攻略対象の影薄い姉になったけど、モブってなにしたらいいの?

スズキアカネ

文字の大きさ
158 / 312
続編

和真と仲直りできた。だけど弟の成長が少し寂しい。

しおりを挟む
 和真におんぶされた状態で保健室に到着すると、眞田先生が私を見るなりこう言ってきた。

「…なんか去年も同じことがあった気がするけど、俺の気のせいか? お転婆コロ」
「去年は打撲と擦り傷でしたよ」
「…突き指したのが左手で良かったな」

 眞田先生が半分呆れた目で私を見てくる。でも二学期に入ってからは怪我してないぞ。一学期の体育祭のムカデ競争膝ケチャップ事故とか、のり君事件は巻き込まれたことだし。

 去年と同じく擦り傷には消毒液を塗布され、突き指は湿布とテーピングをされた。関節が動かしにくいけど仕方がない。

「見た感じだと骨とか腱には異常はないと思うけど、腫れたりして悪化するようならすぐに整形外科に行くようにな」
「はーい。ありがとうございました」

 先生にお礼を言うと、私は手当が終わるのを待っていた和真と保健室を出た。おんぶはもう断っておいた。

「そういえばさ、俺今日唐揚げ食べたいんだけど」
「はぁ!? 私怪我人なんだけど!?」

 保健室を出て程なくして、弟は唐揚げが食べたいとのたまってきた。通常運転か。
 おいおい、私は怪我人+受験生なんだから少しは遠慮しろよ! と非難を込めて弟を睨むと、和真は意外なことを言った。

「だから教えてよ、唐揚げの作り方。横で口出すだけでいいから」
「…別にいいけど……あんた、油の過剰摂取は良くないんだからね?」

 また唐揚げを作らされるのかと思ったらレシピを教えてくれと和真に言われた。今まで何度言っても作ろうとしなかったのに初めて和真が自分で作ることを覚えようとしている。
 その変化に私は密かに驚いていたが、和真も色々と考えているのだろう。

 ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ和真が大人になった気がして寂しく感じたのはここだけの話だ。



 バスケット優勝は1-Bだった。決勝でも圧勝だったそうな。
 球技大会で一年が優勝することはなかなか無いので、彼らは相当強かったんだろうな。かなり手強かったもの。
 悔しいけど、仕方がない。
 今年うちのクラスは優勝を狙えなかった。本当は優勝で飾りたかったけど、毎回勝てるわけもないよなと少し諦め混じりで閉会式の表彰を眺めていた。

 学校の行事イベントはこの球技大会で終わり。
 次は来月の期末テスト、そして…一月には共通テストが待っている。点を落とせば、志望校は受験できない……
 
 それを思い出した時キリリ、と私の胃が痛んだ気がした。


☆★☆


 その日の晩、私は先輩と電話で話していた。話題は球技大会と和真の話についてだ。

「それで…私なぜか和真に宣戦布告されたんですよ…負けないって言われたんですけど……和真のほうが私よりも優れてるのに……」
『……あやめが気づいていないだけで、お前の弟はお前に敵わないと思ってきたんだよ。それは外見や学業じゃなくてもっと内面のことで』
「内面ー…?」

 私の内面で敵わないことってなんだよ…和真は確かに幼い頃人見知りではあったけど、周りに人は集まっていたはずだ。主に女の子だけど。
 なんか納得できなくて電話口で私が唸っていると、先輩が向こうで苦笑いする気配がした。

『人ってのは無いものねだりな性分だからな……まぁ、弟も男の矜持ってものがあるんだろう。姉にいつまでも負けているのが悔しいっていう矜持が』
「矜持~?」

 なんだそれは。だから私に劣ってる部分なんて何処にもないだろう弟には。先輩も濁した言い方するから私は意味がわからなくて微妙な気分である。
 私が煮え切らない気持ちでいるのを知っているであろう先輩は更にこうアドバイスしてきた。

『あやめも弟を想うならいつまでも守ってやろうとするな。姉とはいえどいつまでも守られているのは男としてプライドが傷つくんだから。あいつももう子供じゃないんだから突き放すくらいで丁度いい』
「えぇ? …私別に過保護にしてるつもり無いですけど」

 なんで私よりも先輩のほうが和真の気持ち理解してんだか。姉として嫉妬するんですけど…
 同じ弟だから理解できると言うの?
 ……ちょっとジェラシー…

「私の弟なのに……なんで先輩にはわかるの…」
『俺に嫉妬してどうする』

 ブチブチ文句を言っていると先輩に突っ込まれてしまった。

『それと、心配してくれた弟に八つ当たりするのは感心しないぞ』
「うっ…それは…申し訳ないと…」
『ちゃんと弟に謝っておけよ』

 痛いところを突かれた。…確かに私も冷静じゃなかったから感情的になって、色々吐き捨てた気がする、…今では悪かったと思っている。
 …和真も大変なのに、私は自分のことしか考えずに酷いことを言った気がする。…後で改めて謝らないとな。

 私はなんて情けない姉なんだろうか…勉強もダメダメで…試合ではずっこけるし…弟に八つ当たりして半泣きにさせるし…
 自分に嫌気が差すわ…

 私が深く反省していると分かったのか、先輩はそれ以上注意することはなかった。


『ところであやめ、期末テストは12月のいつまでだ?』
「…えっと10日までです」

 私の学校で期末テストが12月上旬頃から行われるのでその後に勉強デートをしようという提案を出された。ここしばらく私達は会えていなかったからね。そのくらいは大目に見て欲しい。
 冬休みに入ると私がゼミ通いで追い込み、先輩が冬休み後に後期試験に入るので、二人でお勉強デートとして会う時間を捻出しようと話をしていたのだ。

 クリスマスもゼミ後に数時間という条件で会えることになっている。これは私のワガママを聞いてもらったのだ。だって来年まで待てない! クリスマスに先輩とバカップルがしたいの!
 ちゃんと勉強するから大目に見てくれ! 本当に会えてなくて辛いんだよぉぉ!

 私のためにもここで成績を落とすのは良くない。不調が続いているが、それに負けずに期末試験に向けてテスト勉強を頑張らないと!

 私はクリスマス…いや、期末試験と受験のためにもっと勉強頑張るぞ! と気合を入れて、その日は遅くまで勉強したのであった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! *全28話完結 *辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 *他誌にも掲載中です。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない

斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。 襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……! この人本当に旦那さま? って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!

お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?

夕立悠理
恋愛
もうすぐ高校一年生になる朱里には、大好きな人がいる。義兄の小鳥遊優(たかなしゆう)だ。優くん、優くん、と呼んで、いつも後ろをついて回っていた。  けれど、楽しみにしていた高校に入学する日、思い出す。ここは、前世ではまっていた少女漫画の世界だと。ヒーローは、もちろん、かっこよくて、スポーツ万能な優。ヒロインは、朱里と同じく新入生だ。朱里は、二人の仲を邪魔する悪役だった。  思い出したのをきっかけに、朱里は優を好きでいるのをやめた。優くん呼びは、封印し、お兄ちゃんに。中学では一緒だった登下校も別々だ。だって、だって、愛しの「お兄ちゃん」は、ヒロイン様のものだから。  ──それなのに。お兄ちゃん、ちょっと、距離近くない……? ※お兄ちゃんは、彼氏様!!……だよね? は二人がいちゃついてるだけです。

お母様が国王陛下に見染められて再婚することになったら、美麗だけど残念な義兄の王太子殿下に婚姻を迫られました!

奏音 美都
恋愛
 まだ夜の冷気が残る早朝、焼かれたパンを店に並べていると、いつもは慌ただしく動き回っている母さんが、私の後ろに立っていた。 「エリー、実は……国王陛下に見染められて、婚姻を交わすことになったんだけど、貴女も王宮に入ってくれるかしら?」  国王陛下に見染められて……って。国王陛下が母さんを好きになって、求婚したってこと!? え、で……私も王宮にって、王室の一員になれってこと!?  国王陛下に挨拶に伺うと、そこには美しい顔立ちの王太子殿下がいた。 「エリー、どうか僕と結婚してくれ! 君こそ、僕の妻に相応しい!」  え……私、貴方の妹になるんですけど?  どこから突っ込んでいいのか分かんない。

冷徹義兄の密やかな熱愛

橋本彩里(Ayari)
恋愛
十六歳の時に母が再婚しフローラは侯爵家の一員となったが、ある日、義兄のクリフォードと彼の親友の話を偶然聞いてしまう。 普段から冷徹な義兄に「いい加減我慢の限界だ」と視界に入れるのも疲れるほど嫌われていると知り、これ以上嫌われたくないと家を出ることを決意するのだが、それを知ったクリフォードの態度が急変し……。 ※王道ヒーローではありません

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

処理中です...