10 / 15
10
しおりを挟む
「びっくり、した……」
俺は思わず呟いた。
思っていた返事と全く違う言葉に理解が追いつかない。
あんまり大きな声を出さないヒデの珍しい声に、涙も何もかも引っ込んでしまった。
「びっくりしたのはこっちだよ! 渚、とりあえず一回落ち着いて、ね?」
「っ、俺は落ち着いてるもん! 今だって思いつきじゃないっ」
つい上ずった声で反論してしまう。
またなだめられて、有耶無耶にされたら困るのだ。
そう思うとここで止まっちゃいけないと気持ちが焦る。
「ずっと考えてたもん……」
「渚、その……ごめんね」
お互い少しの沈黙の後、ヒデから小さい声で謝られた。
分かってた。分かってたけど、ヒデの口から聞くともうどうしようもなくて。
本格的に涙が舞い戻ってくる。
耳を塞ぐ代わりに、目をぎゅっとつぶった。
「あっ、ナギっ、ちがっ!」
いつになく慌てた声に、恐る恐る目を開けるとヒデが意味もなく手を上下に動かしていた。
「違うってどういうこと」
「それは……」
「やっぱりっ!」
「だからっ……本当はもっと格好つけたかったんだけど」
よくみるとヒデも不安な顔をしている。
なんでだろう。
「最後まで聞いてほしいんだけど」
「聞けるか分かんない……」
「そこは、聞いてほしいな」
ヒデは苦笑してるけど、ズタボロに言われたら最後までなんて聞けないよ。
がんばるけど。
「渚、好きだよ」
俺の大好きな顔で大好きな声でそんなこと言われたら。
「誤魔化されないからね!」
「ご、誤魔化すとかじゃなくて! 好きだってことは信じてよ」
「うん……」
「よかった。それで、ナギのこと好きだから、別れたくないので……その、別れるの考え直してほしいです」
突然敬語になるヒデから緊張感が伝わってくる。
「けどっ、別れたいのはそっちでしょ!」
「別れたいなんて言ったことないよ!」
今日は珍しいことばっかり。
ヒデが俺に怒鳴るように大声を出すなんて、なかったから。
「別れたくないし、ナギと結婚したいって思ってるよ」
え?
今なんて言った?
「待って! いま、今なんてっ」
「ナギと結婚したい」
「ほんと……?」
ヒデからずっと聞きたかった言葉。
信じられない。幻聴じゃないよね?
嬉しさと不安が入り混じりながら、俺はもう一度聞き返していた。
だって、信じられないもん。
「本当だよ」
「じゃあ、なんで、今まで」
「えっと、恥ずかしいんだけど、プロポーズのタイミングが掴めなくて……」
さっきの勢いはどこへ行ったのか、ヒデはボソボソと恥ずかしそうに続ける。
俺は思わず呟いた。
思っていた返事と全く違う言葉に理解が追いつかない。
あんまり大きな声を出さないヒデの珍しい声に、涙も何もかも引っ込んでしまった。
「びっくりしたのはこっちだよ! 渚、とりあえず一回落ち着いて、ね?」
「っ、俺は落ち着いてるもん! 今だって思いつきじゃないっ」
つい上ずった声で反論してしまう。
またなだめられて、有耶無耶にされたら困るのだ。
そう思うとここで止まっちゃいけないと気持ちが焦る。
「ずっと考えてたもん……」
「渚、その……ごめんね」
お互い少しの沈黙の後、ヒデから小さい声で謝られた。
分かってた。分かってたけど、ヒデの口から聞くともうどうしようもなくて。
本格的に涙が舞い戻ってくる。
耳を塞ぐ代わりに、目をぎゅっとつぶった。
「あっ、ナギっ、ちがっ!」
いつになく慌てた声に、恐る恐る目を開けるとヒデが意味もなく手を上下に動かしていた。
「違うってどういうこと」
「それは……」
「やっぱりっ!」
「だからっ……本当はもっと格好つけたかったんだけど」
よくみるとヒデも不安な顔をしている。
なんでだろう。
「最後まで聞いてほしいんだけど」
「聞けるか分かんない……」
「そこは、聞いてほしいな」
ヒデは苦笑してるけど、ズタボロに言われたら最後までなんて聞けないよ。
がんばるけど。
「渚、好きだよ」
俺の大好きな顔で大好きな声でそんなこと言われたら。
「誤魔化されないからね!」
「ご、誤魔化すとかじゃなくて! 好きだってことは信じてよ」
「うん……」
「よかった。それで、ナギのこと好きだから、別れたくないので……その、別れるの考え直してほしいです」
突然敬語になるヒデから緊張感が伝わってくる。
「けどっ、別れたいのはそっちでしょ!」
「別れたいなんて言ったことないよ!」
今日は珍しいことばっかり。
ヒデが俺に怒鳴るように大声を出すなんて、なかったから。
「別れたくないし、ナギと結婚したいって思ってるよ」
え?
今なんて言った?
「待って! いま、今なんてっ」
「ナギと結婚したい」
「ほんと……?」
ヒデからずっと聞きたかった言葉。
信じられない。幻聴じゃないよね?
嬉しさと不安が入り混じりながら、俺はもう一度聞き返していた。
だって、信じられないもん。
「本当だよ」
「じゃあ、なんで、今まで」
「えっと、恥ずかしいんだけど、プロポーズのタイミングが掴めなくて……」
さっきの勢いはどこへ行ったのか、ヒデはボソボソと恥ずかしそうに続ける。
147
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
サンタからの贈り物
未瑠
BL
ずっと片思いをしていた冴木光流(さえきひかる)に想いを告げた橘唯人(たちばなゆいと)。でも、彼は出来るビジネスエリートで仕事第一。なかなか会うこともできない日々に、唯人は不安が募る。付き合って初めてのクリスマスも冴木は出張でいない。一人寂しくイブを過ごしていると、玄関チャイムが鳴る。
※別小説のセルフリメイクです。
ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!
ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!?
「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??
【BL】無償の愛と愛を知らない僕。
ありま氷炎
BL
何かしないと、人は僕を愛してくれない。
それが嫌で、僕は家を飛び出した。
僕を拾ってくれた人は、何も言わず家に置いてくれた。
両親が迎えにきて、仕方なく家に帰った。
それから十数年後、僕は彼と再会した。
《一時完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ
MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。
揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。
不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。
すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。
切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。
続編執筆中
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる