110 / 312
続編
それはないわ。だからあなたは不誠実なんだってば。
しおりを挟む
あと一種目でお昼休憩の時間だ。
今現在、我が赤ブロックは二位である。午後もこのまま成績を維持できたら良い。三年男子の騎馬戦と女子のムカデ競争の得点は大きいのでなんとか粘りたいところだ。
「あやめさん!」
「雅ちゃん! 来てくれてありがとう~。わ、それ重そうだから椅子に乗せておくよ」
風紀委員と部活生に声を掛けられている先輩方を見守っていると、日傘をさした和装の大和撫子から声を掛けられた。
彼女の手には大きな風呂敷と小さなバッグがあった。風呂敷が重そうなのでそれを受け取って自分のブロック席テント下のパイプ椅子に載せる。
「お稽古先からそのまま来たもので…あやめさんの競技は終わってしまわれましたか?」
「個人競技は終わったけど団体競技は午後にあるよ」
「…一足遅かったです…」
しゅん…としょげる雅ちゃんかわいい。
だけどカッコいいものでもなかったので観られなくてよかったと年上の矜持がそう言っている。
「ううん。この暑い中来てくれただけで嬉しいよ。それより雅ちゃんは着物で暑くないの?」
「そうでもないのですよ。このお着物は紗の織物でとても通気性が宜しいんですの」
「へぇ~そうなんだ~」
紗の織物? …着物の織り方の種類なのかな。着物って単価が高いから季節ごとに持つとなるとお金かかりそう。
でも雅ちゃんは着物が一番似合うなぁ。
大和撫子にヘラヘラ笑っていると「只今より一時間お昼休憩となります」とアナウンスがかかった。
人によっては教室にお弁当を置いているので食べに戻っていたり、どこかへと買いに行ったり生徒たちは各々散らばっていたが、私は雅ちゃんの手作りお弁当をごちそうになることになっていたので、中庭のあの涼しいスポットに彼女を案内した。
「どうぞ。お口に合えば宜しいんですが」
「うわぁーすごい綺麗! いただきます!」
「橘さんと大久保さんもよろしかったら召し上がって下さい」
「ありがとう。いただきます」
「…料亭みたいだな」
先輩方も来るという話をしていたからか雅ちゃんは多めに作ってくれていた。なんて気遣いのできる大和撫子なんだ。
でも気を遣わせて本当にゴメンね。
芸術作品と言っても過言ではない雅ちゃんの手作り弁当は大変おいしゅうございました。
私の語彙力では表現しきれないくらい美しく、美味だったよ。
その少ない語彙力を使って私はこれでもかと言うくらい感想を語っていた。ただ綺麗、美味しいを表現変えて連呼していただけなんだけど。ついでに素材と生産者に感謝を述べていた。食べ物と提供してくれた人には感謝しないとね!
ていうか実際に大久保先輩から「お前は食レポしてんのか」とツッコまれた。でもそれほど美味しかったの!
「ごちそうさまでした! 美味しかった~」
「そう言っていただけると作ってきた甲斐がありますわ」
私は気に入ったおかずの作り方を雅ちゃんに質問したり、おしゃべりして過ごしていた。その隣で先輩方も会話をしていて、みんなで和やかなお昼休憩を過ごしていたのだが…
「花恋! 待って下さい!」
「離して下さい! 私にはその気はありません!」
だけどそんな声に和やかなひとときはぶち壊されたのだ。
私達がいるのは中庭の木陰になっている場所。風通りが良く、木々が日差しを遮ってくれるので夏はとても涼しいスポット。
そして彼らがいるのは中庭の端にある渡り廊下である。
意外とここ声が反響するからね、こっちまで聞こえてくるんだよ。
私はその声と呼ばれた名前にギュン! と首を捻った。
案の定、そこには見覚えのありすぎる人がいて、元攻略対象が元ヒロインに迫っている様子であった。
(おいおい乙女ゲームはもう終わったぜ。伊達先輩)
なんでここでこのタイミングでアクション起こすかな…
私はちらりと隣にいる雅ちゃんに目を向けると、彼女はまたあの人形みたいな笑みを浮かべていた。
雅ちゃんは口では「あの方はどうでもいいです」と言っているが、実際恋心を諦めるのって時間がかかると思うんだ。雅ちゃんは自分の立場的に強がっている気もするんだけど。
でもそんな事私が追求しても仕方がないんだけどね…
伊達先輩はここに雅ちゃんがいることに気づいていないのか、花恋ちゃんを強引に抱きしめていた。
花恋ちゃんは藻掻いているようだが、彼にはそんなの関係ないらしい。自分勝手な言い訳を並べ始めたのだ。
「花恋を騙すつもりはなかったんです。家同士の決めたことで俺の一存ではどうすることも出来ない…だけど花恋には俺の傍に居てほしいんです」
「いやっ離して!」
「不自由はさせません。俺が花恋を守ります。…俺を信じて下さい」
「…うわぁ、それってぇ…愛人になってくださいって申し出ですかぁ? ドン引きなんですけどぉ」
「「!?」」
友達が困っていそうなのでヘルプしようとした私だったが、彼の台詞についついドン引きした顔をしてしまった。
伊達先輩は現在大学一年。
親のスネカジリの分際で高校生女子に愛人(仮)になってくださいって…うわぁ…ないわぁ。
胡散臭そうに伊達先輩を見上げていると「あやめちゃん!」と花恋ちゃんが助けを求める目を向けてきた。涙目な花恋ちゃんは必死に伊達先輩の腕から逃れようとしているがびくともしてない。
「あのー花恋ちゃんが嫌がってるんで離してあげてください」
「…またあなたですか…いつも俺の邪魔をしてきて…」
「それ間先輩にも言われましたけど、タイミングが悪いだけですからね」
女性的な美貌を歪める伊達先輩は私を忌々しそうに見下ろしていた。私は負けじと柄悪く睨んでみたが、これが果たして怖いのかはわからない。
睨み合ってそう時間は経過していないはずだが、伊達先輩は私を頭の先から爪先までジロジロ見て、まるで可哀想なものを見るかのような表情をしてきた。
私はその失礼な態度に見覚えがありすぎたので、次に来るであろう相手の言葉に構えた。
「…あなたのような華のない人間が花恋と親しくするなんて…引き立て役にしかならないというのがわからないんですか?」
あぁやっぱり。
この人…将来政治家の道を進む事になっているだろうに、口は災いの元って言葉を知らないのだろうか。こんなのが日本の将来を担うって…日本は危ないんじゃないの?
ただ嫌味を言いたいだけなのかもしれないが、完全私バカにされてんな。
…本当、コイツと婚約破棄してしまったほうが雅ちゃんは幸せになれると思うんだけど。
さて、どう反論しようか。
パンチの効いた返事は何かなと考えを巡らせていると、私の横をスッと誰かが追い抜いていく。
それを目で追っていくと、彼女は大きく腕を振りかぶって伊達先輩のそのお美しいご尊顔を引っ叩いた。
パーン! という破裂音が妙に大きく響く。
大口を開けてボカーンとしているのは私だけではないはずだ。だって伊達先輩も頬を抑えて呆然と彼女を見ていたから。
彼女の肩がわなわな震えているように見えるが、それは泣くのを我慢しているのではなく、怒りを抑えきれずに震えているようだ。
「…二度目ですわよ…私のお友達を一度ならず二度も貶してくださいましたね…?」
「み、雅さん、何故ここに」
「だまらっしゃい!! 私はあなたのことを買い被っていたようです。ここまで愚かな男とは思いませんでした!」
そう、雅ちゃんだ。
大和撫子な雅ちゃんが伊達先輩にビンタを食らわせたのだ。
「お世話になった伊達のおじ様がどうしてもと頭をお下げになられるから、機会を与えましたけども…再教育の甲斐もないようですね志信様」
雅ちゃんは「この事をおじ様方に報告させていただきますわ」と冷たく通告すると踵を返していく。
だけどあくまで楚々と上品に歩く雅ちゃん。気高く上品かつ麗しいです。
私は失言を吐かれた被害者の方なんだけど、この場の収集をどうつけようかと困っていた。
するともう一度スパーン! と破裂音が聞こえてきた。
「伊達先輩最低です! あっくんのこと悪く言わないで! あなたなんかあっくんの足元にも及ばないんだから!!」
「か、花恋…?」
「あなたとお付き合いはしません! 今後二度と私に近寄らないで下さい!」
雅ちゃんにビンタされた時に伊達先輩の腕の拘束が取れていたのか、解放されていた花恋ちゃんが伊達先輩の無事だった方の頬を張っていた。
何故無事だった方を狙ったかは私にはわからないが、花恋ちゃんは「フン!」と鼻息荒く伊達先輩からそっぽ向くと、小走りで私に特攻してきた。
「あやめちゃんそんなことないよ! あやめちゃんは可愛いからね! あんな人の言うこと真に受けちゃダメだよ!」
「あ…うん、ありがと…」
「あやめさん、この男と同じ空気を吸いたくありませんから移動いたしましょ?」
いつの間にかお弁当箱を片したのか、風呂敷を提げた雅ちゃんが声を掛けてきた。
「え? あ、ちょっと!?」
女の子二人に押されながら中庭を後にして、まだちょっと時間は早いけどもブロック席に戻った。
テントだから日陰はあるけど暑いと思うんだけどな。
ふと振り返ると先程まで一緒にいたあの二人の姿がなかった。
「あれ、先輩達が来てない」
「先輩達なら後で戻ってくるよ。大丈夫だって」
「うーん…」
花恋ちゃんはそう言うけども…
乙女ゲームでもそうだったけど、現実でも風紀委員会と生徒会はあまり仲がよろしくなかった。だからあの場所に残しておくのが心配なんだけど…
「橘さんだって恋人を貶されたら腹が立つでしょう。あやめさん、待ちましょう」
「う…うん」
先輩は素人に対して暴力には走らないはずだけど、心配だ。
大久保先輩がいるから…大丈夫かな?
その後10分もしないうちに先輩方が戻ってきた。そこには当然ながら伊達先輩の姿はなく。
私は亮介先輩に何を話してきたのか質問してみたが、先輩は教えてくれなかった。
ただ「そんな事無いから。気にするなよ」と私の頭を犬撫でしてきたから慰めてくれているようだ。
もっと撫でてほしくてグイグイと先輩に頭を押し付けていると「お~暑い暑い」と大久保先輩が冷やかしてきたので、私はドヤ顔で亮介先輩に頭ナデナデしてもらったのである。
今現在、我が赤ブロックは二位である。午後もこのまま成績を維持できたら良い。三年男子の騎馬戦と女子のムカデ競争の得点は大きいのでなんとか粘りたいところだ。
「あやめさん!」
「雅ちゃん! 来てくれてありがとう~。わ、それ重そうだから椅子に乗せておくよ」
風紀委員と部活生に声を掛けられている先輩方を見守っていると、日傘をさした和装の大和撫子から声を掛けられた。
彼女の手には大きな風呂敷と小さなバッグがあった。風呂敷が重そうなのでそれを受け取って自分のブロック席テント下のパイプ椅子に載せる。
「お稽古先からそのまま来たもので…あやめさんの競技は終わってしまわれましたか?」
「個人競技は終わったけど団体競技は午後にあるよ」
「…一足遅かったです…」
しゅん…としょげる雅ちゃんかわいい。
だけどカッコいいものでもなかったので観られなくてよかったと年上の矜持がそう言っている。
「ううん。この暑い中来てくれただけで嬉しいよ。それより雅ちゃんは着物で暑くないの?」
「そうでもないのですよ。このお着物は紗の織物でとても通気性が宜しいんですの」
「へぇ~そうなんだ~」
紗の織物? …着物の織り方の種類なのかな。着物って単価が高いから季節ごとに持つとなるとお金かかりそう。
でも雅ちゃんは着物が一番似合うなぁ。
大和撫子にヘラヘラ笑っていると「只今より一時間お昼休憩となります」とアナウンスがかかった。
人によっては教室にお弁当を置いているので食べに戻っていたり、どこかへと買いに行ったり生徒たちは各々散らばっていたが、私は雅ちゃんの手作りお弁当をごちそうになることになっていたので、中庭のあの涼しいスポットに彼女を案内した。
「どうぞ。お口に合えば宜しいんですが」
「うわぁーすごい綺麗! いただきます!」
「橘さんと大久保さんもよろしかったら召し上がって下さい」
「ありがとう。いただきます」
「…料亭みたいだな」
先輩方も来るという話をしていたからか雅ちゃんは多めに作ってくれていた。なんて気遣いのできる大和撫子なんだ。
でも気を遣わせて本当にゴメンね。
芸術作品と言っても過言ではない雅ちゃんの手作り弁当は大変おいしゅうございました。
私の語彙力では表現しきれないくらい美しく、美味だったよ。
その少ない語彙力を使って私はこれでもかと言うくらい感想を語っていた。ただ綺麗、美味しいを表現変えて連呼していただけなんだけど。ついでに素材と生産者に感謝を述べていた。食べ物と提供してくれた人には感謝しないとね!
ていうか実際に大久保先輩から「お前は食レポしてんのか」とツッコまれた。でもそれほど美味しかったの!
「ごちそうさまでした! 美味しかった~」
「そう言っていただけると作ってきた甲斐がありますわ」
私は気に入ったおかずの作り方を雅ちゃんに質問したり、おしゃべりして過ごしていた。その隣で先輩方も会話をしていて、みんなで和やかなお昼休憩を過ごしていたのだが…
「花恋! 待って下さい!」
「離して下さい! 私にはその気はありません!」
だけどそんな声に和やかなひとときはぶち壊されたのだ。
私達がいるのは中庭の木陰になっている場所。風通りが良く、木々が日差しを遮ってくれるので夏はとても涼しいスポット。
そして彼らがいるのは中庭の端にある渡り廊下である。
意外とここ声が反響するからね、こっちまで聞こえてくるんだよ。
私はその声と呼ばれた名前にギュン! と首を捻った。
案の定、そこには見覚えのありすぎる人がいて、元攻略対象が元ヒロインに迫っている様子であった。
(おいおい乙女ゲームはもう終わったぜ。伊達先輩)
なんでここでこのタイミングでアクション起こすかな…
私はちらりと隣にいる雅ちゃんに目を向けると、彼女はまたあの人形みたいな笑みを浮かべていた。
雅ちゃんは口では「あの方はどうでもいいです」と言っているが、実際恋心を諦めるのって時間がかかると思うんだ。雅ちゃんは自分の立場的に強がっている気もするんだけど。
でもそんな事私が追求しても仕方がないんだけどね…
伊達先輩はここに雅ちゃんがいることに気づいていないのか、花恋ちゃんを強引に抱きしめていた。
花恋ちゃんは藻掻いているようだが、彼にはそんなの関係ないらしい。自分勝手な言い訳を並べ始めたのだ。
「花恋を騙すつもりはなかったんです。家同士の決めたことで俺の一存ではどうすることも出来ない…だけど花恋には俺の傍に居てほしいんです」
「いやっ離して!」
「不自由はさせません。俺が花恋を守ります。…俺を信じて下さい」
「…うわぁ、それってぇ…愛人になってくださいって申し出ですかぁ? ドン引きなんですけどぉ」
「「!?」」
友達が困っていそうなのでヘルプしようとした私だったが、彼の台詞についついドン引きした顔をしてしまった。
伊達先輩は現在大学一年。
親のスネカジリの分際で高校生女子に愛人(仮)になってくださいって…うわぁ…ないわぁ。
胡散臭そうに伊達先輩を見上げていると「あやめちゃん!」と花恋ちゃんが助けを求める目を向けてきた。涙目な花恋ちゃんは必死に伊達先輩の腕から逃れようとしているがびくともしてない。
「あのー花恋ちゃんが嫌がってるんで離してあげてください」
「…またあなたですか…いつも俺の邪魔をしてきて…」
「それ間先輩にも言われましたけど、タイミングが悪いだけですからね」
女性的な美貌を歪める伊達先輩は私を忌々しそうに見下ろしていた。私は負けじと柄悪く睨んでみたが、これが果たして怖いのかはわからない。
睨み合ってそう時間は経過していないはずだが、伊達先輩は私を頭の先から爪先までジロジロ見て、まるで可哀想なものを見るかのような表情をしてきた。
私はその失礼な態度に見覚えがありすぎたので、次に来るであろう相手の言葉に構えた。
「…あなたのような華のない人間が花恋と親しくするなんて…引き立て役にしかならないというのがわからないんですか?」
あぁやっぱり。
この人…将来政治家の道を進む事になっているだろうに、口は災いの元って言葉を知らないのだろうか。こんなのが日本の将来を担うって…日本は危ないんじゃないの?
ただ嫌味を言いたいだけなのかもしれないが、完全私バカにされてんな。
…本当、コイツと婚約破棄してしまったほうが雅ちゃんは幸せになれると思うんだけど。
さて、どう反論しようか。
パンチの効いた返事は何かなと考えを巡らせていると、私の横をスッと誰かが追い抜いていく。
それを目で追っていくと、彼女は大きく腕を振りかぶって伊達先輩のそのお美しいご尊顔を引っ叩いた。
パーン! という破裂音が妙に大きく響く。
大口を開けてボカーンとしているのは私だけではないはずだ。だって伊達先輩も頬を抑えて呆然と彼女を見ていたから。
彼女の肩がわなわな震えているように見えるが、それは泣くのを我慢しているのではなく、怒りを抑えきれずに震えているようだ。
「…二度目ですわよ…私のお友達を一度ならず二度も貶してくださいましたね…?」
「み、雅さん、何故ここに」
「だまらっしゃい!! 私はあなたのことを買い被っていたようです。ここまで愚かな男とは思いませんでした!」
そう、雅ちゃんだ。
大和撫子な雅ちゃんが伊達先輩にビンタを食らわせたのだ。
「お世話になった伊達のおじ様がどうしてもと頭をお下げになられるから、機会を与えましたけども…再教育の甲斐もないようですね志信様」
雅ちゃんは「この事をおじ様方に報告させていただきますわ」と冷たく通告すると踵を返していく。
だけどあくまで楚々と上品に歩く雅ちゃん。気高く上品かつ麗しいです。
私は失言を吐かれた被害者の方なんだけど、この場の収集をどうつけようかと困っていた。
するともう一度スパーン! と破裂音が聞こえてきた。
「伊達先輩最低です! あっくんのこと悪く言わないで! あなたなんかあっくんの足元にも及ばないんだから!!」
「か、花恋…?」
「あなたとお付き合いはしません! 今後二度と私に近寄らないで下さい!」
雅ちゃんにビンタされた時に伊達先輩の腕の拘束が取れていたのか、解放されていた花恋ちゃんが伊達先輩の無事だった方の頬を張っていた。
何故無事だった方を狙ったかは私にはわからないが、花恋ちゃんは「フン!」と鼻息荒く伊達先輩からそっぽ向くと、小走りで私に特攻してきた。
「あやめちゃんそんなことないよ! あやめちゃんは可愛いからね! あんな人の言うこと真に受けちゃダメだよ!」
「あ…うん、ありがと…」
「あやめさん、この男と同じ空気を吸いたくありませんから移動いたしましょ?」
いつの間にかお弁当箱を片したのか、風呂敷を提げた雅ちゃんが声を掛けてきた。
「え? あ、ちょっと!?」
女の子二人に押されながら中庭を後にして、まだちょっと時間は早いけどもブロック席に戻った。
テントだから日陰はあるけど暑いと思うんだけどな。
ふと振り返ると先程まで一緒にいたあの二人の姿がなかった。
「あれ、先輩達が来てない」
「先輩達なら後で戻ってくるよ。大丈夫だって」
「うーん…」
花恋ちゃんはそう言うけども…
乙女ゲームでもそうだったけど、現実でも風紀委員会と生徒会はあまり仲がよろしくなかった。だからあの場所に残しておくのが心配なんだけど…
「橘さんだって恋人を貶されたら腹が立つでしょう。あやめさん、待ちましょう」
「う…うん」
先輩は素人に対して暴力には走らないはずだけど、心配だ。
大久保先輩がいるから…大丈夫かな?
その後10分もしないうちに先輩方が戻ってきた。そこには当然ながら伊達先輩の姿はなく。
私は亮介先輩に何を話してきたのか質問してみたが、先輩は教えてくれなかった。
ただ「そんな事無いから。気にするなよ」と私の頭を犬撫でしてきたから慰めてくれているようだ。
もっと撫でてほしくてグイグイと先輩に頭を押し付けていると「お~暑い暑い」と大久保先輩が冷やかしてきたので、私はドヤ顔で亮介先輩に頭ナデナデしてもらったのである。
20
あなたにおすすめの小説
社畜OLが学園系乙女ゲームの世界に転生したらモブでした。
星名柚花
恋愛
野々原悠理は高校進学に伴って一人暮らしを始めた。
引越し先のアパートで出会ったのは、見覚えのある男子高校生。
見覚えがあるといっても、それは液晶画面越しの話。
つまり彼は二次元の世界の住人であるはずだった。
ここが前世で遊んでいた学園系乙女ゲームの世界だと知り、愕然とする悠理。
しかし、ヒロインが転入してくるまであと一年ある。
その間、悠理はヒロインの代理を務めようと奮闘するけれど、乙女ゲームの世界はなかなかモブに厳しいようで…?
果たして悠理は無事攻略キャラたちと仲良くなれるのか!?
※たまにシリアスですが、基本は明るいラブコメです。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない
斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。
襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……!
この人本当に旦那さま?
って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる