制服のスカートって長くないですか?

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 ヨウは眼前の景色から目を離せなかった。冬に吹く風は冷たく突き刺さるもの、なのに、ヨウは寒さを感じなかった。目の前に映っていたのは、渉里ワタリが制服のスカートを捲りあげ、普段は滅多に見せることのない女性特有のそれだった。それは全てが肌色で、一箇所だけが熱く体温を持ち、心做しか少し濡れているようにも見え、冬の風と寒さによって血色があまり伺えなく白くなった肌に重なるその厭らしさと、そもそも下着を履いていない疑問。冬だというのに、ワタリの体は少し汗ばんでいて、それでいて表情は恍惚としており、ヨウに見せつけてかなり興奮しているのが窺える。

「お前…ワタリ、何やってんだ…!? なんで…履いて…な……」
 ヨウがだんだん声を失っていく。下半身が熱くなってきたのを感じ、慌ててその方向を見る。固く、今にも飛び出してきそうなそれが、性慾に忠実に、起つ。布を掻き分けたいと言わんばかりに痛みを伴いながら、その血流の激しさは止まない。

「だって、暑苦しいじゃない、このスカート…それに、下着だって。邪魔なの」
 ワタリが厭らし気に、ヨウを煽るようにゆっくり腰を下ろし、ヨウの鼻先までそこを近づけた。ヨウは唖然とし、彼女のそこから香る初めての匂いに、頭がくらくらとしていた。

「そっちも、……すごく腫れてる…熱そう…興奮してるの? ねえ。クスクス」
 立ち上がったワタリは静かに笑う。ヨウが羞恥に塗れて顔から火が出たのを見て、ワタリは妖しく微笑んだ。

 黒い生地に黄色のリボン、「危険」を表す色相。彼らは中学生。そこに映える白くなった肌色。紅くなる頬。妖気な笑み。妖艶な香り。求める眼光。見開いた目。眼前の光景。冷たい風。屋上。二人だけの場所。二人だけの時間。

 …秘め事ヒメゴト。危険。

「ヨウくん」

「今の私、どう見える?」

 彼らは、危険な関係。

「すごく…エッチに見えるでしょう、クスクス」

「……ワタ、リ…」
「安心して…これは私とヨウくんしか知らない…秘密……私が下着を履いていないまま学校に来ていること、ヨウくんしか知らないの…恋人の秘密」
「でも…そんな……もし、バレたらどうするんだよ?」
「さあ…それはバレてから考えるわ、じゃあねヨウくん、また明日」

 そういうとワタリは捲り上げていたスカートの布をぱさりと下ろす。見かけはいつも通りの女子中学生。女子中学生ワタリは、屋上から屋内へ続く扉を重たそうに開けたあと、ヨウの方を向いて、友人に見せるような笑顔で手を振り、その扉を閉めた。

「……なんだったんだ、アレ…」

 ヨウの下半身で激しく主張していたそれが収まり、冬の風を冷たいと改めて認識するのには、かなり時間がかかった。



 ヨウの性知識はそこまで豊富ではなかった。が、ワタリの衝撃的な行動によって、彼の気付かぬ間に芽生えていた醜い性慾が目を覚まし、ヨウが我に返ったときには、自身の生殖器に手を掛けている。を思い返している。自身の中で沸騰するそれを吐き出したいがために、手が止まらない。

まだ中学生なのに──こんなこと、許されないのに…でも、でも…!



 秋頃、ワタリから告白を受け、流れで交際をしては見たものの、実際恋人関係を持ったあとどうすれば良いのか、ヨウには分からなかった。ただ交際したあと、ワタリの可愛らしい仕草に遅れて好意が芽生え、目で追っていたことがあった。
 ただ、いい歳した「大人」が何度も繰り返すが何かを、ヨウは知らない。
 彼はとっくに、思春期を迎えているというのに。
 クラスメイトの男子たちは下世話な話で盛り上がっている。ヨウだけが着いていけない。大声で「セックス」だとか「騎乗位」だとかひたすら叫んでは、女子に怒られている。周りが大笑いするので、ヨウは訳の分からないまま、愛想笑いをするしかなかった。



 そして冬のあの日、ワタリはヨウを屋上に連れた。

「さむーい!」
 勢いよく吹く北風に思わず震える。ワタリが無邪気な笑い声を上げた。それを見てヨウはどきんとした。また、惚れた。

 暫くして、スカートを翻しながら、まるでバレエダンサーのように踊るワタリが突然動きを止め、ヨウの方を向いた。
「ね、ヨウくん」
「なに?」
「私たちは恋人だよね」
「そうだな」
「じゃあ、恋人だけの秘密を作ろうよ」
「恋人だけの秘密…?」
「まあ、もう…用意、出来てるけどね……」

 だんだんワタリの顔が赤くなって、息が荒くなる違和感を、ヨウはすぐに感じとった。

「ワタリ? どうした?」
「ううん…ちょっと恥ずかしいだけ」
 足の付け根に手を当て、そこから脚の内側に指先が入るように押し当てる。スカートが風でめくれないように押さえている。
 ワタリが俯いた。

「だ、大丈夫か? 言いづらいなら───」
 ヨウがそう言い近付いた途端、突然ワタリがヨウを押し倒した。
「痛っ!? な、何すんだよ」
「しっかり見て」
 ヨウの上に跨り、膝立ちをする。そのままワタリは、スカートを捲った。

 下着の履いていない、女性の下半身そのものが、ヨウの眼前に見えた。
「!!!!!!」
 ヨウは声にならない悲鳴が出た。

 やはりワタリも思春期に入っている。外性器の皮膚部分には薄らと陰毛が生えているのだ。姉や妹のいないヨウは、それを見るのが初めてで、思わず吐きそうになる。
「は、…? うっ、あ、う…ぇ、ア、!? な…ん……はぁ、はッ」
 まともに呼吸が出来なくなる。驚愕としすぎて、身体と脳が情報の処理に追いつけていないのだ。
「ヨウくん? びっくりしちゃったの? まあそうか…ごめんね、えへへ…」
 スカートを捲ったまま。顔が真っ赤になっているまま、へらへらとワタリは気味の悪い笑い方をした。



 それを回想しては何度も生殖器に手をかけ、その手を上下させる。下腹部が熱くなったと思えば、先端から白濁が漏れ出す。その度に拭き取る。ゴミ箱がティッシュで一杯になる。

ワタリの羞い
あの吐息
目の前で見えた女性の生殖器
鼻先で香る性の匂い
いつもと違う声
赤くなって火照る全身
体温

 ひとつ残さず、当時の全てを思い出す。手が早くなる。その手は止まらない。

 またひとつ、白濁が生まれる。絶頂を、繰り返す。
「……っぐ!! あ、はぁ……」
 早くなっていた吐息がだんだん落ち着く。自身の生殖器はとっくに萎えていた。全部、出し切った。

「……何やってんだろ」
 所謂賢者モードだ。急に冷静になって、目の前に置いてあるゴミ箱に積まれたティッシュを見てひどく顔面が歪む。

自分、やりすぎだろう。

 自身の体液の臭いが部屋中に充満し、堪らなくなったヨウは急いで窓を開けた。

 あの光景が頭から離れないヨウは、ずっと夜も眠れなかった。



 翌日の学校終わり、ヨウはワタリにまたに来るように指示された。

 また見せられるのだろうかと、ヨウはどきどきしながら階段を昇る。

 屋上につく直前の扉に手をかけた時、例の光景が甦って、無意識に下半身のそれが起き上がっていたのに気づいて、ヨウは透かさずヒッと悲鳴が漏れる。

 そっと扉を開ける。生徒が帰ったあとの静かな夕方。冬の北風が強く吹き込み、ヨウは震え上がった。

「あ、ヨウくん」

 ワタリがこちらに気がつくと、静かに微笑んだ。

「えへ、来てくれたんだね」

 ワタリはこちらには来なかった。

「ワタリ、なんで…お前、に立ってるんだ」
 ヨウは声は冷たいながらも、内心、焦った。

 ワタリは柵の向こうに立っていて、少しでも前かがみになれば、屋上から落ちる場所にいた。幾ら三階建てとはいえ、怪我だけでは済まない。ヨウの純粋な頭でも、分かっていた。

「ヨウくん、世の中にはこんな恋人もいるんだよ」
「え…?」

「『貴方が私のことを好きでいてくれないのなら、死んでやるわ!』───ってね」
 ワタリは演者みたいに、そう叫んだ。
「お前…ワタリ……やめろよ、そこから、飛び降りるとか」
「そんなことしないよ、ヨウくんが、そう言ってくれるから」

「ほんとは、もし、ヨウくんが無反応だったんなら、私は本当に飛び降りるつもりだった」
「な…なんで───」

「バレちゃったの」

「え」

 柵に手をかけ、ワタリは悲しそうな声でぽつぽつと零す。羞恥の混じった声。

「私が、下着履いてないの、バレちゃった…それで、センセイに注意されたんだけど…私がこんなだからって、罰だって言って、それで」
「────ッ」

「犯されちゃった……♡」

!!!!!!!!!!!

 ワタリはうっとりとした顔でそう言った。

「先生と生徒が、こんな関係になっちゃったのよ」
「お前…恋人だって、言ったのは」

「ああ、えへ、大丈夫だよ。私はずっとヨウくんのこと大好きだからっ」 
「そうじゃないだろ!!」

「だからさ、さっきまでめちゃくちゃ死にたかったんだけど──ヨウくんが止めてくれたから、私は飛び降りない」

「その代わり…私は本当は、先生にああされるの、怖かった……だから」


ヨウくんで、上書きさせてよ


「……は?」
「分からない? ヨウくんと、私で…えっちするんだよ。このの屋上で」
「なんで、そんな、あ」
「大丈夫、私が全部やってあげる…だからヨウくんは大人しくしてくれればいいの」

 ワタリは柵を乗り越えこちら側に来る。相変わらず下着は履いていない。

「嫌なの? でもその割に…勃ってるのはなんで? クスクス」
「……っ」
「この前、私があんなことしたから、興奮してるんでしょ。頭から離れないんでしょ? 前まで純粋に私のことを目で追ってくれていたのに、今じゃすごく犯したいって欲望に塗れた視線で私を追うの。でも嫌じゃないよ──恋人だもん。あの先生、私のことをそんな感じの目で見てくるけど…全然違う…怖くない、ヨウくんのその視線、むしろ嬉しいよ。興奮する」
「でも、だけど」
「大丈夫よ、誰もいない」
「そうじゃなくて」
「心配なの? 安心して…ヨウくん、きっと初めてでしょ。優しくしてあげる」
「違う」
「私が」
「違うんだ」
「全部」
「待ってくれ」
「ヨウくんの全身」
「話を」
「気持ちよくしてあげ──」

「やめろ!!!!!!!!!!!」

 ヨウは堪らず叫んだ。夕の空に響く。柵に止まり見物していた烏は驚いて飛び去った。

「やめろ…違う、その…待ってくれ」
「ヨウくん? 駄目なの? どうしても…」
「その…まだ、早いと思うんだ」
「なんで?」
「だって、ほら、まだ、俺たち…中学生じゃないか」
「そうだね」
「だから…まだ、その」
「いいじゃない」
「はっ?」
「私が先生に犯されちゃったくらいだから、生徒同士でヤッちゃっても問題ないでしょ」
「あるだろ」
「兎に角!」
 ワタリが大声を上げた。

「理由が云々言うより、もう直接言っちゃうね」

 ワタリは深呼吸する。冬の冷たい空気が気道を満たす───。

「私、ヨウくんとえっちしたい」

「……」
「だって、ほら…ヨウくんの……苦しそう…痛いでしょ…?」
「痛い、よ」
「だから、私がそれ、治めてあげるから」
「でも」
 ヨウはだんだん泣きそうになってきた。性行為を何か分からないという恐怖、自分ではどうしようもない性慾、下半身から突き刺さる痛み。葛藤。色んな感情が混ざりに混ざっていた。

「怖いの…泣いてる」
「怖いよ」
 ワタリはヨウの頭を撫でる。母親以外に撫でられる初めての感覚に、ヨウは頭がぼーっとする。優しく、暖かい。

「怖くないよ、すごく…気持ちいい、から……多分」
「本当に、何もしなくていいのか」
「大丈夫。私が全部やるから…───ね」

 ワタリが吐息混じりにそう告げ、ヨウの胸に手を当てた。ヨウは唾を飲む。ごくりと、覚悟の音がする。
「緊張してるの? えへ、私も……」

 冬の寒い夕方、北風が緩やかに吹き、二人の間を抜ける。冷やかしに来ているように。しかし、二人は寒さを感じない。それ程に体温が上がっているのだ。

「準備はいい……?」
「あ……あぁ」
 声を震わせて応答したヨウを見て、ワタリは嬉しそうに笑う。

 そしてヨウの頬に手を添え、そのまま唇を重ねた。

 校舎の屋上で愛を誓う二人のドラマティックな演出とは裏腹、二人には下心しかない。

 女子の柔らかな唇を初めて感じた時の甘ったるい熱。

「……」
 不器用ながらも必死にキスを繰り返すワタリに、ヨウは興奮を覚える。

「っは」
 唇を離し息を吸い込む。荒くなった呼吸の中、小さくワタリの声が聞こえる。
「よ、ヨウく、ん……舌、入れても、いい? すごく…なんか、気持ちがいい」
「……ワタリのやりたいようにしてくれていい…俺は全然わかんないから、そういうの」
「ん…えへ、わかった」

 再びキスをする。そのままワタリは恐る恐る、ヨウの閉ざされた唇を割り口腔内に侵入するように、舌先を尖らせ、捩じ込んだ。緊張により乾燥しているヨウの口腔内を、ワタリの舌が暴れ回る。
「は、う……ん」
 荒い吐息と零れる小さな声、そして舌の触れ合う厭らしい水の音がワタリの耳を通じて脳を刺激している。
「あ……───ヨ、く…」
 弱々しく名前を呼ばれる。

「さわ、って」
 唇がまた触れる直前のところで、ワタリはそう言った。どこを触ればいいのかわからずどきまぎとしているヨウの手を掴み、ワタリは自分の胸に押し当てた。
「……!」
「お願い…なんか、切ない、の」
 息が整わず、途切れながら己の欲望を口に出す。そんなワタリを愛おしいと思った。その瞬間、彼は純粋ではなくなった。
 まだ膨らみが少し分かる程度の小さな胸でも、欲望と快感により主張する突起が、ヨウの手のひらから伝わる。
「っあ!!」
 触れた途端に、ワタリが悦びの声を上げた。思わず驚いたヨウは手を離してしまった。
「や、やだ、なんで、離れないで」
「ごめ…びっくりした」
「う…仕返し、してやる!」
「うわぁっ!?」
 あの時みたいに、ヨウを押し倒す。ただここで以前と違う点は、ワタリの手の先が、ヨウの下半身にあることだった。
「お前、何、するんだ…」
「ヨウくんの…見てみたいから」
 慣れない手つきでベルトを弛め、布越しにその存在を確かめる如く、手を布に当てながらゆっくりとファスナーを下ろす。そこから見えた下着越しに、ヨウのそれが熱を持って血流に波打っているのがわかる。ワタリは更にその中に手を入れ、ヨウのそれを指先に感じると、それを外の世界に出してやった。
「うあ!?」
「わ、すごい…」
 男性を象徴するそれを物珍しそうに色んな角度から見るワタリが、遂に抑えきれなくなった欲望のままに、それを口に含んだ。
「うわ、わあっ、ああ!!?」
 自身のそれが、ワタリの舌で、手で、口腔の全てによって刺激されている。
「やめ、気持ち、わる、いッ」
「大丈夫だって……そう怖がらなくても、いいのに…」
 情けない声を出し、言葉とは裏腹、恍惚とした表情で快感に身を委ねているヨウを見て、ワタリの下半身は疼いた。
「……我慢、出来なくなっちゃった」
「え……?」
 そう言うとワタリは、自身の下半身へと手を伸ばす。

 右手でヨウの、左手でワタリ自身の性器を同時に刺激する。
「なに、やって」
「ん…ヨウくんもやってるんじゃないの」
「え…? なんのことだ…」
「自慰だよ…」
「……!」
 欲望の体液は、ワタリの股を満遍なく濡らしている。まるで──いつ男性器を入れてもいいよう、準備されているみたいだ。

 北風が吹き、ワタリのスカートが捲り上がる。

「……いちいち捲れちゃうの、やだな…脱ごう」
「え」

 そういうとワタリは自分の履いていたスカートを脱ぎ捨てた。
「ちょっ、お前! さすがにやばいっ、て」
「だめ?」
「その…だって、外」
「だから余計に興奮するんだよ、ヨウくん」
「でも」
「そんなにイヤなら…私の家来る?」
「え?」

「私の家、誰もいないから……」
「出かけてるのか?」
「ううん、みんなどこかに行っちゃった」
「は…?」
「私が気味悪いんだって…親戚の人がたまに世話をしてくれたり、学校に払うお金もやってくれる。でも基本的に家は私一人だよ」
「寂しく…ないのか?」
「大丈夫…今は、ヨウくんがいるから」
 先程までの妖艶な笑みとは程遠い、寂しそうな顔をしてワタリはそう言った。ワタリの手はヨウの腰に置かれていたが、ヨウの存在を確かめるように、少しぐっと力を込めてヨウの肌に触れる。
「……そうか」
「じゃあ、行こう! 案内してあげる」
「おう」
 ワタリの家庭事情に衝撃を受けたヨウは、正常な判断が出来ないまま、ちゃんとしたの格好をして、ワタリの家へと向かった。

「ここが私の家! って言っても普通の家だけどね」
「思ってたより広いんだな」
「まあね」

「早速続きやろうよ」
「ったく…そう焦るなって」
 そんな会話を交わしながら、二人は階段を上がり、ワタリの部屋へと向かう。ドアを開けるとワタリのいい匂いが広がる。

「えへへ、ここでいつもえっちなこと考えてる」
「いつも通りだな」
「ヨウくんも人のこと言えないんじゃない?」
「うるさいな」
 ヨウが躊躇なくベッドに腰かけていると、ワタリはヨウの膝の上に股がった。
「……ワタリ、本気で、やるのか?」
「そうだよ…ヨウくんが…ヨウくんのことが好きだから……不思議だなあ、えへへ、私も、なんだか緊張してきちゃった」
 心做しか震えているように見えたヨウは、透かさずワタリを強く抱き締めた。
「わわっ、なに?」
「先生にヤられたこと…思い出したのか?」
「そん、な……こと…ない…」
 だんだん声が小さくなって震えている。肩を掴むワタリの手ががたがたと揺れた。
「ヨウくん…どうして……」

「なんで私、こんなに悲しいの?」
 ワタリの目から大粒の涙が溢れ出ていた。

「怖いよ なんで泣いてるの? 私はなんでこんなに悲しくなっているの? ヨウくん こわいよ」
 大声で吐き出すワタリに、ヨウは驚きを隠せないでいた。
「大丈夫だ…ワタリ……」
「う、うう」
 泣きじゃくるワタリを見て、ヨウは耳元で呟いた。
「……俺で上書きするんじゃなかったの」
「……そうだ…そうだったね」
 なんとか泣き止もうとしながらワタリは言った。
「ワタリの好きなようにしてくれ」
「うん…」

 ワタリはヨウの学ランに手をかけると、不器用ながらボタンを外していく。そこから覗かせるブラウスの中に、ヨウのまだちゃんと大人になっていない上半身の体格があると思うと、ワタリはまた疼いた。
「ヨウくん」
「どうしたの」
「全部、脱ごう……?」
「え、えぇ?」
「触れたい、の…ヨウくんを……感じてたい…」
「……もー、わかったよ」
 そう言うと、ワタリは嬉しそうにぱっと笑って、またブラウスのボタンを外し始めた。
 ヨウの眼前には、期待の視線で自身の上半身を見るワタリと、ブラウスを脱がそうとする彼女の細い指。
 ゆっくりと上の服が剥がされた。ワタリも同じように、セーラー服の上を脱ぐ。若干大きくなった双丘を覆う布を取り払い、ワタリの上半身が顕になる。そのまま、二人はベッドに横になり抱き合った。
「えへへ…あったかい、ヨウくん」
「ワタリもな」

 ワタリは続けてスカートを脱いだ。かつて見た下半身のそれが再び見える。

「ね、ヨウくん……ちょっと…ゲームしよう」
「ゲーム?」
「その…自分のを触ってさ、先にイッた方が負けっていうの」
「勝ったらどうなるんだよ」
「ヨウくんが好きなようにしてくれていいよ」
「そう、……か」
「私が勝ったら、私がヨウくんのことぐちゃぐちゃに気持ちよくさせる。ヨウくんのこと、気持ちよくさせてぶっ壊してあげる」
「えっ、えぇ!?」
「死なない程度にね」
「怖いなあ…いいぜ、その勝負、乗った!」
「えへへ、やったあ」
「でも…どうやるんだ? その…」
「お互いに見せ合うんだよ」
「えぇっ!?」
「さっきまですごいやる気だったのに……急に恥ずかしくなっちゃった? クスクス」
「え…うるせーな…」

 ヨウは恐る恐る自身のそれに手をかける。それを見てワタリは興味深そうに凝視した。ヨウは慌てて、見るなと言わんばかりに隠した。
「私も見せなきゃ……ね」
 そう言うとワタリは、ヨウに女性の象徴であるがよく見えるように大きく開脚した。ヨウは興奮したあまり、意識するより先に、それに手が伸びていた。

「……駄目だ…今のワタリ……めちゃくちゃ、エロ、い」
 途切れ途切れになりながら、ヨウは小さくそう言う。ワタリは嬉しそうな表情をして、ヨウと同じように、自身のそれに手を添えた。

「ヨウくんも…すごい必死になってるね…でも先にイッたらだめだよ……」

 静寂した部屋に、二人の荒い息と厭らしい水音が響く。それは人間の体温を含んだ粘度のある体液。互いの手を濡らし、そして互いの意識を快感に導く。小さく嬌声が漏れ出て、吐息混じりに聞こえている。粘膜から溢れ出る欲望の液を指先に掬い、また別のところに塗り付け、互いの全身は徐々に体液に塗れていく。
「う、……やばい、かも」
「負けちゃってもいいの? ふふ」

 ヨウの体が微かに震えた途端、ワタリは妖しげな笑みを浮かべた。
「この勝負、私の勝ちかな…?」
「…負けた……」
 先端から白濁が溢れ出している。ワタリは透かさずヨウの体に飛び込んで、それの全てが覆われるように口腔内に飲み込まれていった。
「うわぁっ!? 何するんだよ…!」
「え? もったいないなあって思って…それにここ、私の家だし。まあいいけど」
「くっ…」
「ん、ふ……ッ」
 ワタリは先から根まで綺麗に吸い込んでいった。喉の奥に当たっているような慣れない感覚を、ヨウは覚えてしまった。
 しばらくしてワタリが口を離すと、舌先からそれの先端を、唾液の糸が橋を掛けたみたいに引かれていた。ヨウの白濁は綺麗さっぱり無くなっている。何が起きたのか混乱していると、ワタリはヨウの顔に近づいて、口を開けた。
「!!」
 ワタリの舌の上に、白濁が乗っている。
「お前、それ、吐き出せっ、ほら、」
「ん…や」
 ワタリは口を閉じると、うがいでもするかのようにくちゅくちゅと音を立てながら白濁精液を味わい、そして飲み込んだ。
「えっ」
「……ふふ、おいしい」
「いや、お前……何飲んで」
「ヨウくんの、味わってみたかったの」
「はあ?」
「まだ元気あるみたいだね…えへへ」
 ほぼ全部吸い取られてしまったというのに、ヨウのそれはまだ欲望に波を打っていた。
「まだまだいくよー」
 ヨウが荒げた息を整えようとしているにも関わらず、ワタリはヨウの胸に飛び込み、そしてその胸にあるに舌を這わせた。
「!? あ、っ」
 驚きと突然の快感に、ヨウは思わず変な声が出てしまった。
「へへ、ヨウくん、男性と女性に共通する性感帯ってどこか知ってる?」
「は…?」
 上目遣いでヨウの顔を見ながら、ワタリは続けて突起を弄んでいる。
「ここだよ、ここ!」
 そう言うとワタリは突起に歯を立てた。
「うあッ!?」
 突き刺すような痛覚。痛みに苦しむ声を聞いて、ワタリはクスクスと笑った。
「えへへ……痛かった? でもそのうちこの痛みも気持ちよくなるよ」
「どう、いう……ことだ…」
「まあ、そのうち分かるよ」
 ワタリは突起を舌で転がしたまま、左手をヨウの性器にかけた。上下半身両方から来る快感の刺激に、ヨウは狂いそうになっていた。
「……ッ、う、あっ」
「ヨウくん…女の子みたいな声出して……気持ちいいの?」
「う、気持ちよく、なんかッ」
 本当は快感にもっと身を委ねたい──ヨウはそう思っていたが、謎のプライドが勝り、変に強がってしまった。
「あれ、そう……じゃあもっとやらないとね」
 そういうとワタリは空いた右手でもう一つの突起を刺激し始めた。
「うぁ、ッ」
 ひとつ増えただけなのに、何故か快感は増している。ヨウは不思議で堪らなかったが、快感に気を取られ、情けない声をずっと出していた。
「ヨウくん、今のヨウくん、すごく可愛いよ……女の子みたいな声…えへへ…」
 ワタリは意味の分からない笑いをして、ある指示をした。

「ヨウくん、ここ、舐めてくれる?」
「は……?」
 そう言って指差した先は、ワタリの性器。ヨウは何を意味しているのかさっぱりわからなかった。
「あ、知らない? んー…じゃあこれ見て」
 ワタリは充電してあったスマートフォンを起動すると、動画アプリを開いて、ある動画をヨウに見せた。

 それは、男性が女性の股の間に顔を埋め、何か執拗に愛撫しているものだった。

「これ、お前、AVとかいうやつじゃ…」
「そうだよ。今は簡単に見れる時代になっちゃったからね……ほら見て、こうやるの」
 カメラはだんだんアップになり、男性の舌が女性器の上で暴れ回るのを映す。女性の足は快感にびくびくと震えている。
「ね、簡単でしょ? ほら、やって……」
 大きく開脚したワタリは、いつ来てもいいといいように濡らしていた。
「……いいのか」
「早く……」
 ヨウは恐る恐る顔を近づけてみる。この前遭遇したあの匂いと再会する。舌を伸ばし、そこに触れてみる。
「あぅっ、んッ」
 聞いたことも無い甲高い嬌声をあげる。それは不思議な味だった。しかし全てが水分を含んでいて、滑らかな──何か。なんだか癖になりそう、とヨウは思った。ちゃんと女性器を見たことがないヨウは、何となくで這わせていた舌に違和感を感じた。
「……!!」
 ワタリの膣内ナカに入り込んでいたのである。熱い。
「は、ァ……」
 恍惚とした表情で、尚且つ汗だくになっているワタリを見て、ヨウのなかで今までに感じたことの無い性欲が芽生えた。
 それからずっと、やり方を知っていたかのように、中で執拗に暴れ、更には何故か見つけた先端に吸い付いたりと、愛撫を繰り返した。ワタリは喘ぎながら、愛する彼氏の名前を弱々しく呼んでいた。

 性欲に負け、気づけば、ヨウはワタリを押し倒していた。白い羽毛の布団が衝撃を吸収していくのを感じる。

 あの動画には続きがあった。男性が、自身のそれを女性器に捩じ込み、何度も腰を振っていた。ヨウは、それを無意識にやろうとしていた。

「ヨウくん…?」
「ワタリ、俺、おれっ、もう、我慢できないッ」
 泣きそうな、震えている声でヨウはそう言った。何も知らないと思っていたワタリは驚いた顔をしたあと、頬を弛め、母親みたいな笑みを浮かべた。
「いいよ……来て…もう…ヨウくんの好きなようにして……? やり方、わかる?」
「ああ…さっきの見たから……何となく、わか、った」
「そっか…」

 外はもう夕方になっていた。あと少ししたら、ヨウは帰らなくてはならない。ただ、二人は時間を忘れ、無意識のうちに、ずっとこのままでいたいと望むようになった。

 ワタリはヨウを弱く抱きしめた。緊張なのか背徳なのか、ヨウはずっと背を震わせていた。
「……怖いの?」
「怖いよ…初めてだから……」
「それでも、ヨウくんは…やりたいの」
「……わからないよ」
「そうだよねえ…でも大丈夫だよ」
「…なにが?」
「不安なら、今日は…この辺にしといて、また今度……続き、やろ?」
「え…」
 ワタリは冗談のつもりで言ってみた。少し寂しくなって胸が痛くなったが、冗談の中に、ヨウを心配する気持ちが隠れていた。
「……そう、だな」
 ヨウは下を向いて、暗い声でそう言った。
「うん。また、今度にする……今日はもう時間が遅いし…」
 本気で受け止め、帰る支度をしようと服を着始めたヨウに、ワタリは思わず硬直した。本当に帰ってしまう。
「ま…待って!」
「な、なんだよ」
「今度…いつ、私の家に来れる…?」
「…いつも午後は暇だよ。何か習い事やっているわけじゃないし」
「…! それじゃ、明日は……」
「ああ、わかった」
「うん、ごめんね、なんか…」
「大丈夫」

「……じゃあ、ね」
「おう」
 そうして、ワタリはヨウの帰りを見送った。

「…そうだよね…ヨウくんも、門限あるし…私は……」
 ……その手には、カッターナイフがあった。






















 翌日、ヨウは緊張した面持ちで教室へ入ったが、いつもは最初に教室にいるワタリがいなかった。
「あれ…」
「どうした?」
 友人に声をかけられ、驚いてひゃああと悲鳴を出す。
「うおっ、ヨウ、なんだその女子みたいな悲鳴」

『女の子みたいな声出して──』
 ヨウは昨日のことを思い出してしまい、顔を真っ赤にした。友人に心配されたので、必死に誤魔化そうとする。
「あっ、いや、その…びっくりしただけだ、ところで…ワタリは?」
「ああ、あの眼鏡のやつ? あいつ、今日は休みだぞ。それにしても珍しいな、あいつとなんかあったのか?」
「え? いや、特に……いないからおかしいなと思って」
「ふぅん…」

 学校が終わったあと、ヨウはワタリの家に行こうか迷っていた。昨日の行為の続きをやろうにも、身体が乗り気でないこと、少し疲れていること、そして休んでいるのに向かってもいいのかという罪悪感が、ヨウのなかでぐるぐるとしていた。幸い、ヨウの通学路から少し離れたところにワタリの家があったので、さり気なく通ってみることにした。

「……ヨウくん?」
 ワタリの家の前で、何故かワタリとばったり出会った。
「ワタリ? 何やってるんだ? 休んでたんじゃ…」
「あ…えへへ、ちょっとね…」
 心做しか、少しヨウと距離を置いているような気がした。ヨウは不安になって、少しずつ近づこうとする。
「へ、えっ、ヨウくん、その、あのねっ」
「なんだよ、なんかあったのか」
「その、違うの…あの、今、ちょっと、」
「落ち着け、」
「や…っ」
 ヨウがワタリの腕を掴んだ瞬間、ワタリは歪んだ顔をして倒れ込んだ。
「!?」
「い、ッた……」
「……ワタリ?」
 ワタリの袖が少しずつ赤くなっていく。そしてヨウの手にも少し赤いものが付いていた。
「な、お前、怪我して」
「違うの……これは…」
 慌てて腕を隠そうとするも、白い服に浮かぶ真っ赤な雲がその痛みを表している。隠せなくなって、ワタリは泣き出した。
 わけも分からず戸惑っているヨウの足元に、ワタリのポケットから落ちたが転がっていた。その先に少し血がついている。まさか──と思ったヨウは、そのカッターナイフを拾い上げた。
「やめて、返してっ」
 泣きすぎなあまり発狂するワタリを無視し、ヨウは公園へ走り出した。
「ヨウくん、待ってよ……」


「あれ、まさか…リストカットとかそういうのじゃ……」
 ぶつぶつ言いながら、冷や汗と動悸に塗れたまま、ヨウは必死にそのカッターナイフに付いた血を洗い流そうとした。
「たッ……」
 思わず刃が指先に触れてしまい、自身の指からも血が溢れてくる。赤茶色に染まる流水が排水口へ飲み込まれていく。
「ワタリ……俺のせいで…?」
 手に温かい水が付いた。いつの間にか泣いている。

「ヨウくん…」
「!!」
「ごめんね…」
 ワタリが公園に追いつき、ヨウの身体に飛び込んだ。その腕には、包帯がきつく、雑に巻かれていた。

「私、わたし…ヨウくんにだって家族がいて、帰る時間だってちゃんと決まってるのに、それなのに、私は」
「そんな、俺は…」
「私は……ッ」
「俺だって帰りたくなかったよ──でも…怖かったんだ、あんな、初めてやるのに」
「……」
「ワタリを、傷つけていいのかって、怖くて」
「それ、に…私の我儘で…ヨウくんに無理やりやらせようとしたのも…私は……ごめんなさい…」
 ヨウは何も言えなかった。何を言えばいいのか分からなかった。
「いいんだ…ほら、今日また続きやるんだろ」
「でも」
「大丈夫だよ、今日はまだ時間たっぷりあるし」
「……」

 泣き噦るワタリの腕を引いて、ヨウはワタリの家へ向かった。
「いいの…? 疲れてない……?」
「平気だよ」
 部屋に着き、ベッドに座る。
 昨日見せられたAVがあまりにも気になり、態々検索して閲覧し、流れを覚えてしまったヨウは、ワタリの服を不器用ながらにも脱がしていった。雑に巻かれた故にちゃんと隠せていない傷だらけの腕が目に入る。
「……ヨウくん…」
 不安そうな顔で見つめるワタリを、ヨウは静かに抱き締めた。
「……俺も申し訳ないことしたなって」
「…そうかな……」
「あんな中途半端なとこで終わっちゃったから」

「……じゃあ…ヨウくんの…好きなようにして……今頭が回らないの……」
「そっか」
「お仕置で、いいから、はやく」
 そう言うとワタリはヨウの腕を弱々しく掴み、自身の下腹部へ持っていった。
「うん」

 軽く触れてみる。何故かもう濡れていた。
「お前、やっぱ期待してたんだな……」
「え…」
「もうだいぶ濡れてる」
「そ、んな……恥ずかしい……」
「は、昨日の勢いはどこ行ったんだよ」
 ゆっくり押し当てながら、ヨウはワタリのそれを指で堪能する。絶妙な湿り気、そして体温、柔らかさ。例の動画と同じように動いてみると、ワタリは小さく声を漏らした。

 意を決し、ヨウは珍しく履いていた下の布も剥がし、直接触れることにした。
 体液でぐちゃぐちゃになったそこを、指が暴れ回る。

「な……なぁ、ワタリ」
「なに…?」
「あの…制服、無いか?」
「なんで……?」
 ヨウは、初めてあの景色を見た時のことを思い出していた。スカートを捲り、下着のない顕となった下半身のことを。
「あの時の、格好で、やりたい」
「……わかった…」

 そういうとワタリは全裸でふらふらとクローゼットの方へ向かい、制服を取り出す。裸のまま、ワタリは制服を着た。
「ん、っ……なんか…変な感じする……」
 ワタリの胸の突起が、制服の生地に擦れ、変な声が出てしまう。
「捲ればいいの…?」
「うん、そのまま…なんだ、たくし上げ? て、それで咥えられないかな」
「なんでそんなこと知ってるの……!?」
 ワタリにそう言われたヨウは思わず顔が赤くなった。他にも色んな動画を見ていたからである。制服を着たままプレイをするものを見つけたヨウは、これだ、と決めたらしい。
「その…いろいろ見てたんだ、そしたら、制服着たままやるやつがあって、中学校のセーラー服着てた女の人が……」
「えへへ、それをやりたいの?」
「お、おう……」
「いいよ、わかった。ヨウくんの指示に従うよ。分からないことがあったら聞いてね」
「え? あ、うん」
 ワタリはスカートの裾を咥え、下半身のそれがしっかりと見えるようにした。

「どう、かな」
 ヨウの眼前に広がる、今までワタリに見せつけられたものとは違う興奮を覚え、ヨウは思わず自身の誇張するそれを構えた。
「……ッ」
「あっ、ま、待って! ゴム付けないと駄目だ…」
「え、あっ、そっか、すまん」


「どこやったかなぁ…あ、あった」
 ワタリが躊躇なく机の引き出しからコンドームを取り出したのを見て、ヨウはぎょっとした。なんで入ってるんだ? なんて聞く勇気はなかった。

「んーと…ヨウくん、そこ座って」
「? おう」
 ヨウがベッドの上に座ると、ワタリは下腹部に顔を近づけた。
「な、何するんだ?」
「付けてあげる」

 顕になっているヨウのの先端に軽くゴム口を被せると、ワタリはそれを口に含み、勢いよく下まで飲み込んだ。
「うっうわああっ!?」
 一瞬にしてゴム質の薄い皮に包まれた自身は、快感に耐え切れず起き上がってしまった。
「見てみて、ヨウくんのこれ、ピンク色になった! えへへ、かわいい」
「は、はぁ……?」

「これでよしっ、いいよ、ヨウくん……来て」
 ワタリがそう言うと、またさっきの体勢になった。いつでも入れてもいいと言わんばかりに、そこは歓迎の体液を漏らしている。
「……ッ」
 ヨウは喉を鳴らした。恥じらいながらも少し微笑んでいるのを、壊していいのか躊躇った。

「……い、入れるよ…?」
「うん」



 静寂。まだ明るい昼過ぎの空を、どこかで見た烏が、黒い風になって青を斬り裂いていった。

 花はすぐそこなのに、それは震えて先に進まない。

 ヨウは少しずつ腰を前に押し出す。それは、徐々に体液まみれの深淵に飲み込まれていく。内臓へ続く道。人間ニンゲンそのものの体温。ゴム質の壁越しに、ヨウは女性の体温を感じ取っていった。

「あ…」
 小さく漏らしたワタリの声に、ヨウははっと我に返った。快感に震えた唇でスカートの裾を離してしまったのを、じっと見ていた。
「……!」
 互いの下腹部に、空間はなかった。自身のそれは、完全に埋もれて見えない。
挿入はい、った…………?」
「はあ、多分……はいってる…奥まで、来てる……ような…気がする……っ」
「ど、どうするんだっけ……!?」
 簡単に入ってしまった動揺で、映像で見たはずの次の行動を思い出せなかった。あたふたしていると、ワタリは静かに、ヨウの腕に手を添えた。
「そのまま、腰を……その…動かしてればいいの……」
「え、っ……と」
 自身のそれを通して、ワタリが逃がすまいと下腹部に力を入れたのが伝わった。ヨウの理性は、消える直前にあった。
「……ああ、わかった…あれだ…」
 ヨウはそう小さく呟くと、ゆっくりと腰を後ろに引いた。
「う、あ……っ」
 先端。中身を引っ掻きながら徐々に抜け出そうとしているのがわかる。逃がしたくない。ワタリはもう一度、力を入れた。
「は、」

 ヨウは、勢いに任せて、自分の腰を思い切り前に突き出した。
「あっっ……!!」
 ワタリが大きく声を漏らした。
「あ、はぁっ、待って、いきなり……つよい…ヨウく、ん」
「……こんな、感じ…なのか…」
「え……」
「あの…クラスのやつが言ってた……性行為セックスって……こんなに…」
「……」
「なんだか、胸が……締まるような」
「……多分、それは」
 顔に手を添え、汗だくの身体でワタリは静かに笑った。
「好きだからだと思うよ」
「え?」
「私のこと、ちゃんと好きでいてくれてるから…」
「……かな」

「そのまま…続けていいよ」

 そう促されるままに、ヨウはひたすら本能に任せて突いた。ワタリの嬌声と、水浸しの布がその悦びを物語っている。
 自分の全身を支えている腕が痛くなって、ヨウはワタリの胸に倒れ込んだ。柔らかいのがヨウの顔面を優しく包み込む。腕も腰も痛いが、止まらない。
「ごめ……止まんな…っ」
 苦しそうに喘ぐのを見ても止められなかった。
「大丈夫……へいき だから…」

 少女という年齢相応の道の狭さと、
 少年という年齢相応の情けないそれ。



 高い天井をぼんやりと見つめていた──意識が飛びかけていたので、虚空を見ていたと言うのが相応かもしれないが──ワタリは、後に空がもう真っ赤になっていたのに気づいた。それと、既にヨウは出すべきものを出して、力尽きてくたばっていたのも。ワタリの胸元で安心しきった寝息を立てていた。

「……お疲れ様」
 ワタリはくす、と微笑んでヨウの頭を撫でた。


「んあ……あれ?」
 ヨウは寝ぼけた顔でワタリの胸元から起き上がった。
「起きた? おはよう」
「……うわっ!! 外真っ暗じゃん!」
「そうだね…ヨウくんだいぶ長いこと寝てたからね~」
「ね、寝てた? ごめん……」
「いいの。セックスなんて疲れて当然なんだから」
 ワタリに突然その言葉を言われたヨウは驚いて顔を赤くした。誤魔化すように窓の外を見て頭を雑に掻きながら、
「そろそろ帰らなきゃ……」
と言った。
「だねー…」
 ヨウは少し咳き込むと、あたりをきょろきょろと見回した。
「どうしたの?」
「いや……喉乾いたなって」
「ふふ。そうよね、帰るまでにお茶でも飲む?」
「うん。ありがとう」
「いいよ! 取ってくるね」
 ワタリは下着やら服やらを急いで着ると、ばたばたと足音を立てて階段を降りていった。ヨウはそれを見てはっとすると、慌てて制服を手に取った。




「……あぁ~美味しかった! なんかごめんな」
「え? 全然大丈夫だよ」
「……あっ!」
「うん?」

「お…俺……なんか出したような記憶があるんだけど」
「ん? あぁ、これのこと?」
 そういうとワタリはヨウから出されたの入ったゴムを取った。
「うわああっ!! いきなり出さないでよ! びっくりした……」
「ふふっ この通りだから、心配しないで大丈夫だよ」
「そ…そっか……」


「じゃ、俺帰るね」
「うん! また明日」
 ワタリはヨウを見送った。少し先に見えるヨウの家に彼が入るのを確認したあと、ワタリはふっ、と微笑むと軽い足取りで家に入った。



「……それじゃあ…これの処理をしないと……」

 ワタリはヨウの精液が入っているコンドームを手に取ると、指先で液だめを掴み、それを逆さにした。

「こんなの、捨てらんないよ……」

 ゴムの口先に唇を付けると、ゆっくりと垂れてくるそれを口内に含んだ。

「……これが、ヨウくんの…………」



 口いっぱいに入ったそれを味わうように堪能した後、ワタリは躊躇なくそれを飲み込んだ。
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