攻略対象の影薄い姉になったけど、モブってなにしたらいいの?

スズキアカネ

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本編

あの後2−Aではこんな事がありました。【三人称視点】

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 ガッターン!

 その日の授業と帰りのHRを終えてすべての生徒が帰宅だったり、部活動だったりで教室を出ようとしたその時、机を蹴倒す人物がいた。

 ざわ…と2-Aは騒然となる。

 机を蹴り飛ばした人物は真顔だった。
 蹴り上げた足をゆっくり戻し、目の前で固まる三人の女子生徒に近づく。
 そして彼女たちの行く手を阻んで腕を組んだまま睨みつけた。それには三人の女子生徒は固まっている。彼女の行動が読めないからだろう。

「ちょ…どしたのリン…」

 彼女の友人がギョッとして声を掛けたが、それに答えることもなく。

「ねぇ、あんたたち…修学旅行の班の事アヤのせいにしてるけどさぁ。ただの数合わせなんだからね? 何勘違いしてるの?」
「なっ…」
「そんなに山浦と同じ班がいいならくれてやるわよ。その班の男子~山浦と交代してやれば?」
「おい染川何言って…」
「山浦、あんたは黙ってなさい」

 止めようとした男子生徒をあしらい、三人の女子生徒を前にして彼女は目を眇めた。

「前々からうざいなと思ってたけど…ずっと私らのこと敵視してきて本当になんなの? そんなにクラスの頂点に立ちたいの? あんたらは縄張り争いする野生動物なわけ?」
「はぁ!?」
「何言ってんのよ!」
「野生動物って!」

 それには流石にカチンときたらしい。三人組は一斉に反論してきた。
 彼女はそれを鼻で笑う。

「じゃあなに? …アヤに言ったらしいじゃん。山浦と自分達の仲を取り持てって。ハーレムかって…雌ライオンかよ。マジウケる」
「め、雌ライオン!?」
「断ったアヤのことひっぱ叩いて、罵倒して…とんでもない事してくれたね?」
「はぁ!? んなことしたのこいつら!」

 それに反応した友人はこういう場面でまっ先に感情を露わにするタイプなのだが、いつもそんな短気な友人のストッパー役に回る側なのに、今回ばかりは彼女が先に怒りの感情を露わにした。

「アヤは泣いてたんだよ! 傷つかないわけ無いだろ! 容姿が恵まれてることを鼻にかけて他人を罵倒してもいいとでも思ってんのかてめぇらは!」
 
 彼女の怒鳴り声に三人組だけでなく、クラスに残っていたクラスメイト達がぎくりとする。クラスには沈黙が走り、教室に残っている生徒が皆こちらを注視していた。

「…側に弟とか山浦がいるから、アヤは周りから酷い事を言われることが沢山あったと思うよ。だけどアヤは誰のせいにもしないで一人で耐えてたんだよきっと。…アヤは優しい子だから…」

 彼女は一瞬悲しそうな表情で俯きがちになっていたが、ゆっくり顔を上げて三人を一人ひとりじっくり睨みつけると目が笑ってない笑顔になった。

「…今度またアヤに危害加えてみ? …今度はこれだけじゃ済まさねぇから」

 その声は静かで平坦な囁きだったが、それが余計に恐怖を煽ったのか、三人組は引きつった顔をしてフリーズしていた。

 この辺で勘弁するつもりらしく、三人組に飛びかかろうとする短気な友人の腕を引いて教室を出ていこうとした彼女は、側でボーッと木偶の坊になってる男子生徒に告げる。


「山浦、あんた使う言葉選びなさいよ。とどめ刺すとかホントありえないわ。だから彼女出来ても長続きしないんだよ」
「そ、それは」
「前カノだってあんたの不始末でアヤに危害加えたの忘れたの?」
「…悪かったとしか」

 男子生徒が大きな図体で項垂れるのを彼女は呆れ、更に愛想つきたような表情で見上げていた。
 そして大きなため息を吐いた。
 
「あんた…図体とその容姿しか魅力ないんだからもっとしっかりしなさいよね」
「……!?」

 女子にモテる男子に向かってそのような辛口を吐けるのは、彼女には中学の時から交際している他校の最愛の彼氏がいるからである。
 彼女の目にはどんなイケメンよりも彼氏が一番かっこよく素敵に映っているのであろう。

 
「リン! あいつらシバこうよ!」
「ユカ、あんた短気だからアヤがこの事言わないでって言ってたんだよ?」
「えぇ!?」
「なにか問題起こして停学とかになったらアヤが悲しむでしょ。堪えなさい。…多分、もうバカなことしようとは思わないでしょアイツら」


 あやめはリンのことを“彼氏至上主義”と表現していたが、リンだって友達思いの女の子なのである。
 大事な友達が傷つけられたら自分の事のように腹を立てる。それは普通のことだと思う。

 教室を出ようとして「あ」と呟くとぐるりと振り返るリン。

「…この事、アヤにバラさないでねー?」

 にっこりと笑う彼女にクラスメイトはビクッとしてその内の数人はガクガクとヘドバンの如く頷いていた。




 翌日、あやめが登校してきて周りの変化に首を傾げていたものの、何があったかを話す者はどこにもいなかったというわけである。
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