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第二部
55:王都グランディア
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ベルースを出発した翌日。陽は若干高くなっており、時刻はそろそろ昼になるだろうか。客船は、王都グランディアへ向けて変わらず真っ直ぐ航海中である。
「ベルースまでの道中みたいに変な輩に絡まれなくてよかったわね、シノ」
「さすがに毎回ああなってたら不安は尽きないよ。誰かさんが勝手に勝負を挑みかねないし」
「あれは私の善意からの行動だもの。むしろ感謝してほしいくらいだわ」
「タダでお酒飲んでただけな気もしますけどね……」
ベルースからの道中は極めて順調で、一番怖いとされている海上での魔物襲撃などにも出会うことはなかった。一応専門家が同乗してたりはするものの、頼る事態にならなかったことが何よりだろう。
船首近くのデッキ部分に出ていた三人が海風になびかれながら大海原を眺めていると、
「――――――あっ、見えてきた! あれが王都グランディアだよ!」
ふいにシノが前方を指差してみせた。二人がその方向へ目を凝らすと、船の行く先に大きな陸地が段々と姿を現し始めるのが見える。
その陸地全てが、グランディア王国の王都。北西の大陸のおよそ四分の一を占めるとされている巨大な都であった。
遠くからでもわかるそのとてつもない大きさを目にしたリエルは、期待に満ちた表情をしており、心なしか金色の瞳もキラキラ輝いている。
「あれが……王都グランディア……!!!」
「私にとっては約二か月ぶりね。今度は何が待っているのかしら」
前にリエルを探しに来た時を思い出したのか、セリアは肩を竦めていた。待っているのが面倒事でなければいいのだけれど――――――と、隣でシノは密かに思う。
「ご乗船の皆様にご連絡致します。本船は間も無く、王都グランディアへ到着致します。お忘れ物の御座いませんようお願い申し上げます。大陸間客船をご利用頂きまして、誠にありがとう御座いました」
船内各所の拡声装置から乗務員の案内が聞こえた後、何度か汽笛の音が鳴り響く。周囲を見渡してみると、他にも多数の船が同じ方向へ向かっているようだ。
他大陸からの商船だったり兵士達が乗った演習船だったりとその種類も様々で、この集まり様はさすが王都といったところだろう。
「私も随分と久しぶりに来たけれど、やっぱり変わらないなぁー……」
港入りした船の上から周囲を眺めながら、シノが感想を漏らした。
まだほんの入り口部分ではあるのだが、ここから見えるだけでもその賑わいと規模は寸分の衰えも感じさせない。
やがて完全に船が停まるとスロープが桟橋へと下され、続々と乗客や商人達が下り始める。周りにも各地から来たであろう船が既に停まっており、物凄い人数で港は溢れかえっていた。
「さぁ着いたよ! 国中の技術と交易と人が集まる王都、グランディアにようこそ!」
「凄い……凄いです! ここから見える港だけでも物凄い賑わいです!」
「まさに人と建物の波って言葉が似合うわよね……」
港に降り立つとリエルは感激の言葉を発し、セリアは呆れたように息をつく。ゲームなどでよく見る王都というのはまさにこんな感じだろう。
ひとまずシノは、今だに瞳をキラキラさせているリエルと別段なんてことなさげなセリアを連れて港部分を後にする。
ちなみに、港を抜けるだけでも既に歩いて十分ほどの距離がある。王都は単純に歩いて横断するだけでも三日はかかるなどと言われているがこれは誇張ではなく、本当にそのぐらい巨大な都市なのだ。
港を抜けた後、リエルが何かを見つけて立ち止まる。その視線の先にあったのは――――――
「シノさん、何か箱のようなものが走っていますが、あれは……?」
「あれは王都の鉄道だよ。都の各所に行き来する重要な移動手段だね」
「ほんと、王都だけ無駄に技術が発展してるわよね。他の街ではまず見かけないもの」
――――――どう見ても、電車のそれであった。形式はヨーロッパの街に走っているようなお洒落な感じではあるが、こういう世界では相当物珍しいといえるだろう。
魔結晶を動力源として動いているため環境的な害悪は一切無い、王都では必須ともいえる移動手段だ。
(初めて来た時は私も驚いたよ……。なんでファンタジー世界に電車が!? って思ったもの)
王都にこういう近代技術があるのも全てはシノが設定として考えていたからなので、今となっては疑問などないのだが。鉄道は王都をぐるりと回るように走っており、全部で九つの地区を繋いでいる。端から端まで数日の王都も、これを使えばわずか数時間だから驚きだ。
「それで、シノはまず行くところがあるんでしょ?」
「うん。せっかく紹介状を書いてもらったからね」
「シノさんの知人の方が経営されている武具屋さんですね」
ひとまずシノ達は、ベルースで紹介してもらった武具屋に向かうことにした。今いる港は南地区で、目的の店は西地区にある。ここから歩くと数時間だが鉄道を使えば数十分ほどで着くので、鉄道とは実に便利なものだ。
とりあえず目の前にある鉄道の発着所へ向かおうとしたが、シノはふと立ち止まって周囲を見渡してみた。
(んー……さすがにそんなすぐには見つからないかな。というか、居るかもわからないし)
アルバから聞いたステラと思わしき人物のことが気になったシノは雑踏に向けて目を凝らしてみるも、それらしき姿を見つけることはできない。
彼女とは何かと妙な縁があるように思えるのでちょっと期待していたが、そんな簡単にはいかないようだ。王都にはしばらくいるつもりだからその間にどこかで会えるかもしれないし、そこまで焦るようなことでもないかもしれないが。
「あっ、次の車両がきましたよ!」
「ほら行くわよシノ。あんたが遅れてどうするのよ」
ちょうど西地区へ向かう鉄道が発車待ちになっていたので、三人は車両へと急いだ。他にも続々と人が乗り込み、この光景は元の世界でいう通勤ラッシュを思い起こさせる。
すぐに車両が動き出し、鉄道おなじみのガタンゴトンという音と共に揺られながら、車両は西地区へと向かっていった。
「ベルースまでの道中みたいに変な輩に絡まれなくてよかったわね、シノ」
「さすがに毎回ああなってたら不安は尽きないよ。誰かさんが勝手に勝負を挑みかねないし」
「あれは私の善意からの行動だもの。むしろ感謝してほしいくらいだわ」
「タダでお酒飲んでただけな気もしますけどね……」
ベルースからの道中は極めて順調で、一番怖いとされている海上での魔物襲撃などにも出会うことはなかった。一応専門家が同乗してたりはするものの、頼る事態にならなかったことが何よりだろう。
船首近くのデッキ部分に出ていた三人が海風になびかれながら大海原を眺めていると、
「――――――あっ、見えてきた! あれが王都グランディアだよ!」
ふいにシノが前方を指差してみせた。二人がその方向へ目を凝らすと、船の行く先に大きな陸地が段々と姿を現し始めるのが見える。
その陸地全てが、グランディア王国の王都。北西の大陸のおよそ四分の一を占めるとされている巨大な都であった。
遠くからでもわかるそのとてつもない大きさを目にしたリエルは、期待に満ちた表情をしており、心なしか金色の瞳もキラキラ輝いている。
「あれが……王都グランディア……!!!」
「私にとっては約二か月ぶりね。今度は何が待っているのかしら」
前にリエルを探しに来た時を思い出したのか、セリアは肩を竦めていた。待っているのが面倒事でなければいいのだけれど――――――と、隣でシノは密かに思う。
「ご乗船の皆様にご連絡致します。本船は間も無く、王都グランディアへ到着致します。お忘れ物の御座いませんようお願い申し上げます。大陸間客船をご利用頂きまして、誠にありがとう御座いました」
船内各所の拡声装置から乗務員の案内が聞こえた後、何度か汽笛の音が鳴り響く。周囲を見渡してみると、他にも多数の船が同じ方向へ向かっているようだ。
他大陸からの商船だったり兵士達が乗った演習船だったりとその種類も様々で、この集まり様はさすが王都といったところだろう。
「私も随分と久しぶりに来たけれど、やっぱり変わらないなぁー……」
港入りした船の上から周囲を眺めながら、シノが感想を漏らした。
まだほんの入り口部分ではあるのだが、ここから見えるだけでもその賑わいと規模は寸分の衰えも感じさせない。
やがて完全に船が停まるとスロープが桟橋へと下され、続々と乗客や商人達が下り始める。周りにも各地から来たであろう船が既に停まっており、物凄い人数で港は溢れかえっていた。
「さぁ着いたよ! 国中の技術と交易と人が集まる王都、グランディアにようこそ!」
「凄い……凄いです! ここから見える港だけでも物凄い賑わいです!」
「まさに人と建物の波って言葉が似合うわよね……」
港に降り立つとリエルは感激の言葉を発し、セリアは呆れたように息をつく。ゲームなどでよく見る王都というのはまさにこんな感じだろう。
ひとまずシノは、今だに瞳をキラキラさせているリエルと別段なんてことなさげなセリアを連れて港部分を後にする。
ちなみに、港を抜けるだけでも既に歩いて十分ほどの距離がある。王都は単純に歩いて横断するだけでも三日はかかるなどと言われているがこれは誇張ではなく、本当にそのぐらい巨大な都市なのだ。
港を抜けた後、リエルが何かを見つけて立ち止まる。その視線の先にあったのは――――――
「シノさん、何か箱のようなものが走っていますが、あれは……?」
「あれは王都の鉄道だよ。都の各所に行き来する重要な移動手段だね」
「ほんと、王都だけ無駄に技術が発展してるわよね。他の街ではまず見かけないもの」
――――――どう見ても、電車のそれであった。形式はヨーロッパの街に走っているようなお洒落な感じではあるが、こういう世界では相当物珍しいといえるだろう。
魔結晶を動力源として動いているため環境的な害悪は一切無い、王都では必須ともいえる移動手段だ。
(初めて来た時は私も驚いたよ……。なんでファンタジー世界に電車が!? って思ったもの)
王都にこういう近代技術があるのも全てはシノが設定として考えていたからなので、今となっては疑問などないのだが。鉄道は王都をぐるりと回るように走っており、全部で九つの地区を繋いでいる。端から端まで数日の王都も、これを使えばわずか数時間だから驚きだ。
「それで、シノはまず行くところがあるんでしょ?」
「うん。せっかく紹介状を書いてもらったからね」
「シノさんの知人の方が経営されている武具屋さんですね」
ひとまずシノ達は、ベルースで紹介してもらった武具屋に向かうことにした。今いる港は南地区で、目的の店は西地区にある。ここから歩くと数時間だが鉄道を使えば数十分ほどで着くので、鉄道とは実に便利なものだ。
とりあえず目の前にある鉄道の発着所へ向かおうとしたが、シノはふと立ち止まって周囲を見渡してみた。
(んー……さすがにそんなすぐには見つからないかな。というか、居るかもわからないし)
アルバから聞いたステラと思わしき人物のことが気になったシノは雑踏に向けて目を凝らしてみるも、それらしき姿を見つけることはできない。
彼女とは何かと妙な縁があるように思えるのでちょっと期待していたが、そんな簡単にはいかないようだ。王都にはしばらくいるつもりだからその間にどこかで会えるかもしれないし、そこまで焦るようなことでもないかもしれないが。
「あっ、次の車両がきましたよ!」
「ほら行くわよシノ。あんたが遅れてどうするのよ」
ちょうど西地区へ向かう鉄道が発車待ちになっていたので、三人は車両へと急いだ。他にも続々と人が乗り込み、この光景は元の世界でいう通勤ラッシュを思い起こさせる。
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