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第二部
37:輝く病と頼り人
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ある日の昼過ぎ。森の訪れにはいつも通りともいえる談笑の声が響いていた。
店内のカウンターを挟んでローザの向かいに座っているのは、リエルとティエラの二人。シノがいないのはワリと珍しい光景なのだが、彼女は一人で依頼に出向いていて不在とのこと。
「隣街から依頼が来るなんて、珍しいこともあるんですねー」
「それだけ先の武道大会で、シノさんの名が轟いているということですよ。喜ばしいことです!」
「戦う先生、なんて通り名も耳にしましたよ。シノがどう思っているのかは別として」
どうやらシノは例の武道大会が開催された街、ジェネスへ行っているらしい。ここのところはずっと近場で依頼をこなしていたため、これも変化の一つだろうか。
クラド村はともかくジェネスにおいては大会で準優勝という成績を残しているのだし、かなり名は通っていそうだ。
彼女はあまりちやほやされるのに慣れていないため、大丈夫なのかという心配こそありはするけれど。
「というよりティエラさん。お店の方はいいんですか?」
「新商品のネタ出し中なのでちょっとお休みです。今日はしばらく来店者もいないでしょうし」
ティエラは相変わらず、気まぐれで店を開けたり閉めたりするいつもの調子だ。それでも経営が成り立っているのは素直に凄いと思う。
以前の遠出で王都まで行った際の商談もあってか、店を閉めていてもお金は入ってきているのだろう。
「まぁ、ここに関してもこういう日は結構珍しいですからね」
ローザが店内を見渡すと、彼女ら以外に誰も客や冒険者がいない状態となっていた。皆依頼などに出向いてしまったようで、各テーブルもガランとしている。
なので今の店内は、三人の話し声や従業員が働く音だけが響くのみである。まるで貸し切り状態かのようだ。
「こういう静かな環境だからこそインスピレーションが湧くというものなのですよ。店で色々考えていると、来店者に驚いて思考が中断しますからね」
「仕事中も結構、自分の世界に入っちゃってるんですね……」
「魔法道具作りは繊細な作業なので、邪魔が入るなんてもってのほかです」
彼女の作業中に来店してしまった客はご愁傷様である。作業中に来店されると困るとは、店主としてそれでいいのだろうか。
シノが聞いたら「この子のことだから仕方ないよ」などと返されてしまいそうではあるが。
「何か手伝えたら……と思ってはいましたが、その分だとなさそうですね」
「生憎、今はもう間に合っているので大丈夫ですよ」
「こちらの方も、届いている依頼は今のところありませんねー……」
昼頃に出て行った冒険者達が全て受注してしまったのだろう。ローザからもリエルに頼める事がない。要するに、今は思いっきり暇だということだ。
先ほどのローザの言葉のように、こういう日があってもいいとは思うのだが、ティエラはともかくとしてリエルの性格上、外に出ながらボケッとしているのは逆に落ち着かないだろう。
「野良の魔物討伐などに出向いてみてはどうですか? 早朝のシノみたいに」
「依頼ではない分、報酬も割安になってはしまいますけどね」
基本的に魔物討伐依頼は、何々が厄介だから討伐してくれなどといった感じで舞い込んでくるため、その分の報酬が上乗せされている。
早朝にシノが行っている日課のような討伐はその範疇ではないため、討伐報酬も安めだ。相場としては、大体一回分の食費が浮けばいい程度か。
「それもそうですね……魔物との戦闘自体が修行にもなりますし」
「ただし、少し前にシノさんとティエラさんが遭遇したゴーレムのような例もありますので、そこは注意してくださいね」
「確かに……まぁ、無理のない程度ということで」
リエルならば無詠唱の魔法という強みがあるので、よっぽどじゃなければ遅れは取らないとは思うが、油断は禁物だ。また例のゴーレムのように、発見されていないだけで厄介な魔物が潜んでいる可能性だってあるのだから。
とりあえず今日の目的が決まったので、ローザとティエラに別れを告げて店を出ようとした。が、その時――――――――
「ローザちゃん、大変だ! 娘が……ウチの娘が!!!」
店の扉が勢いよく開いたかと思えば、息を切らした男性が慌てた様子で入ってくる。
ちょうど扉の前にいたリエルは驚いて飛び退き、カウンター側の二人も入り口の方に目を向けている。
「ど、どうしたんですかバルトさん!?」
「昼頃に娘が倒れちまって、お医者に見せたんだが……それでもお手上げらしくてよぉ……!」
「ま、まずは落ちついてください。ね?」
バルトと呼んだ彼は村の門番を務めている男性の一人で、森の訪れでも冒険者に交じってよく見かける人物だ。狼狽え気味の彼を落ち着かせたローザは話を聞き始める。普段の気弱そうな彼女とは一転、いざという時には頼もしい子だ。
どうやら娘のマリーが病気で倒れてしまったらしく、医者に見せても治療方法が不明だったらしい。となると頼れるのは冒険者の知識だけとなってくるので、こうして店へやってきたというわけだ。ローザはよく娘の自慢話を聞かされていたので、その娘の一大事となっては焦っているのも十分にわかる。
「事情はわかりました。そうなると、今動けるのは……」
「私しかいませんね。急を要するようなので、引き受けましょう!」
「よろしくお願いします、リエルさん」
「ありがとうよ、精霊の姉ちゃん……!」
あまり何人も押しかけるとかえって邪魔になってしまうので、ティエラは店に残ることにした。医者でもわからない病気となると、うかつに動くと二次被害が出ないとも限らないからだ。
バルトはリエルに深く頭を下げると急ぎ足で店を出ていき、彼女もその後を追っていくのであった。
◇
村の入り口近くにあるバルトの家へ着いたリエルは、すぐにマリーの元へと向かう。彼女はシノの生徒であり、腰まで伸びた綺麗な金髪と人一倍活発な性格が印象的な少女だ。
医者と母親に促されて部屋に通されたリエルは、ベッドで横になっている彼女の近くへと寄り添う。
「マリーちゃん。私が来たから、もう大丈夫だよ」
「はぁ……はぁ……その声は、リエルお姉ちゃん……?」
風邪を引いたように苦しそうな息をしながらも、リエルの呼びかけに答えたマリー。
薄く開けた綺麗な緑の瞳と目が合ったのだが、それを見たリエルは途端に驚いた。開いたマリーの目が、薄くではあるのだが光を放っているのを見てしまったからである。
「これは……!」
「俺もほんとに驚いたんだよ。どんな病気か検討もつかねぇんだ……」
「症状は冬風邪と似てはいるのだが……目が光を放つなんて、私も見たことがなくてだね……」
なるほど。これでは普通の医者ではお手上げになってしまうのも無理はない。何故ならリエルはこの病気の名前を知っていたからだ。だからこそ、見た途端に驚いてしまった。
「……魔眼病、だと思います。この症状からして間違いありません」
光を放つ目を見つつ、彼女はその名前を口にした。後ろで控えていた両親や医者は当然のごとく驚く。どうやら、この村に勤めて結構長いであろう初老の医者でさえも知らなかった病名らしい。
「魔眼病……初めて聞く病名だね」
「極めて稀な病なので、お医者様でも知らない人の方が多いと思います。私のような精霊の方が詳しいかもしれません」
「それで、この魔眼病ってのはどんな病気なんだ……!?」
普通に医者の勉強をしていてはまず学ばないような病気ということだろう。ローレルぐらい腕利きの医者ならば知っていそうではあるが。
催促するバルトに応えるように、リエルは病気の説明をしてみせた。
「魔眼病というのは、まだ魔法の心得がない。使ったことがない人間が魔力を身体に溜め込みすぎると発症してしまう病のことです。目が光を放つのは、そこが最も魔力を溜め込む部分だからと言われています」
「魔力を溜め込んだ……? マリーがそんなことしてる姿は見たことないぞ……」
「直接魔法を行使したりといった行動がなくても、その近くにいると無意識に溜め込んでしまうことがあるんですよ」
要するに、魔法を使わないまま魔力を溜め込み過ぎると発症して体調を崩すということだ。小さな頃から魔法を使っている子なんてまずいないし、魔力を発散する手段などないに等しい。
そして、マリーが何故魔力を溜め込んでしまっていたかについても、リエルは心当たりがあった。
「……そういや、知り合いの冒険者が近場で依頼をこなしてる時にマリーはよく見学とかしてたっけか。危ねぇから見学とかはやめたほうがいいって言い聞かせてはいたんだが……」
「その時に当然魔法なども使われていますし、それが原因でマリーちゃんは魔力を身体に溜めこんでしまってたんでしょうね……」
積もり積もって、ついに限界を迎えてしまったということだろう。
マリーは冒険者に憧れているので好奇心が強いのはいいことだが、今回はそれが裏目に出てしまったようだ。
「それで、治療法はあるのかね……?」
「普通の医療でも解熱程度ならできますが、根本的な治療にはなりません。専用の薬を作る必要があります」
どうやら治療法はあるようで、一同はホッと胸を撫で下す。それまでは医者の治療に任せて凌ぐ他ないだろう。魔眼病は死病というほど深刻なものではないので、それだけが救いだ。
だが、急がなければ風邪に似た基本症状はひどくなる一方なので、決して悠長になどしていられない。
「村にはその材料がないので私が採ってきます。なので、皆さんはマリーちゃんのことをお願いしますね」
「……分かった。こちらも最善を尽くそう」
「シノさんが出掛けてる今、アンタだけが頼りだ。頼んだよ……!」
「どうか、よろしくお願いします!」
三人に見送られたリエルはすぐさま家を出た後、念のため森の訪れへ寄って事情を報告。
ローザは当然のごとく驚いていたが、見聞の広いティエラは旅先で病名を聞いたことがあったようで納得したように頷いていた。
(シノさんに頼ってばかりはいられない。私が助けてあげなくちゃ……!)
そして二人の見送りも受けて、リエルは魔眼病を治す薬の材料を集めるためにクラド村を後にするのであった。
店内のカウンターを挟んでローザの向かいに座っているのは、リエルとティエラの二人。シノがいないのはワリと珍しい光景なのだが、彼女は一人で依頼に出向いていて不在とのこと。
「隣街から依頼が来るなんて、珍しいこともあるんですねー」
「それだけ先の武道大会で、シノさんの名が轟いているということですよ。喜ばしいことです!」
「戦う先生、なんて通り名も耳にしましたよ。シノがどう思っているのかは別として」
どうやらシノは例の武道大会が開催された街、ジェネスへ行っているらしい。ここのところはずっと近場で依頼をこなしていたため、これも変化の一つだろうか。
クラド村はともかくジェネスにおいては大会で準優勝という成績を残しているのだし、かなり名は通っていそうだ。
彼女はあまりちやほやされるのに慣れていないため、大丈夫なのかという心配こそありはするけれど。
「というよりティエラさん。お店の方はいいんですか?」
「新商品のネタ出し中なのでちょっとお休みです。今日はしばらく来店者もいないでしょうし」
ティエラは相変わらず、気まぐれで店を開けたり閉めたりするいつもの調子だ。それでも経営が成り立っているのは素直に凄いと思う。
以前の遠出で王都まで行った際の商談もあってか、店を閉めていてもお金は入ってきているのだろう。
「まぁ、ここに関してもこういう日は結構珍しいですからね」
ローザが店内を見渡すと、彼女ら以外に誰も客や冒険者がいない状態となっていた。皆依頼などに出向いてしまったようで、各テーブルもガランとしている。
なので今の店内は、三人の話し声や従業員が働く音だけが響くのみである。まるで貸し切り状態かのようだ。
「こういう静かな環境だからこそインスピレーションが湧くというものなのですよ。店で色々考えていると、来店者に驚いて思考が中断しますからね」
「仕事中も結構、自分の世界に入っちゃってるんですね……」
「魔法道具作りは繊細な作業なので、邪魔が入るなんてもってのほかです」
彼女の作業中に来店してしまった客はご愁傷様である。作業中に来店されると困るとは、店主としてそれでいいのだろうか。
シノが聞いたら「この子のことだから仕方ないよ」などと返されてしまいそうではあるが。
「何か手伝えたら……と思ってはいましたが、その分だとなさそうですね」
「生憎、今はもう間に合っているので大丈夫ですよ」
「こちらの方も、届いている依頼は今のところありませんねー……」
昼頃に出て行った冒険者達が全て受注してしまったのだろう。ローザからもリエルに頼める事がない。要するに、今は思いっきり暇だということだ。
先ほどのローザの言葉のように、こういう日があってもいいとは思うのだが、ティエラはともかくとしてリエルの性格上、外に出ながらボケッとしているのは逆に落ち着かないだろう。
「野良の魔物討伐などに出向いてみてはどうですか? 早朝のシノみたいに」
「依頼ではない分、報酬も割安になってはしまいますけどね」
基本的に魔物討伐依頼は、何々が厄介だから討伐してくれなどといった感じで舞い込んでくるため、その分の報酬が上乗せされている。
早朝にシノが行っている日課のような討伐はその範疇ではないため、討伐報酬も安めだ。相場としては、大体一回分の食費が浮けばいい程度か。
「それもそうですね……魔物との戦闘自体が修行にもなりますし」
「ただし、少し前にシノさんとティエラさんが遭遇したゴーレムのような例もありますので、そこは注意してくださいね」
「確かに……まぁ、無理のない程度ということで」
リエルならば無詠唱の魔法という強みがあるので、よっぽどじゃなければ遅れは取らないとは思うが、油断は禁物だ。また例のゴーレムのように、発見されていないだけで厄介な魔物が潜んでいる可能性だってあるのだから。
とりあえず今日の目的が決まったので、ローザとティエラに別れを告げて店を出ようとした。が、その時――――――――
「ローザちゃん、大変だ! 娘が……ウチの娘が!!!」
店の扉が勢いよく開いたかと思えば、息を切らした男性が慌てた様子で入ってくる。
ちょうど扉の前にいたリエルは驚いて飛び退き、カウンター側の二人も入り口の方に目を向けている。
「ど、どうしたんですかバルトさん!?」
「昼頃に娘が倒れちまって、お医者に見せたんだが……それでもお手上げらしくてよぉ……!」
「ま、まずは落ちついてください。ね?」
バルトと呼んだ彼は村の門番を務めている男性の一人で、森の訪れでも冒険者に交じってよく見かける人物だ。狼狽え気味の彼を落ち着かせたローザは話を聞き始める。普段の気弱そうな彼女とは一転、いざという時には頼もしい子だ。
どうやら娘のマリーが病気で倒れてしまったらしく、医者に見せても治療方法が不明だったらしい。となると頼れるのは冒険者の知識だけとなってくるので、こうして店へやってきたというわけだ。ローザはよく娘の自慢話を聞かされていたので、その娘の一大事となっては焦っているのも十分にわかる。
「事情はわかりました。そうなると、今動けるのは……」
「私しかいませんね。急を要するようなので、引き受けましょう!」
「よろしくお願いします、リエルさん」
「ありがとうよ、精霊の姉ちゃん……!」
あまり何人も押しかけるとかえって邪魔になってしまうので、ティエラは店に残ることにした。医者でもわからない病気となると、うかつに動くと二次被害が出ないとも限らないからだ。
バルトはリエルに深く頭を下げると急ぎ足で店を出ていき、彼女もその後を追っていくのであった。
◇
村の入り口近くにあるバルトの家へ着いたリエルは、すぐにマリーの元へと向かう。彼女はシノの生徒であり、腰まで伸びた綺麗な金髪と人一倍活発な性格が印象的な少女だ。
医者と母親に促されて部屋に通されたリエルは、ベッドで横になっている彼女の近くへと寄り添う。
「マリーちゃん。私が来たから、もう大丈夫だよ」
「はぁ……はぁ……その声は、リエルお姉ちゃん……?」
風邪を引いたように苦しそうな息をしながらも、リエルの呼びかけに答えたマリー。
薄く開けた綺麗な緑の瞳と目が合ったのだが、それを見たリエルは途端に驚いた。開いたマリーの目が、薄くではあるのだが光を放っているのを見てしまったからである。
「これは……!」
「俺もほんとに驚いたんだよ。どんな病気か検討もつかねぇんだ……」
「症状は冬風邪と似てはいるのだが……目が光を放つなんて、私も見たことがなくてだね……」
なるほど。これでは普通の医者ではお手上げになってしまうのも無理はない。何故ならリエルはこの病気の名前を知っていたからだ。だからこそ、見た途端に驚いてしまった。
「……魔眼病、だと思います。この症状からして間違いありません」
光を放つ目を見つつ、彼女はその名前を口にした。後ろで控えていた両親や医者は当然のごとく驚く。どうやら、この村に勤めて結構長いであろう初老の医者でさえも知らなかった病名らしい。
「魔眼病……初めて聞く病名だね」
「極めて稀な病なので、お医者様でも知らない人の方が多いと思います。私のような精霊の方が詳しいかもしれません」
「それで、この魔眼病ってのはどんな病気なんだ……!?」
普通に医者の勉強をしていてはまず学ばないような病気ということだろう。ローレルぐらい腕利きの医者ならば知っていそうではあるが。
催促するバルトに応えるように、リエルは病気の説明をしてみせた。
「魔眼病というのは、まだ魔法の心得がない。使ったことがない人間が魔力を身体に溜め込みすぎると発症してしまう病のことです。目が光を放つのは、そこが最も魔力を溜め込む部分だからと言われています」
「魔力を溜め込んだ……? マリーがそんなことしてる姿は見たことないぞ……」
「直接魔法を行使したりといった行動がなくても、その近くにいると無意識に溜め込んでしまうことがあるんですよ」
要するに、魔法を使わないまま魔力を溜め込み過ぎると発症して体調を崩すということだ。小さな頃から魔法を使っている子なんてまずいないし、魔力を発散する手段などないに等しい。
そして、マリーが何故魔力を溜め込んでしまっていたかについても、リエルは心当たりがあった。
「……そういや、知り合いの冒険者が近場で依頼をこなしてる時にマリーはよく見学とかしてたっけか。危ねぇから見学とかはやめたほうがいいって言い聞かせてはいたんだが……」
「その時に当然魔法なども使われていますし、それが原因でマリーちゃんは魔力を身体に溜めこんでしまってたんでしょうね……」
積もり積もって、ついに限界を迎えてしまったということだろう。
マリーは冒険者に憧れているので好奇心が強いのはいいことだが、今回はそれが裏目に出てしまったようだ。
「それで、治療法はあるのかね……?」
「普通の医療でも解熱程度ならできますが、根本的な治療にはなりません。専用の薬を作る必要があります」
どうやら治療法はあるようで、一同はホッと胸を撫で下す。それまでは医者の治療に任せて凌ぐ他ないだろう。魔眼病は死病というほど深刻なものではないので、それだけが救いだ。
だが、急がなければ風邪に似た基本症状はひどくなる一方なので、決して悠長になどしていられない。
「村にはその材料がないので私が採ってきます。なので、皆さんはマリーちゃんのことをお願いしますね」
「……分かった。こちらも最善を尽くそう」
「シノさんが出掛けてる今、アンタだけが頼りだ。頼んだよ……!」
「どうか、よろしくお願いします!」
三人に見送られたリエルはすぐさま家を出た後、念のため森の訪れへ寄って事情を報告。
ローザは当然のごとく驚いていたが、見聞の広いティエラは旅先で病名を聞いたことがあったようで納得したように頷いていた。
(シノさんに頼ってばかりはいられない。私が助けてあげなくちゃ……!)
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