パーティー!

降矢めぐみ

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1.ハロウィンパーティー決定!

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「ねえ、ハロウィンパーティーやらない?」
 きっかけは、あーちゃんのこの一言だった。川崎杏里かわさきあんりこと「あーちゃん」。十月に入って間もなく、サバサバしていてフレンドリーな彼女は僕たちにそう提案してきた。
 僕、青海野灰あおみのはいと、あーちゃんを含む六人は文芸同好会に所属している。所属と言っても、幼馴染みの「カナやん」こと朝木華奈あさぎかなが中心となり、同じく幼馴染みの「ネコ」こと猫宮学ねこみやまなぶと僕の三人で結成したものだ。結成一年目ということと、先輩がいないことの緩さからあーちゃんたち四人が入ってきてくれた。
 毎月部誌のようなものを発行したり、おすすめの図書を紹介したりという細かい説明は割愛させてもらうとして。そういった同好会としての活動以外で、あーちゃんは積極的にイベントの提案をしてくれる。
 今は放課後の部室。先ほど来月の部誌のテーマが決まったところだ。これから一ヶ月かけて、毎月一日に発行する部誌を作成していく。今日のように下校時刻より前に活動が終わった時には、こうしてたわいもないことを話しながら過ごしている。
「ハロウィンパーティーかあ、いいねいいね! おかしくダサいお菓子くださいっ」
「ぷっ」
 唐突にダジャレをぶっ込んできたのは、「アキ」こと上林秋穂かんばやしあきほだ。それに笑うのは、「サクラ」こと三谷下桜みやしたさくらしかいない。普段は無口な上に時々毒舌という強烈なキャラなのに、アキのダジャレ沼からは何故か抜け出せないようだ。しかもお人形のような見た目に高音ボイスで、彼女にはギャップしかない。
「いいじゃないか。俺も賛成だ。ちなみに、どのようなことをやる予定だ?」
 ネコが眼鏡を片手でクイッと上げた。あーちゃんは、待ってましたとばかりに前のめりになった。
「近年のハロウィンと言ったら、仮装は外せないと思うんだ。だから各自好きな格好で、街を練り歩くのどう?」
 サクラが露骨に嫌そうな顔をした。
「それって毎年テレビで見る、あの人だかりのことでしょ……絶対に嫌」
「そうだな。マナーの守れないやつが多いと聞く。危険なのではないか?」
 打って変わってネコも反対派に回った。参加する人の中には、毎年ニュースになるほどのモラルの低い人もいる。あれには現役の高校生である僕にも二の句を継げない。
「なら、そういうマナーが特に気になる時間帯――そう、お酒が始まる時間までに向こうを出ればいいんじゃん? 夕方には帰って、夕飯はこっちでみんなで食べようよ」
 あーちゃんはどうやらサクラたちから反論されるのは織り込み済みのようだ。
「僕はそれでいいと思うよ」
 右手を顔の横に上げて、賛成の意を示した。
「それならいい」
「俺は美味いもの食いたいから、持ち帰りする時間はくれよな、サクラ」
 食を気にしているのは、「ひろろん」こと小山田宏士おやまだひろし。コメントに違和感がない体格で食いしん坊だ。特に女性陣が限界を迎えた時に大助かり。
「そうね。夕方までならうちの親も許してくれると思うわ」
 カナやんの親はかなり厳しい。小さい頃、幼馴染みである僕とネコがやんちゃさゆえにあちこち連れ回していたら、三回に一回は怒られていた。そんな環境下で育ったからか、彼女はクラスの学級委員などを率先してやる、真面目でしっかり者の女の子に育った。
「じゃあ決まり。今週末、みんなで衣装買いに行こ」
「ハロウィンの衣装と言うと……かぼちゃやミイラとかなのだろうか?」
 ネコの発言に、何人かの開いた口が塞がらない。首を傾げる彼に、あーちゃんはスマホの画像を見せた。
「うんとね、今は色んなのがあるんだよ。仮装って言うよりコスプレかな。ハロウィンのイメージにこだわらなくても大丈夫」
「うわあ、たくさん。チェーホフは知恵豊富~」
 またもやサクラの笑い声だけが小さく漏れた。
「でもさでもさ、普通にそこらへんで買ってもおもしろくなくない?」
 アキはおもしろさだけにはクオリティを求めてくる。
「ま、まさか手作りとか言うなよな。俺、裁縫なんかできねえぞ」
「ひろろんの言う通り。あたしもできない」
「まさか。秋穂だって裁縫は無理だよ~。でもさ、なんかオリジナリティあってもよくなあい?」
 オリジナリティ、か。僕たちなりのハロウィンパーティー……実現できれば、アキの言うようにおもしろいものになるんだろうけど。僕たち文芸同好会らしいものって一体なんだろう。
 すると、カナやんが部長らしい提案をしてきた。
「なら、こういうのはどうかしら。私たちは文芸同好会よ。みんなフィクションが好きで、最近はよくファンタジー系の話を読むわね。だから、各自異世界の人物になりきってコスプレ……コホン、仮装するの」
 おお、と歓声のようなものが上がった。
「秋穂、みんなのオリジナルコスプレ見てみたいなあ。既存のキャラになるんじゃなくってさ。どうかな、どうかな?」
「やるのはいいが、揃うのか? アキがどういうイメージを持っているのか分からないが」
 ネコの眼鏡が再びクイッと持ち上がる。
「僕はあまりクオリティを気にしないでもらえたら嬉しいかな」
 僕の言葉にサクラが頷いた。
 そんなこんなで、できる限りなりたいイメージに近づけようということで話はひと段落し、この日は解散となった。
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