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番外編
小話・すみれちゃんとお父さん。
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数年後の橘家で起きたちょっとした騒動。
ーーーーーーーーーーー
「すみれも剣道やりたい」
「……危ないから駄目」
「なんで! お兄ちゃんは剣道習ってるじゃないの!」
最近4歳になったウチの娘は剣道を習いたがっている。
なのだが、亮介さんは女の子であるすみれには武道をさせたくないのか、否の返事しかしない。
私の両親からは「中身があやめの小さい頃そっくり」とお墨付きをもらうくらいお転婆な我が娘は、剣道をしている父親の姿に深く感銘を受けたらしく、ここ最近ずっとこうである。
息子の睦生は3歳の頃からすでに剣道を習っており、6歳の今は幼稚園の後に剣道教室に通ったり、休みの日に亮介さんに指導されたりして日に日に上達していっているのがわかるくらい様になってきている。
すみれとしては二人から仲間はずれにされている気がして焦っているのかなと私はなんとなく思っていた。
「ほら、すみれは紅葉ちゃんと一緒に茶道や華道を習ってきたら良いじゃないか」
「や! 剣道が良いんだもん! すみれはお父さんみたいに格好良くなりたいの!」
すみれはだしだしだし、と地団駄を踏んで、不満を訴えた。
紅葉ちゃんというのは私の友人・雅ちゃんの娘さんで、すみれの一個上の女の子。雅ちゃんが娘さんに行儀作法を教えているついでにうちの子も一緒に習ったことがあるが、娘には合わなかったようだ。
娘に『お父さんみたいに格好良くなりたいの』と言われた亮介さんは少し…いやかなり嬉しそうだけど、私の生暖かい視線を受けて我に返ったのか、ごまかすように咳払いして「駄目だ。お前は女の子だろう。格好良くなる必要ない」と一蹴していた。
あーあ……そんな事言ったら逆効果なのにねー…
私は口出すことなく、二人の会話を聞いていたのだが、すみれはムウウウーッとフグのようにほっぺたを膨らませて亮介さんを睨みつけると、タタタ…と何処かへと走り去っていった。
見かねた私はそこで亮介さんに忠告した。
「…いいじゃないですか。最近ロリコン多いし、自分の身を守るために習わせてあげたら」
「駄目だ。すみれはお転婆なんだぞ。怪我したらどうするんだ」
「なんでもかんでも過保護にしても良いことはないと思いますよ……それに、あの子がただで諦めるとでも思ってるんですか?」
「え…?」
私のその言葉を不審に感じたらしい亮介さんは、訝しげに眉を顰めていた。
タタタ…
すみれが去っていった場所から再び聞こえてくる足音に視線を向けると、亮介さんはサァッと顔面蒼白にさせた。
舞い戻ってきたすみれは自分の髪の毛を鷲掴み、こう宣言したのだ。
「すみれ、男の子になる!」
「待ちなさい! いい子だから…そのハサミを下ろすんだ」
「やだ! すみれも剣道習うんだもん!」
「無駄な抵抗をやめなさい!」
まるで立てこもり犯を宥める警察のよう…あ、そうだ亮介さん警察官だったわ。
幼稚園で使う図工用のハサミなので先は尖っていないし、切れ味も鋭くはないが、髪の毛なら切れる。自分経験者だから知ってる。
すみれったら私と同じことしてるわ。理由は違うけど。
長く伸ばしてきたすみれの髪の毛は背中まであるのだが、すみれは剣道を習わせてくれないならそれを切ると脅してきたのだ。
別にすみれが髪を短くしたいなら私はそれで構わないけど、亮介さんは大いに構うらしい。すみれなら髪の毛短くても可愛いと思うんだけどな。
その後、すみれの脅しに亮介さんが折れて、すみれは念願の剣道を習う権利を与えられた。
…うーん、誰が悪いとかそんなことはないんだけど…この娘は私の性格を受け継いでるなぁと感じた出来事だった。
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「すみれも剣道やりたい」
「……危ないから駄目」
「なんで! お兄ちゃんは剣道習ってるじゃないの!」
最近4歳になったウチの娘は剣道を習いたがっている。
なのだが、亮介さんは女の子であるすみれには武道をさせたくないのか、否の返事しかしない。
私の両親からは「中身があやめの小さい頃そっくり」とお墨付きをもらうくらいお転婆な我が娘は、剣道をしている父親の姿に深く感銘を受けたらしく、ここ最近ずっとこうである。
息子の睦生は3歳の頃からすでに剣道を習っており、6歳の今は幼稚園の後に剣道教室に通ったり、休みの日に亮介さんに指導されたりして日に日に上達していっているのがわかるくらい様になってきている。
すみれとしては二人から仲間はずれにされている気がして焦っているのかなと私はなんとなく思っていた。
「ほら、すみれは紅葉ちゃんと一緒に茶道や華道を習ってきたら良いじゃないか」
「や! 剣道が良いんだもん! すみれはお父さんみたいに格好良くなりたいの!」
すみれはだしだしだし、と地団駄を踏んで、不満を訴えた。
紅葉ちゃんというのは私の友人・雅ちゃんの娘さんで、すみれの一個上の女の子。雅ちゃんが娘さんに行儀作法を教えているついでにうちの子も一緒に習ったことがあるが、娘には合わなかったようだ。
娘に『お父さんみたいに格好良くなりたいの』と言われた亮介さんは少し…いやかなり嬉しそうだけど、私の生暖かい視線を受けて我に返ったのか、ごまかすように咳払いして「駄目だ。お前は女の子だろう。格好良くなる必要ない」と一蹴していた。
あーあ……そんな事言ったら逆効果なのにねー…
私は口出すことなく、二人の会話を聞いていたのだが、すみれはムウウウーッとフグのようにほっぺたを膨らませて亮介さんを睨みつけると、タタタ…と何処かへと走り去っていった。
見かねた私はそこで亮介さんに忠告した。
「…いいじゃないですか。最近ロリコン多いし、自分の身を守るために習わせてあげたら」
「駄目だ。すみれはお転婆なんだぞ。怪我したらどうするんだ」
「なんでもかんでも過保護にしても良いことはないと思いますよ……それに、あの子がただで諦めるとでも思ってるんですか?」
「え…?」
私のその言葉を不審に感じたらしい亮介さんは、訝しげに眉を顰めていた。
タタタ…
すみれが去っていった場所から再び聞こえてくる足音に視線を向けると、亮介さんはサァッと顔面蒼白にさせた。
舞い戻ってきたすみれは自分の髪の毛を鷲掴み、こう宣言したのだ。
「すみれ、男の子になる!」
「待ちなさい! いい子だから…そのハサミを下ろすんだ」
「やだ! すみれも剣道習うんだもん!」
「無駄な抵抗をやめなさい!」
まるで立てこもり犯を宥める警察のよう…あ、そうだ亮介さん警察官だったわ。
幼稚園で使う図工用のハサミなので先は尖っていないし、切れ味も鋭くはないが、髪の毛なら切れる。自分経験者だから知ってる。
すみれったら私と同じことしてるわ。理由は違うけど。
長く伸ばしてきたすみれの髪の毛は背中まであるのだが、すみれは剣道を習わせてくれないならそれを切ると脅してきたのだ。
別にすみれが髪を短くしたいなら私はそれで構わないけど、亮介さんは大いに構うらしい。すみれなら髪の毛短くても可愛いと思うんだけどな。
その後、すみれの脅しに亮介さんが折れて、すみれは念願の剣道を習う権利を与えられた。
…うーん、誰が悪いとかそんなことはないんだけど…この娘は私の性格を受け継いでるなぁと感じた出来事だった。
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