変です、レジーナ様!」
「今度は何?」
「そ、それがとにかく、外へ。外へ出てください。プラスチックがもの凄い勢いで燃えて、この館も危険です!」
「ええ? まさか、館のすぐ側で燃やしたんじゃないでしょうね?」
「いいえ、庭の向こうですよ。でも、とにかく、あれを」
レジーナは玄関の扉を開け、外を見たが、思わずのけぞって驚いてしまった。
「な、なんなの、あの火の勢いは。まるで山火事、いいえ、山火事でもああはならないはずよ。その辺にファイアドラゴンでもいるのではないの?」
この三階建ての館よりもずっと高く火の手が上がり、さながら地獄の業火のようであった。
「いえ、こんな街中にドラゴンなんていませんよ。どうやらプラスチックはもの凄く燃えやすいようです」
「ええ、そのようね……ゲホッ、ゲホッ、うう、変な臭い。頭が痛くなりそう」
「あのドス黒い煙は吸わないほうがいいです。それより早く避難を。風向きが変わってしまったら……あっ」
「きゃあっ! あっつ!」
従業員が心配したとおり、風向きが変わり、炎がこちらに煽られてくる。
慌てて二人は反対側へ逃げ出した。黒い煙が追いかけてきて、目がしみて、息苦しくなった。
「もう、プラスチックなんて最悪!」
プラスチックの軽さとカラフルな見た目を気に入っていたレジーナだったが、このとき初めて、心底プラスチックが嫌いになった。
木のほうがずっと良い香りだった。小さい頃から親しんできた香り。そして自分の父の働く背中。
そこにはいつも木があったのだ。
「こんなことになるのなら、もうプラスチックはやめるわ」
「それがいいです。しかし、こんな危険なものだったとは……あっ、そういえば元の材料が燃える水だった!」
「ああ、それは燃えて当然だったわね」
だが、それだけで問題は終わらない。
ビッグウッド商会に新たな暗雲が迫ろうとしていた。
「大変です、レジーナ様! プラスチックを捨てる場所が無くなりました」
プラスチックは木と違って、いつまで経っても土に還らない。
「それなら山でも森でも、別な場所にすればいいでしょ。いちいちそんなことで無駄な雑務をこの私に押しつけないでちょうだい」
「しかし……森や山では遠すぎて……モンスターも出ますから、護衛の冒険者を雇う費用が掛かってしまいます」
「じゃあ、燃やしなさい。そうよ、最初から燃やして灰にすれば良かったのよ」
「なるほど。すぐに燃やします」
従業員がうなずいて執務室から出ていく。
それを見送ったレジーナはため息をついた。
「まったくもう、そんなことも思いつかないなんて、もっと有能な人材が必要ね。でも、お給料を安くするには、あまり賢い人間でも困るし……こういうとき、賢者エムバの教えではどうするのだったかしら。確か習ったはずだけど……」
本棚から『最先端の合理的経済学』『節税のすすめ』『回転率の上げ方』『業界トップになる9割不法術』『リトルペロスのちっとも努力しない思考』『騙すチカラ』『エムバの商法』というタイトルを選んで抜き出し、ページをめくっていく。
「ああ、あった! そうね、定期的に従業員をクビにして、給料が上がる前に使い倒していけば、賢い人間でも安くこき使えるわ! 素晴らしい!」
「た、大変です、レジーナ様!」
「今度は何?」
「そ、それがとにかく、外へ。外へ出てください。プラスチックがもの凄い勢いで燃えて、この館も危険です!」
「ええ? まさか、館のすぐ側で燃やしたんじゃないでしょうね?」
「いいえ、庭の向こうですよ。でも、とにかく、あれを」
レジーナは玄関の扉を開け、外を見たが、思わずのけぞって驚いてしまった。
「な、なんなの、あの火の勢いは。まるで山火事、いいえ、山火事でもああはならないはずよ。その辺にファイアドラゴンでもいるのではないの?」
この三階建ての館よりもずっと高く火の手が上がり、さながら地獄の業火のようであった。
「いえ、こんな街中にドラゴンなんていませんよ。どうやらプラスチックはもの凄く燃えやすいようです」
「ええ、そのようね……ゲホッ、ゲホッ、うう、変な臭い。頭が痛くなりそう」
「あのドス黒い煙は吸わないほうがいいです。それより早く避難を。風向きが変わってしまったら……あっ」
「きゃあっ! あっつ!」
従業員が心配したとおり、風向きが変わり、炎がこちらに煽られてくる。
慌てて二人は反対側へ逃げ出した。黒い煙が追いかけてきて、目がしみて、息苦しくなった。
「もう、プラスチックなんて最悪!」
プラスチックの軽さとカラフルな見た目を気に入っていたレジーナだったが、このとき初めて、心底プラスチックが嫌いになった。
木のほうがずっと良い香りだった。小さい頃から親しんできた香り。そして自分の父の働く背中。
そこにはいつも木があったのだ。
「こんなことになるのなら、もうプラスチックはやめるわ」
「それがいいです。しかし、こんな危険なものだったとは……あっ、そういえば元の材料が燃える水だった!」
「ああ、それは燃えて当然だったわね」
だが、それだけで問題は終わらない。
ビッグウッド商会に新たな暗雲が迫ろうとしていた。
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