攻略対象の影薄い姉になったけど、モブってなにしたらいいの?

スズキアカネ

文字の大きさ
304 / 312
番外編

わんわん物語の主人公になったけど、ヒロインって何したらいいの?【てん】

しおりを挟む

 テスト週間に入った。
 家にいるとわんちゃんたちにかまけてしまうので、今日は気分を変えて図書館の自習室にてテスト勉強をしていた。その合間に休憩がてら図書館で借りた本を読んでいた私は、ふと顔を上げて館内をぐるりと眺める。
 朝イチで乗り込んだ自習室だが、今ではすごい人である。相席している人もちょくちょく見かけるのに、私のテーブル席には誰も座りに来ない。何故なのか。

「…田端?」

 小さな声で話しかけられた私は首を動かして振り返る。
 そこには私服姿の橘先輩がいた。ただしひとりではなく、女の人と一緒である。その女性が偉い美人で、橘先輩と並ぶとこれが美男美女。私は驚いて息を止めていた。
 先輩には彼女がいたのか。私はてっきりフリーだと……あれ、設定では彼女いたっけ? 彼女持ちは山ぴょんだけじゃ…ほかは婚約者だったし……

 ふと、自分の頭に浮かんだ単語に、私は余計に意味がわからなくなって混乱した。なんだよ、設定って……自分の思考回路がわからなくなった。

「お前もテスト勉強か?」

 先輩は私の手元を見て首をかしげていた。私が読んでいるのは獣医学の本である。高校のテストには出ない範囲なので、不思議に思ったのであろう。

「獣医学部を受けるにあたって、調べておきたいことがあって。大丈夫ですよ、テスト勉強もちゃんとしてますから!」
「そうか。…悪いが、相席しても構わないか?」
「あっどーぞどーぞ!」

 私は空いている席をすすめたのだが、何故か橘先輩は私の隣に座ってきた。あれ、同行者の彼女さんの隣じゃなくていいのかな。あ、正面から彼女の顔を見たい感じだろうか……
 私が二人の顔を見比べていると、斜め前に座った女性と目が合った。すると彼女は目を細め、こちらを警戒するような目を向けていた。
 なぜ? と思ったが、彼氏が親しそうな女を牽制してるのかもなと自分を納得させた。


 お互い静かに勉強した後、私はお昼をとろうと、勉強道具をそのまま置いてカフェテリアに足を運ぼうとすると、橘先輩とお連れの彼女さんも一緒にやってきた。
 何故、私と一緒に食べるんだろう。2人で食べたらいいのに。
 彼女さん(仮)は手作りのお弁当を持ってきたらしい。カフェテリアの小さな丸テーブルに広げられたお弁当はきらきらチカチカする。すごい手が込んでるな…

「家にあるもので作ってきたの」

 いやいや、なんでそんな謙遜するの。絶対嘘だよね。彼女は先輩のお世話をして、楽しそうに笑っている。何故私はカップルに囲まれて食事をしているのか。息苦しいんだが。

 私は昨晩のおかずを詰めてきた適当なお弁当をもしゃもしゃしながら、考え込んでいた。
 手作りかー…うーん。わんちゃんのために自家製ジャーキー作成とかおからビスケットを焼くことはあるけど、手の込んだものは作れないんだよねぇ。和真は私が作った唐揚げが好きらしいけど、私は犬のお世話もあるので、そんなに料理しない。
 そうだなー。久々に家にあるジャーキー製造機で作ろうかなぁ。

「田端…? どうした」
「えっ?」

 橘先輩と彼女さんの邪魔になってはいけないと思って黙って食事していたんだが、それを心配した先輩に話しかけられた。
 いけね、何の話していたんだっけ。

「すみません、犬のこと考えてました。帰ったらジャーキー作ってあげようかなと思って」
「お前らしいな」

 私があいも変わらず犬のことを考えているもんだから先輩が笑っていた。
 なんだか最近、先輩よく笑うよね。友達と一緒のときに笑っているのは見かけたことあるけど、親しくない相手の前ではそうでもなかった。……もしかして私に心を開いてくれたのだろうか。
 私はハッとした。まるで飼い主に従順な他所様のわんちゃんが私に懐いてくれたあの感覚を思い出したのだ。

「亮介、これも食べて。さっきから全然箸が進んでないじゃない」
「あぁ、うん」
「田端さんも良かったら食べてね」
「わぁ、いいんですかぁ。ありがとうございます」

 そこに口を挟んできた彼女(仮)さん。
 甲斐甲斐しく橘先輩のお世話をしているように見えて、私に牽制しているような…おいおい、本気か? 化粧っ気のない地味女に橘先輩が惹かれるとでも思ってるのか?
 そこでは表向きお礼を言ったけど、手を付けたらその時は「彼のために作ったのに…厚かましい」と視線で文句言われそうなので、彼女の作ったお弁当には箸をつけなかった。

 そそくさと自分のお弁当を食べ終わってお弁当箱を片付けていると、突如として背後からガシッと肩を掴まれた。

「ファッ!?」
「田端さん! 偶然だね!」

 マヌケな声を漏らしながら、その声にぎょっとして振り返ると、そこにはいつぞやの黒髪ロングがいた。
 ──また、あんたか。

「…和真ならいないよ」
「今は和真くんのことじゃなくて……ちょっとこっち来て!」
「えぇ…」

 私よりも小柄なのに力が強い。
 無理やり引っ張られる形で引きずり出されると、先輩たちから大分離れた位置まで連れて行かれた。普通の声で話していたらきっと声は届かないであろう。
 私は目の前にいる、可愛らしい女の子を見下ろして困惑していた。彼女は私の二の腕をしっかり掴むと、私の顔を凝視してきた。その圧に私は引くが、腕を掴まれているので離れられない。
 この間からなんだろうこの子。行動が意味わからない。

「あなた、乙女ゲームの記憶があるでしょ?」
「は…?」

 彼女のその口から飛び出してきた単語に私は気の抜けた声を漏らした。
 おとめ、げぇむ…?

「???」
「和真くんは攻略対象、そしてあなたは影の薄いモブ姉。…ゲームの中では女子校に進学したのに、なんでウチの学校にいるの?」

 え……何それ。この人、頭大丈夫…?
 いや、わんわん物語の主人公だと自覚している私がそんな事言ってはいけないな。いやでも…和真が攻略対象……? 私が、女子校……モブ姉。
 ──ズキリ…!

 こめかみに刺さるような痛みを感じて私はギュッと目を瞑った。

「あ、そうなんですか…」

 よくわからないので、受身の姿勢で受け答えすることにした。

『綾ちゃん。このゲーム絶対にハマるからやってみて! 感想聞かせてね♪』

 前世の友達の記憶がちらつく。
 顔もおぼろげにしか覚えていない、同じ学校の友達。

『──ちゃんがものすごく健気で、私泣いちゃったよー!』
『あ…ライバル令嬢の方を推しちゃうんだ…』

 “わたし”が興奮した様子で感想を伝えると友達はなんだかがっかりした顔をしていた。
 それで、なんだったっけ。
 
『虹、最期まで一緒だよ』

 瓦礫に身体を押しつぶされ、ほぼ即死状態で息を引き取った記憶、その痛み苦しみを思い出した私は更に強い頭痛に襲われた。

「うっ…!」
「えっ!? どうしたの!?」

 私が頭を抱えて呻くと、目の前の少女はぎょっとした顔をしていた。だけどそれに「大丈夫」と応える余裕もなくて。

 私が死んだあの世界で、あの後どうなったのだろう。お父さんお母さんは前を見て歩けるようになっただろうか。友達やクラスメイトは無事だったのだろうか。
 そもそも私はなんなのだろう。

 ──彼女は、何のゲームを私に勧めていたっけ?

 鈍器で頭をガンガンと殴られるように頭痛がひどくなる。
 後少しで思い出せそうなのに、私の脳裏に蘇るのは、息を引き取るまでの恐怖の時間。
 あの瞬間まで一緒にいたのに。
 虹、どこにいるの。私の大切な家族。私の可愛い相棒。

「──林道、田端に何を言った」
「えっ…いや、あのその…」

 様子がおかしいと気づいた橘先輩が近づいてきて、私達を引き剥がした。私は橘先輩に支えられるように肩を抱かれていたが、それを意識する余裕もなくて。

「顔色が悪いぞ田端、大丈夫か…?」

 橘先輩が心配そうに顔を覗き込んでくる。
 この女の子、林道さんって言うんだ。……知らないなぁ、“ゲーム”には存在しなかったから。
 ズキッと再び頭痛が押し寄せてくる。

「……すいません、ちょっと気分悪くなってきたんでお先に失礼します…」

 だめだ。頭の中がごちゃごちゃして混乱してる。
 この記憶はなんだろう。分からない。何だったっけ。

「そうしたほうがいい。送ろう」
「受験生が気を遣わないでくださいよ。大丈夫です」

 橘先輩の申し出を辞した私は帰宅する準備をして図書館を後にした。
 林道という少女をその場に放置して、家に帰ってきた私はそのまま布団に横になったが、その日の夜には知恵熱が出てきてそのまま寝込んでしまった。

 熱に浮かされている間、何度か夢を見た。前世の夢だ。なにかの記憶が蘇るが、目覚めるとまた忘れている。楽しくて幸せで、だけど苦しくて痛い思い出が流れ込んでは薄れて消えるの繰り返し。
 高熱で頭がどうにかなりそうで、意識が混濁し続けた。小学生の時以来だ。こんなふうに熱と前世の記憶に苦しめられたのは。

 ……翌日起きた時、私が思い出しかけていたことは霞がかってまた何がなんだかわからなくなってしまった。



 まだズキズキ痛む頭を抑えながら階下に下りると、保護犬たちが寄ってきたので1頭ずつ撫で回す。

「心配してたぜそいつら」
「そっかぁ。ごめんねぇみんな。和真、私の代わりに世話してくれていたんだよね、ありがと」

 土曜の夜に寝込んで、日曜日は一日中寝ていた私の代わりに和真が保護犬たちのお世話をしてくれていたのだ。本当に助かる。
 犬の爪切りを慣れた手さばきで行う和真を観察しながら、ふと黒髪ロングのことを思い出した。

「あの、さぁ。最近和真に話しかけてくる黒髪ロングの女の子、林道さんだっけ?」
「…そんな名前だったっけ?」

 和真もあまり相手のことをよく知らないらしい。

「少し変わった人だよね。図書館で変なこと言われたんだけど……何言われたんだっけ…忘れちゃった」

 思い出そうとするとまた頭の痛みが増してきた。私が頭を抑えていると、和真は爪切りを机に置いた。

「まだ寝てたほうがいいだろ。ほら、歩けるか」

 頼もしい弟は私の体を支えて部屋まで誘導してくれた。
 あんた、そんな頼りになって…! お姉ちゃんは感動してます…!

 弟の成長に感動しながらお布団の中に戻ってそのまま眠ると、翌日の月曜日には完全復活したのである。
 黒髪ロングに何を言われたのかさっぱり覚えていないけど、覚えていないということは大したことじゃないのだろう。気にしないことにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

会社のイケメン先輩がなぜか夜な夜な私のアパートにやって来る件について(※付き合っていません)

久留茶
恋愛
地味で陰キャでぽっちゃり体型の小森菜乃(24)は、会社の飲み会で女子一番人気のイケメン社員・五十嵐大和(26)を、ひょんなことから自分のアパートに泊めることに。 しかし五十嵐は表の顔とは別に、腹黒でひと癖もふた癖もある男だった。 「お前は俺の恋愛対象外。ヤル気も全く起きない安全地帯」 ――酷い言葉に、菜乃は呆然。二度と関わるまいと決める。 なのに、それを境に彼は夜な夜な菜乃のもとへ現れるようになり……? 溺愛×性格に難ありの執着男子 × 冴えない自分から変身する健気ヒロイン。 王道と刺激が詰まったオフィスラブコメディ! *全28話完結 *辛口で過激な発言あり。苦手な方はご注意ください。 *他誌にも掲載中です。

理想の男性(ヒト)は、お祖父さま

たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。 そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室? 王太子はまったく好みじゃない。 彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。 彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。 そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった! 彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。 そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。 恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。 この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?  ◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。 本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。 R-Kingdom_1 他サイトでも掲載しています。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜

紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。 連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

処理中です...